この日のダブステップは身体に強く、重く、響くものがあった。それはただ単に、低音やサウンドシステムがどうこうという話だけではなく、会場の一体感や、DJとDJ、DJとオーディエンスの関係性、リスペクトの面でも、だ。
ダブステップ・オリジネーターであるDigital Mystikzが出演した〈DBS〉のレポートだから、冒頭からいきなり“ダブステップ”と書いたが、もちろんMalaとCokiは自分たちのルーツへ、そして今も脈々とフロアを震わせ続けるダブの系譜へのリスペクトを示すように、ルーツ・レゲエも、ジャングルも、ドラムンベースも、それらの中間に位置するような響きのモノもたっぷりとかけた。そして、フロアはトラックがドロップされるとすぐに彼らの情熱をキャッチし、リアクションをした。気の送り合い、と言うのがいいだろうか。ステージとフロアの間で、会場に鳴り響くこの深い低音について何か明確な言葉が交わされているわけではないのに、自然と熱い繋がりが両者の間に生まれ、ダブが醸し出すスピリチュアルな空間の中で長い時間をかけてお互いが徐々に感極まっていくような、胸が熱くなるやり取りだった。
途中からDigital Mystikzの後に出番を控えていたGOTH-TRADがステージに登場して、早くから2人をサポートしていたのも大きかった。Digital Mystikzがこのままライヴを続けていただけでは、きっと到達しなかったであろうレベルまで、フロアが熱くなったのだから。そしてそんなダブステップ・パーティーのハイライト・シーンを迎えた中でプレイされたのは、James Blakeもカバーした名曲「Anti-War Dub」だった。
その後のGOTH-TRADの、たくさんの寄り道をしながらも真夜中から夜明けを目指すような、Digital Mystikz後の身体を再び呼び覚ますプレイも感動的だった。MalaとCokiは先ほどのお返しとばかりにマイクを手に取りMCをしたり、ダンスをしたりして彼を側でサポートをしていた。プレイの後半、ベースが容赦なく炸裂するフロアに、(確か)Malaが“Show your appreciate to GOTH-TRAD!!! Show me!!! Show me!!!”と叫んだ瞬間はたくさんの人がグッときたのではないでしょうか。(GOTH-TRADのプレイの模様は、RBMA Radioでぜひ聴いてください。後半はもう、特にヤバいですから……!)
思えば約1年前に同じUNITで、MalaがSwindleやライヴバンドと共に披露したキューバ音楽とダブステップの邂逅を体感した。ちなみにそれが初めてのMalaだった。あの日、彼が観せた新しいスタイルのものは洗練されていたし、歓迎もしたけど、どうも違和感が残ったのは、その時はまだ自分がオリジナルのダブステップとそれにまつわる情熱をフロアで味わったことがなかったからだった。1年後の、このパーティーでDigital Mystikzが観せた濃厚なライヴによって、小さくなっていたものの残っていた違和感は解消された。むしろ、まだまだオリジナルのダブステップの低音に浸かっていても(……いるほうが?)ドキドキしていられる。
ジューク/フットワークがブームになったお陰でオールドスクールのジャングルがまた新しく打ち出されるのだから、進化の激しかったダブステップもシーンがまたオリジナルの方に戻っていくかもしれないという密かな期待を抱きながら。
(Text by Hiromi Matsubara)
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