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注目のタイ・インディアーティスト 3選 by TYP!CAL


盛り上がりをみせるタイの音楽シーンから、気鋭レーベルが要チェックな3組をご紹介

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2024.11.27

Text by Gikyo Nakamura

世界各国のインディポップを7インチやカセットテープでリリースしている音楽レーベル、〈TYP!CAL〉をキュレーションしている中村義響と申します。これまでとくにタイのインディーズアーティストについて多くリリースしている経緯もあり、今回まとめて紹介させていただく機会をいただきました。

タイのポップミュージックへの注目度は、日本でも徐々に高まってきているように感じます。とくにインディーズアーティストで知られているのは、〈88rising〉からのリリースをきっかけにブレイクし、NulbarichやSTUTSとコラボレーションしているPhum Viphuritや、惜しくも解散してしまいましたが、SIRUPともコラボレーションを果たしたR&BデュオのHYBS、シティポップ風のサウンドで話題となったSSWのNumchaあたりが筆頭でしょう。いずれもモダンなネオソウル〜アーバンミュージック系の音楽を志向しており、英語詞中心の楽曲を発表しているため、一聴すると欧米圏のポップスに近いリスニング感覚。でも同時に、東アジアに共通する良い意味でいなたいメロディ志向が同居していて、このあたりが日本のリスナーの琴線に触れる要因になっているのかなと考えています。

今回はこれまでに〈TYP!CAL〉で関わってきたアーティストから、おすすめのアーティストを3組ピックアップしてみました。


藤原ヒロシによるリミックスでも話題を呼んだ4人組

Rocketman

Rocketman:Instagram

まず初めに紹介させていただくRocketmanは、前述したPhum Viphuritの所属する〈Rats〉レーベルからデビューした4人組バンドです。そのPhum ViphuritやBenny Singsなどにも通じる爽やかなブルーアイドソウル〜ファンクポップ調の洒脱なサウンドが特徴。代表曲となっている“Orange Coffee”は、軽快なギターカッティングと甘いファルセットボーカルがこみ上げるPrince直系のファンクポップナンバーです。

〈TYP!CAL〉では同曲のリミックスを藤原ヒロシに依頼。原曲からBPMをぐっと落とし、ストリートソウルとして人気が再燃しつつある90年代グラウンドビート〜トリップホップ前夜を彷彿とさせるピアノダブ調のバージョンとなっています。オリジナルと同ミックスをカップリングした7インチは即完売となっており、手前味噌ですが、日本での彼らのPRに一役買えたかなと思っています。

今年9月には福岡で開催されたイベント『中洲ジャズ』に出演するために初来日。ほぼ初見であったであろう会場を大いに盛り上げるライブ巧者っぷりを発揮していました。すごくスキルフルというタイプではないのですが、朗らかなグルーブ感のある小気味のよい演奏と、ボーカルのマットの真摯でフレンドリーなキャラクターが滲み出るパフォーマンスで、親密なムードを醸成していきます。次回は東京で観たいです。


次世代ニューアイコンとして注目集める2人組

LANDOKMAI

LANDOKMAI:X(Twitter) / Instagram

僕は昨年にバンコクでもRocketmanの主宰したイベントに遊びに行かせていただいているのですが、そのときに出会ったのが、2組目に紹介するLANDOKMAI(ランドクマイ)のボーカルのウピム(Upim)でした。

■参考記事:TYP!CAL RECORDS 音楽交流記 at バンコク(note)

彼女はRocketmanの楽曲“Loved You Wrong”で歌唱しており、その日はゲストパフォーマンスに来ていたのです。楽屋で少し話す時間があり、日本のアーティストではLampや石橋英子がお気に入りと教えてくれたのが印象に残っていたこともあり、帰国後にLANDOKMAIのSpotifyをチェックして驚きました。え、めちゃくちゃ人気ある……。

実はちょうどその頃にリリースした“Blooming”という楽曲が、Spotifyで2,600万再生、YouTubeで3,000万再生を超えるバイラルヒットとなっており、現地でも正に次世代のニューアイコンとして一躍注目を集める存在となっていくタイミングだったのです。

LANDOKMAIは、Upim-Landokmai Sripasang(ウピム-ランドクマイ・スリパサン / Vo.)とAnt-Manassanan Kingkasem(アント-マナッサナン・キングカセム / Gt., Cho.)によるインディデュオ。アコースティックギターを基調にした簡素な演奏に、甘く透き通るような歌声がタイ語で囁く、ヴィンテージな質感のドリームポップサウンドを展開します。2月にリリースされたアルバム『All My Purple Feeling』は、今年のタイ・インディ作品の中でも屈指の名盤です。

〈TYP!CAL〉では、人気イラストレーター・旧都なぎによる短編アニメ『エフェメール』の挿入歌として制作されたTomgggの楽曲“magical moment”に、LANDOKMAIの2人をフィーチャリングするコラボレーションを企画。拙さも魅力の日本語歌唱とギターのアレンジを提供してくれました。


カラフルなポップサウンド展開する新鋭バンド

Daynim:X(Twitter) / Instagram

最後に紹介するのはまた少し毛色の異なる4人組バンド、Daynim(デニム)。2019年に大学の友人たちで結成された彼らは、Doja CatやPharrell Williams、The InternatといったR&Bやヒップホップの中でもカラフルでポップなサウンドから影響を受けており、DIYなアプローチは含めてアメリカのベッドルームポップ以降のアーティストたちとシンクロします。

当初はタイ・インディの老舗でPolycatなどを擁する名門〈Smallroom〉からデビューしており、〈TYP!CAL〉からは同レーベル在籍時の名曲“In Your Bad Day”の7インチをリリースさせていただきました。MVはアートスクールの学生っぽい奔放な青春のムードがパッケージされていて、彼らの魅力がよく伝わるかなと思います。

その後、彼らの共同プロデューサーでもあるYeezaの主宰する〈Yeezaamusic〉に移籍して独立した活動を展開中。昨年にリリースされたアルバム『PSSST!』ではより洗練されたサウンドを展開しており、今後の活躍も楽しみです。

今回は〈TYP!CAL〉と関わりのあるアーティストを中心にご紹介しましたが、タイのインディーズシーンではまだまだ多様でユニークな才能が待っています。SpotifyやYouTubeで彼らの音楽を検索してみると、関連アーティストも見つかるはずです。ぜひあなたのお気に入りを探してみてください!


【リリース情報】

Rocketman 『Orange Coffee』
Release Date:2021.08.13 (Fri.)
Label:TYP!CAL
Tracklist:
A. Orange Coffee
AA. Orange Coffee (slumbers mix)

※7インチレコード

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Tomggg 『éphémère』
Release Date:2024年12月上旬予定
Label:TYP!CAL
Tracklist:
A1. Tomggg, LANDOKMAI – magical moment 2584
B1. Waltz for Astrology – Opening –
B2. Waltz for Astrology – Ending –

※カセットテープ

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Daynim 『In Your Bad Day, EP』
Release Date:2024.01.31 (Wed.)
Label:TYP!CAL
Tracklist:
A1. In Your Bad Day, Pt. 1
B2. In Your Bad Day, Pt. 2

※7インチレコード

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TYP!CAL オフィシャルサイト


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