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REPORT | TOKYO PLAYGROUND #2


タイからKIKIが来日、国境やジャンルを越えた交流を促すフリーイベント第2弾

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2025.10.30

早くも2回目の開催だ。「音楽とカルチャーが交差する新たな遊び場」を掲げる音楽イベント『TOKYO PLAYGROUND』。記念すべき第1回目から3ヶ月のスパンで、9月27日(土)に再び新宿の地に戻ってきた。まず、何よりの魅力はそのふらっと遊びに行ける気軽さだろう。場所は前回に引き続き東急歌舞伎町タワー「KABUKICHO TOWER STAGE」。休日に都心の真ん中でエントランスフリーという粋な条件で、国内外の気鋭のアーティストが複数出演する。国境やジャンルの垣根を越えて、新たな音楽とカジュアルに出会えるイベントだ。

異種格闘技戦のような第1回に比べると、今回はブラックミュージックをルーツに持つバンドやシンガーが多く、比較的近しい音楽性が集まったラインナップだったと言えるだろう。タイからはこの日のトリを任されたKIKIを招聘。日系アメリカ人のオルタナティブR&Bアーティスト・Camp Konaに加え、国内からはBillyrrom、S.A.R.、luvis、松澤在音の4組が名を連ねた。

Text by Ryutaro Kuroda
Photo by Rintaro Miyawaki


  松澤在音

ほのぼのとした晴れ。10月が目前に迫る中、ようやく穏やかな気候に変わってきてたのが嬉しい。最初に登場したのは『TOKYO PLAYGROUND #Audition
』を勝ち抜いた松澤在音である。まず目を引くのがアフロヘア、そして快活な気質だ。「存在の『在』に音楽の『音』で松澤在音です!」という挨拶を済ませ、小気味良いアフロファンク“Shooooo”でライブがスタート。もちろん、そのエネルギッシュで飾らないキャラクターは力強い音楽性にも反映されている。

狭いステージに7人で立ち、ボンゴを叩きながら伸び伸びとした声を響かせる“Shooooo”は、開放感のある野外の空間にピッタリである。サイケデリックでグルーヴィな“Dreaming”は、坂本慎太郎からの影響を陽性のヴァイブスで変容させたようなソウルで気持ちがいい。曲を終える毎に「松澤在音です!」とアピールする姿勢にも好感が持てる。

ミステリアスな音色とファンキーなサウンドに気持ちがアガる“Road”から、ブイブイと腰を揺らすベースに牽引される新曲“KAMAWANA”、そして彼の1stシングル“好きにすれば”をソウルフルに歌って終演。力は入っているが気負ってはいない、情熱的だが軽やかさもある。一度楽曲に火がつけば、そのキャラクターごと愛されそうな予感がするシンガーだ。


  Camp Kona

前触れもなくCamp Konaのライブが始まった。彼女はひとりでステージに立ち、同期させた音に乗せてうっとりするような歌を聴かせていく。リズミカルな歌唱に心が躍る“Person I Love”、ドラムンベースからの影響を感じる強い低音が印象的な“Everything”と、8月にリリースされたデビューEP『Everything』からの楽曲が続く。曲が終わると「こんにちは〜」とくだけた雰囲気に変わるが、歌っているときの声には独特の香気があって引き込まれる。

「踊ってもいいよ」と告げて“Second Tattoo”。ゆったりとしたダンスチューンで、どことなく幻想的なニュアンスのある楽曲である。日本詞と英詞をスムースに行き来する“Rely On”から、スタイリッシュだがどこか憂いを感じさせるボーカルの“Crutch”へ。曲を終えたところでビルの隙間からパッと陽が差したのが印象的で、次曲“Soft”により温かなニュアンスを与えていたように思う。この曲の甘やかで柔らかく、心を解きほぐすような歌声は彼女の楽曲の中でも特に魅力的だ。活動の拠点をロサンゼルスから東京に移したことを発表しているCamp Kona。これから日本でのファン拡大を期待したい。


  luvis

3組目に登場したのは京都出身のSSW/プロデューサー・luvisである。まず身のこなしがいい。若いながらに泰然自若というか、リラックスした空気が波のようにお客さんへと流れていくような印象を受ける。まさにそよ風のように気持ちのいいライブ──というか、そよ風そのものみたいな声である。まろやかで、瑞々しく、聴いているだけで心が軽くなるのだ。

シティポップ風味の“Linda”は包み込むようなボーカルと、柔らかいタッチのドラムがすこぶるいい。未発表曲“gimme!”はluvis流のニューウェイブ? ソリッドで躍動感のあるサウンドはもちろん、《gimme! gimme! gimme!》というオーディエンスを巻き込むコーラスで一気に気勢を上げていく。リリース間もない新曲“Oh”も爽快な空気を連れてくるポップチューンで、なんとも晴れやかな空間が生まれていたように思う。最後は疾走感と甘やかさが同居するスウィートなロックチューン“Higher”。草原を駆け抜けていくような心地いい上音に比して、ベースにはドシンと響く重心の低さがあっておもしろい。

それにしても、この溌剌としたスタイルである。luvisは転げ回りながらギターを弾き、寝っ転がりながら両手でピースを掲げていた。


  S.A.R.

S.A.R.の演奏からは練達を感じる。それはもう1曲目の“Strawberry Fields”だけで十分、とにかくドラムが気持ちよすぎて音だけで酔っ払いそうなのだ。自身らを「オルタナティブクルー」と称し、ソウルやヒップホップ、R&Bやジャズをミックスする彼らの魅力は、何においてもそのアンサンブルにある。

続く“Clouds”では恍惚とした鍵盤に一層意識が持っていかれた。腰をすっと撫でるようなキメ細やかなベースも魅力的。スロウだが覚醒感があり、抑えた音数からはこのバンドの気品と技術を感じるはずだ。コンテンポラリーゴスペルからの影響を感じる“Uptown”を演奏している頃には陽が沈み始め、秋風と一緒にゆらゆらとオーディエンスが揺れているのは気持ちのいい景色である。MCはほとんどなし。無駄口を叩かずどんどん曲を繋いでいく。

中盤は“Pool”、“Kaminari”と酩酊感のある楽曲が続き、トドメのように“Back to Wild”へ。これはもう催眠的なグルーヴというか、ねじれるような鍵盤の音と原曲よりもバイオレンスなギターにやられてしまってどうしようもない。最後は“Cannonball”からCurtis Mayfieldの“Move On Up”をカバーし終演。来春にアルバムリリースを控えていることもあり、これからグングンと支持を広げていくのではないだろうか。


  Billyrrom

町田出身の6人組、Billyrromは今まさに脂が乗っている時期だろう。ソウル、ファンク、ロックをブレンドした音楽性で活躍の場を広げている彼らは、日に日にタフなライブバンドへと成長している。《気にせずに踊れ》と歌う“Defunk”は、近未来感のある鍵盤が怪しい魅力を振りまくファンクナンバー。のっけから凄い熱気……と感心していると、「歌舞伎町をディスコにしようぜ」と告げて“Once Upon a Night”へ。開放感のあるディスコファンクは野外にうってつけ、潤いを感じさせるMolのファルセットも風に乗って気持ちがいい。

「僕らに出会ってくれて、少しでも皆さんの人生が豊かになってくれたら嬉しいです。そんな皆さんに花を贈ります」というMCから“Soulbloom”。切なくも狂おしいエレクトロソウルで、ボーカルは他のどの曲よりも優しく、そして色っぽい。気づけば空は真っ暗になっており、“Funky Lovely Girl”で華やかな夜を演出していく。サビの表題フレーズは誰でも歌えるキャッチーさがあり、早速コーラスと手拍子が起きている。

で、最後に好き放題やったのが“Magnet”である。熱量の高いファンクソングであるこの曲は、彼らの野生的な側面がよく出た曲と言えるだろう。短いながらも今のバンドの勢いを感じさせるステージだった。


  KIKI

あっという間に最後のアクトである。サポートを含む7人編成で臨んだタイのエレクトロポップバンド、KIKIがきっちりとライブ巧者ぶりを見せていく。端的に言って彼らのステージは華やかだ。妖艶なディスコ“BABY”で始まったライブは、音楽性はそのままに、一層色めく“GET UP”へと繋がっていく。時にエキゾチック、時にキッチュ、時にスペイシー――音源で聴くよりもシンセサイザーの音色が多彩なことが、耳を引きつける理由だろうか。

ダンスミュージックに接近したと思しき“LISUR”から“OYSTER”辺りが特にカッコいい。後者はむっちりしたベースとドラムで聴かせるスペースサイケとでも言おうか、夜空の下で踊るにはもってこいの1曲である。幾度か挟まるジャムセッションでは、Bossがギターと鍵盤を弾きわけながら魅力的なアンサンブルを作っていく。没入感を強めるように音の粒で埋め尽くされる“Cold Night”から、一転解き放たれたように広がりを感じる歌が響き渡る“Alive”はまさにクライマックスだ。集まったお客さんは皆思い思いに踊り、楽しんでいたように思う(ベーシストの手拍子を煽る仕草が豪快で、思わず笑顔になってしまう)。

KIKIの余韻も残るライブ終了後に早速発表されたのが、『TOKYO PLAYGROUND』第3回の開催だ。日にちは12月7日(日)、もちろん会場はここ新宿・東急歌舞伎町タワー「KABUKICHO TOWER STAGE」である。コンスタントに開かれることで、着実にシーンに浸透していくことを期待したい。様々な人々が行き交うこの場所で、次はどんなライブが行われるのか。楽しみに続報を待とう。


【イベント情報】


『TOKYO PLAYGROUND #3』
日程:2025年12月7日(日)
会場:東京・新宿 東急歌舞伎町タワー1階 KABUKICHO TOWER STAGE
出演:
Leo王(Taiwan)
moon tang(Hong Kong)
Tosh Kugai(Okinawa)

……and more!

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『TOKYO PLAYGROUND #2』
日程:2025年9月27日(土)
会場:東京・新宿 東急歌舞伎町タワー1階 KABUKICHO TOWER STAGE
出演:
KIKI
Billyrrom
S.A.R.
luvis
Camp Kona
松澤在音

TOKYO PLAYGROUND オフィシャルサイト


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