Text by Takazumi Hosaka
Photo by Official
12月28日(日)、(sic)boyの全国ツアーファイナル公演がZepp Shinjuku (TOKYO)にて開催された。
昨年、5都市を巡った初のツアーに続き、今回は7都市と規模を拡大。その間には初の自主企画『blacknails』、そして1stアルバム『CHAOS TAPE』5周年イベントの開催など、数多くのステージを経てきた(sic)boy。最新インタビューでも語られている通り、彼の直近の活動/作品にはライブからのフィードバックが大きく反映されている。2年ぶり、通算4作目となるアルバム『DOUKE』を携えた本ツアーの最終公演となったこの日は、まさに現時点での集大成であり、同時にその先の新たなステージを予感させる充実のパフォーマンスを届けてくれた。
年の瀬も迫り、慌ただしさが増す12月。(sic)boyの最新モードを見届けんと集まったオーディエンスの前に登場したのは、新世代シンガーソングライター/プロデューサーのlilbesh ramko。主に都内の小箱を発火点としたハイパーポップ/デジコア〜オルタナティブなヒップホップ/ラップシーンを出自としながら、2年連続で『POP YOURS』への出演も決定している。その躍進ぶりは、(sic)boyのキャリア初期の姿と重なる部分がある。
暴力的なまでの低音や、大きく歪んだグリッチサウンドに乗せ、ときに絶叫のようなシャウトとともに歌われるポップなメロディ。ナードで多様なダンスミュージックやベースミュージックを飲み込み、圧倒的な個性を備えたボーカルでまとめ上げる。そのアウトプットの在り方は、スタイルこそ大きく異なれど、(sic)boyが体現してきたミクスチャーと通底するものを感じさせる。
SoundCloudのみで聴くことのできる(=正規リリースされていない)人気曲“hard to say!!/smash pt.5”のフレーズを乗せた“Intro/生活”から、徐々にBPMを上げてスムーズに繋げられた代表曲“nichijou:loopmania”では、終盤に原曲にはないハードなギターサウンドを加えたアレンジで魅了する。ラストは今夏リリースのミニアルバム『生活*1』から、“Porsche/暮れ”、“Homesic/暮らし”という静と動のコントラストが印象的な2曲で締めくくられる。Yo OyamaによるノスタルジックなVJもまた、lilbesh ramkoが描く世界観の解像度を一段と引き上げていたように思える。
M2. DancingTillWeDie/家
M3. galaxy express 808
M4. nyancore.exe
M5. Intro/生活
M6. nichijou:loopmania
M.7. Porsche/暮れ
M8. Homesic/暮らし
簡潔に感謝を告げてステージを後にしたlilbesh ramko。その熱も冷めやらぬなか、(sic)boyのステージがスタートする。「道化=ピエロ」という最新アルバムのモチーフを汲んだ、まるでサーカスのオープニングのようなSEと共に、JACKSON kakiによるVJがホラー映画に登場するような不穏な洋館を映し出す。アルバムと同じく“DOUKE”で幕を開け、“HIBANA”でヘヴィなグルーヴを展開。会場の空気を完全に塗り替え、疾走感溢れる“blacknails”へ。「こんばんは、調子どう?」とのMCに、オーディエンスも大きな歓声で応える。
前半は盟友・sathiと2人だけでのDJセット。「今日は昔の曲もたくさん持ってきてるんで」との言葉どおり、2019年リリースの“freezing night”や、メジャーデビューアルバム『HOLLOW』からの“(stress)2”といった過去曲もアップデートした形で披露する。印象的だったのは、どちらかというと引き算的なアレンジで、(sic)boyのボーカルやラップをより生々しく引き立てていた点だ。これもライブを重ねてきたなかで得た知見と、自身のフィジカル的な成長から導き出された最適解なのだろう。続く“lights on”では「全員ライト付けられますか?」とオーディエンスに呼びかけ、フロア中にスマホの光が溢れる幻想的な光景を生み出した。
ファンにとっては毎回気になる客演だが、今回はOMSBとvividboooyの2名が駆けつけた。OMSBは“SAY GOODBYE”で切れ味鋭いタイトなラップを披露。ヒップホップヘッズを大きく沸かせ、「(sic)boyマジ最高だぜ、熱い男」との言葉を残してステージを後にした。一方、(sic)boyが「アニキ」と慕う盟友・vividboooyとは“Chrome Hearts”で共演。両者のメロディックなフロウが絡み合い、その相性のよさを改めて印象づけた。
“Kill this”、“Hype’s”と初期の楽曲を挟みつつ、“Hide&Seek”から続くメロウなパートでDJセットを締めくくる。特にスタンドマイクで歌われた“blinded love”、“Tsubasa”は、歌唱力・表現力ともに(sic)boyのシンガーとしての進化が際立つ出色のパフォーマンスだった。その感動的な空気を保ったまま、“色のない夜”から気づけばバンドセットへと突入。“Dark Horse”ではJESSEパートを「みんなで一緒に歌おうぜ」と会場全体で歌い上げた。
緩急やダイナミズムの幅が広がったことで、楽曲の新たな表情が立ち上がる。それこそがバンドセットの大きな魅力だろう。もちろん、DJセットとどちらが優れているという話ではない。楽曲ごとに最適な表現手法を選び取る。それこそがいち早くライブにギターやドラムを取り入れてきた(sic)boyの強みであり、年々その精度は高まり続けているように感じられる。
アンセミックな“DISTORTED世界”、哀愁たっぷりのギターが涙腺を刺激する“Dream”、そして《渋谷で酒飲みたい/だりいことはしたくない/明日はきっと動けない/それでいい それがいい》というキラーなフックを会場中が歌い上げた“Last Dance”。さらに、跳ねるビートが切ないメロディを牽引する“Take Me Home”と、いずれもバンドセットならではの必然性を感じさせる演奏が続く。vividboooyが再登場した“Heaven’s Drive”を経て、ライブはいよいよラストスパートへ。
MCではDJのsathi、ギターのCÉSAR、ドラムのAyukaとともに、自身最大規模のツアーを回れたことへの感謝を語ると同時に、当初は不安もあったが、公演を重ねるごとに自身のヴァイブスが高まっていったことを明かした。「結構エモくなっちゃったんですけど、今日はもうアンコールもないので、このまま突っ走っていきます」と言い放ち、トラックとドラム、ギターが一体となった重戦車のようなヘヴィグルーヴで“Life is nightmare”を投下。最後はお馴染みの“Akuma Emoji”で大団円を迎えた。全29曲、転換や小休止もなく、MCも必要最低限。自身の音楽に対するストイックな姿勢を体現したかのようなライブであった。
前名義・Sid the Lynch時代から数えれば、すでに7年以上のキャリアを重ね、今では新たな世代からフォロワー的存在も生まれている。デビュー当時「異色」と評されたその音楽性は、いまや明確なシグネチャーとして確立された。そのうえで、最新アルバムとツアーでは、さらにその先の景色を提示してみせた。自主企画や今回のツアーで共演した新世代アーティストたちから受けた刺激も、きっと大きいのだろう。寡黙ながらも誰より「熱い男」の動向から、今後も目が離せない。
M1. DOUKE
M2. HIBANA
M3. blacknails (short)
M4. 爆撃機
M5. freezing night
M6. (stress)2
M7. lights on
M8. Hello (short)
M9. SAY GOODBYE feat. OMSB
M10. (stress)
M11. 眠くない街
M12. Chrome Hearts feat. vividboooy
M13. Kill this (short)
M14. Hype’s
M15. Hide&Seek
M16. blinded love
M17. Tsubasa
[Band set]
M18. 色のない夜
M19. Falling Down
M20. Dark Horse
M21. (sic)’s sense
M22. Ghost of you
M23. DISTORTED世界
M24. Dream
M25. Last Dance × Heartache
M26. Take Me Home
M27. Heaven’s Drive feat. vividboooy
M28. Life is nightmare
M29. Akuma Emoji
【イベント情報】

『(sic)boy DOUKE TOUR 2025』
2025年12月3日(水)宮城・仙台 MACANA
2025年12月14日(日)香川・高松 MONSTER
2025年12月19日(金)福岡 Be-1
2025年12月21日(日)石川・金沢 AZ
2025年12月25日(木)名古屋 CLUB QUATTRO
2025年12月26日(金)大阪 Yogibo METAVALLEY
2025年12月28日(日)東京 Zepp Shinjuku
【リリース情報】

(sic)boy 『DOUKE』
Release Date:2025.11.26 (Wed.)
Tracklist:
1. DOUKE (Prod. KM)
2. Life is nightmare (Prod. KM)
3. HIBANA (Prod. KM)
4. blacknails feat. MERI (Prod. KM)
5. Hello feat. SALU (Prod. KM)
6. DISTORTED世界 (Prod. Tido)
7. Take Me Home (Prod. Chaki Zulu)
8. 疑心暗鬼 (Prod. Chaki Zulu)
9. Last Smile (Prod. Chaki Zulu)
10. SAY GOODBYE feat. OMSB (Prod. Chaki Zulu)
11. lights on (Prod. Chaki Zulu)
12. Shaggy White (Prod. Chaki Zulu)
13. Chrome Hearts feat. vividboooy (Prod. Chaki Zulu)
14. 色のない夜 (Prod. Chaki Zulu)
15. Tsubasa (Prod. uin)
16. Dream (Prod. uin)
17. Drown Intro (Prod. KM)
18. Drown (Prod. KM)
19. Hide&Seek (Prod. KM)
20. Angel!! (Prod. KM)

















