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INTERVIEW | Ovall


遠くにある光の方へ──5thアルバムに見る3人の距離感とグラデーション

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2026.06.04

Ovallが5作目のアルバム『Glimmer』を5月27日(水)にリリースした。

先行配信された『Glimmer 〜Ray of Light〜』では開かれた「光」の表情を提示し、フルアルバムではその奥にある「影」や静けさまでを含む、なだらかなグラデーションを描き出した。Shingo Suzuki、関口シンゴ、mabanuaがそれぞれの活動を並走させながら持ち寄った楽曲は、どのようにして今のOvallの音になったのか。制作の背景、KIKIやNenashiとのコラボレーション、そして3人全員がプロデューサーであるバンドならではの関係性について聞いた。

Text by Takanori Kuroda
Photo by Sachiko Yamada (origami PRODUCTIONS)

L→R:Shingo Suzuki(Ba., Cho.), mabanua(Dr., Vo.), 関口シンゴ(Gt., Cho.)

「遠くにある光の方へそれぞれ歩いていく」──変化する3人の距離感

――ニューアルバム『Glimmer』を聴かせていただいて、すごく深い作品だと感じました。資料には「“光”を感じさせる眩いサウンドと、“影”を映し出す内省的なサウンドへと自然に分かれていった」とありますが、実際にはくっきりと二分されているというより、なだらかなグラデーションのある作品だなと。

Shingo Suzuki:まず今回は、期間を決めて「いつまでに作ろう」という感じで進めていったわけではなく、メンバーとスタッフの間で、「作れるときに作っていこう」というマインドを共有しながら進めていった作品だったんです。もちろん、それぞれの活動をしながらバンドも続けていこうという共通認識はありましたが、かなり自由に作らせてもらった感覚がありますね。

なので、「この曲は明るくしよう」とか「次は暗い曲にしなきゃいけない」といった意図も、実はまったくありませんでした。その時々に出てきたアイデアをそれぞれ形にしていった結果、明るめの曲からダークなトーンの曲まで、おっしゃるようにグラデーションのある楽曲が揃っていったという感じですね。

――前作『Still Water』以降、それぞれが締め切りに縛られずに作っていたものが集まっていったと。その間、みなさんのモードはどんな感じだったのでしょうか。

Shingo Suzuki:僕個人としては、前作『Still Water』を作ってから、時間がすごく目まぐるしく過ぎていった印象があります。自分のソロ活動もあるし、外部アーティストのプロデュースやアレンジもある。そのうえでOvallもあるので、気持ちの置き場がそれぞれ違うんですよね。全部を3等分するというより、どれにも100パーセントで向き合いたい気持ちがある。100パー、100パー、100パーでぐるぐる回っているうちに、「もうこんな時期になったんだ」と感じることもありました。

今回『Glimmer』に入った僕の曲“Dirty Paws”、“99”、“Velvet Dusk”、“Needed”、“Shimmer”は、どれも最初からOvall用に作ったわけではないものが多いんです。自分のソロになるかもしれないし、例えばヒップホップアーティストへの提供トラックになるかもしれない。そういう状態で作っていたものを、「これはOvallにもハマるんじゃないか」と思って、デモの段階でOvall側にシフトさせていった曲が集まっています。

Shingo Suzuki

関口シンゴ:Ovallの曲作りって、やっぱり他のバンドとは少し違うと思うんです。最初からそれぞれがプロデューサーであり、自分のソロ活動もある。その中で3人の距離感をどう保っていくのがいいのかは、いつも考えるところなんですけど、最近は無理に合わせようとしなくても、遠くにある光の方へそれぞれ歩いていく、くらいの距離感で進められるようになってきた気がしています。

今回、僕が作った“Telephone feat. Nenashi”と“Navy”は、もともと自分がSNSにアップしていたものが元になっています。それをOvallのサウンドでやってみたらおもしろいんじゃないかと。“Brainstorm”は、今の5人編成のライブでより映える曲をやってみたいと思って作った曲ですね。

mabanua:今回、健全だと思うのは、できたものに対して後からテーマやアルバムのカラーを見出していったことです。最初からテーマやタイトルを決めて作ろうとするのではなく、聴いてもらったものがすべてというか。最終的に聴いた人が「タイトル通りだな」とか「インタビューで話していたこととつながるな」と感じてくれるのが一番いいと思っていて。そういう意味では、こういうインタビューもアルバムと結びついて、意味のあるものになっていくんじゃないかと思います。

Ovallって、メンバーそれぞれがいろいろな活動をしている中のひとつでもあるんですよね。だからこそ、いろんなことをやりながらも他のバンドやアーティストと対等に渡り合えるクオリティを担保していかなければいけない。そういう意味でも、今回は“Bloom feat. KIKI”1曲に力を込めた感覚があります。

――“Bloom”でコラボしたKIKIは、以前からmabanuaさんが気になっていたバンドだったそうですね。

mabanua:最初はYouTubeか何かで知ったと思うんですけど、アートワークや作品、メンバーの佇まいも含めて、すごくブランディングされたバンドだなと思ったんです。そこからタイの音楽シーンをいろいろ聴いてみたら、想像していた以上に洗練された音楽がたくさんあったんですよね。若いアーティストたちも、タイトなビートの音楽をやっている人が多くて。その中でもKIKIは、自分の中で突出した存在でした。

その後、〈origami PRODUCTIONS〉全体でタイにライブをしに行ったとき(レーベルイベント『origami SAI 2024 Live in BANGKOK』)、KIKIのボーカルのHelenが、僕のソロアルバムにコメントをくれたんです。「この曲が好きだ」と言ってくれて、それがすごく嬉しかった。そこから「一緒に作れないかな」と思っていたところに、今回Ovallでコラボしたらいいんじゃないかという案が出て、実現しました。


「煌めきというより、ちょっとした兆し」

――リード曲の“Needed”は、アルバム後半のディープな部分を象徴する曲のように感じました。Suzukiさんご自身は、どういうところから出てきた曲だと思いますか?

Shingo Suzuki:曲としては、いわゆるOvallフォーマットというか、“Take U to Somewhere”から続く自分の定番のコード感を使っています。ただ、今回は特に歌詞に力を入れましたね。曲調としてはダークな印象もあるんですが、歌詞の内容はすごくプライベートで、自分の家族のことも反映されています。

Shingo Suzuki:“Needed”の中には、アルバムタイトルでもある「glimmer」という言葉が出てくるんですけど、これは煌めきというより、ちょっとした兆しとか、「あれ、なんか良くなるかもしれない」という感覚に近いんです。小さな子どもと一緒に寝ていて、朝早く目が覚めたときに窓から明け方の光が差し込んでくる。そのときに「ああ、朝だな。ちょっと幸せだな」と感じるような。決して暗い意味合いではなく、日常のすごくプライベートな場面から、明るさや兆しが見えてくるような内容になっています。

――情景を描写した抽象的な歌詞だと思ったのですが、実際にはかなりパーソナルなところから出てきた言葉だったのですね。

Shingo Suzuki:例えば「Beating, seeking this ceiling, by your side」という一節は、子どもが横で寝ていて、その気配が聞こえるようなイメージなんです。「Bread is baking」という言葉も、音としておもしろいですし、パンが焼けているという幸せな意味もある。そういう遊びも含めて、楽しみながら作りました。

――「glimmer」という言葉には、明るい場所にいるというより、少し暗いところから見える兆しのようなニュアンスも感じました。

Shingo Suzuki:確かに、ドラマティックに捉えるなら、そういうことでもあると思います。聴く人それぞれが自分自身に当てはめる「glimmer」であっていいんじゃないかなと考えていますね。

音楽的には、ヒップホップで用いられるような韻の踏み方も意識しました。「-ing」で続けていったり、少し造語を入れたり。僕自身、そんなに歌詞を書くタイプではないので、今回はしっかりチャレンジした感覚があります。それをmabanuaがすんなりいい感じに歌ってくれて、「ああ、いいな。ありがとう」という感じでしたね(笑)。自分の中でもアップデートを実感できた曲になったと思います。

――「今の5人編成のライブでより映える曲」と先ほどおっしゃっていたように、“Brainstorm”はリズムが強く、ライブで映えそうです。

関口シンゴ:ダンサブルな曲をやりたいと思ったんです。自分がOvallに曲を持っていくときは、どうしても少し緩いというか、チルいテンポ感の曲が多くなりがちだったので、今回は4つ打ちで踊れるけれど、Ovallらしいエッジも効いている曲にしたいなと。

ただ、最初から100パーセント「バンド」を想定して作ったわけではありません。(ライブサポートも務める)別所(和洋)くんがこういう感じで入って、ナッツ(村岡夏彦)さんがシンセを弾いて、というイメージはありましたけど、それは全体の3、4割くらい。あとは曲のイメージを広げながら、行きたいところに向かって作っていきました。

関口シンゴ

関口シンゴ:デモはほぼ作り込んだ状態で、ドラムとベースを2人に差し替えてもらっています。この流れは、ここ何作かのOvallでやっていることでもあって。自分で打ち込みをしたり、ベースを弾いたりしてデモを作るんですけど、やっぱり2人に入れ直してもらったほうが、グッと良くなるんですよね。予想以上のものが返ってくる。それを期待して渡したんですけど、今回もさらに期待を超えてきて。2人の音が入った瞬間に、「あ、これは完全にOvallだな」と実感しました。

Shingo Suzuki:ちなみに“Navy”ではナッツさんが、“Dirty Paws”では別所くんが参加してくれました。一方で“Needed”は、ドラムを打ち込みのままにしているんです。Ovallではmabanuaに生ドラムを叩いてもらうことも多いんですけど、この曲ではあえてデモの打ち込みを残しています。僕が歌詞とトラックを作って、mabanuaが歌い、関口シンゴにOvallらしい色のギターを散りばめてもらった感じです。でき上がってみると、どちらもOvallになっている。そこがおもしろいですね。

――“Telephone”はNenashiさんの歌が入ったことで、独特のポップネスが出ていますね。

関口シンゴ:最初は歌詞だけをNenashiに書いてもらおうと思っていたんです。でも彼が発音も含めて、自分で歌ったデモを返してくれて。それを聴いたら、もうそのまま歌ってほしいなと(笑)。Nenashiのオリジナル曲は、もっとエッジが効いていて、タイトでリズミックな印象がありますけど、この曲では少し力が抜けている。それもすごく魅力的だと思いました。

最初にiPhoneで打ち込みを作ったので、デモタイトルは“iPhone Beat”だったんです。でもそのままだとまずいので(笑)、“Telephone”にして。そこからNenashiがイメージを膨らませてくれて、少し会っていない相手に「元気?」と電話するような雰囲気の歌詞になっていきました。電話しているようなセリフも、お互いにアイデアを出し合いながら入れていったので、自然に世界観ができていった曲です。

mabanua:“Telephone”は、キックだけ打ち込みにしていたりしますね。“Telephone”や“Brainstorm”は、そういうハイブリッドな手法を取っています。ハットだけ生だったり、スネアだけ打ち込みだったり、細かいところは曲によって違います。生ドラムでは再現できない音の立ち上がりや減衰の仕方があるので、そこを踏まえて音色を選ぶ。外で得たプロデュースのノウハウや刺激を、Ovallに持ち込んでいる感覚もあります。

関口シンゴ:“Brainstorm”や“Telephone”は一応僕が持ってきた曲なので、僕がプロデュースする形にはなるんですけど、2人とも曲を俯瞰して見たうえで、自分がどういうドラムやベースのアプローチをするかを考えているんです。そういうプロデューサー的な視点が3つあって、しかもそのバランス感覚がすごくいい。以前は「Ovallらしさ」みたいなことをよく考えていたし、こういうインタビューでもお話しさせていただいていたと思うんですけど、最近はもう特に何も考えなくても、普通に作れば自然とOvallらしいものが出てくるところまで来たのかなと感じていますね。

mabanua

「Ovallは少し斜め上にチャレンジしていける場所」

――近年は『FUJI ROCK FESTIVAL』への出演や、大阪・関西万博の開会式パフォーマンス楽曲への参加もありました。そうした経験は、Ovallにどのように作用していますか?

Shingo Suzuki:万博の曲は、いろんな人が関わる中で、Ovallがどこにフィットするのかを探しながら作っていきました。プロデューサーの方がいて、和太鼓や沖縄の民謡、エイサーの歌に対してOvallのサウンドを入れ込んでいく形だったので、かなり「ザ・プロデュース」という感じでしたね。大きなステージに関われたことも含めて、本当にいい経験をさせてもらったと思います。

mabanua:いろんな機会をいただいて、これまでやってこなかったことにチャレンジするたび、「こういうこともOvallでできるんだ」と実感することもあれば、難しいなと思うことも過去にはありました。そういうトライアンドエラーを繰り返してきたのがOvallだし、〈origami PRODUCTIONS〉でもあると思うんです。自分たちの音楽がどこで誰に聴かれているかはわからない。だからOvallの作品であっても、そうでなくても、チャレンジしていかないといけない。そういう緊張感は常にありますね。

――『Glimmer』の曲たちは、ライブでどのように育っていきそうですか?

Shingo Suzuki:かなり変わっていくと思いますね。もともとトラックとして作った曲も多いですけど、Ovallはライブで演奏することで曲の姿が変わっていくバンドなので。特に5人編成でやると、別所くんやナッツさんの音も入って、また違う色になりますよね。

関口シンゴ:“Brainstorm”はまさにそうで、5人で演奏して初めて見える景色がある曲だと思います。音源では作り込んでいるけど、ライブではもっと肉体的になる。その変化はすごく楽しみですね。

mabanua:音源で完結しているように見える曲も、ライブでやると別の表情が出ると思います。Ovallは3人だけで完結するバンドでありつつ、サポートメンバーや現場の空気によって広がっていくところもある。『Glimmer』の曲も、これからそうやって育っていくんじゃないかなと思います。

――『Glimmer』を経て、Ovallというバンドはこの先どこへ向かっていくのでしょうか。

関口シンゴ:今回のアルバムは、最初にもお話した通り3人がそれぞれ違う方向を向いているようで、実は遠くにある同じ光を見ているような作品になった気がしています。無理にひとつになるのではなく、それぞれ自由に歩いているけれど、お互いの姿は見えている。その距離感が、今のOvallには合っているのかなと思います。

Shingo Suzuki:これからも、自然に新しくなっていく感じだと思います。何かを無理に変えようとするのではなく、それぞれが自分のペースで音楽を作って、またOvallに持ち寄る。その繰り返しの中で、気づけばアップデートされている。『Glimmer』は、その今の状態がよく出たアルバムだと思います。

mabanua:Ovallは、何かひとつの形に固まるよりも、少し斜め上にチャレンジしていける場所であり続けた方がいいと思っています。今作にも、そういう自由さと緊張感の両方があった。これからも、そのバランスを保ちながら進んでいくんじゃないかなと思います。


【リリース情報】


Ovall『Glimmer』
Release Date:2026.05.27 (Wed.)
Label:origami PRODUCTIONS
Tracklist:
1. Navy
2. Telephone feat. Nenashi
3. Bloom feat. KIKI
4. Brainstorm
5. Dirty Paws
6. 99
7. Velvet Dusk
8. Needed
9. Shimmer

配信/購入リンク


【イベント情報】


『Ovall New Album Release Tour “Glimmer TOUR 2026”』
2026年10月3日(土)北海道・札幌近松
2026年10月9日(金)福岡 INSA
2026年10月29日(木)大阪・心斎橋 Music Club JANUS
2026年10月30日(金)愛知・名古屋 ell.FITS ALL
2026年11月27日(金)東京・渋谷 Spotify O-EAST

◾️チケット詳細

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