FEATURE

INTERVIEW | YONLAPA


「今、YONLAPAはすごく燃えている」──チェンマイから世界へ羽ばたく4人の現在地

2024.06.06

タイ第2の都市と呼ばれるチェンマイ発の4人組、YONLAPAが5月にジャパンツアーを開催した。

YONLAPAは元々SSWとして活動していたボーカル・Noi Naaを中心に2018年に結成された4人組。翌年末にMVが公開された“Let Me Go”のヒットなどで国内外からの注目を集めたほか、2020年にはShuhey Murata(Heso)が監督と務め、山本奈衣瑠が主演を務めた“Sweetest Cure”のMVが公開されるなど、早い段階からここ日本でも多くのリスナーを獲得し、すでに複数回のジャパンツアーおよび大型フェスへの出演も果たしている。

ノスタルジックなインディポップを主体としながらも、どこか欧米のそれとは距離感を感じさせる不思議な空気感を有したサウンドで、今回のツアーでも多くのファンを魅了した4人。本稿では東京公演の2日目終了後、急遽行われたインタビューをお届けする。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Interpreter:Mako Inoue
Header Photo by YONLAPA
Other Photo by BIG ROMANTIC RECORDS

L→R:Gun(Gt.), Noi Naa(Vo. / Gt.), Nawin(Ba.), Fewchy(Dr.)

新たな試みも取り入れた1stアルバム『Lingering Gloaming』

――本日のライブの感想からお聞きしてもいいですか?

Gun:1曲目からギターの弦が切れてビックリしました(笑)。

Noi Naa:セットリストに入れてなかった曲の中から、アコースティックでできる曲をその場で考えて2曲やりました。あとは日本語のMCで時間を持たせて……(笑)

――このようなトラブル対応には慣れていますか?

Fewchy:たまにありますね。演奏し始めてから曲順を間違えていたことに気づいたり。そういうときは途中で上手く誤魔化して、やり直します(笑)。

――今回の来日では2日間連続で東京公演を開催しましたが、それぞれで違いを感じましたか?

Gun:2日間ともお客さんのパワーがすごくて、とても嬉しかったです。違いはあまりよくわからないけど、2日とも盛り上がってくれて楽しかったです。

――去年リリースされた初のアルバム『Lingering Gloaming』についてお聞きしたいです。制作に際してコンセプトやテーマなどは考えていましたか?

Noi Naa:YONLAPAはこれまであまりビジネスとかに対して積極的ではなくて、マイペースに活動していたのですが、去年日本に来た際に、寺尾さん(※1)が「アルバムができたら、また日本でツアーやろう」って言ってくれて。「ヤバ! 絶対また日本に来たい!」っていう部分が最初のモチベーションになって、曲を作り始めました(笑)。

なので、コンセプトやテーマが最初からあったわけではないのですが、1曲1曲作っていくうちに徐々に共通項や全体的な雰囲気がみえてきました。

※1:寺尾ブッタ。Big Romantic Entertainment代表。

――『Lingering Gloaming』というタイトルは、どのようにして浮かんできたのでしょうか。

Noi Naa:このタイトルは太陽が落ちる前の、夕方でも夜でもない時間帯の雰囲気を表しています。アルバムに収録する曲をリストアップしてみて、何となくそういった雰囲気を感じました。

――たしかにアルバムには快晴の青空よりも、曇り空や黄昏どきなどが似合う印象です。それこそ少し陰りがある感じというか。なぜそういった曲が生まれてくるのだと思いますか?

Noi Naa:なんでだろう……。

Gun:でも、思い返せば曲を書くときはいつも夕方くらいじゃない? みんなが集まるのも夕方くらいだし、そういった環境が反映されているんじゃないかな。

Fewchy:いつもみんなでビールを飲みながら作ったりしてます(笑)。

Gun:本当はお昼くらいから集まってるんだけど、早い時間だと頭が冴えなくて(笑)。だから、何だかんだいつも制作のメインは夕方〜夜くらいの時間帯になっちゃうんです。

――制作プロセスや環境は何か変化しましたか?

Noi Naa:大まかな流れはこれまでと同じでした。最初、私がデモを作って、それをメンバーの家に集まってみんなに共有します。それから地元のスタジオで演奏してみて、ある程度固まってきたら最終的なレコーディングはバンコクで行います。

Fewchy:基本的に地元のスタジオで演奏を固めていくんだけど、今回は最終レコーディング中にアイディアを思いついたりして。その場で試したりもしました。

――アルバム制作において、何か新しいアイディアや挑戦を行ったことがあれば教えて下さい。

Gun:“My Apologies”という曲は最初、もっとBPMが早い曲だったんだけど、レコーディングのときにエンジニアが色々と思いつきでエディットしてくれて。それをみんなで聴いたら「いいじゃん!」ってなって、完成しました。バンドだけでは作れない曲だったという点で、新しいチャレンジだったし、アルバムの中でも少し特別な1曲になっていると思う。

Noi Naa:あと、アルバムの一番最後の“Come Back To Mine”は、実はNawinの曲なんです。彼がSoundCloudに昔UPしていたんですけど、私もずっと大好きな1曲だったので、「あの曲に歌詞を乗せていい?」って聞いて今の形になりました。だから、ライブで披露するときも2人だけで演奏しています。


「私たちはポップスターになりたいわけではない」

――先日、ライブ作品『LINGERING GLOAMING CONCERT』もリリースされました。これはどういったアイディアから実現したのでしょうか。

Noi Naa:ちょっとしたマーケティング戦略として、今年の頭くらいから考えていたアイディアなんです。あのコンサートは私たちの今年初めてのライブで、ちゃんとしたクオリティで音と映像を収録して、その中から特に良かった曲をYouTubeとストリーミングで配信しました。

――去年は1stアルバムのリリースに加え、日本を含むアジアツアーなども開催しました。様々な国や土地でライブを行うことで、バンドとして変化した部分はありますか?

Gun:一番大きな変化は、バンドのモチベーションですね。今、YONLAPAはすごく燃えています。色々な国、土地、会場でライブをする度に、毎回のようにチャレンジがあるし、自分たちの楽曲もどんどんアレンジしてよりいいパフォーマンスをできるように試行錯誤しています。今回のアルバムも、今後はより大きな会場でライブできるようになるかもしれないって思いながら作っていました。それもバンドにとって大きな変化のひとつだと思います。

――先ほど、あまり「ビジネスには積極的ではない」とおっしゃっていましたが、その一方でバンドを取り巻く環境、活動の規模はどんどん大きくなっている気がします。その辺りのバランス感覚については、どのように考えていますか?

Noi Naa:自分たちの好きなことをやっているから、ハードスケジュールでも気になりません。売れるからといって自分たちのやりたくない曲、歌いたくない曲をやってたら耐えられないかも(笑)。

曲を作るときも「こういう曲が流行ってる」とかマーケティング的な要素は全く気にしないで、自分たちの好きな音楽だけを追求しています。

Gun:僕らがやっているのはアートだから、まず自己表現として自分たちの作品を作る。どうやって広めるかとか、そういうことはその後に考えるべきだと思います。

Noi Naa:私たちはポップスターになりたいわけではなくて、アーティストであるべきなんです。なので、自分たちの納得のいく作品を作ることができれば、結果は後から付いてくるのかなって思います。

――今後バンドとしてやってみたいことはありますか?

Noi Naa:今回のツアーが終わったら、早速新しい作品の制作に入りたいと考えています。1stアルバムとは異なるテイストの曲とか、もっと新しいチャレンジもしてみたい。

Gun:新しいアルバムを作りたいですね。バンドでできることはそれくらいしかないから(笑)。

Nawin:誰も想像できないような、新しい感じの曲を作りたいです。もっとフリーダムに、制約などを設けずに。メンバー4人とも音楽の好みが違うので、それぞれの個性が混ざりあった作品にしたい。

Fewchy:基本的に僕らはその時々のフィーリングで曲を作ってるから、自分たちでもどういう作品ができるかわからないんです。だから、ファンの方と同じように、僕も次の作品がどのような内容になるのか、楽しみにしています(笑)。

――YONLAPAは2022年の初来日以来、毎年日本を訪れています。お気に入りのスポットなどはありますか?

Nawin:去年、野外フェス『EPOCHS』で行った軽井沢が特に印象に残ってる。少し寒かったけど(笑)、自然豊かな環境が素晴らしかった。

Gun:ツアーの途中で寄った京都が気に入りました。東京や大阪と少し違って、ゆったりとした時間が流れているというか。僕たちの地元・チェンマイにも似た雰囲気があると思います。

Noi Naa:去年、バンドでジャパンツアーを行う前に、ソロでの出演があったので私だけ先に日本に来ていたんです。そのとき、直島(香川県)を訪れたんですけど、現代アートや素晴らしい建築を見ることができて嬉しかったです。これまで体感してきたものとはまた異なる、日本のもうひとつの魅力が感じられた気がします。今度はバンドメンバー全員で行きたいですね。

Fewchy:僕は大阪がお気に入りです。実は今回のツアー前にも、個人的に大阪を訪れたんです。大阪の人々はとてもフレンドリーですよね。あと、日本の方はすごく規範的な印象があったんですけど、大阪の方はたまにルールからはみ出している気がする(笑)。この前も歩道を歩いてたらバイクが入ってきたんだけど、そういうところもすごく人間味があるなって思うし、どことなくタイと似ている気がします。

Gun:やっぱり回答し直したい(笑)。日本はどこでも大好きです。東京、大阪それぞれ異なる魅力があるし、これから行く予定の福岡も楽しみです。

――Noi NaaさんはSTUTSさんとのコラボ曲を発表していますし、バンドとしても多くの日本のアーティストとステージを共にしてきたと思います。今後、共演してみたいアーティストやバンドはいますか?

Noi Naa:DYGL、No Busesともう一度共演したい。

Gun:去年の『EPOCHS』で一緒だったyonawoと共演したいな。

Nawin:青葉市子さんとEGO-WRAPPIN’。この後、福岡のフェス『CIRCLE』で一緒になるので、すごく楽しみです。青葉市子さんはいつだったか忘れたけど、自然の中で演奏している動画をオンライン上で観てファンになりました。あと、僕は以前レゲエバンドをやっていたんだけど、EGO-WRAPPIN’とはルーツが似ている気がしていて。すごくシンパシーを感じます。

Fewchy:共演……とまでは行かなくても、Corneliusのライブを観てみたいです。実は前回のツアーで大阪でライブをしたとき、Corneliusのギターの方が観に来てくれて、終わった後に「とてもよかったです」って声を掛けてくれたんです。Corneliusのライブが大阪であったらしくて、たまたま寄ってくれたみたいなんだけど。だから、いつか一緒にできたらいいなって(笑)。


【リリース情報】


YONLAPA 『Lingering Gloaming Concert』
Release Date:2024.05.10 (Fri.)
Label:YONLAPA
Tracklist:
1. Why Why Why (Live)
2. I’m Just Like That (Live)
3. Sail Away ,Away (Live)
4. My Apologies (Live)
5. Stay (Live)
6. On My Own (Live)

==


YONLAPA 『Lingering Gloaming』
Release Date:2023.08.17 (Thu.)
Label:YONLAPA
Tracklist:
01. I don’t recognize you
02. Insomnia
03. On My Own
04. Sunday Gloaming
05. Oneway Ticket
06. I’m Just Like That
07. Sail away, away
08. Is that True?
09. Hers
10. My Apologies
11. Come Back To Mine

■YONLAPA:X(Twitter) / Instagram


Spincoaster SNS