FEATURE

INTERVIEW | claquepot


数字では測れない音楽への愛とプライド、変わりゆく時代に己を貫く最新作

PR
2026.07.10

claquepotが新作EP『キャリア』を2026年6月17日(水)にリリースした。

これまで『DEMO(デモ)』『press kit(プレスキット=作品資料)』『the test(テスト)』『recruitment(採用)』といったビジネス的なタイトルを掲げた作品を発表してきたclaquepot。『キャリア』と題された今作は、まさにこれまでの道のり(キャリア)とこれからの飛躍(キャリアアップ)を感じさせる鮮やかな作品に仕上がっている。

また、今作には彼が歩みを進めるなかで直面してきた、現代ならではの葛藤も色濃く反映されている。SNSの在り方やテクノロジーの進化など、音楽を取り巻く環境が激変するなかで、ひとりのクリエイターとして何を想い、自身のスタイルをどう貫くのか。新たな体制で生み出した今作の裏側には、再生数やインプレッションだけでは推し量れない、音楽に対する確固たる愛とプライドが滲んでいる。

目前に控えるZeppツアーに向けた意気込みも含め、本インタビューでは自身の現在地について、じっくりと語ってもらった。(編集部)


「あの頃から一歩ずつ前に進んできたから、今この立ち位置にいる」

――レーベル移籍後、およそ1年ほどシングルリリースを重ねてこられましたが、最初からEPを視野に入れていたのでしょうか。

claquepot:EPリリースを目標にコンスタントな曲作りを続けてきました。リリース時期は大枠で決めていましたが、収録曲数やコンセプトは決めずに点で作ってまとめた感じです。

――全曲カタカナ4文字というのは意図的に?

claquepot:決めていました。一番最初のEP『DEMO』も全曲4文字だったので、それを踏襲したくて。あの頃から一歩ずつ前に進んできたので、今この立ち位置にいるんだ、という原点回帰。あとはシンプルに文字数を揃えるのが好きなんです。

制作中は自分のライフステージの変化を感じていました。だからアルバムタイトルも「今の自分はこうです」という提示として『キャリア』にしようかなと。完成してから決めました。

――これまでの「キャリア」でターニングポイントを挙げるとしたら?

claquepot:去年の代々木第一体育館(『Taiki Kudo VS claquepot Two Man Live Tour 2025 Twin Ship』)ですね。弟との対バンという形でしたが、自分のキャリアとして最大規模の場所に立てたので。

――あのライブを改めて振り返っていかがでしょう。

claquepot:満足度は100%です。ゲストをたくさん呼んで、お祭りみたいでしたね。渋谷のクラブで一緒にやってきたメンバーたちと共に、渋谷で一番大きい代々木第一体育館で遊んだような感じ。

ファンの方が「あのステージがフラッシュバックする」と言ってくれたのは嬉しかったですね。もともと顔出しをあまりしていなかったので、ライブ映像は暗い照明に引きの映像という形が基本なんですけど、それでも楽しんでもらえるのがありがたいです。

――新作はプロデューサー・きなみうみさんとの全曲共作ですが、こちらの経緯についてもお聞きしたいです。

claquepot:もともと個人的に注目していて、SNSをフォローしていたんです。それから別の仕事でご一緒する機会があって。その際に、さまざまなジャンルへの解像度が高くて驚きました。自分のごちゃ混ぜ感を的確に理解してくれるんですよね。年齢的には年下だけど、幅広いサウンドスタイルに対応している方なので、今回は初めてEP全曲をひとりのプロデューサーに委ねました。

――制作はどのように?

claquepot:ほぼリモートです。基本的にはデータのやりとりで進めていきました。直接会ったのはミックスチェックのときくらいですね。トラックを送ってもらい、こちらからトップライン(メロディ+歌詞)を付けて送り返して、微調整して再レコーディング、という作業を繰り返しました。

毎回の方向性は「次はこういう曲を作りたい」と、こちらから提示しました。1曲できたら次の曲の方向性を考えて、きなみさんにまたお願いして。それを1年続けたら『キャリア』になりました、という感じ。


最適化への反発、クリエイターとしての尊厳とルール

――収録曲についても教えてください。特に思い入れのある曲は?

claquepot:“アグノス”です。自分の決意表明みたいな曲で、血迷ったときの軌道修正用として書きました。「好きだからやってるんでしょ?」という原点に戻れるパンチラインを詰め込んでいます。

この先、もし音楽を辞めようと思ったり、自分のやりたいことよりもビジネス的な成功を優先させようとか、そういうことが頭によぎる瞬間が来たら、この曲を聴き直そうって思います。未来の自分にプレッシャーをかけているとも言えますね。そういう曲も自分には必要だなと思って書きました。

――“オウライ”は《そこら中コピー&ペースト》や《一線は越えない軸とスタンス》など強いワードが多く、社会派な印象を持ちました。この曲は何に対してのアンチテーゼなのでしょう。

claquepot:「流行りに乗らないとアルゴリズムに弾かれる」みたいな風潮への反発です。マニアックなことをやると再生数が上がらないから、誰もが同じような曲を作るようになる……そんな現状に対して、モヤモヤした気持ちがありました。

「(時流的に)これはやった方がいい」とアドバイスされても、それで実際に成功するかどうかもわからないし、だったら自分のスタイルを崩さない方がカッコいい。《一線は越えない》という部分は、そういう意味ですね。

――アルゴリズムといえば、本EPの制作期間は、ちょうど音楽AIが現場に普及していった期間とも重なります。そういったことも意識されていました?

claquepot:ちょうど“オウライ”や“ランダバ”を作っていた頃に悩んでましたね。作業面では便利なものはどんどん取り入れていきたいけど、クリエイターとしての尊厳は守りたい。

ビジネス的観点だけで言えば前者が正しいかもしれないし、何が正しいのかという問いに、自分の答えはまだ出ていません。ただ自分の中のルールとして決めているのは、他のクリエイターのプライドを冒涜しないこと。

AIの曲をリファレンスに指定して「これと同じ曲を作ってください」って言われたら絶対に嫌じゃないですか(笑)。企画書は自分が作る、情報収集にAIを使うのはアリ、といった線引きはしています。

――なるほど。

claquepot:オートチューンやクオンタイズに似てますね。ミュージシャンのマニアックな部分とか手癖はおそらくまだ再現が難しいと思うので、結局は原点に戻ってくるのかなと。「テクノロジーが発展したからもうやめるわ」とならないのは、音楽が好きという証明なのかもしれません。

――“ラヴィン”は収録曲のなかで唯一の新曲ですね。これについては?

claquepot:EPの最後をどうするかという話のなかで、ミッドテンポな曲をしばらく作っていないと思ったんです。久々に作ってもいいかなと。

――“オウライ”の尖った気持ちとは対照的ですね。

claquepot:意識したつもりはなく、結果的にそうなりました。でも、根っこで言いたいことは変わらず、「好きなことは誰にも邪魔できないから続けよう」ということなんです。

“ラヴィン”は一見王道な恋愛ソングに聴こえるかもしれませんが、音楽や好きなことへの愛情、そこから生まれる幸せも含めて、いろんな愛に当てはめて聴いてほしいです。


変化する社会と、若い世代への眼差し

――ヒップホップやダンスチューンが人気を獲得しやすい昨今、あえてバラードを作るのって難しくないですか。

claquepot:めちゃくちゃ作りづらいですね(笑)。アップテンポなら耳馴染みやフロウが重視されますし、やはりバラードだと歌詞の比重が大きいので。この曲は自分以外の職業や立場の人にも当てはまるように書く、という命題が達成できたので満足度は高いです。いつの時代に歌っても胸を張って歌える曲になりました。

あとは受け取り手によって内容が変わるのが、人間が書く歌詞のおもしろさだなと改めて思いました。整っていて読みやすい文章はもはやAIの方が書けると思いますが、まだ比喩表現や言葉の奥行きまで到達できてない印象です。そこで勝負するしかないんじゃないかなと。ただ、こういう曲をいくつも書くのは難しいかな……。もう当分は作れないと思います。

――バラードが共感を得づらい時代でもある?

claquepot:以前は個人的だったり、細かい部分にフォーカスした曲でもヒットしてましたよね。でも現代では、自分に共感できない曲をスルーしがちなのかなと。そういった差はあると思います。

――YouTubeやストリーミング以前と比べると音楽の聴き方自体も随分と変わりました。

claquepot:それが最近、一番考えていることかもしれません。若い子と話すと「好きなアーティストの曲しか聴かない」とか、ダンスをやっている子は「レッスンで使った曲に関連するものしか聴かない」と言う人もいて。だから他のジャンルに到達しづらいのかもしれません。

僕の世代はCD屋さんに実際に行って、そこで予測できない出会いも起きていたけど、今の子たちにはそれが起きにくい。だから、こちらが意図的にバグを起こす必要があるのかなと。自分がすでに若くない世代だということは、常に意識していますね。

――その一方で、TikTokやリールで昔の曲が突然バズるという現象もありますが。

claquepot:そういうイレギュラーが起きるのは、SNSのおもしろいところですよね。自分の撮る映像に合う曲を探すという音楽のあり方が生まれている。昔は逆に起こり得なかったことなので、そういう部分も含めて意識するようにはしています。

――他に世代差を感じる部分はありますか。

claquepot:SNSって最初から最強の存在が見えてしまうから、心が折れるタイミングが早いなと思います。歌でもダンスでも、とんでもないスキルの人がすぐに目に入ってくる。我々の時代は地元とか仲間内とか、まずは小さい範囲で一番になって、そこから外へ出てみたらもっとすごいやつがいて……という段階的な経験があった。だから耐えられたんじゃないかなっていう気がします。

そう考えると今、自分も若いときに彼らと同じような土俵で活動していたら、もしかしたらすぐに音楽を辞めていたかもしれない。自分より上手く歌える人や作曲できる人が、次から次へと流れてくるじゃないですか。個人的なところだと、Jacob Collierとかそういう方々を見ると、敬愛しているけれどどこか複雑な心境になります。こういった環境下で黙々と活動し続けている若い世代にはリスペクトしかないです。

――自分より若い世代が羨ましいと思うこともある?

claquepot:半々です。羨ましい部分はあるけど、リアルタイムで経験してきた深さは違うとも思っていて、トントンじゃないですかね。自分が過去に見てきたもの、聴いてきた経験に胸を張って提示してもいいかなと。


異ジャンルとの交差点、Zeppツアーに向けた「ライブ筋」

――そういえば、RUNG HYANGさん、向井太一さんとのプロジェクト・PARKの再始動も話題になりました。あれは、どういう経緯だったのでしょう。

claquepot:いつ休んでいつ再開するかを決めた記憶もなくて、たまたまご飯を食べに行ったときに「そろそろやるか」という感じになったんです(笑)。プライベートで仲がいいから、世間話の延長で「次いつやるか」を話すパターンが多くて。その緩さが長く続くコツだと、3人で話していて思います。

――3人で5月に開催されたライブ『PARK』は、ere、Re:inc.、Lumelといったオープニングアクトを務めたのが新鮮でした。

claquepot:僕ら以外も巻き込む形にしたかったんです。もともと自分たちがキュレーターになって、いろんなジャンルを横断できるフェスを作りたいという話をしていて。タイミングやテンションが合えば、今後そういう企画もあり得ますね。

基本は「これおもしろいよね」から始まるのがPARK。ふたりとも一緒にものづくりするとインプットがあるし、楽しい。それぞれ仲のいい友だちがいるジャンルが違うんですよ。でもそれをミックスできる環境って意外にないよね、という話もしていて。

――それはツーマンツアー『claquepot crosspoint 2026』の対バン相手がジャンルレスにバラけているのと繋がりますね。

claquepot:僕が好きな方々という大前提がありつつ、その上で自分の音楽性と少しでも重なるところがあるような、共通言語がひとつは絶対にあるという人たちにお声がけしました。もちろん、対バン相手がヒップホップのときはこちらもMPCとのセットでいくとか、相手によって編成を変えます。戦い方を変えることで自分も鍛えられると思うんですよ。

ワンマンの方がいいじゃんとファンの方には言われるかもしれないけど、先ほども話した音楽的な「イレギュラー」を起こしたいという気持ちがあって。ツーマンでしか生まれない化学反応で、対バン相手の音楽にハマる人が出てくれれば最高だなと。

――まさにアルゴリズムへの反抗としての「cross point」ですね。そして撮影OKになるという話も聞きましたが。

claquepot:これまではリスクヘッジが先に立っていたんです。ミスしたらどうしよう、変なことを言ったりして、それが動画で拡散されたら……という恐怖。でも若い世代の人たちの中には「炎上したらラッキー」ぐらいのスタンスの方もいるじゃないですか。ヘイトの裏には静かな拡散があると気づいたりもして。たとえヘイトが10あっても、その裏で無言で広めてくれる人が100いるなら、どちらに目を向けるべきかということですね。だから自分も新しいことを実験してみようかなと。

――ツーマンの後には『claquepot 2026 Zepp tour』も控えています。

claquepot:ツーマンでライブ筋を鍛えてから、Zeppツアーに臨みます。楽曲はライブ用に組み直すので、音源で想像していたものをいい意味で裏切る形になると思います。セットリストの組み方、会場を掌握するためのMC、アドリブで歌詞を変えてロックするとか、そういうのは場数と経験。DVDではカットされる部分でもあるから、実際に生の空気感を体験しに来てほしいです。ライブ筋、久々にちゃんと鍛えますよ。


【リリース情報】

『キャリア』通常版

『キャリア』初回限定版

claquepot『キャリア』
Release Date:2026.06.17 (Wed.)
Label:UCHIWA LABEL
Tracklist:
1. リーズン
2. オウライ
3. リビング
4. ランダバ
5. ラヴィン
6. アグノス

配信リンク / CD購入リンク


【イベント情報】

『claquepot zepp tour 2026 -キャリア-』
2026年8月11日(火)愛知 Zepp Nagoya
2026年8月21日(金)福岡 Zepp Fukuoka
2026年8月23日(日)大阪 Zepp Osaka Bayside
2026年8月25日(火)東京 Zepp DiverCity (TOKYO)

・チケット
プレイガイド2次先行:〜6月28日(日)23:59 mu-mo / ローソン / ぴあ / e+

公演に関するお問い合わせ:
愛知公演 – キョードー東海 052-972-7466(平日12:00〜18:00/土曜10:00〜13:00)
福岡公演 – キョードー西日本 0570-09-2424(平日・土曜11:00~15:00)
大阪公演 – YUMEBANCHI(大阪)06-6341-3525(平日12:00~17:00)
東京公演 – DISKGARAGE https://info.diskgarage.com

ツアー詳細

■claquepot:Instagram / X


Spincoaster SNS