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REPORT | TOKYO PLAYGROUND #3


台湾・香港・日本の気鋭アーティストが交わった一夜、音楽とカルチャーが交差する新イベント第3弾

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2025.12.27

「音楽とカルチャーが交差する新たな遊び場」を掲げるTOKYO PLAYGROUNDが、早くも3回目の開催を迎えた。12月7日(日)、場所は新宿・東急歌舞伎町タワー1階「KABUKICHO TOWER STAGE」。そろそろ年末の足音も聞こえてきた新宿の街を、活きのいい音楽が彩ってくれた。

このイベントの魅力は明快だ。まずは国内外のアーティストが満遍なく顔を揃えること。そして毎回さらりと音楽的なカラーを変えながら、一貫してブレイク前の「いい音楽」を届けてくれることである。無論、都心の真ん中でエントランスフリーという条件で開かれていることも言い添えておこう。敷居は低く、それでいて心惹かれる出会いが待っている──そんなジャンルも国境も越えて若い才能に触れることができるのが、『TOKYO PLAYGROUND』の醍醐味である。

今回の出演アーティストは次の6組。トリを任された台湾出身のラッパー/シンガー・Leo王、香港で活動するmoon tang、そしてここ日本からTosh Kugai、Gliiico、Geloomy、DOG STOCKら4アーティストがエントリー。いずれも個性豊かな面々である。

Text by Ryutaro Kuroda
Photo by fukumaru


  DOG STOCK

トップバッターのDOG STOCKが景気のいいライブでスタートを切る。ファンキーなミクスチャーロック! それもとびきり熱量の高い演奏で押し切ってくる痛快さが売りだ。セッションで始まり、“WET N WILD”へ繋げて再びセッションへと帰着。ギター、ベース、キーボード、ドラムの4人は互いの技をかけ合うようにスリリングな演奏で聴き手を魅了してくる。そのアンサンブルと遊ぶように言葉を吐き出し、オーディエンスの心を揺さぶってくるボーカルもカッコいい。

ボーカル・松本悠杜は「ゴジラと対面しながらライブをするのは初めてだー!」と叫んだかと思えば、聴き手とコミュニケーションを取るようにアドリブで歌を繋いでいく。とにかく彼らのライブは奔放で、無軌道なエネルギーを感じるのだ。

最後は松本が「歌舞伎町は暑すぎる」と言い上裸になって“Kick the core”。ソリッドなギターとドライブするベース、空中を飛び回るように鳴らされる鍵盤、そしてその全てを乗せて転がっていくようなドラム、まさにこのバンドの力強さが具現化したような楽曲である。「心の中にあるロックンロールがまだ滾っている」「ラブ & ピースを届けよう」と馬鹿正直に言いたいことを言うMCも印象的で、気づけば足を止めて聴き入る人が増えていったのも偶然ではないはずだ。


  Tosh Kugai

2番手に登場したのは沖縄出身のシンガー・Tosh Kugai。10月に「TOSH」から現名義に改名し、この日が名義を変えてからの初ライブとなった。まず最初に言っておくと、びっくりしたのがその選曲だ。なんとこの日はすべてが未発表曲。心機一転、新しい音楽を追求していきたいという意思の表れだろうか。

キーボード、ギター、ドラムを加えた4人編成で臨んだライブは、ミッドテンポのロックンロール“Wrong Direction”で始まり、爽やかな“If I”へと移っていく。そしてシンセの音が印象的なインディロックの“Super Lonely”からNew Orderを思わせる“Do You Remember”へ。さらにはMCを挟みサイケ色のギターと、チルウェイブ風のシンセを掛け合わせたような“On This Island”へと繋がっていく。

今やりたい音楽(そしてきっとこれからの音楽性)を軽やかに開放していくようなライブである。きっと彼の初陣を見れた人はラッキーだ。最後は黄昏を感じるロックバラード“maboroshi”と、メロディアスな“yes, i’m done”を歌い終演。このメロディのよさは多くの人の心に届くはず。2026年の活動に注目したい。


  Geloomy

初っ端からぶっ飛ばしていくGeloomyが頼もしい。足腰の強さを感じるファンクナンバー“hey!!!!!”で始まったライブは、“Shock!!中毒”で一層の盛り上がりを見せる。むっちりとしたベースと軽快に刻まれるドラムが腰を刺激し、意識を揺さぶる鍵盤とカッティングギターで一気に場の空気を掴んだ様子だ。若いバンドながら確かなファンベースを築いていると言えるだろう。彼らのステージは特にお客さんが多かったような印象があり、華やかなディスコファンクが12月の新宿に活気を持ち込んでいく。

楽曲のよさと演奏の上手さ、そして能天気なキャラクターの掛け算がこのバンドの持ち味だろう。小腸(Vo. / Gt.)の「しっかり無料な感じで見ていってな」という謎のMCの後、気怠くセクシーな“airam”がきてノックアウト。続くダークで催眠感のあるソウルナンバー“Black Cinema”を含め、このバンドの色気を堪能できる2曲である。

ラストは未発表曲の“ibaraki”から“Vagi@”。即効性のあるメロディと踊れるリズム、そして挑発的なのに甘美さも備えているボーカルはとにかく魅力的だ。来年以降、益々飛躍していきそうな予感を抱かせるステージである。


  moon tang

冬は日が落ちるのが早い。17時でも真っ暗である。そんな夜の闇をあたためたのがmoon tang。タイと広東系にルーツを持ち、アジアで人気を博しているシンガーソングライターである。この日はHALLEYの2名、ギターの登山晴とキーボードの西山心をサポートに迎えてのライブになった。

まずは“i hate u”、そして“lately”とメロウなナンバーを続けて披露。アコギのロマンチックな音色に惹き込まれるが、続く“some days”は鍵盤と声だけで魅せていく。いずれも抑えた音数の中に情感の豊かさを感じる演奏で、サポートのふたりがmoon tangの魅力を押し出しているように思う。それにしても彼女の歌はなんだろう。妖精のように優美なボーカル、と言えばいいのか。すっと身体の深いところに染み込んでいく、魔法のような声である。飾らない仕草や表情も人気の理由かもしれない。

MCでは登山に耳打ちしてもらいながら、ところどころ日本語を織り交ぜて話していたことで一層オーディエンスの心を掴んでいたように思う。後半は“dear elissa”、“honest”、“夜闌人靜”と繋ぎ、“all I need is just someone to love”を歌って終演。晴れやかなヴァイブスを感じる楽曲で、リズミカルな音は聴いているだけで気持ちが上向く。ハジけるような笑顔で「サンキュー!」と告げてステージを後にした。


  Gliiico

天性の楽観性を感じる、自然体で音楽を奏でるGliiicoが素晴らしい。サポートを含めた5人編成で現れ、まずはKai de Torres(Vo.)が(おそらく)お酒を片手に持って軽い挨拶。リラックスした空気でライブがスタートした。スペーシーで陽気、踊れるポップソング“Pea”がいきなり好調である。いかがわしい雰囲気を醸し出す鍵盤が魅力的なサイケロック“Mutron”から、来年リリース予定の新曲だという“Gut”まで、頭3曲だけで気分は上々だ。

「次は“Dealer”っていう曲なんですけど、歌舞伎町でディーラーはヤバいね(笑)」というMCはブラックユーモアが効きすぎている。その“Dealer”ではベースの存在感が増して抜群にグルーヴィーだ。ノイジーなギターもキマっており、けたたましいアンサンブルに心が持っていかれる。

“Tragedy”は不思議な音色のシンセとエフェクティブなボーカルにクラクラしたが、ふと前方を見ると優先エリアで飛び跳ねている人たちがいて気持ちいい。最後はユーフォリックなポップソング“Sam Difrs”を歌い終演、かと思いきや、まさかのTHE BLUE HEARTS“リンダ リンダ”のカバーで締め! わずか30分ほどのステージだが、恋に落ちるには十分な演奏である。


  Leo王

夜も深まる新宿の街にLeo王の歌が響く。サックスを含む5人編成で現れたそのサウンドは、ジャズ、レゲエ、ヒップホップを融合した魅惑の音楽である。挨拶代わりの“五千塊”で早速惹き込まれた。空間を侵食するように動き回るベースに、コクのあるサックスが暗色の空を流れていく。その中で雄々しいラップが闇を切り裂くように迫ってくるのだ。耳で聴くというようりも、ズシンと内臓に響き渡る感じである。蠱惑的な鍵盤に誘われるダークな“阿明”も見事の一言、“鏡子”では音の波に乗るようにゆらゆらと揺れるオーディエンスが印象的である。

ジャズやレゲエ色の強いライブに感じていたが、中盤のMC(というか録音された電子ボイス)で来年にアルバムを出すことをアナウンス。恐らくこれが今のLeo王のモードなのだろう。間違いなく、期待して待つに値するクオリティになるはずだ。

“烏龜烏龜”はまさにオリエンタル色を感じるレゲエ調で魅力十分、没入感のあるボーカルを聴かせる“快樂的甘蔗人”も何度でも聴きたくなる1曲である。“煙”はイベントの最終曲に相応しいハイライト。生命力を感じるアンサンブル! この曲のパワフルでワイルドな演奏からは、メンバーそれぞれの表現者としての矜持を感じずにいられない。飲み込まれそうな迫力を感じるのだ。

目当てのアーティストを見にきた人も、たまたま前を通りかかった人も、おもしろい音楽に出会えたのではないだろうか。異なる個性を持った6組のアーティストが、短い時間でしっかりと魅力を発揮してリレーをする。しかもそれが「タダ」で見れるのである。やっぱりこの開放性が『TOKYO PLAYGROUND』のいいところだろう。最後は参加アーティストたちで記念撮影、大団円である。

さて、勘がいい読者にはお察しの通り、もちろん第4回の開催も決定している。日付は2026年3月14日(土)。随時発表されていく出演アーティストのニュースを楽しみに待っていてほしい。


【イベント情報】


『TOKYO PLAYGROUND #4』
日程:2026年3月14日(土)
会場:東京・新宿 東急歌舞伎町タワー1階 KABUKICHO TOWER STAGE

TOKYO PLAYGROUND オフィシャルサイト


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