台湾のインディ音楽アワード『第16回 金音創作賞(Golden Indie Music Awards / 以下、GIMA)』授賞式が11月1日(土)に台北流行音楽センターで開催された。
今回のGIMAで最も注目を集めたのは、2作のアルバムを同時に発表したSSW/ヒップホップアーティスト・陳嫺静(HsienChing)。繊細でありながら前衛的なサウンドで「ベスト新人アーティスト賞」「ベストオルタナティヴ・ポップアルバム賞」「ベストヒップホップソング賞」の3部門を制し、台湾ラップシーンに新たな潮流を生み出した。「ベストバンド賞」には、ファンクR&Bを基盤に人間と機械の関係を探求するRobot Swingが輝いた。激戦の「ベストヒップホップアルバム賞」は、新鋭ラッパー・someshitt 山姆が手にした。



伝統と実験精神を融合させた3人組・百合花(Lilium)は、アルバム『万事美妙』で「ベストアルバム賞」と「審査員特別賞」のダブル受賞を果たし、「音楽に語らせよう。その価値をアートの本質に回帰させ、再び音への純粋な愛へと戻す」という本年度の審査理念を見事に体現した。
「ベストアジアンクリエイティブアーティスト賞」を受賞した日本出身のアーティスト・Elle Shimadaは、スピーチで「I made this album for girls with big dreams, I take this as all of our win.(このアルバムは大きな夢を持つ女の子たちのために作ったので、これは私たち全員の勝利だと思っています)」と語り、現代アジアの女性クリエイターが制約を超え、自らの声で創作の場を切り開いていく姿勢を象徴した。


また、授賞式は7組の個性豊かなパフォーマンスでも彩られた。トップバッターを務めた拍謝少年(Sorry Youth)は、神将の儀式と荘厳な太鼓の響きで幕を開け、会場を震撼させながら今年のテーマ「Brave(勇気)」のスピリットを高らかに鳴り響かせた。

続いて登場した百合花(Lilium)とSSW・李竺芯(Siri Lee)の共演では、ジェンダー平等をテーマに、性別や時代を超えて自由に生きるスピリットを歌い上げた。That’s My Shhhとsomeshit 山姆は、複数のラップアーティストと共に次々とステージに立ち、純粋なパーティの熱気をそのまま凝縮したようなパフォーマンスを届けた。新鋭アーティスト、我是機車少女(I’mdifficult)とAndrの共演では、心の闇を勇敢に解き放ち、寄り添いと理解の力を表現。「ベストライブ賞」を受賞した當代電影大師(Modern Cinema Master)は、圧巻のステージで、妥協のない音楽スタンスと圧倒的な存在感を見せつけた。
台湾の多彩でエネルギッシュな音楽シーンを映し出すとともに、アジア各地のトップクリエイターが集うプラットフォームとしても注目されるGIMA。今年はタイのラッパー・AUTTAと台湾のバンド椅子樂團(The Chairs)による初の台泰コラボステージが実現。お互いの楽曲でそれぞれの言葉を交わし合い、流れるようなラップと優しい歌声がと溶け合うハーモニーを、台湾とタイの街並みを映し出す映像とともに届け、国境を越えた音楽の対話を創り上げた。
授賞式のフィナーレを飾ったのは、2024年「ベストアジアクリエイティブアーティスト賞」受賞者・Silica Gel。“NO PAIN”と“APEX”の2曲を披露し、実験性と爆発力を兼ね備えた圧巻のステージで会場を熱狂させた。彼らは今年のアジア部門プレゼンターとしても登場し、金音創作賞の歴史に新たな1ページを刻んだ。なお、今年フジロック初出演を果たした話題を集めたSilica Gelは、12月に日本ツアーの開催も控えている。
『第16回金音創作賞』は、台湾インディ音楽の創造力と多様性を示すとともに、アジア音楽シーンにおける開放性と共鳴のスピリットを体現した。今後も、アジアのインディ音楽が持つ自由な精神と創造エネルギーは受け継がれ、さらに広がっていくだろう。金音創作賞に関する詳細は、オフィシャルサイトや各種SNSからチェックを。
【第16回金音創作賞 受賞者一覧(アーティスト名/作品名)】
吳政君『傳奇.雙擊—新視界』/ パーカッション、ハンドドラム、二胡、シンセサイザー
黃瑞豐『傳奇.雙擊—新視界』/鼓組、パーカッション










