((( O )))

Nature's Joint

((( O ))) / Nature's Joint
息を潜めていた逸材がついにデビュー! FKJにフィーチャーされ注目を集めた、瑞々しいR&Bシンガーの開花を迎えよう

June Marieezyによるプロジェクト、((( O )))がこの度アルバム『((( 1 )))』のリリースを以ってデビューした。この記号のようなアーティスト名はどうやら発音のない表象で、“太陽から直接届く贈り物と、創造の機会”を意味するとのこと。自前のスタジオは完全にインフラを断ち、楽曲制作に必要となる電力には太陽エネルギーを充てているからだ。

拠点は今も変わらずフィリピンのようだが(出身地はテキサス州ダラス)、2011年から15年頃まで彼女は本名名義で活動していた。当時の楽曲の中でも、フランスの名プロデューサー・FKJがリミックスを手がけた「Fly」は特に話題を呼ぶこととなる。その2年後には、今や彼の代表曲のひとつとなった「Vibin’ Out with ((( O )))」へ参加を果たしている。

今回の作品は、あらゆる演奏からミックス、マスタリング、ひいてはMVの撮影・編集までひとりで行われたもの。才能のひと言で済まされない情熱と努力が窺えるだろう。まったく素晴らしいアーティスト精神だ。今後も毎月1曲=1年分の12曲をまとめてアルバムとしてリリースするとされており、この構想はこちらのサイトによると2030年の『((( 12 )))』まで続いている。

早速、楽曲を聴いてみると、弦楽器と鉄琴の音が彼女の声と戯れている。その規則性の見えないところにミステリアスな要素を感じるが、みな澄み切っているからか自然と落ち着く。静けさはきっと風や水を連想させるのだろう、なんだか涼しくもある。だからと言って、音が煙のように充満しているわけではないので、アンビエントと呼ぶのは違う気がする。矛盾するようだが“有機的なエレクトロニカ”と言うほうが正確かもしれない。

中ごろに差し掛かると、予期せぬポップなメロディが流れ出す。すると楽曲は、見る見るうちに瑞々しいサウンドで満ちてゆく。それは、ぱっ……ぱっ……ぱっと次々に花開く睡蓮をイメージさせ、先ほどまでのひっそりした様子はどこに消え――その視覚イメージは鮮やかながらも柔らかで、Sudan Archivesとの共鳴を感じさせる。彼女も先日シングル作品をリリースしたばかり。

ワールド・ミュージック的なエッセンスを含むR&Bそのものは真新しいものではない。それでも新鮮に聴こえるのはなぜだろう、やはり様式の変化や広がりが関係するのか。Alternative / Indie R&Bとして刷新されたサウンドは、従来に比べてかなり柔軟だ。ジャンルとジャンルがより深く細やかな部分まで融け合うようになり、単なる足し算・掛け算以上の効果を生む。これは例えば、コンテンポラリー・クラシックと実験的テクノの邂逅にも共通する。

ただ、そもそも本楽曲をR&Bとするのは適切なのか、エクスペリメンタル・ポップじゃないのかと言うこともできる。しかし、だからこそこうした曖昧な音楽は、ジャンルによる区分が意味を成さなくなりつつある実情のシンボルなのであり、そして世のテキストからあらゆる比喩・形容表現が削ぎ落とされてゆく現況に対するアンチテーゼにもなり得ると信じている。たったひと言では表すことができないのだから。

ちなみに、彼女のSNSアカウントから判断するに、“The Sundrop Garden”と呼んでもいいかもしれない(DJのAnnie MacはBBC Radio 1の自身の番組内で、本名で呼ぶことにすると発言していたが)。


【リリース情報】

((( O ))) 『((( 1 )))』
Release Date:2019.08.27 (Tue.)
Label:AWAL
Tracklist:
1. Infinintro
2. Yuyu
3. Nature’s Joint
4. Shuh Shuh
5. Une Verse
6. Come Home, O’Shawn
7. Diwata
8. Needyunow
9. One, Two
10. Je Suis Infini
11. Creation
12. Remember

hikrrr

Curator & Interviewer

hikrrr

内省的で知性美のある音楽を贔屓にしています。が、アグレッシヴなものも好きです。普段は暗く涼しいところに保管されたい