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REPORT / RED ZONE / A Red Bull Music Academy Special


レジェンドDJ、スーパー・プロデューサー、フレッシュなラッパーが揃い踏みしたヒップホップ・パーティをレポート!

2014.11.14

Marley MarlとJust Blazeが大いに盛り上げたあとのフロアは少し人気が少なくなり、落ち着いたムードが漂っていた。そんな中でもステージに登場したZebra Katzは、フロアの前方に残った人々にしなやかな動きで迫り、訴えかけるように、問いかけるようにラップをしていた。

©Dan Wilton/Red Bull Content Pool
©Dan Wilton/Red Bull Content Pool

Zebra Katzというキャラクターは、もともとOjey Morgan(本名)が大学時代に音楽とは別で制作していた『Moor Contradictions』というパフォーマンス・アートからきているそうだ。そのためか、彼のライヴ中の動作は全体的に演劇的だった。音源では淡々とした語り口のラップを、ライヴでは感情を剥き出しにして謳い揚げる部分も、パフォーマンス性の高さを感じさせられた。
それは衣装の面でも同様で、彼は登場時に黒い覆面と、和紙に似た柔さを感じさせる素材で作られた防護服のようなフォルムの風変わりな衣装をまとっており、それを序盤から中盤にかけてラップをしながら徐々に破り脱ぎ捨てていく。脱ぎ捨てたあとは、引き続きラップをしながら、ステージ上で寝そべったり、ステージと全身をいっぱいに使ったコンテンポラリー・ダンスをする。身動きをとりづらくするもの(=衣装)を自らの手で排除し、その後に自由を主張するように身体を目一杯に動かす……このライヴでの一連の動作は、どこか“解放”を想起させるものがあった。リリックとダンスによって何者かを演じ、本能と理性をステージ上に混在させていくようなZebra Katzのパフォーマンスは、もしかしたら今は『Moor Contradictions』とは別ではなく、音楽とアートの2つの道を1つにしたプロジェクトの発展形なのかもしれない……。

©Dan Wilton/Red Bull Content Pool
©Dan Wilton/Red Bull Content Pool

それにしても、Zebra Katzのライヴ・パフォーマンスを観ている人が少なかった。まぁ、立て続けに、”ヒップホップのオンパレード”的なエンターテイメント性に溢れた展開の早いプレイを見せられて、Marley Marlの時はゴールデン・エラの曲を、Just Blazeの時は2000年以降の曲をプレイに合わせて合唱し、DJとコール&レスポンスをし、キックに合わせてジャンプをすれば、「最高だったな〜」や「お腹いっぱいだわ〜」と語り合いながらバーで休憩したくもなるか。僕だったら、Marley Marlが2Pacの「I Get Around」を後半にかけたのも気持ち良かったけど、Black Robの「Whoa!」とMobb Deepの「Shook Ones Part.2」の時が最高に昂った、と切り出して、Just Blazeが「Get Luckey」からDrakeの「Hold On, We’re Going Home」へと滑らかに繋いだ瞬間のことと、長らくコラボレーターを務めているJay-Zの曲をやっぱりプレイしたことを話すと思う。何しろ、わずか2人のDJによる数時間のプレイの間に、これまでのヒップホップ(と+α)の約20年の集大成的なものをフロアで堪能したのだ。フロアをいかに盛り上げるか……などのそれぞれのDJの主観と気まぐれに基づいて生まれるような断片的なタイムラインでは全くなかった。先に挙げた意外にも、両者は共にKanye West、Wu-Tang Clan、ビギーを、Marley MarlはEric B. & Rakim、KRS-One、Biz Markie、Main Sourceを、Just BlazeはSnoop Dog、Alicia Keys、T.I.、Usherをプレイした。本当の本当にヒップホップのオンパレードだった。

©Yasuharu Sasaki / Red Bull Content Pool
©Yasuharu Sasaki / Red Bull Content Pool

Marley Marl、Just Blazeと続くタイムラインにZebra Katzを当てはめると、彼は現在〜未来のヒップホップをパフォームしていたといえるだろう(実際にこの日のタイムテーブルもこの順番だった)。彼が未来の何かしらを先取って演じるというよりかは、彼がステージ上で自己も他人も問わないその時々にどこかで生じた様々な感情を、その感情が生じたその時に向けて表現することが、直接新たなシーンとスタイルをつないでいくように思う。
彼は、UKのプロデューサー、Hervéとのコラボレーション曲「Tear The House Up」を〈Mad Decent〉からリリースしたことで、クラブ・シーンからも注目されているし、ファッション・デザイナーのRick Owensが「Ima Read」をパリ・ファッション・ウィーク2012のショーで使用したことで、ファッション・シーンからも熱い視線を注がれているようだ。こうして彼が既にクロスカルチャーの交点として存在することも面白いし、多くの可能性を感じる。

(Text by Hiromi Matsubara)


Zebra Katz: Website / Twitter / Facebook / SoundCloud
Zebra Katz ライヴレコーディング@HARLEM

Marley Marl: Website / Twitter / Facebook / SoundCloud
Marley Marl ライヴレコーディング@HARLEM

Just Blaze: Website / Twitter / Facebook / SoundCloud
Just Blaze ライヴレコーディング@HARLEM


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