FEATURE

REPORT | Ovall “Still Water” Release Tour 2024


18年間音を重ねてきた音楽集団の「底力」。仲間や観客と作り上げた集大成的一夜

PR
2024.11.05

Text by Takanori Kuroda
Photo by Sachiko Yamada (origami PRODUCTIONS)

今年6月におよそ4年半ぶり、通算4作目のアルバム『Still Water』をリリースした3人組バンド・Ovallが、本作を引っ提げた全国ツアー『Ovall “Still Water” Release Tour 2024』の最終公演を10月20日(日)、東京・恵比寿LIQUIDROOMで行った。

今年で結成18周年を迎えるOvall。まずは、その軌跡を振り返るためメンバー3人で縁の地を訪れたムービーが、ステージ後方に映し出される。歴代のアー写や結成当時のレコーディング風景など、懐かしい映像に胸を熱くしていると、Shingo Suzuki(Ba.)、mabanua(Dr.)、関口シンゴ(Gt.)がサポートメンバーのナッツこと村岡夏彦(Key.)、別所和洋(Key.)の2人と共に姿を表した。ステージ中央にSuzukiが立ち、彼を挟むように向かって左が関ロ、右がmabanuaというフォーメーション。そして後方には村岡と別所が、Suzuki曰く「まるで右大臣、左大臣」のようにシンメトリーに並び、フロアから大きな歓声が上がるなか、まずは新作『Still Water』から“Neon”でこの日のライブはスタートした。

mabanuaが叩き出すタイトなリズムと地を這うようなSuzukiのベース、そして軽やかにかき鳴らされる関ロのワウギターが有機的に混じり合う。続く“I Need Your Music”は、2010年リリースの1st『DON’T CARE WHO KNOWS THAT』収録曲。フュージョンとビートミュージックを融合した鉄壁のアンサンブルを従え、まるでシルクのように滑らかで、倍音をたっぷり含んだmabanuaの豊かなボーカルが会場に響き渡った。

ドラムとベースによるイントロが流れ出した途端、フロアが湧き立ったのはネオソウル風味の“Winter Lights”。mabanuaのファルセットボイスにうっとりしていると、次第に熱を帯びていくアンサンブルに体が自然と揺れ出す。エンディングでは関口による、まるで獣の咆哮のようなギターソロが宙を切り裂き会場は大きな拍手と歓声に包まれた。

「早速ですが、ここで盟友を紹介してもいいですか?」とSuzuki。登場したのは類家心平。「最初のムービーにも出てきた渋谷のPLUG(今は跡地)で、トランペットをブイブイ吹いていたのが彼です。ものすごくジャンルレスな音楽性に俺はすごく憧れて、それから何度も共演してきたけど今、ここで一緒にステージに立てて光栄です」と紹介し、“Peanuts”を披露した。予測不能でありながら歌心も感じさせる、類家の自由奔放なソロにオーディエンスは狂喜乱舞。それを受け関ロが情熱的なギターソロで応戦すると、会場はこの日最初のピークに達した。

「1曲じゃ帰れないよね?」そうSuzukiが言って、むせび泣くようなブルースソロを関ロが披露しそのまま“Secret Time”へ。抑揚をグッと抑えた青白い炎のようなアンサンブルが、聴き手の高揚感をよりかき立てた。

「2人目のゲストを紹介していいですか?」とSuzukiが言い、シンガーのさらさが登場。新作『Still Water』に収録された、彼女とのコラボ曲“影”を披露した。さらさのアンニュイな歌声が、まるでアンサンブルの一部のように5人の演奏と溶け合いながら進んでいく。エンディングに向けてギターとドラムが荒れ狂い、それでもキープし続けるSuzukiのベースとさらさのウィスパーボイス、そのコントラストが一層際立ち聴く者を引き込んでいく。重厚な演奏と繊細な歌声が見事に絡み合う瞬間に、フロア全体が息を呑むようだった。

続いて今年9月にリリースされた、さらさの2ndアルバム『Golden Child』から“リズム”をこの編成で演奏。Sly & the Family Stoneの“Family Affair”を彷彿とさせる密室的なファンクと、神秘的かつ官能的なさらさのボーカルに酔いしれた。

さらさ

「いつもは僕らだけで歌っているけど、今日はリキッドのみんなも一緒に歌ってくれますか?」とSuzukiが呼びかけ、中盤のスキャットをシンガロングした“Supalover”、レイドバックしたリズムが心地よい“Stargazer”と続けた後、「ここからはちょっとストイックに演奏します」とSuzukiが言って、スピリチュアルな彼のベースソロ、mabanuaによるシンプルかつグルーヴ感たっぷりのドラムソロを挟んで、“Rush Current”をディープに演奏した。

「今日は大盛りでいっていいですか?」そうSuzukiが叫んでNenashiを呼び込み、ライブ後半は彼の暖かなボーカルが映える“Find you in the dark”、サビを全員で練習した後“Cubism”で再び一体感に包まれ、ヘヴィなジャズファンクチューン“It’s all about you”で本編を終了。アンコールでは、「きっとみんなこれ聴きたいんじゃないかな」とSuzukiが言い、別所のエレピと村岡のオルガンがバトルを繰り広げる“La Flamme”で一気に盛り上がった後、1stアルバム冒頭を飾る“Take U to Somewhere”を披露。YouTube企画の伏線を回収するかのごとく原点回帰し、この日のライブに幕を下ろした。

Nenashi

第一線で活躍し現在の音楽シーンを牽引する重要なアーティストたちを、数多くプロデュースする音楽集団・Ovall。観客を巻き込むパフォーマンスでエンターテイメントとして間口を広げつつ、確かな演奏力でその「底力」を見せつける密度の濃い一夜だった。

Setlist
1. Neon
2. I Need Your Music
3. Winter Lights
4. Peanuts(w/ 類家心平)
5. Secret Time(w/ 類家心平)
6. 影 feat. さらさ
7. リズム(w/ さらさ)
8. Supalover
9. Stargazer
10. Smoke
11. Meaning of Love
12. Rush Current
13. Find you in the dark feat. Nenashi
14. Cubism(w/ Nenashi)
15. It’s all about you feat. SIRUP(w/ Nenashi)
[Encore]
16. La Flamme
17. Take U to Somewhere


【イベント情報】


『Ovall “Still Water” Release Tour 2024』
2024年8月23日(金) at 愛知・名古屋 UPSET
2024年8月24日(土) at 大阪・梅田 BananaHall
2024年9月25日(水) at 福岡 BEAT STATION
2024年10月2日(水) at 北海道・札幌 SPiCE
2024年10月20日(日) at 東京・恵比寿 LIQUIDROO

主催/制作:origami PRODUCTIONS / SMASH


【リリース情報】


Ovall 『Still Water』(LP)
Release Date:2024.11.03 (Sun.)
Label:origami PRODUCTIONS
Tracklist:
A1. Cubism
A2. It’s all about you feat. SIRUP
A3. Peanuts
A4. Neon
B1. 影 feat. さらさ
B2. Smoke
B3. Find you in the dark feat. Nenashi
B4. Joker

※国内盤LP

購入リンク

==


Ovall 『Still Water』
Release Date:2024.06.26 (Wed.)
Label:origami PRODUCTIONS
Tracklist:
1. Cubism
2. It’s all about you feat. SIRUP
3. Peanuts
4. Neon
5. 影 feat. さらさ
6. Smoke
7. Find you in the dark feat. Nenashi
8. Joker

※CD、デジタル

配信/CD購入リンク

origami PRODUCTIONS オフィシャルサイト


Spincoaster SNS