(background photo: Yasuharu Sasaki / Red Bull Content Pool)
一歩踏み込めば、そこは全身の感覚に正直にならざるを得ない空間。今回青山スパイラルホールにて公開された池田亮司の『test pattern [n°6]』は、8つのスピーカーから発されるグリッチな電子音にだけではなく、床のスクリーンに投影されるバーコードのパターンに身を包むことができる。自らの身体も作品としても、池田亮司の作品に潜む探究者としても堪能することができる。天井を見上げれば、足元を流れる様々なパターンを、点滅する光として認識することができる。パターンの境目と、足元のスクリーンの境目にも意識的になってみるのも面白いかもしれない。それはあくまで1面のスクリーンと8つのスピーカーからなる作品なのか、連続する4面(=向き合うスピーカー1組ごとに区切った中くらいの1面)が作り出す作品なのか、連続する8面(=スピーカー1つにつき小さな1面)の作品なのか……。そして、スクリーンの外に出て、他人にパターンが投影される様を観るのも、また新たな発見がある。展示空間に10分もいれば、鼓動が『test pattern [n°6]』のサウンドに影響されている。
「……「test pattern」シリーズに至っては白と黒、つまり「0と1」のバイナリ表現だけになっています。「0と1」とは、言ってみれば「YesとNo」ですよね。この「YesとNo」は、人間が論理的に思考する上での最も基本的な部分で、これをさまざまな事象に適用し、積み重ねていくことで、人間は知的な活動、社会生活を営んでいます。そして、あらゆる物事が膨大な数の「YesとNo」によって、離散的に構成されているというのが科学の基本的な考え方です。……」
(2012年に『supersymmetry』を発表した際の池田亮司インタヴューより。『supersymmetry』制作に至った経緯を説明する中で登場した、『test pattern』シリーズについての説明。(出典:山口情報芸術センター『Ryoji Ikeda|supersymmetry』特別ページ、インタヴュー聞き手:阿部一直)
『test pattern [n°6]』の展示は、11月9日(日)まで。11月7日(金)と8日(土)は、24時間いつでも作品を体感することができる。真夜中に池田亮司の作品を観るのもまた、身体に新たな感覚をもたらすかもしれない。
シドニーのアートセンター”CARRIAGEWORKS”と”International Symposium on Electronic Art 2013″のコラボレーションによって展示された『test pattern [n°5]』
Ryoji Ikeda : : test pattern [nº5], 8 JUN – 1 JUL 2013, Carriageworks, Sydney, AU from ryoji ikeda studio on Vimeo.
先月、10月1日〜31日の期間、毎晩11時57分から深夜までニューヨークのタイムズスクエアで行われた展示『test pattern [times square]」
(Text by Hiromi Matsubara)