LAを拠点とするThe Marías(写真右)と、NYのTriathalon(写真左)が素晴らしいコラボレーション作品をお披露目してくれた。もともと音楽的にも近しいジャンルにあった2組だが、共同制作というのは初めてのこと。今作はどうやら、すでにスタートしている彼らの北米ツアーに向けたサプライズとして用意されたもののようだ。
ちなみにThe Maríasは9月末に2ndアルバム『Superclean, Vol.Ⅱ』を発表しており、11月2日(金)にはその中から「Over The Moon」のMVを公開している。
Triathalonも7月と9月に、それぞれ6th、7thシングルとなる「Courtside」、「Distant」をドロップ。また、信頼すべき東京のレーベル〈Tugboat〉から、3rdアルバム『Online』の日本盤がリリースされたことも記憶に新しい。
この潤い。Mariaのシルキー・ボイスにはいつも心を奪われてしまう。昨年のデビュー・シングル「I Don’t Know You」を聴いたときこの身に走った電流を、私は今でも憶えている。それは理想的なまでに気高く、しかもエロティックという代物。その謂わば“気品のヴェール”が、Triathalonお得意のチルで軽妙なトラックにふわりと掛かる――今作はそんなナンバーに仕上がった。
彼女のワン・フレーズのあとには、恋人でもあるThe MaríasのJoshのボーカル・パートが続く。同じメロディを繰り返す単純な構成かと思いきや、Triathalonのフロントマン・Adamのファルセットを活かした望外のアレンジを聴かせてくれ――瞬間、思わずときめく。おそらく、互いのインスピレーションが生んだ発想。
そしてリズミカルだった楽曲は、中ごろからしっとりと柔らかな耳触りに変わる。“音色は淡く、展開は鮮やかに”といった感じで、これをさらりとやってのけるところには否応なしに感心してしまう。ところで、曲調が大人しくなったからといって、そのロマンスが変わることはない。むしろ一歩引いたような態度が余計に惹きつける。重なったり入れ替わったりする歌声に、魅惑的な表情が垣間見えるのもまた。
それから、“世界に見つかっていない才能”と豪語しておすすめしたいのがこちら。モントリオールのLes Louanges(レ・ルアンジュ)というアーティストだ。
9月にリリースされたデビュー・アルバムはとても素晴らしい出来で、その秘めたるものの大きさを感じた。ジャズ/ヒップホップ/R&B/インディと、チルな要素が詰め込まれた2018年必聴の一枚である。まあ、厳しい目で見ればまだ荒削りなところももちろんあるが、これからを楽しみにさせてくれるという点では個人的にかなり高く評価している。むしろ、はじめから完成されてしまっていてはつまらない。“原石”という形容詞の似合う彼が自身をどう磨き上げて行くのか、決して目が離せない。
Text by hikrrr
【リリース情報】
The Marías, Triathalon 『Drip』
Release Date:2018.11.08 (Thu.)
Label:Superclean Records / Triathalon
Tracklist:
1. Drip