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INTERVIEW | RUNG HYANG


芽生えた「覚悟と責任」──さまざまな「原点」をなぞる7年ぶりのアルバム『MOMENT』

2025.04.03

さまざまな経験を経た上で最初の位置に戻ってくることを英語で「come full circle(一周する)」というが、RUNG HYANGはいま、まさにそうかもしれない。

かつて2000年代後半に渋谷のアンダーグラウンドで盛り上がったジャズ~ソウル~ヒップホップのセッションムーブメントに足を踏み入れるようになって20年近く。“さくらびより”でメジャーデビューも経験するなどシンガーソングライターとしての軸だけでなく、瑛人やeill、YAMORIといった才能を輩出した指導者としての顔も持ち、Ms.OOJAやTokimeki Recordsなどへの楽曲提供も行ってきた。なにより、SIRUPや韻シスト、TENDREなど数々のアーティストとの共演を始め、DRAMATIC SOUL(竹本健一、MARU、Hiro-a-keyらと)、TOKYO CRITTERS(菅原信介、ZIN、Shingo.Sらと)、PARK(claquepot、向井太一らと)といったコラボレーションも豊富で、そうした彼女の「人の輪」をきっかけにRUNG HYANGの名を知ったという人も少なくないだろう。

そんな彼女が、実に7年ぶりのアルバムとなる『MOMENT』を4月2日(水)にリリースした。2ndアルバム『PHOTOGRAPH』(2018年)以降、1年に1作ペースでEPをリリースするなど精力的に活動を続けてきただけに久しぶり感は一切ないが、改めて「アルバム」を出すにあたっては、「シンガーソングライターとしての責任と覚悟が芽生えた」ことも大きいという。弾き語り、在日コリアン3世、ソウルミュージックやJ-POPへの愛──さまざまな「原点」をなぞる待望の3rdアルバム『MOMENT』はいかにして生まれたのか。シンガーソングライターとしての新たな「名刺代わり」となったこの新作について、そして間もなく開催される自身初のBillboard Liveツアーについて、おおいに語ってもらった。

Interview & Text by Hiroyuki Suezaki
Photo by Ayaka Horiuchi
Hair & Make-up by Megumi Kuji
Styling by Shinnosuke Kosaka
衣装協力:TODAYFUL, ALANDALA


「“祭り”をもう一度やりたい」

――配信全盛の時代になって「アルバム」という形態の意義が曖昧になってきていますが、EPではなく、あえてアルバムにした理由は?

RUNG HYANG:私は曲をつくることが好きなので、この7年はその衝動のままにつくってきたんです。でも、特に去年からライブなどでお客さんと実際に触れ合う機会が増えて、そこで「私だから提案できること」「私だから書けるもの」があることを今まで以上に教わったんですね。そこで、「RUNG HYANGはこういうものをテーマにしているアーティストなんだ」ってことをもう一回はっきりさせようという意識が強くなって。アルバムってアーティストとしての名刺代わりな部分があるんですけど、歳を重ねて、改めて私の名刺をつくり直したっていう感じです。

――いつ頃から「アルバムをつくろう」ってモードになったんでしょうか?

RUNG HYANG:去年の春夏ぐらい、『CLASSIC』(2024年5月)を出した後ですね。EPをつくることは、もはやシングルと同じぐらいラフというか、気を張ることなく自然にやっていたんですけど、もう一度自分にプレッシャーを課したいところもあったのかも。

――EP『CLASSIC』はもともとやっていたピアノ弾き語りのスタイルに回帰したところのある作品で、その後、弾き語りの単独公演も行っていましたが、そういう原点回帰的な経験が今回のアルバムを制作しようというモチベーションになったのでしょうか?

RUNG HYANG:そうですね。改めて自分が音楽を始めたときの弾き語りスタイルに戻ったとき、前とは違う自由さがあったんですよ。あと、そこから拾い上げるものもあって。ひとりきりでやる醍醐味もあるんですけど、人と音楽をやることも同じぐらい好きなんだなって改めて認識したんです。それに、弾き語りをやるとすごく大きなことをやりたくなるんですよね。なんか「祭り」がやりたいなって。

――祭り?

RUNG HYANG:裏側の話ですけど、前にアルバムを出したとき、自分と同じぐらいの熱量で多くの方が動いてくれた感覚があったんです。それも今回アルバムをつくることにしたきっかけのひとつで。そういう「祭り」をもう一度やりたいなと。あと、いまの自分を「置き石」として残したいというか。

――今回の『MOMENT』はCDでのリリースも予定されていますよね。昨年は“Trapped”の7インチに、EP『ROMANTIA』『AROMATIC』の2LPと自身初のレコード発売もありましたが、物理メディアでのリリースがあったことも影響がありました?

RUNG HYANG:すごく大きかったですね。やっぱりデジタルは気軽だし、遠くまで飛んでくれるので、特にフィジカルでリリースする必要性を感じていなかったんです。ある意味、時代に相反しているようにも思えて、自分からはそんな発想は湧かなかったんですけど、(レコードの発売元である)〈Kissing Fish Records〉の方が本当に私の音楽を好きでいてくれて、「“Trapped”のアナログをつくりたいんです」とオファーを下さって。実際のレコードができて初めて、手触りとか匂いとか、めちゃくちゃ感動したんですよ。自分が昔、好きなアーティストのCDを買ったとき、封を開けたらブックレットに初めて見る写真があったり、歌詞を見て……ってやっていたことを思い出したりして。

だから自分のアルバムも実際に触れられるものにしようと思ったんですよね。やっぱり歌詞を読みながら聴きたいという人もすごく多いので。フィジカルだと、デザインやアートワークとか、関わってくれた人たちのことをより感じられますし、デジタルは完璧じゃないんだなって思いました。そういう意味でも昨年は学びの多い年でしたね。


向井太一をはじめとしたアーティスト/クリエイターたちが集った「遊び場」

――2ndアルバムからだと7年、1stアルバム『Life is Drama』(2015年)からだと10年ぶりになるわけですが、当時と今とで制作スタイルは変わりましたか?

RUNG HYANG:当時はプロデューサー/トラックメイカーのトラックに自分を乗せるっていう表現の仕方だったんですけど、今回はどちらかというと自分のやりたいものに寄せてもらったところがありますね。リリックの書き方も、言葉の並び方や改行の位置、カタカナにするかひらがなにするか……という視覚的な面での表現に対しても責任感を持つようになったと思います。句読点一個入れるか入れないか、そこから生まれる余白ひとつで歌詞の雰囲気が変わってしまう。そういうところも前よりかなり気にするようになりました。

あと、自分が軸になってやっていることは変わっていないですけど、関わってくれる人たちがすごく増えました。衣装にしても撮影にしても、音楽の制作チームにしても、おもしろがって一緒に楽しんでくれる人がすごく増えた。実は今回、アートディレクターをムカタイ(向井太一)がやってくれていて。普段から衣装や作品を見せたり聴かせ合ったり、困ったら相談し合ったりしているんですけど。今回、彼の新たな表現の場にもなったのがすごくおもしろい。ムカタイ含め、ご縁のあるアーティストやクリエイターがおもしろがって集まった遊び場になった感じがしますね。

――「アートディレクター・向井太一」からは具体的にどういうことを言われたりしました?

RUNG HYANG:とりあえず「髪切るな」って(笑)。あと、大人の女性のアーティストでこうやって発信している人は多くはないから、その価値についてよく言ってくれますね。自分で言うのはちょっと恥ずかしいんですけど。

――今回のアートワークは赤が印象的ですよね。

RUNG HYANG:友人のブランド〈KANAKO SAKAI〉の衣装なんですけど、フィッティングしているなかで一番目を惹いたのがあれだったんです。あと、「ちょっと注目して!」という気持ちも多少はありましたね。これまではわりとナチュラルで、日常に溶け込むような感じだったり、シックなアートワークが多かったんですけど。シンガーソングライターとして何か責任を持った気持ちなんです。今回の作品は特に、音楽を人様の耳に入れる人間としての覚悟と責任があって。

――それは何かきっかけがあったんですか?

RUNG HYANG:もともとはblock.fmでラジオ番組(『恋と音楽のマッチングサプリ』)をやらせてもらっていた流れから来ているんですけど、ライブやアフターパーティでリスナーさんと直接交流することで、自分以外の人の生活を見て、そういうことを音楽にしていく必要性をすごく感じたというか。みんなが聴いて、ちょっとしたサプリメントになるというか、処方箋のようになる曲を書くっていうのが、私のなかで楽曲制作のエネルギーになっているんです。

ラジオがなくなったことで、そういう場が欲しくなったし、そこで直接聞く話とか、こういう曲に反応しているんだとか、それぞれの日常のなかに私の音楽を置いてもらっているというのを去年1年間で実感できたことが大きかったですね。


「次のことだけを考えて一生懸命生きる」

――そうしてシンガーソングライターとしての責任と覚悟を持って生まれたのがこのアルバム『MOMENT』だと。このタイトルにはどういう思いが込められているんでしょうか?

RUNG HYANG:もっと聴いている人に希望を持ってほしい、影より光を感じてほしいと思って『MOMENT』にしました。一瞬一瞬が自分の一生をつくっていくし、一瞬で「いま」が過去になっていくその儚さのなかで、1分1秒が本当に大事であり尊いものだということ。誰かにとってはただ過ぎ去っていく一瞬でも、当人にとっては人生を変える一瞬であったりする。そういう「透明で目に見えないけれど確実に積み重なっているもの」にフォーカスしようと思ったんです。

――リードトラックも同名の“MOMENT”ですが、アルバムタイトルが先にあったんですか?

RUNG HYANG:そうです。アルバムで伝えたいことはもちろん全体を通して表現するものだとは思うんですけど、でもひとつしっかり自分で意思表示しておきたかったっていう意味であの曲をつくりました。

音大(大阪音楽大学)で教授職をやっているんですけど……自分が学生だったとき、大人に進路のことや将来のことについて「早く答えを出せ」みたいに追われる時期があって。でも自分がやりたいことがわかる人のほうがどう考えても珍しいし、幸せなんですよ。実際はやりたいことが何なのかわからない人たちのほうがすごく多い。短期的な中で学生に「やりたいことはこれです」って決めさせて、本人たちもそれがさも自分でやりたいものかのように錯覚して社会に出ていく。それってすごく無責任だと思うんです。

明日何が起こるかわからない時代じゃないですか。私たちはそれをコロナで嫌というほど痛感したし、世界情勢も目まぐるしく変わっていて、知らないうちに日々の生活にも影響が及んでいる。大人は先を考えて行動しなさいって言うけど、でも今日やりたいこと、明日やりたいこと、いま自分がときめいているものを毎日ひとつ見つけるとか、一歩進むだけで次が始まる。その連鎖のなかで次のことだけを考えて一生懸命生きることが結局、一番リアルな未来の見方なんじゃないかなって思っているんです。

RUNG HYANG:「いまを楽しめ」っていう表現もだいぶ無責任ではあるんですけど、とりあえず精一杯にいまを生きて、次のドアを開ける。そしてそれを繰り返す。そういうふうに最近は考えているんですね。私が教えている若い世代の人たちにもそういう提案を最近よくしていて、“MOMENT”にはそういうメッセージを詰め込みました。そのときの状況で決めていいし、逃げてもいい。若い子たちはちゃんと自分たちで判断して行動していると思っていて、大人のほうがついていけてないんじゃないの? って思うことも多々あるんです。

――“MOMENT”には韓国語のラップもあって驚かされました。歌詞にワンフレーズ混ぜるといったことは過去にもありましたが、1ヴァース丸々、韓国語というのは初めてですよね?

RUNG HYANG:初めてです。韓国語で歌ったときに自分の声の響きが変わることは前からわかっていて、ずっと試したかったことだったんです。ただ、自分の母国語を入れることが、ある年頃までは怖かったんですよ。日本の音楽が好きで、いまのポップスからいろんなことを吸収したり見たりしているのに、急に韓国の言葉を使うと、聴き手に疎外感を与えてしまわないかな? とか。不安に思っていた部分があって。

でも、今回アルバムをつくるときは逆に全然気にならなかったんです。それはたぶん、いまの日本の状況がめちゃくちゃ影響していて。異なる文化や他人と考えが違うことに対してすごく懐が深くなったというか、むしろそういった「違い」に対して興味があったりする。そういう変化をすごく感じているから、自分の言葉で、自分のルーツの話をしても受け入れてくれる、むしろ新たな発見をしてくれる気がしたんです。自分自身も社会もすごく変わった。だからナチュラルにできましたし、入れる必要があると思いました。

ラップに関しては、KOHEI JAPANさんの楽曲制作を去年から手伝っていて、KOHEIさんのラップに声を被せたりしていて。音程がないリズムのなかで遊ぶ方法とか、表現の仕方をすごくおもしろく教えてくれたから、それでラップをすることへのハードルも低くなっていましたね。


曲に引っ張られて生まれた“アリラン”

――韓国語といえば、後半に朝鮮民謡の“アリラン”を歌う場面のある“ウリアリラン”(私たちのアリラン)。サウンドプロデュースがMori Zentaro(Soulflex)さんということで、もっとエッジーなものがくるかと想像していたので、これも驚かされました。

RUNG HYANG:いやそうなんですよ。私も最初はそのつもりでオファーしたんです。私がピアノでつくるとしみったれた空気感になりがちで(笑)、ダンスミュージックとか、ビートが感じられるものは自分ではつくれないのでプロデューサーにお願いするわけなんですが、Zenちゃんっていうとやっぱりその印象があって、それがすごく素敵で好きなので、もともとそのつもりでオファーしたんですよ。

でも、彼はどんなサウンドにするかよりも、どんなメッセージ、どんなことを伝えたいかにすごく重きを置いている人なんですね。ふたりでお茶しながら楽曲の話をしたときに、私は生まれ育った日本でも、ルーツである韓国でも外国人として扱われる。多感なお年頃のときはどこにも故郷がないんだってすごくクサクサしていた時期があった……ということを話したら、Zenちゃんのなかでピンときたものがあったみたいで。彼は彼で、在日朝鮮人にまつわる本をかき集めて勉強してくれて、そしたら「映画音楽のようなものをつくりたい」って言って、あのトラックを送ってきてくれたんです。

そこからはメロディもすぐ乗ったし、早かったですね。自分が通ってた学校の坂道とか、学生の頃にやっていたルーティーンなどが曲に引っ張られるようにして浮かんできて。いまはもうブレザーなんですけど、当時の制服はチョゴリっていう民族服で、プリーツが細いんです。アイロンだと大変なので、当時は布団の下に敷いて「寝押し」してプリーツを綺麗に揃えるのが日課でした。たまに失敗してすごいシワになったりするんですけど(笑)、そういったことをどんどん思い出してきて。

――後半の“アリラン”を歌うパートも、最初からそのアイディアがあったわけではなく、「引っ張られて」生まれた?

RUNG HYANG:そうなんです。レコーディングのときに「アリランってどういう意味なんですか?」って話になって、いろんな諸説あるんだけど、アリランっていう峠があるとか、リランという恋人を見送る歌だとか、そういう話をしていて、「アリラン」って言葉を何度も口にしていたんで、フックも自然に「アリアリラン」って歌詞になりました。

すると、自分の育った在日社会がバックグラウンドにある曲だから、子守唄のように母やおばあちゃんが歌う“アリラン”が聴こえてきて、最後に入れようってなったんです。最初はもっと民謡っぽく歌ってたんですけど、ちょっと熱くなりすぎて「トゥーマッチだね」ってなって、そこでお母さんが寝ている子どもに聴かせるぐらいの感じで歌ってみようってなって、それがちょうどハマったんですよ。

ただ音楽制作の作業をしていたはずが、それを超えたものというか、メンタルヘルスな時間というか、カウンセリングで忘れていた昔の記憶が蘇ってきて、涙が流れて気づいたらスッキリしていた、みたいな。そんなレコーディングの時間でした。

――アルバム新録曲だと、Shingo.Sがプロデュースした“week by week”は2000年代初頭のネオソウルを思わせます。

RUNG HYANG:レコードを出したことをきっかけにプレイヤーを買った影響もあって、去年末からネオソウルとか昔すごく好きだったソウルミュージックをよく聴くようになって。(T.O.Mが手がけた)“Life is vintage”もそうなんですけど、ああいうソウルミュージックの息遣いとか温かさが好きで、特に聴き直していたんです。なので、Shingo.Sさんにも「ゆったり聴ける、ソウルミュージックが感じられるトラックが欲しいです」って話をしていて。それで届いたのがこのトラックで、1日とか2日で、めちゃくちゃ早くできましたね。

ちなみに今回、1週間に2曲ペースで録音してます。2曲のメロと歌詞を1週間でつくって、その次の週にはレコーディングっていうのが3回続いて、それを1月中にやったんです。楽しかったですね。いま、「曲めちゃくちゃつくりたいシーズン」なんです。

――それならアルバムの曲数をもっと増やせたのでは?

RUNG HYANG:実はまだあと2曲あったんですけど、ちょっとキリがないなって。しかもT.O.MさんもShingoさんも1曲頼むと、「こういうのもどう?」って違うトラックも送ってくれるんです。しかも、どれも最高で。Shingoさんはもともと“Bounce up all the time”だけのはずだったんですけど、最終的に3曲ぐらいになって、「これ以上は……」っていうことで止めました(笑)。

――今回、話題になった“Trapped (Kan Sano Remix)”と“嫌いな人 (☆Taku Takahashi Remix)”のリミックス2曲も収録されます。

RUNG HYANG:去年はこの2曲のおかげで、リミックスのおもしろさというものを知りました。一回自分で出したものが人の手によってこんなふうに生まれ変わるんだっていうときめきもすごかったですし、音楽的な学びにも満ちていて。レコードを出したことと同じぐらい自分には新しい刺激だったんで、これは入れたかったですね。レコードでしか聴けなかったものをこうやって「配信してもOK」って言ってくれた方々のおかげで、実現したということもあるんですけど。

――ちなみにリミックスのオファーをしたとき、「こういうふうに」という要望を出したりはしたんですか?

RUNG HYANG:全く。頼む時点で私の作業はもう終わっていると思っているんで(笑)。その人のやりたいようにやってくれていいというつもりでオファーしたんですけど、これも届いたときは感動しましたね。


「大人が遊べる場所をつくりたい」

――Kan Sanoさんは昨年のRUNG HYANGさんの公演にサプライズゲストとして飛び入りして初共演を果たしましたが、4月のBillboard Liveツアーでも東京公演に出演します。前回はリハーサルも何もなしでしたが、今回は事前に何か話したり準備しているんですか?

RUNG HYANG:全く何もしてないんですよ(笑)。「当日にちょっと話しましょう」とは言ってますけど、リハーサルは今回もなしですね。ぶっつけ本番のライブ感は、お客さんだけじゃなくてミュージシャンにとっても刺激的なことなんです。「こういう方向性でいきましょう」みたいな話も一切してないんで、1stステージと2ndステージ、どちらも違う感じになると思います。

――Kan Sanoさん以外にも縁のあるゲストが出演しますが、どういうふうに決まったんでしょうか?

RUNG HYANG:Kan Sanoさんについては、去年のサプライズ出演が事前に発表できなくて、「観れなかった」と残念がっている人があまりに多かったんです。なので、今回は事前にお伝えして、前回を超えるものをお見せできればなと。

大阪公演に出てくれるJAIROは、ビートボックスの世界大会優勝を私も実際に現場で観て、シンプルに彼らの素敵さを伝えたくて。スキルだけでなく、音楽的センスもずば抜けている彼らのパフォーマンス体感してもらいたいです。YAMORIについてはゲストで何度か出てもらってますけど、John-Tとのタッグ・JAIROとしては初めてお声がけしました。

東京・大阪両方に出演するTAIL(向井太一)は公私ともに仲もいいですし、やっぱり彼の音楽もすごく好きでリスペクトしているので、外せないなって。オープニングアクトの森田美勇人くんは、ルンヒャンゼミ(RUNG HYANGによる音楽私塾)の生徒で。自分のワンマンやツアーのオープニングアクトは必ずルンゼミからのアーティストに出てもらっていたので、去年ずっとゼミに参加してくれていた美勇人くんに「やりませんか?」って声をかけたら、二つ返事で引き受けてくれました。

――――過去にPARKとしてBillboard Liveのステージに立ったこともありますが、ソロ名義での単独公演は今回が初です。意気込みを聞かせてください。

RUNG HYANG:私の大きなテーマとして、「大人が遊べる場所をつくりたい」っていうのがずっとあって。これからの社会のなかで、子どもたちが健やかに育っていくかどうかは本当に大人にかかっているし……これは“オトナの時間”(2023年)を出したときから変わっていないんですけど、やっぱり大人になるほど苦しくなっていくとか、辛くなっていくみたいな、そういったものをなくしたい。大人になればなるほど、本来は自由であって、より逞しくなっていくものなのに、人はなぜ大人になると我慢をすることが増えるんだろう? って思うんです。

RUNG HYANG:大人になるってめちゃくちゃ楽しみだなっていうふうに子どもたちに思ってもらいたいし、そのためには大人も発散する場所だったり、自分たちが自分たちらしく、性別とか職種とかそういったものを飛び越えたところで、自分の体と魂で遊ぶ。そういう時間が1年の中に何回かぐらいあってもいいんじゃないかって。そしてそれを見た子どもたちが、自分の親のことを改めて「カッコいい」「綺麗」って思ってくれたら最高ですよね。

それに、他人と会いたくないときでも、私の音楽だけはそばに置いてくれていた人もいて、そういった場所を私も大事にしたい。今回はそれを体感できるものにして、みんなを笑顔にして元の場所にお戻ししたい、本当にそういう思いでいっぱいです。

――大人の遊び場として位置付けてるからこそ、ドレスコードがあるんですね。

RUNG HYANG:ドレスコードは「絶対」じゃないんですけど、ちょっと普段しないおしゃれをしてみるっていうのはシンプルに楽しいんじゃないかなと。それから“Life is vintage”で年を重ねることを歌いましたけど、古くなったり、要らなくなったら捨てるっていうことを見直して、サステナブルというか、物が増えるぐらいだったら大事に育てる一着があればいいと思うし、そういったことをみなさんが生活レベルで意識する機会になれば。

RUNG HYANG:「ヴィンテージ」って人によって捉え方が全然違うから、けっしてハイブランドの古いものだけじゃなくて、自分の大事な人から受け継いだものだったり、ぬいぐるみとか何でもいいんですけど、昔大事にしていて捨てられずにいまも持っているものに対してもう一度愛情を見直す、そんな機会になればいいなと思っています。

――Billboard Liveツアーのその後について、どういうビジョンがありますか?

RUNG HYANG:そうですね……「ツアーが終わったらまた何か見えてくるかな?」ぐらいの気楽な感じです(笑)。いろんなものに追われたり、無理に広げようとして見失ったこともいっぱいあったんで、いまは自分のできることを確実にやっていくことが、実はいろんな人に広がる一番の近道なんじゃないかなと思っているんですよね。

曲を書くことはもうライフスタイルになっているので、これからも続けていくだろうし。あとは必要だと思う、思われる場所にただ駆けつけるのみというか。以前は「このペースでライブをやらないと」とか「楽曲のリリースはこれくらいの頻度で」みたいなものにすごく縛られていた気がするんですよ。そういう固定観念みたいなのをものから抜け出したいし、こうやって協力してくださる方がいたり、Billboard Liveツアーが決まったりっていうのは、気張ってできたものじゃなくて、たぶんいま力を抜いてるからできていることでもあるから、できるだけこのスタンスでいきたいなって。力が入って体が硬くなると、かえって動けなくなっちゃうんで、ちょっと力を抜いて、うん。


【リリース情報】


RUNG HYANG 『MOMENT』
Release Date:2025.04.02 (Wed.)
Label:RUNG HYANG
Tracklist:
1. MOMENT
Lyrics by RUNG HYANG
Music by RUNG HYANG, Matsuzawa Tomokazu
Sound Produced by Matsuzawa Tomokazu

2. week by week
Lyrics by RUNG HYANG
Music by RUNG HYANG, Shingo.S
Sound Produced by Shingo.S

3. ウリアリラン
Lyrics by RUNG HYANG
Music by RUNG HYANG, Zentaro Mori
Sound Produced by Zentaro Mori

4. Bounce up all the time
Lyrics by RUNG HYANG
Music by RUNG HYANG, Shingo.S
Sound Produced by Shingo.S

5. レリロー
Lyrics by RUNG HYANG
Music by RUNG HYANG, Shingo.S
Sound Produced by Shingo.S

6. Life is vintage
Lyrics by RUNG HYANG
Music by RUNG HYANG, Matsuzawa Tomokazu
Sound Produced by Matsuzawa Tomokazu

7. Part of me
Lyrics by RUNG HYANG
Music by RUNG HYANG, Shingo.S
Sound Produced by Shingo.S

8. 嫌いな人 (☆Taku Takahashi Remix)
Lyrics & Music by RUNG HYANG
Sound Produced by ☆Taku Takahashi

9. Trapped (Kan Sano Remix)
Lyrics by RUNG HYANG
Music by RUNG HYANG, Shingo.S
Sound Produced by Kan Sano

All Produced by RUNG HYANG
Vocal Recorded by Masanori Yashiro (HUNTER CHANCE STUDIO) (M3.4.5.7), Ryme Fujita(STUDIO SEEZE) (M1.2.6)
Mixed by CTR (M2.3.4.5.7), Matsuzawa Tomokazu (M1. 6), Mitsunori Ikeda (Tachytelic Inc.) (M8), Masato Fujishiro (big turtles STUDIOS) (M9)
Mastered by Edouard Carbonne (Fader Crafters)
Photographer:Mitsuo Okamoto
Hair & Make-up:Chihiro Yamada
Art Direction:Taichi Mukai
Artwork:Junior Berenguer

配信リンク / CD購入リンク


【イベント情報】


『RUNG HYANG Billboard Live Tour 2025』

日程:2025年4月20日(日)
会場:Billboard Live OSAKA

SPECIAL GUEST:TAIL, Jairo

※1日2回公演

公演詳細

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日程:2025年4月24日(木)
会場:Billboard Live TOKYO

SPECIAL GUEST:TAIL, Kan Sano

※1日2回公演

公演詳細

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▼各公演共通

[OPENING ACT]
森田美勇人

[BAND MEMBER]
大樋祐大(Key.)
越智俊介(Ba.)
菅野知明(Dr.)

[DRESS CODE]
My vintage

※着用者には特典あり

RUNG HYANG オフィシャルサイト


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