Text by Takazumi Hosaka
Photo by Kale Ishigami
注目のクリエイティブ・レーベル/コレクティブ〈w.a.u〉所属のR&Bシンガー、reinaの1stアルバム『You Were Wrong』のリリース・パーティが7月14日(金)、CIRCUS TOKYOにて開催された。
開場からしばらくは〈w.a.u〉クルーのB2BによるDJがラウンジを温める。オーセンティック、というよりはどちらかというオルタナティブな質感を湛えたR&Bやアフロビーツを織り交ぜながら、開場の空気、温度感をほどよくキープしていた。そうこうするうちに地下のメイン・フロアにはすでに多くのオーディエンスが。時計の針がちょうど19時を指したタイミングで暗転、この日の一番手は韓国と日本をルーツとするSSW/プロデューサーのVivaOlaだ。
暗闇の中、その美声を活かした「If You Let Me」のアカペラからライブがスタート。口笛のような音色が印象的なキャッチーなビートが流れ出すと、オーディエンスもゆったりと体を揺らし出す。続く「TOMORROW」、「GIVE MINE」で会場をメロウな空気で満たしていく。
また、その流麗なファルセットや上品な上音と、空気の振動まで伝わってくるような低音とのコントラストが美しい。「新曲です」と言って披露された「PRESENCE」(7月19日リリース)では会場の音響も合わさり、その豊かなサブベースの響きを存分に味わうことができた。
「今日はreinaのリリース・パーティということで、やっぱりreinaを呼ばないといけないですよね」とのMCに、オーディエンスから歓声が上がる。上手から現れたreinaと共に歌うのは、もちろん「BOLD」。ドリルをベースとしたビート、そこに合わさるreina、VivaOla両名のスリリングなボーカル、そしてサビでの突破力。そこには明らかにライブでしか出ないグルーヴが表出していた。
人懐っこいメロディが印象的な「One of these nights」からラストスパート。日本とアイスランドをルーツに持つSSW・Sagiri Sólを迎えた「Over The Moon」では、2人の息の合ったパフォーマンス、そしてVivaOlaともreinaとも異なる力強い歌声で一気にオーディエンスを自身の世界観に引き込むSagiri Sólのボーカルが強く印象に残った。最後はSIRUPとのコラボ曲「NO TIME」。突き抜けるような開放感を残して、バトンを次へと渡した。
2. TOMORROW
3. GIVE MINE
4. PRESENCE
5. BOLD (feat. reina)
6. One of these nights
7. Over The Moon (feat. Sagiri Sól)
8. No Time
続いて登場したのは、そのキャリアを〈w.a.u〉と共にスタートさせた湘南発のSSW・さらさ。この日は01sail(Gt.)、Koki Furukawa(Key.)、Kota Matsukawa(Ba.)、Ryuju Tanoue(Dr.)、Gai Seki(Perc.)、Reo Anzai(Mp.)からなる“w.a.u band”が演奏を務めており、打ち込みを中心に作られた楽曲も生バンドならではのアレンジが加えられていた。
タメの効いたネオソウル・ライクな「このまま」でジワジワと熱を帯び、「みんな踊れる?」とのMCからグルーヴィーな「退屈」へ。緩急を付けた演奏と、さらさの情感豊かな歌声にオーディエンスは大きな歓声で応える。
「今日はスペシャル・ゲストがいます」とさらさが紹介したのは、名古屋拠点のラッパー・NEI。1stアルバム『Inner Ocean』に収録されている「Blue」のミニマムかつ幻想的なトラップ・ビートは生楽器で演奏されることでより瑞々しい印象を受けた。近年のラッパーでは珍しい被せなしのNEIの独特のフロウもバンドの演奏によく映える。序盤では少々音響トラブルもあったようだが、中盤から立て直しさらさとの妖艶な掛け合いを披露してくれた。
さらさ自身も「ちょっといつもと違うスタイルで」と語っていた通り、この日の「Amber」は特に白眉の出来だった。同楽曲の編曲担当しているKota Matsukawaが弾くベースラインはどこかD’Angelo「Playa Playa」を想起させるようで、それを軸にミニマムに展開。パーカッションやギターが華を添えていく。
途中、「みんな(観客)の顔が見えるように照らしてもらえますか」と照明にリクエストを出していたが、自身の活動の規模が大きくなる昨今。こうして初期の仲間たちと再集結した喜びを噛み締めているようにも感じられた。
2. 退屈
3. Blue (feat. NEI)
4. Amber
5. 太陽が昇るまで
6. Virgo
この日の主役となるreinaはさらさと同じく〈w.a.u〉の面々をバックに従え、そしてコーラスにSagiri SólとYAYA子を加えた編成でパフォーマンス。
「お待たせしました。reinaです」と挨拶は短く、オーガニックかつスムースなネオソウル「my apologiesss」、軽快なグルーヴを湛えた「How Cute」、オーディエンスへとシンガロングを促す「Do The Thing」などを披露。徐々にギアを上げていく。
reinaのボーカルは聴く者を圧倒するのではなく、側に寄り添うような親密さと、繊細な声色でリスナーの元にスムースに入り込んでくる。ピアノ・バラード「Can I」をしっとりと聴かせた後、さらさを迎えて「WISE」、そしてVivaOlaと「U THINK」と、Kota Matsukawaのソロ・プロジェクトvoquote名義で発表されたダンサブルな2曲を歌う。
パーカッションやカッティング・ギター、そして何より生ドラムで演奏されることで原曲よりもディスコ成分が濃く表出した「WISE」ではreinaがタイトなラップも披露。疾走感溢れる「U THINK」ではVivaOlaと交差するような掛け合いが素晴らしかった。
オーセンティックなR&Bやソウルなどをしっかりとなぞりながらも、ときには大胆な飛び道具も使用するその柔軟な発想とセンス。感覚派というよりは知性派。先達の歴史をリスペクトしつつ、その上で自分たちの新しい音楽を築き上げる。それこそが〈w.a.u〉の持つ強さなのかもしれない。この日のreinaのライブを観て、そんな感想を抱いた。
同日深夜にはEBISU Baticaにてアフター・パーティが用意されていたため、アンコールがない旨をオーディエンスへと伝えてライブは終盤へ差し掛かる。咽び泣くようなギターが印象的な「Can’t Be Here」、ダビーなベースラインで深く潜る「Luxury」を経て、ラストはシルキーなボーカル & コーラスが美しい「Drafts」。この日の締めくくるに相応しい優雅なエンディングとなった。
なお、先日公開したインタビューでも語ってくれたが、この日の会場には〈w.a.u〉の次なる動きを示唆するポスターが貼られていた。こちらは正式なアナウンスがくるまでは、その場にいた人たちだけの共通の秘密としておきたい。
2. How Cute
3. Six Feet Under
4. Do The Thing
5. Can I
6. WISE feat. さらさ
7. U THINK feat. VivaOla
8. Can’t Be Here
9. Luxury
10. Drafts
【イベント情報】
『reina You Were Wrong Release Party』
日時:2023年7月14日(金) OPEN 18:00
会場:東京・渋谷 CIRCUS TOKYO
出演:
[Release Live]
reina (w.a.u band set)
[Guest Live]
さらさ (w.a.u band set)
VivaOla
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『reina “You Were Wrong” -After Party-』
日時:2023年7月14日(金) OPEN 23:30
会場:東京 EBISU BATICA
出演:
[LIVE]
reina
VivaOla
NEI
MÖSHI
Sagiri Sól
[DJ]
w.a.u.
凸凹。
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■reina:Instagram