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Best Tracks Of 2016 / cos.


キュレーター、cos.による2016年の年間ベスト・トラック!

2016.12.27

YA3iという3人組でクラブ・イベントをたまに開催しています。
Sex Pistolsの『The Great Rock ‘n’ Roll Swindle』やModsに憧れる青年を描いた『さらば青春の光』など、音楽と若者文化を表現した映画に大いに感化され、昨年秋までは理想の音楽人生を模索するためにロンドンの大学院に通っていました。

印象的なイントロと”ear-catching”な曲によく心を奪われます。1曲目の1音目に感じる想いを大切にしています。


5. CHINAH / We Go Back (Jarami Remix ft. Skizzy Mars)

オリジナルはデンマークの3人組、CHINAHによる2015年リリース曲。今年の初めに〈Majestic Casual〉から公開されたこちらのリミックス・バージョンは、Skizzy Marsのラップをフィーチャーしたストックホルム出身のプロデューサー・ユニット、JaramiによるR&Bリミックスです。「We go back to you」と唐突に入るコーラスのイントロから心を鷲掴みされました。重なるSkizzy Marsのボーカルに、Daft Punkの楽曲に出てきそうなギター・ソロが加わっていくキャッチーでエモーショナルな展開も気持ちいいです。上半期からずっと聴き続けているお気に入りの一曲。

また、CHINAHは10月に新曲「Can’t Remember How It Feels」も公開しているので、そちらもぜひどうぞ


4. et aliae / Feel Me (feat. Cuushe)

今年10月末に開催したYA3iのイベント”#TM777″にて初来日公演を果たした、シンガポールを拠点に活躍するピアニスト/プロデューサーのet aliae(エト・アリエ)。6月に新作EP『Rose』をリリースし、京都のシンガー・ソングライターCuusheをフィーチャーした本楽曲「Feel Me」も日本盤ボーナス・トラックとして収録されました。

et aliaeは、これまでにノルウェーのシンガー、Anna of the Northの「Sway (et aliae Remix)」など、女性ボーカルをフィーチャーした楽曲を数多く発表してきました。彼女自身が奏でるピアノのメロディを筆頭に、楽曲全体に繊細さを散りばめながら、しっかりとビートの効いたダンス・トラックに仕上げているのが特徴かと思います。Anna of the Northのリミックスをきっかけに彼女のファンになったので、妖精のような歌声が持ち味のCuusheとのコラボレーションもまさにパーフェクトでした。

さらに、YA3iと協力してet aliaeを日本へ招いてくれた新宿MARZ主催の深夜イベント”ALPS”では、et aliaeのライブ中にCuusheが飛び入り参加するという嬉しすぎるサプライズもありました。今年のハイライトでもある思い出の一曲です。


3. Oscar / Good Things

ド派手な柄の靴下がトレードマークの、ロンドン出身のアーティスト、Oscar。優しさが滲み出ているかのようなソフトなバリトン・ボイスでポップ・ソングを歌い上げているのが魅力的。
キャッチーなメロディに乗せられたシニカルな歌詞や、ちょっとチープなシンセ使いのエレポップ・サウンドなどを武器に、新たなブリットポップの新星としてPitchforkなどのメディアではBlurやMorrissey、Saint Etienneといったイギリスの代表的なアーティストたちと比較され、着実に注目を集めているインディー・アーティストです。

そんなOscarのデビュー・アルバム『Cut and Paste』は今年の6月にリリース。2015年初めに〈Wichita Recordings〉からリリースされたデビュー・シングル「Daffodil Days」に魅了されてから、アルバムをずっと待ち侘びていたので、今年一の楽しみでした。そんなアルバムの中から、彼の声がより一層際立っているスロー・テンポな新曲「Good Things」を。靴下と同じくらいカラフルでポップなMVも要チェックです。


2. Kero Kero Bonito / Trampoline

日本とイギリスの両国で育ち、歌詞に日本語と英語が混ざるのは自然なことだと語るボーカルのSarahと、HNCや寺田創一など、日本の音楽シーンにも精通しているトラックメイカーのGusとJamie。そんな3人から成るロンドン出身のKero Kero Bonito。

彼らに関しては、昨年YA3iのハロウィン・イベントにて初来日公演の一つとして出演をしてもらったのが懐かしいです。来日ライブ時は「これから新曲やります!」といくつか未発表の新作を披露してくれていましたが、それらの曲がついに正式音源としてリリース、待望の2ndアルバム『Bonito Generation』も世に放たれた2016年でした!

そんな最新作から、ライブで初めて聴いた時に心打たれてしまった「Trampoline」を2位に。Sarahの歌詞は彼女の世界観や人間味がストレートに出ていてるようで、意外と気づかなかった物事に度々ハッとさせられます。「どん底に落ちたとしてもトランポリンがあるから大丈夫」。この一言だけでどれだけ気持ちが楽になっただろう。そして一足先に公開されていた「Break」でも、「ちょっと休もうよ」というメッセージが忙殺の日々を優しく支えてくれました。
英語でも日本語でも肩の荷を降ろさせてくれる、こんな心の支えになるアルバムに出会うなんて、大げさかもしれないけど初めてかもしれません……。そんな大好きな曲、世界中の老若男女、たくさんの人々の耳に届いて欲しいなと思いました。そして、しっかり地に足をつけながらどんどんパワーアップしていくKKBの今後に期待大&再来日超切望です!


1. Sekuoia / Lamp In The Dark (feat. Kill J)

デンマークはコペンハーゲン出身のプロデューサー、Sekuoia。Sekuoiaはソロ・プロジェクトですが、ライブではギターとドラムを加えた3ピース・バンド。シューゲイズ・ギターにエモーショナルに叩かれるドラム・パッド、ダウンビートでドリーミーだけど激しさもある彼らのライブ・スタイルにはとても惹きつけられます。

今年の9月にデビュー・アルバム『flac』をリリース。今回、Best of 2016として選んだ「Lamp In The Dark」は、5月にリリースされたシングルで、とびきりお気に入りです。本楽曲は同郷の女性シンガーKill Jとのコラボレーション作品で、美しい楽曲とは裏腹に報われない愛や寂しさを物語っている極めて内向的な作品です。ただ多幸感のある夢見心地感ではなく、ダークな要素をまとった神秘さに完全に惹かれました。
シューゲイザー、ドリーム・ポップ、エレクトロニカ、アンビエント、ビート・ミュージック、生音も好きだしエレクトロニックな音も大好きな私の好みを全て混ぜ合わせ、ハイブリットに仕上げてくれた最高の一曲。また、これまでの選曲からもわかるかもしれませんが、澄んだ女性ボーカルが加わっているのも、ここ近年の嗜好をまさに凝縮してくれています。


Comment

昨年ロンドンから帰国し丸々一年を日本で過ごした2016年は、海外生活時、そして以前とは打って変わったものとなりました。インディー・バンドのライブよりも国内DJを中心としたクラブ・イベントへ積極的に足を運ぶようになり、日常で耳にする音楽はDJ MIXばかり。常に流動的に音楽を聴いている一年でした。
しかし、”どの曲が2016年のベスト・トラックか”、意外とアッサリと候補は浮かぶものですね。毎日何百曲と聴いている中、思い返して”聴きたい”と思うのはそれだけ脳裏に焼き付いて”気に入った”証拠だと、素直に受け止めた結果が今回の選曲です。

気になる旬な楽曲をSpincoasterで紹介しつつ、感情の向くまま自然体でこれからも音楽を楽しんでいきたいと思います。そんな想いをSpotifyの公開プレイリストで表現しているので、ぜひチェックして楽しんでいただけたら幸いです。


番外編 マイ・ベスト

【ベスト・DJ MIX】

Abysmal Lounge #109 + Phüey Guest Mix

Stupid KozoとDJ ficoによるDJ MIX Show、Abysmal Lounge。

大学の友人同士ではじめたというこの番組は、Mixlr.comを通して毎週月曜の夜にライブ配信されており、これまでになんと117本のMIXを公開。時より国内外からのゲストDJも交えながら、約2年半ほど2人でDJ MIXを配信し続けています。

この場では中でもお気に入りの回、Stupid Kozoとシアトルを拠点とするPhüey(福岡のネット・レーベル〈Yesterday Once More〉などからも楽曲をリリースしている)がゲスト参加した109回目のMIXをピックアップしました。1時間ほどあるMIXを何度も繰り返し聴き続けることって今まであまりなかったのですが、MIXを聴きながら帰路につき、MIXが終わるまで遠回りするのが至福の時であり日課のようになっていました。

「一生終わらないで欲しいな」と思ってしまう心地良さ同時に、気分を上げてくれる流れが最高です。
2017年も変わらずMIX配信は続くそうなので、ぜひチェックを。


Spotify プレイリスト

(Text By cos.)


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