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REPORT | Nenashi “Found in Tokyo” Release Party


世界中を旅したNenashiが「東京で見つけたもの」──盟友や豪華ゲスト集結の記念碑的ライブを振り返る

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2024.05.27

Text by Yuka Ishizumi
Photo by Sachiko Yamada (origami PRODUCTIONS)

音楽だけにフォーカスして欲しいという動機から一切素性を明かさずシングル“Lost in Translation”でデビューしてから約5年。2021年、300万回再生を超えたヒット曲“Scars”のリリースタイミングで日本のシンガー・Hiro-a-keyであることを明らかにしたNenashi。その後もアーティストネームの由来である「根無し草」よろしく、日本、フランス、イスラエル、アメリカ、タイなど世界中のアーティストと共振し、ボーダレスなコラボレーションを実現して作り上げた1stアルバム『Found in Tokyo』を今年4月にリリースした。

5月17日(金)には同作に参加した多彩なアーティストや、ホームである〈origami PRODUCTIONS〉の面々を迎え、東京・丸の内COTTON CLUBにてアルバムのリリースパーティが開催された。ここでは同公演の2nd Showの模様をレポートする。

開演前のDJタイムをレーベルメイトであるmabanuaとKan Sanoが各々30分担当していることもかなりレアかつ贅沢である。2人ともノンジャンルでさまざまな国のアーティストのグルーヴィな選曲で場を徐々に温め、そのチョイス自体がNenashiのアーティスト性に通じているようだ。

Kan SanoのDJからシームレスにステージに上がったNenashi(Vo. / Syn. / etc.)、Kibunya(Tp. / Syn. / etc.)、山近拓音(Dr.)の3人はデビュー曲“Lost in Translations”からライブをスタート。NenashiのシルキーボイスとKibunyaのエフェクトを施したトランペット、山近拓音の打ち込みのニュアンスを生身に落とし込んだビートが、クールさと熱情のバランスを体現する。このトライアングルがNenashiの音楽におけるアイデンティティを支えていることがライブでより理解できた。

「今日はたくさんゲストが来てくれているので、早速ひとり目を呼んでみようと思います」と呼び込まれたのはレーベルメイトでもある関口シンゴ(Gt.)。子供の頃、素直に世界を見てみたいと願った気持ちに戻りたいと歌う“Take Me Back”に、関口シンゴの艶やかなソロがライブアレンジならではのパッションを添え、大きな拍手が起こる。自分が主役でありつつ多彩なゲストを迎えるホストでもあるNenashiだが、場を回す以上に音と音で起きる心の還流に笑顔が自然と溢れていた。

続いてアジアと欧米の多国籍のルーツを持つSSW・Sincereを呼び込み、Nenashiがプロデュースした彼女のレパートリー“All I See”を披露。Sincereの甘さと清潔さがないまぜになったボーカルとNenashiの相性のよさがライブで実証される。また、そこにレーベルメイトのShingo Suzuki(Ba.)も加わり、アルバムではイスラエルのJ.LAMOTTA すずめをフィーチャーしたネオソウルフレーバーの“Gonna Be Good”も新たな表現に昇華。明るく開けていくサビで自然とハンズクラップが起こった。

Sincere

続いてはグラマラスなフィロソフィを振り撒くAile The Shotaがステージに上がり、Nenashiと共作した“Like This”を歌う。Aile The Shotaが〈origami PRODUCTIONS〉のアーティストとのコラボを希望し、レーベル〈BMSG〉のボスである日高光啓(SKY-HI)がNenashiを提案したというエピソードのある曲だ。エアリーなAile The ShotaとNenashiのファルセットの融合を生で体感すると、オルタナティブR&Bの新しいシンガー像が眼前で更新されるような感覚を覚えた。

手応えを感じたのか、Aile The Shotaが「COTTON CLUB、めちゃくちゃいいですねえ。僕もここでワンマンやりたいです」と発言すると賛同の拍手が。初めてAile The Shotaのライブに触れる人を巻き込むアーティストパワーももちろんだが、何よりNenashiを軸とするオープンな磁場が形成されていることがコラボレーターにもオーディエンスにも居心地がいいのだ。Aile The Shotaとはもう1曲、彼のオリジナル曲“so so good”のNenashiライブバージョンを披露してくれた。

Aile The Shota

再び関口シンゴがステージに上がり、アルバム『Found in Tokyo』のリードトラック“Say My Name”で共演したDaichi Yamamotoが呼び込まれ、大きな拍手が起きる。まずはDaichi Yamamotoのオリジナル“Sol”を披露。Daichi Yamamotoは京都、Nenashiは東京という各々が立脚する街を背景に歌われるような2人のユニゾンがとても響く。明るく乾いた世界観を関口シンゴのエピフォンカジノの音色がさらに広げてくれた印象だ。Daichi Yamamotoもニューアルバム『Radiant』をリリースしたばかりで、お互いにアルバムが世に出たことを祝っていた。

そしてNenashiが初めて日本語詞を取り入れたDaichi Yamamotoとのコラボ曲“Say My Name”を歌う。大人になると助けを求めにくくなるからこそ、「いつでも呼んで」と意志表示しておくことの心強さが沁みる。2人の声や言葉、Kibunyaの夕焼けを思わせるトランペットのリフが一体になり、人と人の出会いの美しさにフロア全体が感銘を受けていたように思う。

Daichi Yamamoto

充実のコラボを経て、終盤はNenashiのパーソナルな内面に降りていく。再びShingo Suzukiを呼び込む。小さな傷あとにも全て物語があると歌う“Scars”の静かに熱く心に入り込むボーカルや洗練されたアレンジは時代の要請ももちろんあったけれど、コロナ禍にバラバラになりがちだった世界中のリスナーに響いた。同じような時間を過ごしてきたリスナーにとって、これはただセンスのいい曲以上の何かに育っているようにみえた。

そして本編ラストはグッとエレクトロニックなオルタナティブR&B“Satelilte Lovers”で、メランコリックかつセンシュアルなボーカルを披露。茫漠とした空間が膨張していくような山近拓音の立体的なドラミングの迫力にも拍手と歓声が巻き起こったのだった。

程なくしてアンコールに登場したNenashiは改めてKibunyaと山近拓音を紹介し、関口シンゴとShingo Suzukiも呼び込み、DJを買って出てくれたmabanuaとKan Sanoも含め、レーベルメイトの尽力に謝意を表明していた。彼にとって「東京で見つかったこと」の中心に〈origami PRODUCTIONS〉のアーティストやスタッフとの出会いを実感する場面だった。記念すべきライブの締めくくりはアルバムのラストを飾る“Sunny”だ。シンプルでアンビエントなオケの上で清潔なセクシーさを放つNenashiのボーカルに色を差すようなギターやベースの生音が美しい。新しい始まりを告げるに相応しいこの曲で、リリースパーティは終演した。

すでに発表されていたフジロックへの初出演も本人の口から告げられ、フロアの大きな拍手に期待感が見て取れた。2024年後半、SSWでありプロデューサー、トラックメーカーとして、Nenashiは独自の存在感をさらに強めていくはずだ。

Set List
1. Lost in Translations
2. Take Me Back feat. 関口シンゴ
3. Gonna Be Good feat. Sincere & Shingo Suzuki
4. All I See (Sincere)
5. Like This feat. Aile the Shota
6. so so good (Aile the Shota)
7. Pickin’
8. Work Song
9. Unlikely Soul
10. Sol (Daichi Yamamoto) feat. 関口シンゴ
11. Say My Name feat. Daichi Yamamoto
12. Scars feat. Shingo Suzuki
13. Satellite Lovers
ENC. Sunny feat. 関口シンゴ、Shingo Suzuki


【イベント情報】


『Nenashi “Found in Tokyo” Release Party at COTTON CLUB』
日程:2024年5月17日(金)
会場:東京・丸の内 COTTON CLUB
出演:
Nenashi

[MEMBER]
Nenashi(Vo., Syn., etc.)
Kibunya(Tp., Syn., etc.)
山近拓音(Ds.)

[GUEST]
Daichi Yamamoto
関口シンゴ
Aile The Shota
Sincere
Shingo Suzuki

[DJ]
mabanua
Kan Sano


【リリース情報】


Nenashi 『Found in Tokyo』
Release Date:2024.04.24 (Wed.)
Label:origami PRODUCTIONS
Tracklist:
01. Lost in Translation
02. Say My Name feat. Daichi Yamamoto
03. Scars
04. Take Me Back
05. Unlikely Soul feat. FORD TRIO & Mike Larry Draw
06. Gonna Be Good feat. J.LAMOTTA すずめ
07. Be (Vis ta Vie) feat. 20syl from Hocus Pocus
08. Satellite Lovers
09. Pickin’
10. Work Song feat. Mike Larry Draw
11. Sunny

DISC2『”At the Crib” Cover songs by Nenashi』(CD限定版のみ付属)
01. How Come U Don’t Call Me Anymore (Prince)
02. Frontin’ (Pharrell)
03. Kiss of Life (Sade)
04. Shape of You (Ed Sheeran)
05. Open Your Eyes (Bobby Caldwell)

配信/購入リンク

『Found in Tokyo』 特設サイト

■Nenashi:X(Twitter) / Instagram


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