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INTERVIEW | 羊駝小姐 Malpaca & 野巢 Nosu


台湾『StreetVoice Awards』現地取材。当事者たちが語る「StreetVoice」の特異性

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2026.02.27

去る1月21日(水)、台湾・台北のLegacy TERAにて『StreetVoice Awards』授賞式が開催された。

本アワードは、台湾および中華圏の音楽リスナーに広く支持される音楽プラットフォーム「StreetVoice」が主催するもの。プラットフォーム上のデータやユーザーのエンゲージメント、編集部が日々追い続けてきた動向を踏まえ、現在大きな影響力を持つ、あるいは今後の飛躍が期待されるアーティストを毎年選出している。単なる音楽賞にとどまらず、台湾インディ音楽シーンの動向をキャッチする上で、重要な窓口となりつつある。

また、「StreetVoice」というプラットフォームの成り立ち、特性については先日掲載した、創設者へのインタビュー記事で詳しく紹介している。

デモ音源や未発表曲の公開の場であると同時に、リスナーとの直接交流も可能なソーシャル機能も併せ持つ「StreetVoice」は、リアルタイムランキングや編集部によるキュレーションプレイリストによるレコメンド、さらにライブハウス「Legacy」や音楽フェス『簡單生活節(Simple Life Festival)』とも相互に連携し、オンラインとオフラインが連動する創作サイクルを形成。長年にわたり台湾インディ音楽シーンの発展を支えてきた存在だ。

INTERVIEW | 張培仁(StreetVoice)

Spincoasterでは今回、3回目を迎えた『StreetVoice Awards』を現地取材。権威的な緊張感はなく、笑いや軽妙なやり取りも交錯する温かな雰囲気の中で式は進行した。ジャンルも活動形態も多様でありながら、シーン全体を包むゆるやかな連帯感が印象的であり、このような自主性とコミュニティ性を兼ね備えた空気感は、日本の音楽シーンにとっても示唆に富む光景だった。

本記事では、今年の受賞者からR&Bシンガー・羊駝小姐 Malpaca、そして6人組バンド・野巢 Nosuという、Spincoasterが注目する2組への現地インタビューをお届けする。当日の熱気とともに、台湾インディシーンに漂う「何かが始まりそうな予感」を感じ取ってもらえれば幸いだ。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by StreetVoice提供


INTERVIEW:羊駝小姐 Malpaca

――日本語がお上手だと伺いました。どこで日本語を覚えたのでしょうか?

羊駝小姐 Malpaca:(日本語で)母が日本の大学で勉強していたんです。だから私も少し日本語を教えてもらいました。大学とお母さんのおかげでちょっとだけ喋れるようになりました。

――リスナーとして、あるいはクリエイターとして、「StreetVoice」はいつ頃から使い始めましたか。

羊駝小姐 Malpaca:かなり早いです。2020年頃にはもう使っていました。最初は曲をアップするためにダウンロードしました。でも使ってみると、自分と同じように自分の音楽を発信したい人がたくさんいることがわかりました。このプラットフォームには、そういう人たちの居場所があると感じたんです。

普段使うストリーミングサービスでは、メインストリームの音楽や、すでに人気のアーティストの作品ばかりが目立ちますが、「StreetVoice」はそうではない。それが一番おもしろいところだと思います。

「StreetVoice」は多くのアーティストを発掘し、ステージに上げてくれました。私も一度オーディション企画に出演しました。駆け出しのアーティストにとっては本当に貴重な経験ですし、それ以外にも多くの露出の機会を与えてくれました。

また、レビューを書いて推薦してくれたりもします。私のようなインディアーティストの立場からすると、とても嬉しいことです。本当に、本当に感謝しています。

――今回のアワードでは、「ジャンル別賞(Genre-Specific Awards)」にて「Urban」に選出されました。今の心境を教えてください。

羊駝小姐 Malpaca:少し意外でした。というのも、(賞に選出された)“禁止戲水 ft. 鄒序”を発表したときは、なんて言えばいいんでしょうか……どちらかというと、自分のために作った曲という感覚が強かった。特別メインストリームへ向けて発表したわけではないんです。でも、予想に反して多くの人に聴いてもらえることになって。……だから、とても嬉しく思っています。

――R&Bや一部のヒップホップ、ネオソウルやジャズを内包した、いわゆる「Urban」と呼ばれるサウンドスタイルは、台湾でも広がりつつあると感じますか?

羊駝小姐 Malpaca:台湾ではまだそこまで一般的、大衆的とは言えないかもしれませんが、今後はより多くの人が聴くようになると思う。最近人気を集めているアーティストにも、こういったサウンドスタイルの人が増えたように思います。たとえば、昨年『金曲奨(Golden Melody Awards)』(※1)を受賞した陳以恆(Yi Heng Chen)のアルバムも、ソウルの要素が感じられる作品でした。

※1:台湾の文化部が主催する中華圏最大かつ最も権威ある音楽賞。「台湾版グラミー」とも称される。

――あなた自身はどのようにして今のサウンドスタイルに辿り着いたのでしょうか。

羊駝小姐 Malpaca:自分が聴いてきた音楽、吸収してきたものが、ブラックミュージックから影響を受けたものが多かったからだと思います。自分が本当に好きで、自分に合った表現方法を追い求めていった結果、今のスタイルになったんだと思います。

――特に影響を受けたアーティストを挙げるとすると?

羊駝小姐 Malpaca:蔡雯慧(Wen-Hui Tsai)先生というミュージシャンの下でジャズを勉強しているので、いろんなジャズやブラックミュージックの影響を受けた音楽を聴いています。特に好きなのはErykah BaduやRobert Glasperなどですね。

――「羊駝小姐 Malpaca」というユニークな名前で活動を開始したのはいつ頃からですか?

羊駝小姐 Malpaca:2年前です。いろんなコンテストに出るようになったのですが、大学の教授にバレたくなかったので、この名前を使い始めました。私はアルパカという動物が好きで、自分に似てるような気がしたんです。自分は大学で勉強しながら音楽をやっていたり、ちょっと普通の枠から外れた、少し変わった人間だと思います。曲の中では深い内容を語ろうとするのに、話すときは冗談ばかり言ってしまう。アルパカも、どこかそんな存在なんじゃないかなと思って。

――昨年は日本のラッパー・SOMAOTAとのコラボ曲“readme.txt”を発表しましたね。このコラボレーションの経緯を教えて下さい。

羊駝小姐 Malpaca:Sogare(曾我黎)(※2)さん経由で知り合ったのですが、彼の音楽を聴いて、コラボしたいなと思ったので、デモ音源を送ってみたんです。そうしたら彼もすごく気に入ってくれて、データを送り返してくれて。それであの曲が完成しました。

※2:日本人マルチクリエイター。以前は台湾を拠点に活動していたが、現在はドイツ・ハンブルク在住。

――昨年末には日本でのライブも行いました(Leo王の来日公演のオープニングアクトとして出演)。日本でのライブはいかがでしたか?

羊駝小姐 Malpaca:演奏中、客席がまるで息を止めているかのように感じられた瞬間がありました。本当に真剣に、私たちの歌や演奏をじっくりと聴いてくれているんだなと。それがすごくクールだと思いました。

終わった後も、とてもいいフィードバックをたくさんもらいました。以前から私のアルバムを聴いていたと言ってくれる人もいて、日本のリスナーの方と交流できたことも嬉しかったです。

――2026年の目標や展望などを教えて下さい。

羊駝小姐 Malpaca:単独公演を開催できるように、準備をしています。あと、いろんな人とのコラボレーションも進行中です。例えば、問題總部 It’s Your Faultのボーカル・丁佳慧(Hana)さんや、Leo王さんと一緒に曲を作っていて。Leo王さんとの曲はもうすぐリリースされる、彼のアルバムに収録されます。

■羊駝小姐 Malpaca:Instagram / StreetVoice


INTERVIEW:野巢 Nosu

――今回のアワードでは、「Jury Awards of the Year(年度評審團推薦)」にて選出されました。今の心境を教えてください。

野巢 Nosu:「StreetVoice」はただのプラットフォームじゃなくて、ある種の「先見性」を象徴していると思っています。台湾の音楽がこれからどんな方向に行けるのか、どんな新しい「呼吸」を持ち得るのか、そういうことを考えている場所。単に音楽を届ける場というだけじゃない。私たちは「最も多く聴かれたアーティスト」というわけではないけれど、そういった意味での評価だと思っています。とても光栄に感じています。

――アーティストとして、リスナーとして、「StreetVoice」をどのように使用していますか?

野巢 Nosu:編集部のレコメンドコーナーが好きです。いろんな人がいて、それぞれが「そのアーティストを推薦する理由」を書いている。最近だとLanLanというバンドを「StreetVoice」のレコメンドから知って、気に入りました。

――アーティストとしての目線で、便利だと思う機能は?

野巢 Nosu:1曲毎に説明文を書けるんですけど、私たちはかなり長い文章を書いています。まるで自分たちのブログみたいな場所にもなっています。他ではあまり言えないことも、特に形式に縛られることなく自由に書けるんです。これはとてもおもしろい機能だと思います。

あと、一番特別なのは、楽曲を発表するのに何か契約を結んだりする必要がないこと。登録すればそのぺージはもう自分たちのもの。レコード会社と契約する必要もない。すごくピュアなプラットフォームだと思います。ギター一本と歌だけ、という形でも楽曲を載せられる。

――野巢 Nosuの結成の経緯について教えてください。

野巢 Nosu:私たちの多くが大学の同級生です。2022年頃から何曲か書き始めて、徐々にメンバーを集めていきました。台湾藝術大学(NTUA)と台北藝術大学(TNUA)、両校にあったサークルのようなコミュニティを通じてつながりました。

最初は3人で、「三隻小鳥」という名前で活動していました。ドラムだったメンバーが後にボーカルも担当するようになったりして、楽器に縛られたくないと考えるようになりました。彼は歌も上手いし、曲も書ける。だから、新しい形を一緒に探しました。

今は、基本的には6人編成ですが、昨年12月末の単独公演では大学時代の友人も集めて12人で演奏しました。あの公演は特別でした。

野巢 Nosu:トランペッターの林佳穎(Leia Lin)とトロンボーン奏者の張硯翔(Yen)は、大学時代にジャズに興味を持ち始め、その後、林佳穎(Leia Lin)はアムステルダムでジャズの大学院に進学し、張硯翔(Yen)はロンドンのTrinity Laban BMus Jazzに進みました。そこからより自然にジャズと向き合うようになりました。でも、それは急激な変化ではなく、徐々に起きた変化、「やわらかな変化」ですね。

――「野巢(Nosu)」というバンド名は、日本語での読み方を意識されているのでしょうか?

野巢 Nosu:はい。日本語読みを意識しています。日本人の友人にこの2文字(野巢)をどう読むか聞いたら、「Nosu」と発音したので、それがシンプルで覚えやすいと思いました。海外の人にも覚えやすく、発音しやすいかなと。

――昨年リリースの1stアルバム『Turntable in the Lift』は本当に素晴らしい作品でした。このアルバムのコンセプトやテーマを教えてください。

野巢 Nosu:アルバムのコンセプトは、アートワークで表現しているように、回り続けるレコード盤のようなもの。エレベーターの中で回っているようなイメージもあります。このアートワークはみんなで粘土をこねて作った螺旋状の立体レリーフなんです。

昨年、トロンボーン/ギター担当の張硯翔(Yen)がロンドンに留学していたので、最初は遠隔でデータを送り合いながら制作していましたが、8月に全員をロンドンに招集し、一気に仕上げました。1曲目の“flight”はそのまま「飛行機」がテーマで、離れた場所にいる私たちを表現しています。アートワークもロンドンで作ったものです。

――あなたたちは今の台湾のインディシーンの現在のトレンドについて、どのように感じていますか?

野巢 Nosu:今の時代、多かれ少なかれ、誰もがクロスオーバーした音楽を制作していると思います。私たちも、私たちなりのクロスオーバーした音楽を作っていけたらなと。

――野巢 Nosuを気に入ったリスナーに、特にオススメしたい台湾のアーティスト/バンドはいますか?

野巢 Nosu:I’mdifficult(我是機車少女)、Elephant Gym(大象體操)、deca joins……あとはアフロキューバンジャズを取り入れた音楽性で知られる徐祟育(Vincent Hsu)などですね。日本のバンドだとCASIOPEA(カシオペア)とかCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINが好きな人なら気に入ると思います。

CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINは、去年の『浪人祭Vagabond Festival』で知って、私たちと近いものを感じました。

――では最後に、2026年は野巢 Nosuとしてどのような活動を予定しているのか、言える範囲で教えてください。

野巢 Nosu:今年は……まだ制作中の曲が多いので、焦らず進めたいと思います。次のアルバムは来年になるかもしれません。張硯翔(Yen)はまだイギリスの大学院を卒業していなくて、現在は休学中です。もしかしたら大学院には戻らないかもしれません。また、ギター/ボーカルの林書妍(sulysalt)はソロアルバムの制作を予定しています。

バンドとしては、みんなと一緒に、より違うものを探求したいと思っています。もっとジャズ寄りの曲とか、個人的な表現とか。私たちは6人だけじゃなくて、演奏は12人でもできたし、好きなこともきっと12人でできると思っています。そう考えられるようになったのは、大学時代に私たちに大きな影響を与えてくれた人物の存在があったからです。

■野巢 Nosu:Instagram / X / StreetVoice


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