Text by Yuka Ishizumi
Photo by kyonntra
東京・渋谷ストリーム前の稲荷橋広場で6月2日(火)、新たなライブイベント『Interlude vol. 01』が開催された。出演はNenashiと永井琳子。ライブ目的で足を運んだファンもいれば、仕事帰りや次の予定の合間に足をとめる人、インバウンド観光客など、普段は交わらない人々が日常と地続きのエアポケットで、音楽を媒介にひとときの時間を過ごした。
この日は台風6号の影響で開演の19時頃にはごくわずかな降水が。が、むしろ空気が浄化され嵐の前とは思えない穏やかなムードの中、バンドを率いシンガーソングライターの永井琳子がオンステージ。YouTubeやTikTokでのカバー動画が話題を集め、昨年9月に1stシングル“Halo”をデジタルリリース。このシングル以降、音源やライブを共にする今村晃大(Gt., Cho.)、久須美理九(Ba., Cho., Per.)、井手内陸(Dr.)が脇を固める。
永井と今村のアコギの爪弾きが涼やかな風を運ぶ1曲目は挨拶がわりの“Halo”。丸みとクールさが共存する声質で「難しいことじゃない、あなたもわたしも光〜誰もが思い歌になるから」と静かに意思表明する。ボサノヴァアレンジの“恋の面影”に続いては永井のラップが転がっていく“スーパーぴえん状態”へ。心配したほどの豪雨じゃなかったことなど曲中に話すスタイルはちょっと中村佳穂の自由さにも近い。
翌日が誕生日だという永井に拍手が贈られ、「22歳最後の夜というわけで次はカバー曲を」と、“プラスティック・ラブ”を歌う。たまたま通りがかった外国人観光客と思しき少年3人がステージ近くで見入っていたが、ボッサから4ビートへ変化する洒脱なアレンジは大人のシティポップファンにも届いていただろうか。この日は初めてのアコースティックセットだと話していたが、余白の多い演奏は車の流れなどの環境音すらアンサンブルの一要素に取り込む柔らかなタフさも。
“line”で思わず笑いが起きる抜き差しを聴かせたあとはこの日のシチュエーションに偶然にもリンクした“雨宿らず”。ネオAORともポストシティポップとも呼べる音楽性に、敢えて雨の中を進んでいく令和ガールのマインドセットを乗せた歌詞が新鮮で、エネルギーに満ちたロングトーンを放ってフィニッシュ。音を鳴らすことで愉快になる4人の空気が観客を笑顔にした。
もう一組のアクト、Nenashiは制作の相棒でもあるKibunya(Tp., Syn., Cho.)とのデュオスタイル。台風接近の影響で45分を30分セットに急遽変更したにも関わらず、臨機応変にトータル9曲を届けてくれた。オープンマイク出身で世界各地で歌ってきた地肩の強さと言うべきか。デビュー曲“Lost in Transration”の滑らかなビートと揺蕩う音像でスタートして、さながら気分は渋谷を彷徨う異邦人。彼が纏う自由な空気と音像で全身が緩む。

音源でのDaichi Yamamotoのラップパートもこなす“Say My Name”と、違うテーマの歌詞でも驚くほどNenashiの音楽は都市の渦中に似合う。「台風チャンミーのせいでライブができるのかできないのか、30分なのか45分なのか振り回されてますけど、渋谷の街もおんなじで、再開発で変わっていったりどうなの? と思うけれど『Interlude vol. 02』に辿り着けるように盛り上がっていきましょう」と、移り変わる状況を受け入れて楽しむ姿勢を見せる。
Kibunyaのトランペットが晴れ渡るイメージの“I’m (Back to Love)”、“STAY”と、ウォーミーな曲を続けたあとは5月にリリースされたばかりの新曲“In The City”で少しソリッドなムードへ転化。とはいえ、ソフトでオフビート気味のジャージークラブはどこまでも洒脱。7月29日(水)リリースの2ndアルバム『MOMENT』はさまざまな時代の音楽のエッセンスをNenashiのフィルターを通してアウトプットしているとのこと。この日新曲を聴けたことで期待が高まった。
“Scars”の途中で救急車のサイレン音が近づいて苦笑いする場面もあったが、それも含めてのライブだ。予報より雨足も弱く、やれるところまでやってみようと、パッと空間が開くメロディの“Gonna Be Good”、続く“Unlikely Soul”ではスムースなロングトーンで放たれる「あなたの魂は素晴らしい」という歌詞が心を満たす。ラストはKibunyaがハンズクラップ、Nenashiが「足元が悪くなければぜひ踊ってください」と促し、アッパーな“LIME”で最後まで心地よいグルーヴで満たしてくれた。
周りを見ると親子連れも、界隈のお店の方か近所にお住まいの方か、買い出し帰りの女性の姿もあり、いつもの渋谷ならむしろ感じられない長閑さにホッとする。渋谷の公共空間を活かし、「都市の中で出会う音楽と、ひと息を。」をコンセプトに掲げた本イベント。タイトルの『Interlude』は、「幕間」や「間奏曲」を意味する言葉であり、都市の喧騒の中に一瞬現れる「間」のように音楽を通じて余白を見出したいという主催者の意図は、Nenashiと永井琳子の音楽性とキャラクターによってまさに「余白」たりえていた。
ゲリラライブ的な刺激とは正反対に、平日の仕事終わりに個人に戻る人たちにとってむしろ心地よいチューニングの時間になっていたのではないか。抜けのいい空間には大階段もあれば、特等席でビールが飲めるバーガーショップのテラス席もある。訪れた時の気分で楽しみ方が選べるこのイベント、早くも次回が8月20日(木)に開催決定。公式SNSをフォローし、詳細の発表を楽しみに待とう。
【イベント情報】

『Interlude vol. 01』
日時:2026年6月2日(火)19:00~21:00
会場:東京・渋谷ストリーム前 稲荷橋広場
出演:
Nenashi
永井琳子(Band Set)
主催:東急株式会社、株式会社マグネットスタジオ
■Interlude:Instagram
【リリース情報】

永井琳子『雨宿らず』
Release Date:2026.02.18 (Wed.)
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Nenashi『In This City』
Release Date:2026.05.20 (Wed.)
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