Text by Megumi Nakamura
台湾最大級のインディ音楽プラットフォーム〈StreetVoice〉と、日本の音楽レーベル〈PANDA RECORD〉によるライブシリーズ『PARK PARK @ Tokyo』が、この夏スタートする。出演するのは、StreetVoiceがキュレーションした「台湾音楽シーンの精鋭5組」。シンガーソングライターからアートポップ、フォークロック、新世代インディまで、それぞれ異なるスタイルで現在の台湾音楽を映し出すアーティストたちだ。
近年、日本でも台湾カルチャーへの関心は高まり、台湾のアーティストがフェスティバルやライブハウスに出演する機会も増えている。一方で、その音楽シーンやアーティストたちが何を表現し、なぜ支持されているのかは、まだ十分に知られているとは言えない。
本記事では前編として、言葉と物語で人々の心に寄り添うシンガーソングライター/俳優/プロデューサー・鄭宜農(Enno Cheng/イーノ・チェン)、社会や時代を鋭く見つめ続けるシンガーソングライター/クリエイター/プロデューサー・陳珊妮(Sandee Chan/サンディ・チャン)を紹介する。
全曲に日本語字幕を投影。言葉を超えて届く、鄭宜農の世界
台湾を代表するシンガーソングライターのひとり・鄭宜農が、6月17日(水)に東京・EX THEATER ROPPONGIに出演する。今回は2025年に発表した最新アルバム『圓缺 Moon Phases(満ち欠け)』を携えたワールドツアーの一環での来日。日本では2026年公開予定の映画『ナギダイアリー』の主題歌“路邊開花”を担当したことでも知られる。
彼女の魅力は、哲学的な問いから繊細な心情、社会との関わりまで幅広いテーマを扱いながら、それらを聴き手の心に届く言葉へと変えていく表現力にある。彼女自身、楽曲を「さまざまな人が自己を投影できる空間」と捉えており、個人的な経験や感情を、聴き手が心を委ねられる物語へと昇華させているという。
たとえば、最新アルバムの表題曲“圓缺”では、「すべてが不完全で移ろいゆくものだと知りながら、それでも誰かを愛し続けようとする人間の姿」を、平易な言葉と映像表現で描いている。哲学的なテーマでありながら、多くのリスナーに開かれた作品だ。YouTubeでは日本語字幕付きで公開されており、その世界観に触れる入口としても最適な1曲である。
「私は音楽が異なる文化や言語をつなぐ橋になれると信じています」と語るように、今回の来日公演では、その世界観を日本の観客にも届けるため、歌詞の日本語字幕を全曲に導入。映像表現などライブ全体の流れにも工夫が施される。中国語や台湾語がわからなくても、楽曲に込められた感情や物語を受け取ることができるだろう。
さらに今回は、最新アルバムのプロデューサーであるChunhoがシンセサイザー/キーボードとして参加するほか、彼女を長年支えるドラマーのWhite Wuを加えたバンド編成でパフォーマンスを行う。アルバムの再現にとどまらず、新たなアレンジも用意されている。また、同アルバムの楽曲だけでなく、これまでの創作活動の軌跡を辿るような、キャリアを横断するセットリストを準備しているとのこと。
ライブ前には、最新アルバムはもちろん、ライブ定番曲“千千萬萬”も改めて聴いておきたい。言葉と音楽、映像がひとつになった今回のステージは、彼女が大切にしてきた「共感の場」を、国境を越えて体験できる貴重な機会になるはずだ。

鄭宜農『“Moon Phases 2.0” World Tour』
日時:2026年6月17日(水)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:東京・六本木|EX THEATER ROPPONGI
料金:ADV. ¥8,000 / DOOR ¥9,000(各1D代別途)
社会を観察し、台湾ポップミュージックの可能性を更新し続ける──陳珊妮
台湾のポップミュージックシーンで30年以上のキャリアを持つ陳珊妮は、7月1日(水)に東京・渋谷Spotify O-EASTに出演。台湾のグラミー賞と呼ばれる『金曲奨(Golden Melody Awards)』にて数々の受賞歴を持つシンガーソングライターであり、作詞・作曲やプロデュースを通じて多くのアーティストを支えてきた存在でもある。またアートワークや映像、ライブ演出まで自ら手がけながら、作品世界を構築してきたマルチクリエイターとしても知られている。
彼女の作品に一貫して流れているのは、社会や時代に対する観察眼と、それを高度なポップミュージックに昇華させる手腕。国立政治大学新聞学系で学んだ背景もあり、その楽曲には現代社会への視線が色濃く表れている。
『戰神卡爾迪亞(Martial God Cardea)』(2017)では、情報技術が浸透した社会のなかで揺れる個人の姿を描いた。また『Juvenile A』(2019)は、大友克洋の漫画『AKIRA』に登場する国際科学調査プロジェクトの名称に由来し、SNSやアルゴリズムに囲まれた現代人のあり方を鋭く切りとり、「普通」を問い直す作品となっている。
今回の来日公演『Peace of Shxx』では、そうした楽曲群を、照明や映像、言葉の配置まで含めて緻密に構成されたステージで体験できそうだ。ライブ前には“戰神卡爾迪亞”、“野火”、“成為一個厲害的普通人”をまずはチェックしておきたい。陳珊妮が何を見つめ、何を考え、どのように表現してきたのかをたどるような一夜になるだろう。

陳珊妮『Peace of Shxx』
日時:2026年7月1日(水)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:東京・渋谷 Spotify O-EAST
料金:ADV. ¥8,000 / DOOR ¥9,000(各1D代別途)
■陳珊妮:Instagram
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