クオリティの高い作品をハイペースにリリースし続けるほか、都内のクラブ・シーンにおけるフィジカルな活動でも認知を拡大させてきたクリエイティブ・コレクティブ/レーベル、〈w.a.u〉。
そこにはR&Bシンガー・reinaを筆頭に、エレクトロニック/ダンス・ミュージックに特化したプロデューサーやSSW、そしてバンドまで多彩な面々が名を連ねており、またWez AtlasやVivaOla、Sagiri Sólといった〈Solgasa〉周辺との交流は、ひとつの潮流としても捉えられる興味深い動きだ。
コロナ禍の真っただ中に頭角を現した彼らは一体何者で、そしてどこへ向かうのか。今回は〈w.a.u〉のファウンダーであり、voquote名義で1st EP『BREAK POINT』をリリース、さらにSSWのさらさやおかもとえみなどの作品も手がけるKota Matsukawaと、同じくファウンダーでありFried Banana Shopを含む幅広い活動を展開するRyuju Tanoue、そして先述のreinaにインタビュー。コレクティブの立ち上げの経緯や、先を見据えた構想について語ってもらった。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo (Kota Matsukawa, Ryuju Tanoue, reina) by Keigo Sugiyama
[ L→R:Kota Matsukawa, Ryuju Tanoue, reina ]
音楽活動で感じた歪みや違和感。〈w.a.u〉結成の経緯
――まずは〈w.a.u〉のファウンダーであるRyujuさんとMatsukawaさんの出会いについて教えてください。
Ryuju:僕は元々ビッグバンド・ジャズやバンド組んだりしてたんですけど、何か新しいことをやりたいなっていうタイミングで、色々な大学のサークルに出入りするようになったんです。「何かおもしろいやついないかな」っていう感じで。そしたらとあるサークルでMatsukawaと出会って。そこは主にフュージョンを演奏するサークルだったんですけど、「フュージョンやりたくねえな」って思ってたら、Matsukawaが「Robert Glasperやりたいです」って言ったので、「あ、じゃあ俺もやりたいです」って手を上げて。
Matsukawa:最初の接点はそこだよね。そのときはまだ「いいドラマーだな」くらいの感じだったんですけど、それからも断続的にコミュニケーションは取っていました。
〈w.a.u〉の立ち上げに繋がる話でいうと、僕は大学に入ったら本格的に音楽活動をしようと思ってたので、浪人期間から色々なことを考えていて。そのひとつとして、アーティスト・コレクティブのようなものを作りたかったんです。そのために大学の研究室に音響機材を持ち寄って、レイヴのようなこともしていて(笑)、そこに色々なやつが集まるようになったんですね。それこそさらさも出入りしていましたし。その流れで渋谷のRuby Roomでさらさやreinaも呼んでイベントをやったんです。
Ryuju:僕は直接Matsukawaに声を掛けられたのではなく、さらさバンドのドラマーとして出演しました。
Matsukawa:Ryujuとはそこで再び合流したというか。そのとき、確かさらさに「トラックを作ってくれる人を探してる」って言われて、そこからRyujuともしっかり話したような気がする。
Ryuju:その後2人で飲みに行ったよね。
Matsukawa:そこで当時2人が考えていたアイディアとか構想を話し合いました。
――reinaさんとの出会いというのは?
Matsukawa:さっき話に出たのとはまた別のサークルで出会いました。本当はオーセンティックなファンクとかをやるサークルなんですけど、僕はreinaの歌を聴いた瞬間に「Sydじゃん……!」って思ったので、The InternetやErykah Baduなど、今のreinaの音楽性に繋がるような曲を一緒にカバーするようになって。「これは鍛えたらすごいシンガーになる」ってひっそりと思ってました。
reina:そうなんだ(笑)。
――MatsukawaさんとRyujuさんが話し合った、〈w.a.u〉に繋がる構想やアイディアについて、もう少し具体的に教えてもらえますか?
Ryuju:お互いそれまで活動してきた中で感じてきた違和感やフラストレーションがあったので、それをどうにかしたいという思いが原動力になっていて。
Matsukawa:僕の父親はプロのドラマーで、結構大きい現場にも参加するスタジオ・ミュージシャンなんです。小さい頃からよく父の現場にくっついて遊びに行ってたんですけど、大人たちがみんな楽しそうに仕事をしている一方で、業界の構造自体はすごく歪んでるなって感じるようになって。それは収益とか諸々についてなんですけど、将来自分たちが音楽活動するようになったとき、同じ状況のままだったらキツイなと。
Matsukawa:あと、それとは別軸の話で、ライブハウスの狭いコミュニティについても違和感を感じていて。閉塞的過ぎるし、その狭いコミュニティだけで完結するのは嫌だなと。だから、僕たちがライブをするときは基本的にはライブハウスではなくクラブでやっていて。バンドとクラブ/DJカルチャーの間にある壁みたいなものもなんとかしたいと思ったんです。絶対にお互い学べるものがあるはずなのに、どうして分断されているんだろうって。
――なるほど。
Matsukawa:そういった色々なしがらみを解消したい。そして、アーティストがより効率的に活動しやすい環境を作りたいっていうのが、〈w.a.u〉の活動の根底にはあるんです。音源をリリースしたりイベントをやったりしているだけでは中々伝わらない部分だとは思うんですけど。
――2人ともいわゆるバンド界隈から音楽活動がスタートしていると思うのですが、そういったクラブ/DJカルチャーとはどのようにして繋がっていったんですか?
Ryuju:ビッグバンド・ジャズをやっていたサークルが結構柔軟な考えで、バンドにラッパーを迎えたりもしていましたし、DJの友人もいて。あと、隣の部室がDJサークルで、そこにもちょいちょい出入りしてたんですよね。そしたらある日「イベントをやるからドラムを叩いてほしい」って言われて。会場に行ってみたらクラブで、蓋を開けてみたらMCバトルやダンス・バトルの音楽を生バンドで演奏するイベントだったんです。そこにはバンドマン、ラッパー、ダンサー、DJなど色々な人がいて、すごく魅力を感じたんですよね。ライブハウスにもそういうイベントはあるのかもしれないんですけど……。
――その多様性に惹かれた?
Ryuju:そうですね。だからこそ、多くの人に伝えたいなと。
――Matsukawaさんはいかがですか?
Matsukawa:元々色々な音楽を聴いていて、高校生くらいから打ち込みのクラブ・ミュージックを生楽器でコピーしたりして遊んでいました。原体験的な話でいうと、両親の結婚パーティのビデオかもしれません。DJとスタジオ・ミュージシャンたちが一緒にセッションしていたんです。とにかく小さい頃から音楽漬けの人生だったので、僕の中ではバンドとクラブ・ミュージックの境界は最初からなかったんですよね。
――ちなみに、〈w.a.u〉という名前はどのようにして決まったんですか?
Matsukawa:みんなに聞かれるんですけど、何も意味とかなくて……(笑)。秘密結社とか暗号っぽい感じにしたいねっていう話から、ピリオドを打って、そこに何を当てはめたらしっくりくるのかっていうところから考えていきました。
Ryuju:意味は後から付けばいいかなって思ってますね。何かの略称だと深読みしてくれたら嬉しいです(笑)。
――2020年の12月にローンチ・パーティを恵比寿BATICAにて開催していますよね。ということは、お2人が構想を話し合ったのは同年の夏くらい?
Ryuju:いや、もうちょっと前だった気がします。SNSを開設したのが6月とかで。
Matsukawa:最初、さらさの音源をリリースするっていうことが決まったんですけど、コロナ禍だったこともあって、思うように動けず。12月のローンチ・パーティも緊急事態宣言の合間を縫って開催しました。
――〈w.a.u〉立ち上げの構想を練りながら、並行してさらささんの制作を行っていたのでしょうか?
Matsukawa:いや、さらさの制作も構想の中に入っていて。言ってしまえば、〈w.a.u〉の構想、展開はもうかなり先の先まで考えてあるんです。
Ryuju:考えていたことが徐々に実現できたり、ときには思いもよらない形で加速したりっていう感じで。
Matsukawa:この前話してたんですけど、去年開催されたContact全フロアを開放した『Mural』(※平日ながらも300人を超える動員を記録)が僕らの中では第1章の終わりだったのかなって。
【6月16日(木)Mural】
新鋭のアーティストとの共創により新文化を構築するMuralが3ヶ月ぶりの開催。GALAXYのIORIに加え意気軒昂に活動しているDJ陣がContactに登場。w.a.uオーガナイズのFoyerには さらさやVivaola、 Sagiri SólにWez Atlasといった夢のラインナップが実現。https://t.co/ppCGGhkrWh pic.twitter.com/e3UQfQXzEQ— @ContactTokyo (@ContactTokyo) June 1, 2022
Ryuju:元々僕らはクラブ・カルチャーどっぷりなわけではないんですけど、音楽を作っていくうちに自然と繋がりができてきて。色々なイベントにも呼んでもらえるようになって、それぞれの地力がついてきたなっていう印象ですね。
多彩なメンバーとの出会い
――今のメンバーはどのような流れで集まったんですか?
Ryuju:それも活動していく中で自然と出会った人が多いですね。元々近しい距離にいた人が大部分ではあるんですけど。
Matsukawa:ローンチ・パーティにはDJのAnayama、Reo Anzai、さらさ、reinaも出演してたけど、別にその時点で「レーベル/コレクティブの一員です」っていう感じではなかったしね。
Ryuju:そこはわりとヌルっとした感じでした(笑)。
――reinaさんは〈w.a.u〉の構想などは聞いていたんですか?
reina:ここまで詳しく聞いたのは今日が初めてです(笑)。最初は「とりあえずやってみよう」っていう感じで、ライブとか制作を一緒にやっていただけで。
――他のメンバーはどのようにして合流したのでしょうか。
Matsukawa:時系列順で言うと、最初にさらさの音源をリリースして、reinaはもう出会っていたけど、温めておきたかったんです。色々なイベントに連れ回して、「あのシンガー、一体何者なんだ?」って思わせたくて(笑)。
reina:めっちゃ色々なところに連れてかれたし、色々な曲を歌わされました(笑)。でも、それが今の私の音楽性にも影響を与えていると思います。
Matsukawa:その後はJulia Takadaかな。大学の知り合いに紹介してもらったんですけど、アカペラで歌っている動画を見せてもらったときに「この歌声はヤバい」って思って。
Ryuju:最近はちょっとリリースが止まっているんですけど、今色々と制作していて。夏以降にまた作品を発表していく予定です。
Matsukawa:次がRaylowgh Anno。彼は僕の幼馴染で、小さい頃から一緒に遊んだりしていて。少し離れていた時期もあるんですけど、彼に音楽を始めさせたのも僕なので、たまに連絡を取っていたんですね。それで〈w.a.u〉にも参加してもらいました。〈w.a.u〉のコレクティブ・バンドではギターを弾いてもらっています。
Matsukawa:その次がSakepnk名義でリリースしているAnzaiかな。
Ryuju:そっか。Juliaのときはまだ〈w.a.u〉に入ってなかったのか。
Matsukawa:彼は僕にとってはゼミの先輩に当たるんですけど、最初から友人みたいに接することができる人で。
Ryuju:AnzaiがDJしてるイベントにMatsukawaと何度か乗り込んで。そこで一緒にお酒を飲んだりしてるうちに仲良くなりました。彼はサンプラーも持ってるし、バイオリン、トロンボーン、ギターも弾けるので、コレクティブ・バンドにもってこいだなと(笑)。……Flying Lotusのトリビュート・バンドで演奏したのはいつくらいだっけ?
Matsukawa:2021年かな。〈w.a.u〉のコレクティブ・バンドの前身とも言えるメンツが集まったのが、某大学のサークルの新歓で披露したFlying Lotusのトリビュート・バンドなんです。僕は色々な大学のサークルに入っては辞めを繰り返していて……(笑)。
Ryuju:サークルを荒らし回ってたんです(笑)。
reina:そう。そして辞めた後の文句は全部私にくるっていう(笑)。
Matsukawa:変にライブハウスに出るより、音楽ナードが集まってる大学のサークルで力試しした方がいいかなと思って。バイオリンとかも入れた生バンドでFlying Lotusみたいなエクスペリメンタルな曲を演奏するという(笑)。
Ryuju:あの経験があったからこそ、〈w.a.u〉でバンドできるじゃんってなったんだよね。そのときのメンバーは後にreinaのアルバムに参加してくれたりもしています。
――〈w.a.u〉の中では少し異色なFried Banana Shopは、Ryujuさんも在籍しているバンドですよね。
Ryuju:はい。ただ、Fried Banana Shopはちょっと立ち位置が異なっていて。あのバンドは僕が当時住んでいた幡ヶ谷の近所にいたやつらで組んだバンドで、作品をリリースするってなったタイミングで「〈w.a.u〉から出していい?」って相談して。
Matsukawa:「あ、うん。いいよ」みたいな。今も正式に〈w.a.u〉のメンバーなのかどうかは誰もわかってない(笑)。
Ryuju:ただ、サックスのYojiはコレクティブ・バンドに参加してもらってます。
Matsukawa:あとは01sailとKRICKかな。KRICKはVivaOla繋がりで合流して、シングルを〈w.a.u〉からリリースしました。01sailはコレクティブ・バンドのギタリスト――それもプロデューサー志向の――を探していて、Instagramで見つけました(笑)。
Ryuju:とはいえ、元々彼もセッション・ミュージシャン界隈にいたので、共通の知り合いも何人かいて。蓋を開けてみたら大学でアメリカ史を研究している変なやつだったという(笑)。
コレクティブ内における音楽的文脈の共有
――reinaさんの音楽的バックボーンについても教えてもらえますか?
reina:母が言うには、小さい頃からよく歌っていたらしいです。最近知ったんですけど、父も昔はDJを目指していたらしくて、家にはたくさんレコードもあるし、その裏にBPMとかがメモってあって。家ではLL Cool JやMobb DeepといったヒップホップやR&Bがよくかかっていましたし、私も中学校くらいから音楽スクールに通い始めたり、ダンスも習ったりして。そこでD’AngeloやErykah Baduの曲で踊ったり、音楽はずっと身近な存在でしたね。
――人前で歌い始めたのはいつくらいからなんですか?
reina:音楽スクール内で披露会みたいなのはあったんですけど、ちゃんとやり始めたのは大学のサークルに入ってからですね。
Ryuju:サークルって自分で見つけたの?
reina:いや、元々は入る気がなかったんだけど、路上セッションをたまたま観て。
Ryuju:そうなんだ。reinaのバックボーンは俺らも今初めて知りました(笑)。
――昨年はreinaさんの連続リリースが〈w.a.u〉にとっての大きなプロジェクトになったと思います。これも初期から構想していたことだったのでしょうか。
Matsukawa:そうですね。reinaの1stアルバムを作る、そして色々なタイプのR&Bを取り入れた作品にしたいっていう思いはあって。それこそ、01sailと出会った必然性みたいなところに繋がってくるんですけど、僕はUSのオーセンティックなR&Bみたいな曲は中々作れなくて。そんなタイミングで01sailと出会ったので、まさしく必要だったピースがハマったというか。
――今おっしゃったように、1stアルバム『You Were Wrong』は多様なスタイルに挑戦した作品となりましたが、ご自身の引き出しがどんどん増えていくような感覚はありましたか?
reina:そう……ですね(笑)。
Ryuju:いや、本当にすごいと思いますよ。僕は現場にはいなかったけど、Matsukawaと01sailとreinaのやり取りを見ていて、基本的に全部トラック先行なんですよ。それであの振り幅のある作品を完成させたわけで、気付いてないかもしれないけど、新しい側面がめちゃくちゃ引き出されてると思う。
reina:そうみたいです(笑)。
――2人が作ったトラックに対して、「これはちょっと……」と思うことはありましたか?
Matsukawa:却下したのは一個もなかったよね。「ムズッ」って言いながら3日後にはメロディとリリックができてたり。
reina:「こんな感じでどうでしょう?」っていう感じで2人の意見も聞きながら書きましたね。レコーディング当日まで待たせたりもしたけど。
――そうやってスムーズに進行したのも、3人(reina、Kota Matsukawa、01sail)の音楽的嗜好が合っているからなんでしょうね。
Matsukawa:もちろんreinaが好きそうな音楽っていうのは意識はしていて。その上で、そこに自分のやりたいことや新しい挑戦を組み込むっていう感じだったんですよね。
Ryuju:その文脈の理解度みたいなものはすごいよね。〈w.a.u〉はそういった部分の統一感だけはしっかりしてる。
Matsukawa:逆にそこしか統一されていないとも言えるかも(笑)。
――そういった音楽的文脈の共有って、話し合ったりはするんですか?
Matsukawa:いや、全く話し合わないですね。各メンバーそれぞれの得意分野や好きな音楽は異なるけど、それぞれ勉強していくうちに、根っこの部分で重なる部分がでてきたっていう感じなんだと思います。
――〈w.a.u〉から作品をリリースする場合、世界観の統一やクオリティ・コントロールなどは行っていますか?
Ryuju:たぶんみんな〈w.a.u〉からリリースする作品は、少なからず〈w.a.u〉のカラーや世界観を意識して作ってる気がするんですよね。それは強制もしてないし、特に話し合ってるわけじゃないんですけど。
Matsukawa:たぶん、〈w.a.u〉のイデアみたいなものが自然と形成されているんですよね(笑)。
――そういったイデア、コンセプトみたいなものが確立できていること自体がすごいことだと思います。そこが上手く行かなくて空中分解していってしまうコレクティブやクルーなどは多いと思いますし。
Matsukawa:それはきっと……たまたまです(笑)。
Ryuju:さっき話した根っこが近いっていうのが起因しているのかもしれないですけど。
Matsukawa:一回も衝突したことないし、「これはリリースできないな」って思う作品は本当にひとつもないんです。ただ、ミックスとかマスタリングなどのクオリティだったりを指摘することはあります。
――ミックス、マスタリングはMatsukawaさんが手がけていることが多いですよね。そういったエンジニアリングは独学ですか?
Matsukawa:reinaのアルバムだけ塩田さん(SALT FIELD MASTERING)にお願いしましたが、他は大体僕ですね。これも完全に独学でやってるんですけど、シンプルに音が悪いと聴く気がなくなるじゃないですか。〈w.a.u〉のみんなは本当に音楽が好きだから、そこにこだわるのは当然のことなのかなって思います。
Ryuju:リリース前にみんなで意見を言い合うことはあるよね。「キックデカすぎじゃない?」とか「ハイをもうちょい下げた方がいいと思う」とか。
Matsukawa:意見は言い合うけど、「これはこういう意図があるから、こういう音にしてる」って言われたら、作り手のこだわりを尊重します。……とにかく〈w.a.u〉には決まり事みたいなものは一切ないんですよ。
――でも、明確なヴィジョンは描いているんですよね。
Matsukawa:はい。ただ、それをみんなに直接伝えるのもナンセンスかなと思っていて。一個一個の目標やプロジェクトをクリアして行って、気付いたらその描いている景色に到達している、っていうのが理想形ですね。
〈w.a.u〉が思い描くヴィジョン。「音楽に対して真摯に」
――そういう意味で言うと、reinaさんの1stアルバムのリリース・パーティも大きな山場のひとつになるのではないでしょうか。
Matsukawa:〈w.a.u〉第2章の始まりみたいな感覚ですね。
Ryuju:reinaは現時点での〈w.a.u〉のフロント・アクトみたいなイメージで。僕らだけだとナード過ぎるし、ある意味で看板を背負ってもらってる部分もあって。そのreinaのひとつの集大成になるのかなと。
Matsukawa:正直なことを言ってしまうと、自分がvoquote名義の曲でreina & さらさ、reina & VivaOlaを迎えたのも、reinaのリリパでこの3人にブチかましてほしいっていう思惑があったからで。そこに目掛けて作ったっていう部分も大きいんです。イベントにオファーするアーティストにも必然性を持たせたいっていうのはこれまでも考えてきたことなので。
――大きな期待が寄せられているわけですが、reinaさんは今後のご自身の活動についてはどのように考えていますか?
reina:具体的なことはまだ考えられてないのですが、とにかく自分が何をどこまでやれるのかを知りたいなと思っています。そのために、ひとつずつ新しいことに挑戦しているというイメージですね。
Matsukawa:何か、〈w.a.u〉のみんなは現実的だけど夢見てる感じがあって。それぞれ大きい目標も考えてると思うけど、そのために必要なことを着々とこなしていくというか。
Ryuju:みんな地に足は付いてるよね。
Matsukawa:時間が経って、振り返ってみたときにドラマチックな物語になってたらいいなって思います。
――〈w.a.u〉が描く将来のヴィジョンについて、今話せる範囲で教えてもらえますか?
Matsukawa:レーベルとしてのひとつの理想像は〈Stones Throw〉なんですよね。ユニークというか、わりとヘンテコな作品でも受け止めてもらえる、愛されるような土壌を作ってきたと思うんです。〈Stones Throw〉からリリースされてるなら聴いてみるかっていう信頼感がある。
Ryuju:そのためには、それぞれが成長して活躍する必要性があると思っていて。〈w.a.u〉っていう看板を前面に押し出し続けるっていう気持ちもそんなにないんですよね。
Matsukawa:それぞれが活躍していく中で、みんながいつでも帰ってこれる家っていう感覚かも。それを常にアップデートし続けたい。メンバーもこのまま固定だとは思っていないし、抜ける人もいれば新たに増える人もいると思うので。
Ryuju:その中で、最初に話した音楽業界における旧態然としたシステムが改善に向かえばいいなと。直接的に訴えかけるのではなくて、自然と僕らの考えが浸透していけばいいなって考えています。
Matsukawa:反体制を掲げるのも違うしね。マーケティング、PRの側面が重要視される今の音楽業界において、自分たちのスタイルでただただいい音楽を作り続ける。そこに何かしらのアクションや反応が起こればいいなって思いますし、そうすることで変わっていくだろうって思ってます。これは希望的観測というよりは、受け手に対する信頼というか。僕は音楽に対して真摯に向き合い続けていれば救われるっていう思いが強くて、「これだけやって変わらなかったらもう無理だな」って思えるくらい、純度の高い活動をしていきたいですね。
――なるほど。〈w.a.u〉の第2章、とても楽しみにしています。今後の動きとしてはどんなことを計画していますか?
Matsukawa:reinaのリリパに続いて、もうひとつ〈w.a.u〉主催の大きなイベントを計画しています。ライブもDJも展示もあるような複合型イベントにしたいと思っていて、後々は海外アーティストも呼べるように続けていければなと考えています。
Ryuju:イベントもそうですけど、今年は音源リリースにもこれまで以上に力を入れていきたいので、楽しみにしていてほしいですね。
【リリース情報】
voquote 『BREAK POINT』
Release Date:2023.06.28 (Wed.)
Label:w.a.u
Tracklist:
1. WISE
Lyrics:reina, さらさ
Compose:Kota Matsukawa, reina
2. SHOW U
Lyrics:Wez Atlas
Compose:Kota Matsukawa, Wez Atlas
3. U THINK
Lyrics:reina, VivaOla
Compose:Kota Matsukawa, reina, VivaOla
4. GO!!!
Compose:Kota Matsukawa
5. RIGHT TRACK
Lyrics:Sagiri Sól, Kingo
Compose:Kota Matsukawa, Sagiri Sól, Kingo
All Songs
Produce:Kota Matsukawa, voquote
Mix & Mastering:Kota Matsukawa
Cover Artwork:Jamie Michiki
■voquote(Kota Matsukawa):Twitter / Instagram
【イベント情報】
『reina You Were Wrong Release Party』
日時:2023年7月14日(金) OPEN 18:00
会場:東京・渋谷 CIRCUS TOKYO
料金:DOOR ¥4,000 / ADV. ¥3,500 (1D代別途)
出演:
[Release Live]
reina (w.a.u band set)
[Guest Live]
さらさ (w.a.u band set)
VivaOla
・チケット
一般発売(e+):6月7日(水)21:00〜
INFO:w.a.u.contact.us@gmail.com
■公演詳細
■reina:Instagram
==