特別鼎談

ROVIN × Kick a Show × Sam is Ohm

「夏休みに友達と一緒にポケモンやってるみたいな感覚」――ナチュラルな感覚で始動したコラボ・プロジェクト。その背景を紐解く

JABBA DA FOOTBALL CLUB(以下:ジャバ)のROVINがソロ・シングル「Thinking about You feat. Kick a Show」を6月3日(水)にリリースした。

今年2月にはYouTuberグループ・アバンティーズのそらちぃことBuddyとのコラボEP『The Outer Worlds』をリリースしたことも記憶に新しいROVINだが、今作には予てより親交の深いKick a Showを客演に迎え、プロデュースはKick a Show作品お馴染みのSam is Ohmが担当。湿度が増してくるこの季節にぴったりの、絶妙なレイドバック具合のトラックにROVIN、Kick a Showがロマンチックかつエロティックなリリックを乗せた艷やかな1曲となっている。

今回は本作に関わった3人による鼎談を敢行。共にアンダーグラウンドなシーンを出自としながらも、近年ではますます活動のフィールドを拡大させ続けている彼らに、今作の制作背景と今後の動きを訊いた。

Interview & Text by Takazumi Hosaka


「音楽を作りたい」――フラットな気持ちでスタートしたコラボレーション

――せっかくの機会なので、みなさんの出会いについても教えてもらいたいです。そもそも一番最初の出会いは?

ROVIN:ZEN-LA(ZEN-LA-ROCK)さんのイベントじゃなかったっけ? キク(Kick a Show)のライブ観て、「やべー!」ってなったの覚えてる。

Kick a Show:渋谷のOrgan Barですよね、覚えてます。

Sam is Ohm:そこからお互いのパーティに呼んだり呼ばれたりするようになり、「友達以上恋人未満」のリミックスやジャバの「THINK RICH, LOOK GOOD」に繋がったりね。

Kick a Show:ジャバもOhmさんも僕も、基本的にクラブではおちゃらけてるんですけど、音楽に対してはみんなすごい真面目で。そういう部分でフィールしたのかも知れないです。

ROVIN:お互い大事なイベントには必ず呼んでたよね。いつも一緒にいるわけじゃないけど、要所要所で交わるというか。1回1回の交流が濃い。

Sam is Ohm:お互い音源はちゃんとチェックしてるもんね。「ジャバが松屋でかかってる!」とか(笑)。

――ROVINさんはすでにBuddyさんとのコラボEPをリリースしていますし、予てよりソロ作を作りたいと公言していました。今作もスタート地点は自身のソロ・プロジェクトを始動させたいという思いからなのでしょうか?

ROVIN:外出自粛が始まる少し前くらいの時期に、すごく自然な流れで「音楽を作りたい」っていう気持ちになったんですよね。それは「ソロでも頑張っていくぞ!」っていう強い気概があったわけではなくて、何て言うか、もっとフラットな気持ちでした。この曲を作ったのは2月末くらいだっけ?

Sam is Ohm:覚えてないけど、たぶんそれくらいだと思う。

ROVIN:記憶がすごく曖昧なんですけど、おそらく最初におれがOhmくんに連絡したんだと思います。「曲作りてー!」って感じで。

Sam is Ohm:そうそう。それで僕のスタジオに来てくれて。

ROVIN:基本的に1日で全部完結してるんです。その場でどういう曲がいいか話しながらトラックも組んでいって。ちょっと前に女の子と遊んだときのことをリリックにしようと決めて、正味15分〜30分くらいで書き上げました。なので、本当にその場の会話の流れとノリで作っていった曲ですね(笑)。

Sam is Ohm:Kick a Showと制作する時もそうなんですけど、僕はコライト(共作)っていう部分を強く意識していて。今回も事前準備とかはなく、トラックもリリックも2人でその場で話しながら進めていきました。ただ、ROVINくんの声質的にオートチューンは絶対合うと思っていたので、そこは自分の中で最初から決め打ちしていた部分ですね。

ROVIN:その時、おれがNOLOVを呼んでて。あいつが「最近こういう曲にハマってて〜」って話してたんだよね。トラックはそこから膨らませていった気がする。その曲名もアーティスト名も思い出せないけど(笑)。

Sam is Ohm:ごめん、覚えてないかも(笑)。ただ、エロい内容をトラップ、ハーフ・ビートのグルーヴとかに乗せると、ちょっとチープになってしまうんじゃないかと思って。ブラス系のシンセも入れつつディスコっぽさも足して、軽快な感じに仕上げました。あのトラックも30分くらいでできたよね。

――めちゃくちゃスピーディーですね。

ROVIN:そのくらいだよね。それに並行しておれはリリックを書いて。全部含めても2時間くらいでできたと思います。

ROVIN

Sam is Ohm:これは僕ひとりの考えなんですけど、最近のJ-POPって複雑な展開が多いなと感じていて。言ってしまえば複雑なら複雑なほど良いとされているような風潮もあるなと。そういうところに少し抵抗感を持っていて、この曲も2コードでラフな構成になっているんですけど、それって元々プリミティブなR&Bが持っていた要素でもある。そういうシンプルさの提案でもあります。2コードでこんな良い曲できちゃうよ? って。

ROVIN:確かにそのカジュアルさは大切だよね。前にJIGGさん(ROVIN × Buddy「Have a Good Time」も手がけたプロデューサー)とも話していたんだけど、今のUSで流行っているラップとかR&Bって、3歳児でも歌えるようなシンプルなものだったりするんだよね。

――なるほど。制作も遊びの延長線上のような形で、自然にスタートしたのとのことですが、この曲がリリースへと至るにはどのような流れが?

ROVIN:実は先にインスタ(IGTV)にこの曲を載せていて。レーベルにはダメって言われたんですけど、まぁ、怒られたら消せばいいやって感じで(笑)。いざUPしてみたら周りからの反応もいいし、レーベルの人も「あの曲いいね」って言ってくれて。「でしょ〜?」みたいな(笑)。

――反応もいいし、リリースへ向けて動こうと。

ROVIN:はい。でも、先にインスタで公開しちゃってるし、リリースするってなると何かもうひとつ新鮮な要素を足したいなと思って。誰かに入ってもらうなら、「キクしかいないな」って思って声を掛けました。

Kick a Show:ありがとうございます(笑)。僕もROVINくんがインスタに上げた時に曲を聴いてて、すごく良い曲だなって思ってたんです。しかもエッチな感じの曲だし、今までにROVINくんのラップにはなかった感じだなって思いました。そこに参加させてもらうっていうことになったので、「もっとエッチにしちゃうぞ〜」って感じで1バース蹴らせて頂きました(笑)。

ROVIN & Kick a Show


「こういうデリケートな部分、プライベートな部分を直接表現している人ってあまりいないんじゃないかなって」

――今Kick a ShowさんがおっしゃったROVINさんの新たな一面というのも、グループや連名ではなく、ソロ名義だからこそ出せる要素なのかなと思いました。

ROVIN:そうですね。今、僕の中でジャバはひとつの箱のような意識になっていて。4人それぞれキャラクターも異なるし、本当におもちゃ箱のような存在だなって。なので、ジャバとしての活動では「自分がこの箱の中でできること」を考えて動いてるつもりなんです。それがジャバの魅力を高めることにも繋がると思いますし。

でも、今回の曲は僕が言い出しっぺで、Ohmくんとかキクを誘ったっていう形なので、自分の言いたいことや考えていることをストレートに出すことができる。どっちが良いとか悪いかではないんですけど、そこに違いはあるはずで。だからこそ、すごくストレートな表現になってしまった。極端な話、この曲を聴いて、ジャバの時の僕との違いに驚いてしまう人や、それが受け入れられない人もいるんじゃないかなって。でも、それでも構わないと思っていて。その違いも含めてみんなに楽しんでもらえれば嬉しいです。

――ROVINさんのリリックはとても赤裸々で、思わずドキッとしてしまうような内容ですよね。

ROVIN:この曲のリリックは本当に日記のような感じなんです。何か伝えたいことがあるわけではないんですけど、ただリリックで描いているような幸せな時間をみんなにも共感してもらえたらなって思います。元々上品な比喩表現とかも得意じゃないですし、あとはこういうデリケートな部分、プライベートな部分を直接表現している人ってあまりいないんじゃないかなっていう狙いもありました。

――一方で、Kick a Showさんのリリックは女性目線から綴られているようで、楽曲をよりロマンチックに仕上げています。

Kick a Show:ROVINくんの新たな一面を見せるような曲だし、そこに呼んでもらったからには僕にしかできないことをやりたいなって思って。僕は元々妄想でリリックを書くことが多いんですけど、この曲も女性目線になって、ROVINくんのリリックに対するアンサーではないですけど、そこに応答するようなリリックにしました。短い小節ですけど、上手く表現できたかなと思いますね。

Kick a Show

ROVIN:キクのバースが入ったことで、「あ、完成したな」って思いました。IGTVに上げた段階だと「曲」っていう感じだったんですけど、そこから「作品」になった。自分の手元から羽ばたいていったなと。

Sam is Ohm:「作品になった」って感覚、めっちゃわかる。これまでKick a Showが色々な人に客演で呼ばれたり、逆に自分の作品に他のアーティストさんを招いたりする時、僕も必ず間に入っていたんです。でも、今回は元々僕とROVINくんで作ってた曲に、後からKick a Showが入ってくるという形で。僕にとってもフレッシュな感じだったんです。ふたりのことは信頼してるので、最初から良いものができるっていうのは見えてたんですけど、正直その予想を大きく飛び越える作品ができたなって思います。

――リリースと同日にはMVも公開予定だそうですね。

ROVIN:MVを作るってなった時、「人生初のラブ・シーンが撮れるぞ!」ってめちゃくちゃ張り切ってたんです(笑)。でも、如何せんこのような状況ということで、今回はアニメーション作品になりました。

Kick a Show:落ち着いたらMVの実写リメイク版も作りましょうよ(笑)。

ROVIN:それ最高。おれが飛び切り可愛い子キャスティングしてくるから(笑)。

――MVはどのような作品になっているのでしょうか?

ROVIN:アニメーション作品とは言え、たぶん観ているとドキッとするシーンもあるんじゃないかなって思います。できるだけ僕がこの曲のリリックを書いていた時に、頭に思い描いていた光景をイラストレーターの方に再現してもらいました。あと、途中でガラッと展開するんですけど、よく目を凝らすと気づくであろう細かい仕掛けも用意してあります。自分で初めて観た時もドキッとしました。観ちゃいけないものを観ているような感じというか。みんな、親と一緒に観ないでね(笑)。

ROVIN


異色のクルー・B-Loved始動

――今作のリリース後には何か新たな動きが控えているのでしょうか。

ROVIN:この曲をきっかけに、創作意欲のスイッチも入っちゃって。今次々と曲を制作しているところなんです。もはや作り過ぎちゃってるくらい。

――制作はこの3人で?

ROVIN:この3人にBuddyも加えた4人ですね。そもそも、僕の場合は前からジャバ以外のフィールドでも活動したいっていう思いはずっとあって。でも、自分の力不足とかもあって、それが中々実現しなかった。でも、Buddyと一緒にEPを出したことがすごく刺激になって。そもそもBuddyもKick a Showと「So Special」っていう曲でコラボしていたりして、繋がりもある。だから……どこまで言っちゃっていいんだろうな(笑)。

……実はこの2〜3ヶ月くらいの間、ずっと4人で制作を進めています。別に使命感に追われているわけでもなければ、商業的な感じもなく。例えるなら夏休みに友達と集まって一緒にポケモンやってるみたいな感覚で。「今日はどういう曲作る?」みたいな感じで作ってます。でも、そうやって出来上がった曲がドロップボックスにだけアップロードしてるのじゃもったいないので、今どうにかしようと画策しているところです(笑)。

――ユニット、グループみたいな感じなのでしょうか。

Sam is Ohm:特にグループとかユニットとかは意識してないです。B-Lovedっていう名前なんですけど、その名義の下に自由にみんなが集まる。ROVINとKick a Showの曲があったり、4人全員でやっている曲もあったり、ROVINくんとBuddyの曲もあったり。

Sam is Ohm

ROVIN:楽しい箱がひとつ増えたっていう感じですね。本来、おれはジャバ、Buddyはアバンティーズ、Kick a ShowとSam is Ohmはふたりでずっと制作しているし、それぞれ別のフィールド、居場所を持っている4人が集まって、なんだかすごく楽しいことをやっている。でも、ずっと4人で活動し続けるっていうわけではなく、例えばおもしろいやつがいれば参加させちゃえばいいと思うし。

――せっかくなので、今回の取材には参加していないBuddyさんの音楽家、ラッパーとしての印象を、お三方からお聞きしたいです。

ROVIN:感覚的な話になっちゃうんですけど、単純にあいつのラップはすごく自分好みで、大好きなんです。もちろん、一緒に曲を作るようになってからは色々とアドバイスしたりもするけど。人間としてはやっぱり可愛いっすよね。弟みたいな感じも少しあって(笑)。

Kick a Show:Buddyくんは本当にラップが上手いなって思います。「So Special」でバースを蹴ってもらった時から、キャリア自体はそんなに長くないはずなのに、それを感じさせないスキルがあるなって思っています。自分はあまりラップのことがわかっていなくて、そのスキルがどういうところに裏打ちされたものなのかっていうのは説明できないんですけど。

ROVIN:韻の踏み方とかブレスの感じとか上手いよね。

Kick a Show:そうですね。あと、Buddyくん、僕と喋る時は基本的にふざけてますね。完全におもしろオジサン扱いされてる(笑)。

――一同(笑)。

Kick a Show:陽気で、おもしろいやつです(笑)。

――ちなみに、BuddyさんがKick a Showさんの作品に参加した経緯というのは?

Kick a Show:僕が去年のバレンタインに(ORIGINAL LOVEの)「接吻」のカバーをリリースしたんです。僕は結構エゴサーチをするタイプなんですけど、その「接吻」がリリースからしばらく経って、めちゃくちゃバズってることが判明して。その出どころを探っていたら、Buddyくんがインスタのストーリーで僕の「接吻」を紹介してくれていたことがわかったんです。僕もそのことに対して感謝を呟いたら、その翌々日くらいのライブに、アバンティーズ全員で遊びに来てくれて。ライブ中も最前で盛り上がってくれて、ライブ終わりに喋っていたら、アバンティーズとしての音楽活動もあるけど、それと並行してソロ活動もしていきたいっていう話を聞いて。それで制作中だった僕のEP『Purple Sugar』に参加してもらったっていう感じですね。

ROVIN:何かそういうアツい、情熱的なところがあるよね。YouTuberとしての地盤があるのに、別名義でも音楽活動をしていくっていう姿勢からも刺激を受ける。

Sam is Ohm:スキルとかって音楽制作をする上で大事なのは当然なんですけど、僕はそれ以上にその人が音楽にかける想いとか、姿勢みたいなものを重要視していて。そういう意味でいうと、Buddyくんって確かにスキルも高いんだけど、彼の魅力はそこだけじゃなくて、根っこにあるアツいハートみたいな部分なのかなって思いますね。正直言ってYouTuberとして人気があるのに、ラップの道に足を踏み入れるのってかなりリスキーな判断だと思っていて。そこは本当に腹括ってやっているなっていうのは常々感じますね。

ROVIN:確かに。

Sam is Ohm:だからこそ、僕は若者に人気のYouTuberじゃなくて、ひとりのアーティストとして接しています。ただ、制作のスイッチが入るまではずっとKick a Showとイチャついてますけど(笑)。

Kick a Show:あれは何でなんでしょうね(笑)。

Sam is Ohm:Buddyくんが先に帰ると、スタジオが少し寂しくなったり(笑)。これから世に出ていくであろうB-Lovedの作品も、そういう人間関係のことも意識しつつ聴いてもらえたらより楽しめると思います。

――クルーの名前、そして「Thinking about You」という曲もそうですし、B-Lovedは“愛”をテーマとしているのでしょうか?

ROVIN:名前にそこまで深い意味は持たせていないですね。みんなそれぞれやりたいことをやっていくっていうのがテーマになっていると思います。ただ、4人共女の子は大好きなので。

Sam is Ohm:みんな好きでしょ(笑)。

ROVIN:集まっても女の子の話ばかりしているし。「人類愛」とか「博愛」みたいな偉そうな意味はないです。

Kick a Show::制作中の他の曲も女の子のことを歌ってるものが多いし、作ってる途中でいつの間にかにそういうテーマに流れていくこともありますよね。

ROVIN:それ以外にテーマがないっていうわけではないんですけど、「女の子」のことをテーマにすると、おれらの場合はめちゃくちゃ早く完成します。

――B-Lovedとして、今言える範囲での今後の展望を教えてもらえますか?

ROVIN:作品のリリースはもちろん、ライブもやりたいですね。これは完全に個人の考えなんですけど、音楽っていうのはやっぱりライブがあってこそのものだと思っていて。自分の体から出たものを、リアルな場で直接届ける、それが大事だと思うんです。なので、当然曲を作ってる段階からライブのこともイメージしています。ただ、こんなご時世なのですぐには実現できないと思うので、今は曲をガンガン制作しています。「Thinking about You」を皮切りに、次々とおもしろい動きを見せていけたらなと考えているので、楽しみに待っていてほしいです。

ROVIN


【リリース情報】

ROVIN 『Thinking about You feat. Kick a Show』
Release Date:2020.06.03 (Wed.)
Tracklist:
1. Thinking about You feat. Kick a Show

Cover Design:Nishio Kazumasa

■ROVIN:Instagram

JABBA DA FOOTBALL CLUB オフィシャル・サイト

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