6月29日(日)、東京・新宿 東急歌舞伎町タワー「KABUKICHO TOWER STAGE」にて『TOKYO PLAYGROUND #1』が開催された。「音楽とカルチャーが交差する、新たな遊び場」を掲げたフリーイベントである。出演アーティストを目掛けて訪れたであろう優先エリア(事前アンケート登録・SNSフォローで入場可能)のオーディエンスはもちろん、たまたま通りがかった人々も足を止めてライブを楽しむ様子も伺えた。
記念すべき第一回を彩ったのは、タイのVINI、マレーシアのbabychair、そして日本国内からはCody・Lee(李)、EMNW、Dead By Inchesの3組。出自も音楽性もバラけたラインナップは、このイベントが掲げる「ジャンルや国境を越えてアーティストたちが出会い、繋がり、次なるステージへと進むためのリアルなプラットフォーム」という理念を反映したものだろう。
終演後には早くも第2回の開催をアナウンスするなど、新進気鋭のミュージシャンといち早く出会えるイベントとして成長していく予感を抱かせる。
Text by Ryutaro Kuroda
Photo by Rintaro Miyawaki
Dead By Inches
連日30度を超えるなど、一足早い夏フェスのような熱気の中、1組目のアクトとしてDead By Inchesが登場。都内を中心に活動する4人組のロックバンドである。不穏に蠢くベースラインが印象的な“Florida”でライブが始まり、Miai(Vo., Gt.)の気怠そうな声がじんわりと会場に広がっていく。
曲を終えると同時に涼しい風が吹いてきた。と思ったのも束の間、視界が揺らぐような硬質なギターサウンドが炸裂。加速していくようなドラムに乗せて、オルタナ色を強めたような痛快なサウンドを聴かせる“Hera”である。続く“That I”はシューゲイザーを通過した恍惚としたインディロックという印象で、日差しを遮断するような轟音とひんやりとしたボーカルが気持ちいい。最後はドリーミーな“Tokiko”で終演。短い時間でしっかり魅力をアピールしていたように思う。
EMNW
2組目は横浜出身の「結城えま」と沖縄出身の「めにゅ」で結成されたEMNWだ。「令和のミクスチャーロック」を掲げる2MCスタイルのバンドで、豪快なドラムとベースが轟く“More Fire”で早速火をつけていく。《EMNWがカマす みんな目を覚ます》と歌う“KAMASU”が快調で、中盤からメロディックパンクに切り替わり、かと思えば沖縄民謡のリズムが差し込まれるなど、なんでもありの陽気なナンバーである。そこから畳み掛けるように勝気で等身大なリリックを聴かせる“調子どうだい?”から、“Keep on Rollin’”を挟んでレゲエ調を取り入れた“Brain Dead People”へ。ふたり共チアフルなキャラクターがあり、どの曲もハジけるようなテンションで聴かせるのがカッコいい。
「次はEMNWのバラードを歌いたいと思います」と告げた“ヘイワ”……なのだが、むしろカラフルでリズミカル、陽の光を吸ったようなポップソングである。そして最後は再びどっしりとした演奏を聴かせる“百ゼロ”、《耳かっぽじってよく聴いとけ》と歌う“Here We Go EMNW!!”で沸かせてステージを後にした。
babychair
17時、少しだけ陽が傾いてきた頃に3組目のbabychairが登場。マレーシア出身、Sean(Vo.)、Aaron(Dr., Ba., Gt.)、Young(Key., Synth)の3人編成のシンセポップバンドである。消えいるような繊細な歌声、柔らかいタッチのドラム、空気に溶け込む滑らかなシンセ……1曲目の“Thinking Of You”からいきなり空気が変わったように思う。幻夢へと誘うドリーミーな“Time”、10年代のチルウェイブを思い出す“Call You”と、冒頭からうっとりするようなライブだ。
Seanの「ありがとう」という一言を挟んで歌われた“Dear”。続くスウィートにして華のあるソウル“All Day All Night”が素晴らしく、リズミカルなドラムが身体を揺らしていく。煌びやかなシンセを聴かせる“Dreamy Summer”、比較的アタックの強い音色に変わった“Losing My Mind”と、曲ごとに音色を使い分ける鍵盤も耳に残る魅力がある。コールアンドレスポンスを促した“Staying Up All Night”、そよ風に乗っていくような浮遊感のある“Oh It’s You”と、出色のポップスで終始リスナーを魅了していたように思う。
Cody・Lee(李)
Cody・Lee(李)のライブが“涙を隠して (Boys Don’t Cry)”で始まった。今年はメジャーデビュー3周年を記念した日比谷野音のワンマンライブも成功に収めるなど、この日のアクトの中でも確かな知名度を持ったバンドだろう。一発で耳を惹きつけるポップなメロディに軽妙洒脱なフレーズ、そして親近感の沸く生活感のあるリリックと、彼らの演奏にはたくさんの栄養素が詰まっている。2曲目の“ほんの気持ちですが!”は生ぬるい風を吹っ飛ばすような爽快感が堪らない。何より、たくさんの言語での「ありがとう!」が出てくるこの曲のリリックは、国籍を越えたミュージシャンが一同に会すこのイベントにぴったしだ。
新曲“ダンスする惑星”は太いベースが存在感抜群、オーディエンスはハンズクラップと合わせてゆったりと揺れている。軽やかなカッティングに惹かれる“冷やしネギ蕎麦”を挟み、イントロだけで歓声が上がった“我愛你”へ。オリエンタルなフレーズと腰を刺激する粘っこいベースが気持ちよく、この曲でギアチェンジしたように演奏もエモーショナルになっていく。“DANCE扁桃体”は勢いそのまま、痛快なベースで始まりスペーシーな鍵盤と共に踊らせるアッパーな1曲である。「Cody・Lee(李)をお世話してくれた人が誘ってくれたライブなので、いい演奏をして帰りたいと思います」というMCの後、“イエロー”を演奏して終演。爽やかなAメロに比して、魂を解放するようなアウトロのアンサンブルが印象的だった。
VINI
最後に登場したのはタイのポップデュオ・VINI。Fhong(Vo.)、Ply(Ba., Vo.)に加え、ギターとドラムのサポートを含む4人編成だ。ディスコ、エレクトロニカ、インディポップ、シンセポップを軽妙にブレンドした楽曲が魅力的で、トリに相応しい華やかなライブを展開していく。
小気味良いリズムのエレクトロポップ“The cage”で始まったライブは、ダンサブルな“PROMISES”を通過し、アスファルトの上を這うような暗い低音を聴かせる“After hours”へと接続。原曲とは少し印象が違う、夜の訪れを知らせるようなダークな演奏である。さらには陽の沈んだ新宿にロマンチックな音色の“Tide & You”を響かせ、わたあめのように甘いメロディを持った“cyber love”、ちょっぴりファンキーな“anti love”に繋げるなど、曲ごとに景色を変えるセットリストでオーディエンスを飽きさせない。
Fhongがギターを持って歌った“4am love”もバチバチに踊れる1曲で、弾力のあるベースがすこぶるいい。インディロックのような軽快さが宿る“lost love”まで、1日の疲れをふっと忘れるようなステージだ。
最後はFhongとPlyのハーモニーが心地良い“late nite”。アンニュイだがダンサブルな楽曲群は、街を行き交う多くの人を惹きつけていたように思う。
多国籍な人々が行き交う街・新宿を舞台に、期待の新鋭アーティストのライブを体験できるだけでなく、海外フェス & 国内外ショーケース出演チャンスを掴むことができる通年応募型のオーディション企画も実施している『TOKYO PLAYGROUND』。回を重ねていくことで、国境を越えて刺激を交換する「交差点」のようなプラットフォームへと成長していきそうだ。
早くも第2回は9月27日(土)に開催予定。すでにS.A.R.やBillyrrom、そしてタイの3人組・KIKIの出演が決定している。合わせてチェックを。
【イベント情報】

『TOKYO PLAYGROUND #1』
日時:2025年6月29日(日)OPEN 14:00 / START 15:00
会場:東京・新宿 東急歌舞伎町タワー1階 KABUKICHO TOWER STAGE
出演:
VINI
babychair
Cody・Lee(李)
EMNW
Dead By Inches
==

『TOKYO PLAYGROUND #2』
日程:2025年9月27日(土)
会場:東京・新宿 東急歌舞伎町タワー1階 KABUKICHO TOWER STAGE
出演:
KIKI
Billyrrom
S.A.R.
……and more!














