「新しい音楽の発見」をテーマに、Spincoasterが今、注目しているアーティストにスポットライトを当てる音楽イベント、“SPIN.DISCOVERY”が12月2日(日)、東京・表参道WALL&WALLにて開催された。
9回目の開催となる今回は、sooogood!、City Your City、CIRRRCLE、Michael Kanekoと強い個性を持った、バラエティのあるラインナップとなった。新しい発見があったオーディエンスも少なからずいたはずだ。それぞれの個性溢れるライブの様子をテキストと写真で振り返る。
なお、同イベントは次回、Vol.10を3月31日(日)に東京・表参道WALL&WALLにて開催する。
Text by Kohei Nojima
Photo by Haruna Aoi(emographer)
sooogood!
この日の1番手は元カラスは真っ白・シミズコウヘイによるソロ・プロジェクト、sooogood!。チャップリンの映画『Modern Times』のテーマ曲でもあるNat King Cole「Smile」をSEに、バンド・メンバーを引き連れて登場。この日はドラム、ベース、キーボード、コーラスを引き連れた5人編成でのステージを披露してくれた。
「表参道の夜、みんなでいい夜にしましょう! sooogood!です! よろしく!」と挨拶をし、ゆったりとしたオープニング・ジャム・セッションからライブはスタート。ピアノの音色が洒脱なメロウ・ナンバー「Thunder Baby」からMCで来場したオーディエンスに感謝を述べ、モデルのアリスムカイデをフィーチャーした「マハ×ラジャ」をプレイ。コール・アンド・レスポンスや歌詞に合わせて謝謝ポーズをオーディエンスに求める場面も見られ、次第にフロアが温まっていくのが感じられた。
続くMCでは、ギター少年だったシミズがsooogoood!として歌うことを始めた理由を語る。「苦手なものから、逃げ続ける人生は嫌だ。全部、“ソー・グッド”じゃんと言えるようになりたい。そしてみんなも“ソー・グッド”な気持ちになってくれたらすごい嬉しい」とソロ・プロジェクトへの想いを語り、彼が歌い出すキッカケとなった曲「diamond」を披露。甘く、優しい言葉とシミズの歌声が全身に染み渡っていくようだ。終盤のギター・ソロではギター少年としての一面も垣間見ることができた。
ひとりの寂しい気持ちから、夢で逢えたらという想いを歌った「Whalesong」を経て、ジャム・セッションとメンバー紹介を挟み、ラストは藤井隆をフィーチャーしたとびきりアッパーなダンス・チューン「ドラマチックピンクビキニ」。ミラーボールとピンク色の照明の中、華々しくラストを飾った。
■sooogood! Set List
1. opning
2. Thunder Baby
3. マハ×ラジャ
4. diamond
5. Whalesong
6. ドラマチックピンクビキニ
City Your City
続いてステージに登場したのは、k-overとTPSOUNDからなるユニット、City Your City。ステージが暗転すると、アカペラ・ボーカルからライブはスタート。会場の雰囲気がぐっと張り詰めいく。そしてK-Overが「City Your City始めます」と一言発し、1曲目の「shy」へ。トラップ的なリズムや、風音のようなノイズ音、サンプリング・ボイスなど様々な音が重なっていく。間髪入れずに少しテンポを上げ「insomnia」へ流れ込む。ドロップのビートにオーディエンスもゆらゆらと体を動かす。
「好きな感じで、ゆれてもらえたらと」間引かれたビートとオリエンタルな雰囲気が印象的な「chain」、そして1曲目に披露した「shy」のセルフ・リミックス「Re:shy」を披露。曲を重ねるごとに空間がCity Your Cityの世界観に染まり、冷たく荘厳な雰囲気が会場を包んでいく。
ここで女子高生シンガーである内田珠鈴がゲストとして登場。演奏された「どれほど私は」はCity Your Cityプロデュースの未発表曲。透明感のある歌声と堂々とした立ち振る舞いでオーディエンス魅了した。
「願うのは健康だけ」というフレーズが印象的な、TOKYO SOUNDSのMoving Jacketシリーズでも人気の「neon」から「impression」、そしてラストは「choice」へと続いていく。空間を割くような攻撃的なシンセサイザーとk-overの渾身のボーカルが大きな感動を呼ぶ。「ありがとうございました。City Your Cityでした」と一言。最後まで寡黙かつクールなステージであった。
■City Your City Set List
1. shy
2. insomnia
3. chain
4. Re:shy
5. どれほど私は(feat.内田珠鈴)
6. neon
7. impression
8. choice
CIRRRCLE
イベント後半戦、3番手のアーティストはLAと東京を拠点に活動するヒップホップ・クルー、CIRRRCLEだ。まだ数えるほどしかライブをしていないが、そのパフォーマンスの評判の高さにオーディエンスから大きな期待を寄せられているのが会場の空気として伝わってくる。
ブラス・サウンドが高らかに鳴り響く「Watch」からライブはスタート。ラッパーのJyodanが軽快なラップと「Bounce! Move!」と会場を盛り上げていく。しかし、まだまだ足りないと言わんばかりに、2曲目「Talk Too Much」のイントロが流れたところでAmiideが音を止める。「今日みんな楽しみにきてる!? もっと前に詰めて来いよ!」とさらに会場を煽り、オーディエンスは歓声を上げてそれに応える。
陽気なチューン「Talk Too Much」で会場が温まったところで自己紹介。お喋りな黒人のJyodanと、新潟生まれのナイス・ボイスな純日本人・A.G.O.、そしてクールでボーイッシュなAmiideとバラバラな3人組だが、Amiideの口からCIRRRCLEが掲げる使命について語られる。「ダイバーシティ(多様性)を尊重し、私たちがアイデンティティを持ってステージに立つことで、みんなが自分らしく生きていいんだなと思える世界にしたい」と彼女は述べた。
Amiideの歌の良さが際立つ、チル・ナンバー「Foreign Tingz」から、世界中のプレイリストにリストインしたダンサブルな人気曲「Fast Car」をプレイ。会場がどんどん熱気を帯びていく中で、この日ライブ初披露となるサマー・ソング「Summer Project」が披露された。
最後は頭を前後にバウンスさせるロックなナンバー「PETTY 」。エンターテイメント性の高いパフォーマンスに、この日一番の盛り上がりを魅せたCIRRRCLE。笑顔が溢れる、あっという間の35分であった。
■CIRRRCLE Set List
1. Watch
2. Talk Too Much
3. Foreign Tingz
4. Fast Car
5. Summer Project
6. PETTY
Michael Kaenko
この日のトリを務めるのは〈origami PRODUCTIONS〉所属のSSW・Michael Kaneko。この日はキーボードにmimeの近藤邦彦、ドラムに御木惇史を迎えたピアノ・トリオ編成だ。
「みなさんこんばんは! Michael Kanekoです! よろしくお願いします!」と爽やかな挨拶から、「Lost In This City」のギター・リフをかき鳴らすと同時に会場から歓声が上がる。Michael Kanekoの持ち味とも言える力強い演奏と、透明感のある声。そして間奏では味のあるブルージーなギター・ソロも披露。これからの良質な時間を大いに想起させる素晴らしいオープニング・ナンバーであった。
続いてピアノの伴奏を主体とした「Separate Seasons」では、メロウな演奏に誰もが聴き入り、次は一転、テンポを上げてライブでも定番の「It Takes Two」をプレイ。この曲にはMichael Kanekoの変顔に合わせてハンドクラップを入れるという、お決まりの盛り上がり方がある。軽快な演奏にオーディエンスも自由に体を揺らす。ハンドクラップもバッチリと決まり、Michael Kanekoも満足そうな表情を見せていた。
MCでは今回のベース・レス編成に伴い、キーボードの近藤邦彦が右手でピアノのフレーズを弾きながら、左手でベース・ラインを弾いていることが明かされた。制作中だというフル・アルバムから披露された新曲「When We Were Young」はミドル・テンポで開放感のある非常に心地よい楽曲であった。
最後は硬派なブルース・ロック・ナンバー「Cracks In The Ceiling」。力強いギター・リフと激しいサウンドでバンドの演奏力の高さを改めて示し、大きな拍手で見送られながらステージを後にした。
■Michael Kaneko Set List
1. Lost In This City
2. Separate Seasons
3. It Takes Two
4. When We Were Young
5. Cracks In The Ceiling
【イベント情報】
Spincoaster Presents “SPIN.DISCOVERY vol.10”
日時:2019年3月31日(日) OPEN 17:00 / START 17:30
会場:表参道 WALL&WALL(MAP)
料金:前売 ¥2,900 / 当日 ¥3,400 (各1D代別途)
出演:
Mom
MIRRROR
Shin Sakiura
TAMTAM
TENDRE