特別対談

Mummy-D × Pecori

共に横断的なサウンドを志向するRHYMESTERと踊Foot Works。両者に共通するアイデンティティ、アティテュードとは?

「彗星の如く現れた」ーー思わずこんな決まり文句で形容してしまいたくなる4人組、踊Foot Works。昨年3月にフリー配信したEP『ODD FOOT WORKS』が局地的に話題となり、同年のフジロック(ROOKIE A GO-GO)を始めとした大型イベントへの出演、ペトロールズ・カバー作品への参加など、彼らは急速的にシーンの前線へと躍り出た。

そして、年末の『Arukeba Gravity – ep』リリースを挟み、ついに今年4月には待望のデビュー・アルバム『odd foot works』をリリース。先述の2枚のEPとの収録曲被りは一切なし、全て新曲という前のめりな姿勢でありながらも、そのサウンド・プロダクション、ソングライティングにはより一層の磨きがかかった傑作となっている。

今回はそんな踊Foot Worksの1stアルバムを、何とあのRHYMESTERのMummy-Dが絶賛しているということから、フロントマン・PecoriとMummy-Dによる対談が実現した。国内ヒップホップ・シーンにおける新鋭とレジェンドとも言える両者は、どこに惹かれ合い、どのようなアティテュードを共有しているのか。Spincoaster Music Barにてお酒片手に存分に語ってもらった。

Interview &Text By Takazumi Hosaka
Photo by Izumi Gibo


ーーそもそもどのようにしてMummy-Dさんは踊Foot Worksのことを知ったのでしょうか?

Mummy-D:アルバム出る前に、三宅くん(踊Foot Worksのマネージャーでありライターでもある三宅正一)が一回紹介してくれたんですよね。それで、いざアルバムができた際も、興奮気味で「完璧です!」って言って送ってくれたから、これはチェックしなきゃって思って。聴いてみたらこれがもう、「なんじゃこりゃ?」っていう感じで。これまでにないような感覚というかさ。

Pecori:その後、Dさんが三宅さんに感想のメッセージを送ってくださって、それをおれらにも転送してくれて。まぁ、おれらは普通にウンコ漏らしましたよね。

Mummy-D:漏らすなよ(笑)。

Pecori:だって“あのMummy-D”ですよ? RHYMESTERの。そんなすごい方が、おれらのアルバムを聴いてくれて、しかも「これ、売れちゃうよ」みたいなことを書いてくださって。普通に待ち受け画面とかにしようかってくらい興奮したし、すげえ嬉しかったです。

ーー実際、Mummy-Dさんは踊Foot Worksのアルバムを聴いて、どのような感想を抱きましたか?

Mummy-D:最近って、ジャズとかファンク、ヒップホップの境界線が昔よりも曖昧になってきていて、バンドの中にラッパーがいたり、曲によってはシンガーがラップしたりっていうのが増えてきていると思っていて。だから、踊Foot Worksも最初はそういう感じなのかなって思ってたんだけど、実際はもっと変だったというか。もちろんいい意味でね(笑)。

Pecori:(笑)。

Mummy-D:次にどんな音が出てくるかわからないおもしろさというか、アクが強いというか。あとは全体的にアレンジとかのレベルが高くて。

Pecori:嬉しいなぁ~。

ーーちなみにPecoriくんにとって、RHYMESTER、そしてMummy-Dさんというのはどういった存在ですか?

Pecori:最初の扉というか、ヒップホップの入り口を開けてくれた人ですね。僕、ヒップホップはRHYMESTERとKREVAさんから入ったんで。

Mummy-D:マジ?

Pecori:はい。2010年くらいかな? 中3とかだったんですけど。確かKREVAさんの『心臓』(2009年)に収録されてた「中盤戦 feat. Mummy-D」で知って、そこから辿ってRHYMESTERを聴いて、みたいな。自分で曲を作るようになってからはリミックスとかも勝手に作ってました。本当に、フローとかも完全にモノマネしてた頃もあって。そこから徐々に自分のスタイルになっていったっていう感じでしたね。

ーーそんな人から褒めてもらえるなんて、すごいことですよね。

Pecori:しかも早くないっすか!?

Mummy-D:早い早い(笑)。

Pecori:早過ぎますよね(笑)。こんな早く直接お会いできるとも思わなかったですし。

ーー踊Foot Wokrsは本始動からまだ一年ちょいという感じですもんね。そのスピード感も新世代っぽいというか。

Mummy-D:でもさ、おかしくない? 若い子らがいきなりできる音楽性じゃないと思うんだよね。

Pecori:一応みんな元々バンドをやっていた経歴があって。みんなそれぞれのバンドとかプロジェクトが解散したり、ストップした時に出会ったんです。最初は八王子の方にあるスタジオで、おれとギターのTondenheyが出会うんですけど、初対面の時から何かもうFeelしちゃったんですよね。単純に音楽の好みとかもそうなんですけど、何か一緒にやってみたいなって、漠然に思ってんですよね。

Mummy-D:へぇ〜。

ーー出会い自体はすごくアナログな感じなんですよね。

Pecori:そうですね。ただ、鮮度がよかったのかなっていうのは思いますね。元々友達だったわけではなくて、音楽的な部分でFeelしてから、友達として仲良くなっていったんで、まだ付き合い自体はそんなに長くないんです。

ーーなるほど。

Mummy-D:若い頃ってさ、「ヒップホップ最高!」ってなったらヒップホップのことばっか考えて、アウトプットもそのまんまヒップホップしかできない、みたいな感じになるじゃない? でも、踊Foot Worksにはすごい色々な音楽的要素が入っているよね。ああいう要素って、メンバー皆で共有している部分なの?

Pecori:全員、ルーツはバラバラなんですよね。おれも中学生の頃はバンドでギター・ボーカルやって、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)とかエルレ(ELLEGARDEN)をコピーしたりしてましたし。

Mummy-D:へ〜。

Pecori:おれ個人で言えば、AKBとかのアイドルの影響もあって。高校時代からヒップホップにハマって、一時期MPCをバンドに導入していたんですけど、そこでAKBの「River」とかをサンプリング&チョップして、サウンドに加えてみたり。そしておれもそのキーに合わせて歌う、みたいな(笑)。

ーー話だけ聞くと、だいぶカオスですね(笑)。

Pecori:もうわけがわからないですよね(笑)。とにかく変なことばっかしてきたんです。でも、何か常に根っこにあるのはポップスだったりもして。そういう自分たちの好きなもの全部入れちゃおうっていう感じで作ったのが今回のアルバムですね。

Mummy-D:いいなぁ。すごくフレッシュな感性だよね。

ーーしかも、踊Foot Worksってメンバー全員が幅広い音楽的趣向を持っていますよね。一人ひとりが何か特定のジャンルに特化したりするのではなく。

Pecori:そうですね、みんな雑食です。ただ、みんなバラバラに音楽を聴いている中でも、重なり合っている部分ももちろんあって。その一番濃い部分を抽出すると、踊Foot Worksになるっていう感じですね。

Mummy-D:それが今っぽいよね。

ーー情報量の多い時代に育った世代ならではというか。Mummy-Dさんにお聞きしたいのですが、RHYMESTERはヒップホップとポップスとの間で、常にそのバランスを慎重に図ってきたという印象を受けるのですが、そういった観点からも彼らに共感することはありますか?

Mummy-D:若い世代の子たちってさ、おれらの頃と比べると、「ストリートだから〜」とか、「ヒップホップだからこう生きていかなくちゃいけないんだ」っていう考えを持っているやつって少ない気がして。Pecoriみたいに自分の雑多なルーツも隠さないし、どんどん新しい要素を取り入れていったりする。それは日本だけでなく、USのシーンでもそういう動きがあるよね。そういう意味では世界基準って言えるし、純粋に羨ましいなって思う。あと、おれらはそんなに不良じゃなかったから、ヒップホップの王道みたいなシーンだと居心地が悪くて、かといってメインストリームのポップスとも違うし、常にグレーゾーンを漂ってきたんだよね。それはこの現代においても、踊Foot Worksも同じなんじゃないかなって。

Pecori:RHYMESTERはバンドとも一緒に共演したり、コラボもしていますよね。

Mummy-D:うん、フェスにもよく出るしね。あと、自分もマボロシ(Mummy-DとSUPER BUTTER DOGの元ギタリスト竹内朋康によるユニット)っていうラッパーとギタリストのユニットをやったりしていて。そういう活動をしていく中で、何ていうんだろう、ミュージシャンとしての共通言語、知識、感覚みたいなものが増えたし、そういうどっちつかずな部分が居心地よくなっちゃって。だから、ある時期からは意識的にそういうグレーゾーンを担う存在になろうって思い始めたんだよね。

Pecori:あと、僕の勝手なイメージなんですけど、RHYMESTERの中だと宇多丸さんはラップ・スターで、Dさんはポップ・スターっていう風に感じるんです。フックとかは結構Dさんが作られるんですよね?

Mummy-D:そうね。何で知ってるの?(笑)

Pecori:何かインタビューとかで見た気がします(笑)。あと、作品聴いていてもやっぱりそうなんだろうなって思いますね。フックがメロディアスというか、ずっと歌心があって、そういう部分におれはすごく惹かれます。それって自分の目指しているところでもあるんですけど、自然にできることじゃないような気がしていて。

Mummy-D:おれよりも全然歌ってるじゃん(笑)。でもさ、アメリカとかではDrake以降、歌もラップも自由に行き来するのが当たり前じゃない? 踊Foot Worksはそういう感性ともリンクしているような気がしていて、流石だなって思うよ。ラッパーの「なんちゃって歌心」では出てこないラインがあると思うし、オクターブでユニゾンとかしてて、それがカッコいい。あと、歌うことに躊躇がないよね。おれらは昔、言葉を伸ばすだけで怖かったんだよ。言葉を刻んでないとすぐ不安になって、「大丈夫っすかね?」って聞いたりする(笑)。

ーーかっちりハメてないと不安だと。

Mummy-D:そう。だからさ、ある意味夢のない時代になったよね。ラッパーが歌も歌えなくちゃいけないっていうさ(笑)。

Pecori:なるほど(笑)。ただ、逆におれはラップに対するフィジカル的な強さっていうのが課題だと思ってて。単純にRHYMESTERみたいな2MCの掛け合いとかもすごく羨ましいし。

Mummy-D:ハハハ(笑)。踊Foot Worksって他の人も歌ってるの?

Pecori:サビとかは歌ってますね。特にアルバムの1曲目「時をBABEL」とかは、ユニゾンというか、おれの声を囲ってもらうようなイメージで。何ていうか、“SMAP感”を目指しているんですよね。みんなの声が合わさると魅力が増幅するというか(笑)。

Mummy-D:何だそれ(笑)。

Pecori:いやいや、意外と言われるんですよ。「SMAPっぽいよね」とか(笑)。

Mummy-D:ウソだろ〜(笑)。

Pecori:いや、嵐かもしれないっす(笑)。

Mummy-D:どっちでもないよ(笑)。でもさ、ああいう曲(「時をBABEL」)をアルバムの1曲目に持ってくるのはカッコいいなって思ったな。何て言えばいいんだろう、3拍子で、バラード調でさ。

ーー同感です。これをデビュー・アルバムの1曲目に持ってくるっていうのは、かなり攻めたなと。

Pecori:ありがとうございます。曲順は結構意識したので、嬉しいですね。今回、アルバムのミックスを手がけてくれたのがGiorgio Givvnさんっていう方なんですけど、その方にもアイディアをもらって。当初は2曲目の「Bebop Kagefumi」を1曲目に持っていこうかっていう話もあったんですけど。

Mummy-D:そうなんだ。でも、困るんだよね〜、若いのにこういうことやられちゃうとさ。「おれら、余裕っす」みたいな(笑)。

Pecori:カチカチっすよ、マジで(笑)。余裕なんて全くないです。

ーーハハハ(笑)。先ほど、RHYMESTERはヒップホップとポップスの間の、グレーゾーンを担うことを意識していたという話が出ましたが、踊Foot Worksのようなバンド、アーティストが出てきたのは、まさしくそういったところでRHYMESTERが種を撒いてきた結果と言えるのではないでしょうか?

Mummy-D:それは……確かに、自負はあるよね。Pecoriとかの世代にはもうそういう考えはないと思うけど、基本的におれらと同年代とかもっと上の世代のミュージシャンって、ラッパーのこと怖いって思ってたんだよね。みんなヒップホップは聴いてるし、コラボとか共演も興味あるんだけど、声かけずらい、みたいな。でも、おれらは昔から色々なジャンルが混ざった方が日本の音楽シーンはおもしろくなるだろうし、活性化するんじゃないかって思って活動してきた。

ーー実際に、ここ最近の若手のアーティスト、バンドにインタビューしたりすると、〈FG〉クルー(※FUNKY GRAMMAR UNITの略)の名前が挙がってくることがすごく多くて。

Mummy-D:うん、嬉しいよね。ただ、やっぱりRIP SLYMEとKICK THE CAN CREWの存在がすごく大きかったんだと思う。彼らが恐れることなくメインストリームへと切り込んでいったからこそ、多くの人に届けることができた。そしてその届いた層にはPecoriみたいなやつらがいて、それが次の世代として今頭角を表し始めている。作品も売れて、地上波とか紅白にも出て、当時は叩かれたりもしたけど、後の日本の音楽シーンとかヒップホップ・シーンに影響を与えた大きさっていう意味では計り知れないよね。だからあいつらは偉いんだよ。

※RHYMESTER、EAST END、RIP SLYME、KICK THE CAN CREW、MELLOW YELLOWを中心としたヒップホップ・コミュニティ

Pecori:間違いないっすね。あと、Dさんって客演の幅がすごいですよね。実は今日、最初はラフな姿勢で対談に臨もうと思ってたんですよ。緊張せずに自然体で。でも、電車乗ってたら急に緊張してきてしまって(笑)。それで、RHYMESTERとかMummy-DさんのWikipediaを見てたんですよ。そしたらKREVAさん、童子-Tさん、ZEEBRAさんみたいなヒップホップ畑の人とはもちろん、遊助さんとか、レキシさんとか、最近ではDAOKOさんともやってて。

ーーそれこそ、さっきおっしゃっていたマボロシも、ヒップホップのアイデンティティを持ったまま、ヒップホップという枠から飛び出そうという姿勢を感じさせるプロジェクトですよね。

Mummy-D:日本のヒップホップは2000年くらいにすごい流行ってて。その当時はバブルと言っていいくらい、今よりも全然流行ってたんだよね。それくらいの時期におれらは『ウワサの伴奏』(※)っていうアルバムを出したんだけど、後から考えるとそれがキャリアのターニング・ポイントだったねっていう話をメンバーともよくしていて。

※『ウワサの伴奏~And The Band Played On~』、2001年にリリースしたアルバム『ウワサの真相』の収録曲を様々なアーティストと共演する形で再構築した作品。2002年10月リリース

Mummy-D:あれがなかったら、きっとクラブをベースとした活動で、ヒップホップ・フィールドからはみ出せなかったんじゃないかなって思う。でも、あそこでヒップホップの外の人ともコラボできたことによって、すごく視界が開けたんだよね。

Pecori:おれらはRHYMESTERとは逆で、ライブハウス・シーンから出てきて、今でもバンドと共演することも多いんです。それはそれで居心地いいんだけど、でも、やっぱりヒップホップが好きだから、これからはもっとクラブとかヒップホップ・カルチャーと混ざり合っていきたい。そういうところは今後の目標としていきたいですね。

ーーなるほど。『ウワサの伴奏』をリリースされた当時の反応というのはどういったものだったのでしょうか?

Mummy-D:ちょうど日本でもフェスとかが盛り上がってきた時期でもあって、あの作品でRHYMESTERはヒップホップの外にもオープンな姿勢があるんだっていうのが示せたからか、結構フェスとかにも呼んでもらえることが増えて。そこでさらに人脈が増えて、っていう感じで、すごくラッキーな流れができた。でも、あのアルバムがヒップホップ界隈で、クラブでいっぱいかかったかというと、たぶんそれはないと思う。

ーーヒップホップって、特に日本では閉じたコミュニティならではのクールさもあるじゃないですか。そういった部分とはどうやって気持ちの折り合いをつけていたのでしょうか?

Mummy-D:わかる、そういうのはあるよねぇ。だから、当時は結構葛藤もあったよ。一時期からヒップホップってどんどんヤンキー・カルチャーになっていってしまったじゃない? おれらはそういった流れに押し出されて、自然と日本のヒップホップ・シーンの外周にいってしまった感じもあって。だからこそ、あんまり気にしなくなった、そこから振り切れたっていうのはあるかもしれない。

Pecori:おれらも、基本的には自分たちの音楽は「J-POP」だと思ってるんだけど、やっぱりヒップホップが好きだから、ヒップホップをもっと広めたいっていう気持ちはすごくあって。だからこそ、ヒップホップ・バンドとか、ヒップホップ・グループっていう言われ方も否定しない。でも、やっぱり一番しっくりくるっていうのは、RHYMESTERが開拓してくれたグレーゾーンな部分なのかなって思いますね。やっぱり、最終的には「こんなバンド見たことない」って言われたいんですよね。

ーー今の日本におけるヒップホップの盛り上がりは、おふたりはどのように捉えていますか?

Mummy-D:ここ最近のヒップホップの盛り上がり方は、フリースタイルを中心としたものだよね。それって、やっぱり海外のものと比べるとちょっと質が違って。向こうでは、もう昔でいうポップ・スター、ロック・スターがほとんどラッパーに入れ替わっているけど、それと比べるとまだまだだよね。もちろん、盛り上がってること自体は素晴らしいことだけど。

Pecori:バトルにばかりスポットが当たって、まだポップ・チャートを席巻したりっていうことはないですもんね。

Mummy-D:そう。もっと録音作品を聴いてもらったり、ライブに足を運んでもらうようにならないと、ヒップホップ自体の株が上がらないし、ラッパーとかの生活もよくならないと思うからさ。だって、ずっとバトルしてたらすり減っちゃうと思わない?

Pecori:おれ、フリースタイルできないんですよね。

Mummy-D:大丈夫、おれもできないから(笑)。それに、今さらおれがバトルに出てきたらさ、「え〜!?」ってなるでしょ。それこそ夢がないよね。(フリースタイル)やらなくてもいいんだよっていうことを示せる人がいないと。

Pecori:今の時代、やっぱりフリースタイルできないことがラッパーにとってのコンプレックスになりがちですもんね。でも、「Mummy-Dさんができないなら、おれもできなくていいや」ってなる(笑)。

ーー確かに(笑)。一方で、RHYMESTER主催の野外フェス“人間交差点”には、BAD HOPのようなUSの動きと直結したヒップホップ・グループも招致していますよね。

Mummy-D:やっぱりトラップでも何でも、幅広く紹介して盛り上げていきたいんだよね。おれらのライブに来てくれるお客さんは、本当に音楽が好きな人たちが多いから、そういうイベントでパフォーマンスすることによって、新たな層にアプローチできるキッカケになればいいなと。とは言え、1日だけのイベントだから、毎年10組くらいしか呼べなくて、満遍なく色々なジャンルのアーティストに出てもらうべくいつも悩んでるんだけどね。

Pecori:今の踊Foot Worksの目標は、来年の“人間交差点”に出ることです。

Mummy-D:三宅くんも言ってたよそれ。「気が早ぇーな、おい」って(笑)。

ーーそうやって色々なジャンルのアーティスト、音楽を紹介、提示することによって、リスナーや音楽シーンが豊かになる。RHYMESTERはそういったことを常に考えて動いてきたんだなということが、改めてわかりました。

Mummy-D:いきなり日本のヒット・チャート1位に入るような曲を作れるタイプじゃないから、やっぱりそこでは勝負できないし、「超売れ線じゃなくても、いい曲っていっぱいあるんだよ」っていうことを伝えていくのが、健全だし自分たちのためにもなるっていうか。

Pecori:勝手に共感しちゃいますね。

Mummy-D:シンパシー持ってもらえるのは嬉しいな。リスペクトってちょっと遠い感じがするけど、シンパシーはもっと近い感じがするから。

Pecori:恐れを気にせず言わせてもらうと、単純に飲み友達になりたいっていう(笑)。

Mummy-D:いいよ。いつでも連絡してこいよ。

Pecori:彼女にフラれたらDさんに連絡して話を聞いてもらう、みたいな(笑)。

Mummy-D:それはめんどくさいな〜(笑)。

ーーハハハ(笑)。では、RHYMESTERなどの先達が撒いた種とも言える新たな世代に、Mummy-Dさんはどんなことを期待しますか?

Mummy-D:雑種なひとたちのステータスを上げてほしい。おれらの頃よりももっと大きなスケールで、ジャンルレスなミュージシャンによるムーヴメントを見せてほしいな。日本って音楽自体の競技人口が少ないから、エンターテイメントのトップじゃない人たちの盛り上がりが大事だと思っていて。云わば亜流の人たちが当たり前になるっていうか、色々なジャンルを横断するアーティストたちによる盛り上がりを作ってほしい。そうすると必然的にリスナーも色々なジャンルの音楽を聴くようになるし。

Pecori:こっちからメインストリームに寄っていくのではなく、みんな好きな音楽をやり続けて、結果的にみんながおれらの音楽を聴くようになってくれたら嬉しいですよね。

Mummy-D:世界的に見ても今ってそういう横断的な音楽が当たり前になってるじゃない。ラッパーがジャズ系のミュージシャンと一緒にやったり。あと、フリースタイルとか今USで流行ってるトラップって、あまりにも「ヒップホップ・ゲーム」な側面が強いよね。全部が全部そうなわけじゃないけどさ。おれらの時代にあった、「このサンプリング・ネタは何だろう?」とか、「このビートのベースがカッコいい」とか、そういう楽しみが減ってるんじゃないかなって。もうちょっとミュージシャンシップの高いアーティスト、グループが台頭してきてくれて、そういうところを変えてくれたら最高だよね。

ーージャンルレスなミュージシャンによるムーヴメントを作るっていう面では、踊Foot Worksが主催している“TOKYO INV”や、大晦日に開催した“Arukeba Gravity”といったイベントも重要なのかなと思います。

Mummy-D:どこでやってんの?

Pecori:“TOKYO INV”は下北沢GARAGEで不定期開催していて、大晦日の“Arukeba Gravity”は渋谷WOMBで開催しました。LEO今井さんとか、KANDYTOWNのRyohuさんとか、group_inouのimaiさんとかも呼んで、結構ジャンルレスなイベントになっているんじゃないかなって。

Mummy-D:Ryohuとかはまさしくだよね。バックボーンには元々バンドがあって、今は主にラッパーとして活躍してて。そういう人のラップってやっぱりおもしろいし、色々なシーンとか界隈をくっつける接着剤みたいな存在になるんじゃないかなって思うんだよね。

ーーちなみに、Pecoriくんは今24歳ですよね。同じ年齢の時、Mummy-Dさんはミュージシャンとしてはどのような日々を送っていましたか?

Mummy-D:24歳か……ちょうどインディーズで1stアルバム(『俺に言わせりゃ』1993年)を出した頃だと思うんだけど。KGDR(キングギドラ)とBUDDHA BRANDがアメリカから帰ってきて仲良くなって、“さんピンCAMP”で日本のヒップホップがドカーンと盛り上がる前夜みたいな、そういう空気感あったよね。あと、ちょうどその年におれが作詞で参加した「DA.YO.NE」(EAST END×YURIによる1994年の大ヒット・シングル)っていう曲が大ヒットして。

Pecori:え、あれ24歳のときだったんですか!

Mummy-D:そう。それで親に学費全部返して、バイトも辞めた(笑)。

Pecori:すごいっすね(笑)。いや〜これはおれも頑張らなきゃダメですね。あ、聞きたかったことがあるんですけど、Dさんは俳優をやられてるじゃないですか。おれもいつかそういう演技とかもやりたいなと思っていて。

Mummy-D:やった方がいいよ。いつかとか言ってないで、機会があったら今すぐにでもやった方がいいと思う。色々なところでそういうこと言っておくと、話しがきたりするから。Pecoriは顔もおもしろいし(笑)。

Pecori:変顔のバリエーションだけはあるんで(笑)。

ーーMummy-Dさんは役者をやってみて変わったことってありますか?

Mummy-D:前からキャラを作ってステージに上るっていうタイプではなかったから、「よーいスタート」で瞬時に演技に入るっていう経験はすごく大変だったし、勉強になった。プロの役者、演技の現場って、大袈裟に言えば監督が「全裸になれ」って言ったらすぐにパッと脱ぐ、みたいな。そういうプロフェッショナルな人たちの集まりだから、そこからすごく刺激を受けたし、何か自分の甘えみたいな部分も感じた。だから、役者を経験したことによって、曲の中でキャラを作ったりすることに対する抵抗がなくなったかな。

Pecori:おれ、リリックでは99%演じてるというか、ほぼフィクションなんですよね。残りの1%に自分を入れて、気づいてもらえる人にだけ気づいてもらえればいいや、みたいな。

Mummy-D:へぇー、そうなんだ。

Pecori:何かSNSに踊Foot Worksの歌詞を聴き取って書き起こしたものをUPしてくれた方がいたんですけど、マジで8割方間違ってて(笑)。おれのフロウは聴きとりにくいと思うし、しょうがないんですけど。でも、そういうこちらの意図せぬ勘違いって、結構おもしろいなとも思っていて。たまに見てると、「お、(元の歌詞より)そっちの歌詞の方がいいじゃん」って思うときもあって(笑)。

ーー時間もそろそろ迫ってきていますが、お互いに何か聞いておきたいことはありますか?

Mummy-D:おれは未だに「このアルバム、本当にPecoriたちだけで作ったのか?」って思ってる(笑)。前のEPとかも聴かせてもらったんだけど、明らかに今回の方がよくなっててるんだよね。無駄な音がなくなって、1曲毎の方向性も明確になっていて。何か手練れのアレンジャーとか付いてるんじゃないの〜? って(笑)。

Pecori:ゴースト・ライターとか(笑)。何ですかね、制作中のやり取りとかもLINEでデータの投げ合うだけで、ほとんど言葉もなく進行していくんですよ。本当にFeelしてるっていう感じで。

Mummy-D:すごい作り方だな(笑)。まぁ、みんな上手くなり過ぎないように、下手に小奇麗にならないように。今のおもしろいバランスを失わないでほしいって思うかな。

ーーPecoriくんも何か聞き逃したことがあれば。

Pecori:何かのインタビューで、Dさんが「もっともっとラップが上手くなりたい」っておっしゃっていて、「怖っ!」って思ったんです(笑)。その、未だに貪欲な姿勢がすごいカッコいいなって。なので、これからやってみたいこととかあれば教えてもらいたいです。

Mummy-D:あの、最近思うのは、歌を全面解禁したいんだよね。曲によってはラップなしなんていうのもアリかなと。

Pecori:それめっちゃ聴きたいな〜。

Mummy-D:でもさ、松本零士さんも以前「もっと絵が上手くなりたい」って言っててさ、そこにおれも感銘を受けたんだよね。おれらも貪欲に行かなくちゃって。

Pecori:そういえば、ダウンタウンの松本さんもそういうこと言ってたかもしれないです。おれもいつか、Dさんに嫉妬してもらるくらいの存在になりたいですね。「Pecori、やってんな〜」って思われるくらいの。

Mummy-D:そんなに遠くない未来だと思うよ(笑)。

ーー最後に、おふたりの今後の展望を聞かせてもらえますか?

Pecori:おれは……今後はソロでもやってみたいし、さっき言ったように俳優、ナレーター、お天気キャスターもやりたいですね(笑)。あと、今回Dさんと対談させてもらえたのも何かの縁だと思うので、いつか一緒に曲とかできたらな、と。

Mummy-D:そんなのすぐできるよ。

Pecori:本当ですか(笑)。

ーーMummy-Dさんはいかがですか?

Mummy-D:実はちょっと新しいプロジェクトも進んでいるんだけど、まだ言えなくて。あと、来年はRHYMESTERがデビュー30周年なので、もちろんそっちも頑張らなくちゃいけないんだよね。ちょうど今、すごく刺激が欲しい時期だったから、Pecoriと話せてよかったよ。

Pecori:めちゃくちゃ光栄です……!


【リリース情報】

踊Foot Works 『odd foot works』
Release Date:2018.04.25 (Wed.)
Label:Q2 Records / Victor Entertainment
Cat.No.:VICL-64975
Price:¥2,315 + Tax
Tracklist:
1. 時をBABEL
2. Bebop Kagefumi
3. NDW
4. 正論
5. nightcrawler
6. milk
7. 大家族
8. 19Kids Heartbreak
9. 逆さまの接吻

all songs composed, performed & recorded by ODD FOOT WORKS
all tracks mixed by Giorgio Givvn

■踊Foot Works レーベル・オフィシャル・サイト:http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A025882.html

■RHYMESTER オフィシャル・サイト:http://www.rhymester.jp/

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