Header Photo by Masato Yokoyama
株式会社スペースシャワーネットワークが主催するヒップホップフェス『POP YOURS 2026』が4月3日(金)、4日(土)、5日(日)に千葉・幕張メッセ国際展示場1-6ホールで開催された。日本のヒップホップにポップカルチャーの視点を持ち込んだ『POP YOURS』も今年で5年目。初の3デイズとなる今回は、会場を大幅に拡大し、メインステージに加えて、クラブライクなサブステージ・Terminal 6 STAGEを新設した。本年のヘッドライナーはLANA、千葉雄喜、KEIJUの3人。総勢120組ものアーティストが3日間にわたって、日本のヒップホップの最先端を表現し続けた。
また、『POP YOURS』では毎年オリジナルのコラボソングを制作している。今年は、LANA、Elle Teresaの“こんな日は”(Prod. by STUTS & ZOT on the WAVE)、Kianna、HARKA、AOTO、Sieroの“STARLIGHT”(Prod. by KM)、Daichi Yamamoto、MIKADO、NENEの“違う”(Prod. by KM)、Mall Boyz (Tohji, gummyboy), BIM, kZmの“246”(Prod. by Chaki Zulu)という4曲。発表後すぐに話題となったこれらの楽曲が、どのような形で披露されるのかも観客の楽しみだ。高品質なサウンド、大胆な映像、圧巻のライティングが生み出すハイクオリティなライブを体験したのは、3日間合計で約45,000人。YouTubeでも無料生配信され、視聴回数は合計約230万回にのぼった。
DAY 1
DAY1で一際輝いていたのはLANAだ。『POP YOURS』のヘッドライナー最年少。かつ女性アクトとしてはAwichに続いて2人目。大きな重圧がかかる状況だったが、驚異的な歌声で会場を完全にLANA色に染め上げてみせた。等身大のLANAはパワフルでカラフル。特に会場を沸騰させたのは、Elle Teresaとの“こんな日は”で2人がまとった特別な衣装だろう。それぞれの背中の片側に羽がついていて、2人が近づくとハートの形になる。このかわいすぎる演出に、『POP YOURS』は沸きに沸いた。さらにVingo、¥ellow Bucks、Awich、MaRI、JP THE WAVYら豪華ゲスト陣も、LANAの晴れ舞台をアシスト。ストリートプリンセスは自身の22歳の誕生日に、大観衆へ向けて大きな愛をプレゼントしてみせた。
オープニングDJは世界で活躍するnasthugが担当。幕張メッセの1-3ホールを横断して設営された巨大なメインステージから、ヒップホップを軸にさまざまなサウンドをミックスして観客をあたためた。一組目のPeterparker69は2023年の「New Comer Shot Live(以降、NCSL)」以来の出演。彼らは、エレクトロニカやダンスミュージックを自由に取り入れて表現している。メンバーのJeterは「ザ・ヒップホップじゃない自分たちが日本で一番大きいヒップホップフェスのトップバッターを務められることが本当に嬉しい。俺らみたいな新しい音楽をやっている人にもっとスポットがあたったら面白くなる」と話し、“Flight to Mumbai”などで観客を踊らせた。



Littyは初出演。しかもこの大舞台で、いきなり15分枠という大役を任された。Littyコールが飛び交う中、人気曲“Pull Up”や“BOUNCE”をキック。“Cheese”にはManakaがゲストで参加。ラップする2人が花道を歩く姿はフレッシュだが、どこか風格を漂わせていた。Littyが語った「自分がやりたいからラップしている」というMCもとても印象に残った。


1日目の「NCSL」の1人目は「初めてライブにお母さんが観に来てくれました」と話したSiero。小学生の頃引きこもりだった彼は、“ニコニコ”で観客の素晴らしい表情を引き出した。X 1arkはしっかりと書き上げられたリリックをソリッドに聴かせていくタイプのラッパーだ。苛烈な少年時代を綴った“Lake Side Familia”、ラッパーとなった現在を描いた“rainy”を歌った。AOTOはリリック、ビート、ファッションにいたるまですべてがハイセンスだった。“バイオリン”ではパンチライン「喉はバイオリン」を会場に響かせた。

お昼帯のステージに立ったVaVaは、ウクライナのプロデューサー・Roland Jonesとコラボしたハードなフォンク“凍京”、“COLD BLOOD POWER”でライブをスタート。持ち前のポップさと圧倒的なライブ巧者っぷりで会場をひとつにした。
SEEDAは、亡き同志たちに追悼を捧げたほか、PUNPEE(!)、Lisa lil vinci、jellyyを迎えた“SLICK BACK”、 Worldwide Skippaとjellyy、 VERRY SMoL、Siero、Reichiを呼び込んで披露した“RAPSTAR CYPHER”、Tee Shyneの乱入などサプライズを連発した。
Pxrge Trxxxperは、FUJI TRILLをバックDJに、衣装、スクリーンの演出、ライティングなど一貫して悪魔的な世界観を表現。若きダークヒーローがハードなジャージードリル“DEATH NOTE”を叩きつける様は圧巻だった。


午後に入ってBonberoが登場。2024年のフェスオリジナルソングとしてJJJ、韓国のBLASÉと制作した“YW”をラップした。また2月にリリースした“Yarudake”には意外にも『POP YOURS』初参戦となるCHICO CARLITOとACE COOLを客演に。自由自在にラップを操る3人はまるで遊んでいるような笑顔で凄まじいスキルを見せつけた。
スクラッチの音からスタートしたISSUGIは、バックDJをGRADIS NICE & DJ SCRATCH NICEに任せた。ISSUGIは会場大小問わず、いつも観客ひとりひとりにしっかりと語りかけるラッパーだ。そんな彼が「自分のリリックじゃないけどアカペラでキックしたいやつがあるから。聞いてほしい」と“366247 (feat. JJJ) [REMIX]”のJJJのヴァースを届けた。そして最後は仙人掌、Mr.PUGとで、00年代のアンダーグラウンドクラシックであるMONJUの“Blackdeep”で締めくくった。
キャリアの新たなステージに突入しているJinmenusagiのステージにはACE COOL、Acchi Mello、C6ixが客演で参加し、多彩なフロウとスキルで観客を圧倒した。名曲“うそさ”では複雑な内面を吐露。美しい映像と絡み合って芸術的な雰囲気を作り出した。“Anata Watashi”は宇宙のように明滅する光の中で「続き作るあなた、わたし」というラインが感動的だった。良い雰囲気になったところで、最後にあえてコミカルな“今じゃない”を歌って、ひねくれものらしい一面を垣間見せた。



千葉出身のeydenは、今年『POP YOURS』と同日程で開催されているプロ野球イベント『BLACK BLACK』に向け制作されたKMプロデュースの新曲“HOMEBASS”をBonberoと共に歌い、地元をレペゼンするという意味で最高のヒップホップを体現した。
Koshyは、スクリーンを巧みに用い、ヒットソングだらけのプロデュース曲のマッシュアップに加え、Sonsi、Watson、さらにシークレットゲストのBABYWOODROSEと共に激アツな宇宙旅行へとオーディエンスを誘った。
STUTSがバンドと管楽器、弦楽器、ラッパーらと極上のハーモニーを奏でるSTUTS Orchestraは、人気曲“Presence”でBIMに加え、なんと中村佳穂も登場。彼女は前夜急遽出演が決まったという。ラスト“Changes”では昨年のヘッドライナー・JJJがステージに再び舞い降りてくれた。


eydenが地元をレップしている裏で、Terminal 6 STAGEにはMIKADO、7、TOFU、HARKA、ENEL、six&CanDy、YJ EIGHT、ISAKITOKIAなど和歌山のラッパーたちが集結していた。6ホールに設営されたセンターステージはソファや彼らのフラッグが。JAY CORPSEのDJに合わせて入れ替わり立ち替わりマイクを握るステージにはクルーのかっこよさが凝縮されていた。ステージ名になった“I♡WAKA”をはじめ、7の“WAKA”、MIKADO、HARKA & ENELの“intro *GUNSO WALK”は合唱が巻き起こった。
メインステージにはkZmが現れた。彼はいつも観客のテンションのギアを上げてくれる。今年も「なんか俺の知ってる『POP YOURS』はこんな感じじゃないんだよな」と焚き付けて、ハードにリミックスされた“DOSHABURI”、“Forever Young”を投下して一体感あるグルーヴを作り出した。ここで小休憩。言葉にならない感情を情景描写に投影した“Blue×3”、“RED OCEAN”はしっかりとリリックを聴かせた。ダイナミックな新曲“Sugar Daddy Swag On”から最後は“Sagging My Jeans”でぶち上げた。
全身黒のレザーでシックにキメたWILYWNKAは、kZmとはまったく異なるサウンド感だが、ラップのうまさと構成力の高さで観客をそのまま自分のグルーヴに乗せていった。“Rapper’s Flow”、“Rapper’s Flow Pt.2”、“Everyday”、“油断大敵”、“THAT’S ME”、“メチャ楽Shit”を矢継ぎ早に畳み掛けた。ラストはVIGORMANをフィーチャーして変態紳士クラブの“YOKAZE”を歌う。場内に大合唱が巻き起こった。


Benjazzyはハードボイルドな雰囲気の“B2B”からライブをスタート。前半は彼の武骨な魅力が詰まった“NOTFORSALE”や“SWEEP”をすさまじい声量でキックしていった。UKガラージの“Fashion Week”にはWatsonがゲスト出演。“NOOFFSEASON”にはさらにMIKADOも出てくる。豪華な共演に観客は大歓声をおくった。そして自身の半生を落とし込んだ“UNTITLED”を歌い、ラストはきっかり3分間でラップを終える“3MINITS”でライブを終えた。
この時間帯のTerminal 6 STAGEではYENTOWNのDJ U-LEEがスピンしていた。1曲目はBUDDHA BRAND“人間発電所”! サイドマイクとしてMonyHorseもステージに上がり、日本語ラップクラシックに溢れたセットでフロアを揺らし続け、ラストには制作中の新曲もプレイされた。メインステージのトリ前にはGRADIS NICE & DJ SCRATCH NICEがプレイ。こちらは50Cent“In Da Club”やCam’Ron“Oh Boy ft. Juelz Santana”など00年代のUSクラシック中心の選曲。後半にはSCARS“MY BLOCK”やSWANKY SWIPE“愚痴か?否か?”といった日本のヒップホップもプレイしていた。
guca owlは“今夜はハダシで”などで大合唱を巻き起こした。これがいつもの『POP YOURS』の光景。同時に、guca owlが労働者階級を代表しているだけでなく稀代のメロディセンスの持ち主であることを証明したステージであった。
コツコツとヒールの鳴る音でライブをスタートしたElle Teresaは、“ラブ・デラックス”で瞬く間にメインステージをスウィートなムードに。ダンサーとの息の合ったダンスを交えながら、昨年の『POP YOURS』オリジナル楽曲でswettyと制作した“I JUST”など、次々にアンセムを投下する怒涛のパフォーマンスでヘッドライナーのLANAへとバトンを繋いだ。

取材・構成 : 宮崎敬太、高久大輝
【イベント情報】

『POP YOURS 2026』
日程:2026年4月3日(金)、4日(土)、5日(日)開場 9:30 / 開演 11:00
会場:千葉・幕張メッセ 国際展示場 展示ホール1-6
問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION 050-5211-6077(平日12:00〜18:00)
主催:株式会社スペースシャワーネットワーク
制作:SMASH / HOT STUFF PROMOTION / WWW
Supported by Spotify
Art Direction:Kei Sakawaki
Key Visual Design:Kei Sakawaki, Hiroaki Hidaka
Movie Director / CG Artist:Kazusa
SE:Taishi Sato
Track Produce:KM










