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Spincoaster NEXTCOMING 2021


シーンに新たな風を吹き込むであろうフレッシュな才能。Spincoasterが今年注目する新進気鋭の国内アクト10組を発表!

2021.01.28

毎年恒例、Spincoasterが大いに期待を寄せているニューカマー10組を選出する『NEXTCOMING 2021』を発表します。

同企画では、昨年dodo、kiki vivi lily、Kvi Baba、空音など、コロナ禍においても存在感を放っていたアーティストを選出させて頂きました。まだまだ世界的パンデミックは続いていますが、今年選出させて頂いた10組をはじめ、国内の才能溢れる新進気鋭のアーティストたちの活躍を心より楽しみにしています。

なお、『NEXTCOMING 2021』の発表と同時に、よりマス・レベルでのブレイクを予想する企画『BREAKOUT 2021』も発表しています。この『NEXTCOMING』で選出させて頂いたアーティストが、1〜2年後には『BREAKOUT』として登場するかもしれません。

また、今回の『NEXTCOMING 2021』、『BREAKOUT 2021』を中心とした、2021年要注目のアーティストをまとめたプレイリスト『SPOTLIGHT 2021』も公開中なので、こちらも合わせてチェックを。

Text by Takazumi Hosaka


  NEXTCOMING 2021 選出アーティスト10組 ※A→Z順

  Fuji Taito

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“ブラジル・タウン”とも呼ばれる群馬県は大泉を拠点とするクルー、BRIZAを率いるラッパー・Fuji Taito。自身のハードな生い立ちや野心的な姿勢をバックボーンとしたラップは、時に破壊的かつフリーキーなスタイルで観る/聴く者を惹きつける。また、その優れた情景描写力を刺々しいリリックには、どこか翳りや哀愁が漂っているように思えてならない。

これまでにクルー・BRIZA名義でのアルバムを3枚発表しているほか、Fuji Taito自身はKvi BabaやLEX、ELIONE、OVER KILLらの作品への客演参加、そしてRed Bullによるサイファー企画『RASEN』でも大きな存在感を放った。久方ぶりの単独名義作品を熱望する声も多く上がる中、果たして2021年はどう動くのか。ちなみに、Fuji Taitoという名前は本名ではない。


  gato

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東京を拠点とする5人組バンド、gato。バンドという形態でありながら、フロントマンのageを中心としたDTMの特性を活かした曲作りや構成が特徴で、トラップやハウス、オンタイムのベース・ミュージックなどを巧みに取り入れるなど、その音楽性はまさに変幻自在。また、age自身もDJとして活躍するなど、そしてクラブとライブハウス、2つのシーンを軽やかに横断する越境的な活動スタイルでも注目を集めている。

昨年、バンドの集大成的な1stアルバム『BAECUL』をリリースしたものの、このコロナ禍はライブ・パフォーマンスも高く評価されるgatoにとっては大きな痛手なはず。メンバーも所属するコレクティブ、〈東京亜種〉周辺の盛り上がりと共に、今年こそは彼らが作り出すフィジカルな場が、より大きな波風を立てることを期待したい。


  Gi Gi Giraffe

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フロントマン・K.Uによる宅録プロジェクト、Gi Gi Giraffe。SoundCloudなどでの楽曲発表で注目を集め、2016年には『FUJI ROCK FESTIVAL ’16』内「Rookie A Go Go」へ出演。また、同年には初のアルバム『Gi Gi Giraffe』をリリースし、ドレスコーズ・志磨遼平、THE NOVEMBERS・小林祐介などからも注目を集めた。

その後メンバーの諸事情によりしばらく活動休止状態が続いたが、2019年末より活動が再開。近作では初期のローファイ感はなく、『HOME MADE WORKS 2』と題されたEPもそのクオリティの高さには目を見張るものがあった。また、時折顔を覗かせるファンクネスやサイケデリック的要素も今日的な空気感として鳴り響く。なお、以前からの代表曲「Picture」はドラマ『名建築で昼食を』のOPテーマにも起用。今年もその動向に注目したい。


  illiomote

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池袋出身の幼馴染ユニット、illiomote。2019年頃より都内のクラブやライブハウスにて注目を集め、作品リリース前に『POPEYE』や『BRUTUS』などの雑誌でピックアップされたことでも話題を呼んだ。昨年4月に初となるEP『SLEEP ASLEEP…。』リリース後、『Love Music』や『ONLINE YATSUI FESTIVAL! 2020』にも出演。ささくれ立ったギターは昨今のグランジ/オルタナ再興の機運ともリンクしつつ、ローファイな質感のトラックはヒップホップ〜サイケ、エレポップ、ベース・ミュージックまでを横断。自由奔放かつ独創的なポップ・センス有する自身のサウンドを“HAPPY POP”とも形容している。2月には2nd EP『Teen Trip Into The Future』もリリース予定。


  kojikoji

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InstagramやSoundCloud、YouTubeなどにUPされた数々のカバー音源と、何と言っても2019年発表の空音「Hug feat. kojikoji」のヒットで一躍その名を馳せたkojikoji。その後もLUCKY TAPESやSUSHIBOYSのFARMHOUSE、SUKISHA、GeGなどの作品に客演/コラボ参加し、いずれも大きな注目を集めた。

自身の作品としては昨年1月に1st EP『127』をリリース。全曲作詞はBASIが、編曲を東里起(Small Circle of Friends)が担当し、ミニマルな構成ながらもポップスとしての強度の高い作品となった。記名性の高いウィスパーな歌声はもちろん、R&Bやヒップホップなど様々なトラックを乗りこなす柔軟なフロウと表現力はすでに折り紙付き。2月24日(水)には引き続きBASIを作詞/プロデュースに迎えた2nd EP『PEACHFUL』をリリース。どのような作品になっているのか、大いに期待したい。


  Kuro

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TAMTAMのボーカルにして、2019年には1stソロ・アルバム『JUST SAYING HI』のリリースでも大きな注目を集めたKuro。同作には君島大空、ODOLA、ji2kiaに加えて、EVISBEATS、Shin Sakiuraらの参加も話題となったが、同時に自身が手がけたトラックも収録されるなど、トラックメイカー/プロデューサーとしての側面も見せた。

昨年12月には作詞、作曲、トラックメイク全てを自身で手がけた新曲「Ayakashi」をリリース。トライバルなトラックに日本語独特の響きを活かしたメロディ、フロウを合わせた異色のオルタナR&B的作品として、その才能を改めて感じさせた。また、GOODMOODGOKUやODOLAなどの作品への客演参加でも強い存在感を放っているだけに、今年もフレキシブルな活動を期待したい。


  MÖSHI

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NY、ロンドン、東京に拠点を置くコレクティブ、〈Laastc〉より一躍注目を集めるラッパー/プロデューサー、そしてファッション・デザイナーとしての顔も持つMÖSHI。昨年の『FUJI ROCK FESTIVAL』にて新人の登竜門と言われている『ROOKIE A GO-GO』へ出演、さらに『出れんの!?スパソニ!?』最終選考への進出、ビクターからのEPリリースなど、フィジカルな活動が難しい2020年においても多くのリスナーの耳目を集めた。

重心の低いベース・ミュージックを軸としたビート、そして抑揚を抑えたラップと、時折見せるメロディックな歌心。先鋭的でありながらも、どこか人懐っこいポップネスも兼ね揃えているその音楽性は、“新人”という言葉が似合わないほどに洗練されている。また、MÖSHI単体としてはもちろんながら、コレクティブ〈Laastc〉としての動きにも注目したい。


  sloppy dim

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関西拠点のoveとsyunからなるユニット・sloppy dim。2019年頃よりコンスタントに作品を発表し、中でも昨年リリースした楽曲「Minority」はMVが現在440万再生を超えるなどして話題を呼んだ。ドリーミーかつオーガニックな質感のトラック、そしてメロディックなフロウ、効果的なオートチューンなど今日的なラップ・ミュージックを展開。昨年12月にはmaeshima soshiも参加する最新EP『BALLOON』を発表している。

また、oveは3MCグループ・BLOOM VASEにも所属しており、同グループの「Pop Corn」や「CHILDAYS」といった楽曲はTikTokでも高い人気を誇っているほか、後者のMVはYouTubeにてすでに1300万再生されるなど、ユースから大きな支持を獲得している。


  浦上想起

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2019年1月より浦上・ケビン・ファミリーとして音楽活動をスタート。後に浦上想起に改名した多重録音/打ち込み音楽家。昨年にはGi Gi GiraffeがOPに起用されたドラマ『名建築で昼食を』のEDテーマを担当、10月には自身初となるミニ・アルバム『音楽と密談』を発表した。次から次へと景色が塗り替えられるような大胆な展開と構成、リハーモナイズも駆使したトリッキーかつ情報量の多いトラック、その複雑怪奇なサウンドの中にも同居する不思議なポップ・センスは各方面から高い評価を獲得している。

ちなみに、同作はアートワークからMVまで自身ひとりで手がけており、インタビューで「確固とした音楽的コンセプトがあるわけでもない」と語る反面、そのマルチな才能、一貫した美学にはアーティストとしての強いアイデンティティが感じられる。今年はライブ活動など、フィジカルな場での活躍にも期待したい。


  諭吉佳作/men


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2003年生まれ、現在17歳のSSW/プロデューサー・諭吉佳作/men。中学生時代より楽曲制作及びオーディションなどへの出演を経て、でんぱ組.incなどへの楽曲提供、崎山蒼志とのコラボ曲「むげん・」などで一躍その名を轟かせた。また、その他にも福岡在住のプロデューサー/ラッパー・abelestとのコラボ曲を2019年に〈Maltine Records〉よりリリース、昨年はヒップホップ・バンドAFRO PARKERとのコラボ曲発表、坂元裕二による朗読劇の音楽を担当するなど、幅広い活動を展開している。

時にマナーやルールを逸脱する、先の読めないフリーキーな展開が印象的だが、その一方で艶やかで芯の通ったボーカルを軸に組み立てられた楽曲は、ストレンジなポップ・センスを有している。そろそろ単独名義の作品のリリースを待ち望むファンも多いはず。果たして今年はどのような活動を見せてくれるのだろうか。


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