Photo by Kana Tarumi
Text by Yuji Tayama
インストゥルメンタル・バンドのtoconomaが、8月1日(日)に東京・恵比寿The Garden Hallでライブ・イベント『TOCOJAWS 2021』を開催した。
2018年にバンド結成10周年を記念し、ツアー形式で行なわれた『TOCOJAWS』。約3年ぶりとなる今回は、toconomaのメンバーが敬愛するSPECIAL OTHERSをゲストに迎え、対バンでのライブが繰り広げられた。
まずは、SPECIAL OTHERSがステージに登場。芹澤“REMI”優真(Key.)が奏でるメロディに、宮原“TOYIN”良太(Dr.)がビートを重ね、そこに柳下“DAYO”武史(Gt.)と又吉“SEGUN”優也(Ba.)がふんわり音を足していくという、3分ほどのナチュラルなジャム・セッションを経て、「Have a Nice Day」からイベントの幕が開けた。
予測不能なワクワク感を湛えて、なおかつ落ち着き払った入りで確実に自分たちのペースを作り出すさまは、さすがの貫禄、安定のエモさと言えるライブ運び。toconomaと同編成であるインスト・バンドの先輩として、やさしい音色や繊細なグルーヴを活かした味わい深いプレイを聴かせる一方、「WAVE」のようなコーラスが効いたナンバーを織り交ぜてくるあたりも上手い。
最初のMCでは「『TOCOJAWS』へようこそ! お招きいただきありがとうございます」「toconomaのメンバーが後輩キャラなんですとか言ってたんですけど、俺たちも後輩キャラなんだよね」「そうそう。先輩やめてくださいよーみたいな調子でやってきたのに、もうこんな歳になっちゃった。もっと虐げてほしい(笑)」といった宮原と芹澤のおどけたやり取りもあり、会場の空気は一段と穏やかに。
さらに、朝日を思わせるまばゆい光が照らす中で披露した「Good morning」、キャッチーなイントロから最高に踊れる「AIMS」、ミラーボールの輝きも曲を真新しく彩った「IDOL」のリテイク版「THE IDOL」と、立て続けにキラー・チューンを聴かせたスペアザ。たまらなくいい雰囲気なだけに、お酒が飲めない状況(コロナウイルス対策は万全!)が若干もどかしくはあったものの、そこは本イベントのキー・ビジュアルに記された“こころは渇く。音楽をそそげ。”の言葉どおり、今だからこその楽しみ方をオーディエンス各自が見出しているように感じられた。歓声を上げられない、シンガロングはできないけれど、そのぶん自然に身体を揺らしながら、ただただ音楽のみに没頭できるライブも悪くない。
そんなこんなであっという間だったスペアザのステージ。「toconomaのみなさん、貴重な機会を与えていただいて本当にありがとうございます!」(芹澤)、「こうやってインスト・バンド同士でね、ツーマンをやれるなんて、今までなかったですから」(宮原)と再び感謝を伝え、最後はサーフ・ロック調の「Puzzle」を颯爽と届けて、次のtoconomaにバトンを繋いだ。なお、SPECIAL OTHERSはメジャー・デビュー15周年を記念し、9月23日(木・祝)に大阪・大阪城音楽堂で、10月3日(日)に東京・日比谷野外大音楽堂でワンマン・ライブを行なう予定なので、こちらもチェックしておこう。
02.WAVE
03.Good morning
04.AIMS
05.THE IDOL
06.Puzzle
続いては、主催のtoconoma。SPECIAL OTHERSのライブを受け、サウンド・チェックの時点で「いやー、感無量ですよね……」と声を揃えるメンバーはすでに高ぶった様子で、「(予定時間よりも)ちょっと早いんですけど、いきましょうか」と流れるように本番へ。そして、オーディエンスを座席から立たせ、ジャッキー・チェンをイメージしたファンク・ナンバー「Jackie」で火蓋を切ると、西川隆太郎(Key.)、矢向怜(Ba.)、清水郁哉(Dr.)、石橋光太郎(Gt.)がそれぞれのフレーズをキレッキレに響かせ、いきなり場内を沸かせてみせた。
そのまま勢いよく「Highwind」へと繋ぎ、観客の手拍子を味方につけるという見事な出足。波紋のように広がってスーッと染みわたっていくtoconoma特有のアンサンブルは、やはり抜群に耳当たりがいいと序盤にして実感させられる。ゆったりしたリズムでチルな気分へと誘う「L.S.L」も秀逸だ。
「今日は暑い中、(コロナの)状況がなかなか芳しくない中、お集まりいただいて。しかも即完、満員御礼で、大変ありがたく思っております。これもすべてスペアザ先輩のおかげです!」と、MCで年下をアピールするメンバー。加えて「まさか、いっしょにライブをやれる日が来るとは」「マジで好きなんですよ」とあらためてSPECIAL OTHERSへの愛を感慨深く訴え、toconomaの原型にあたるバンドを組んだ際の初スタジオで「AIMS」をカバーしたというエピソードも嬉しそうに明かす。
そんなスペアザに憧れて作った曲だと前置きした「Wander Wander」、4つ打ちビートに乗せて軽やかな風が吹き抜けるような「Yellow Surf」と、夏に想いを馳せられる楽曲は爽快感たっぷりに。一転して、ネオン・カラーのライトとミラーボールとともに恵比寿The Garden Hallをディスコ空間に変えた「DeLorean」「underwarp」は、フジロック深夜のレッドマーキーが思い浮かぶディープなノリで聴かせる。もしもコロナ禍じゃなければ、歓喜の声があふれ返っていたパフォーマンスだろう。演奏後に巻き起こった客席からの割れんばかりの拍手が、それを存分に物語っていた。
平日は音楽以外の仕事をして働いている週末バンドらしく、「明日の打ち合わせの資料、何も作ってなくてヤバい……」(石橋)と話すシーンもありつつ、「けっこう感極まってるんですよ。手前味噌だけど、いいイベントだったなと。これからもがんばっていこうという気になりました」(西川)と手ごたえを覗かせたtoconomaの4人。エレピの切ないメロディが印象的な「ALOE」をしっとり聴かせたあと、ライブはいよいよクライマックスに突入する。
本編ラストは、ジャジーなクールさとラテンの熱気を併せ持つ「Vermelho Do Sol」で会場を大いに揺らし、ギターのカッティングが曲をガンガン引っぱる超絶ファンキーな「Relive」も投下。強力コンボで鮮やかにこの日いちばんの盛り上がりを生み出して、toconomaは堂々とステージを降りた。
「最高の夏祭りです」「だってさ、ステージを降りたらスペアザのみなさんが拍手で迎えてくれるんだよ?」と、アンコールでも興奮が収まらないtoconomaのメンバー。また、音楽をやるのが難しいこの感染状況に対して「ちょっとでも前に進んでいかないといけない」と誓う西川の言葉もあった。
4人は「本当にいい一日になりました。ありがとうございます!」と、SPECIAL OTHERSとライブのスタッフ、そして来場者に感謝を告げ、レイドバックなムードが漂う「Sofar」でイベントを気持ちよく締めくくった。バンドにとってひとつの礎となったスペアザとの念願の競演を経験し、toconomaはどう躍進していくのか。今後も楽しみに見守りたい。
02.Highwind
03.L.S.L
04.Wander Wander
05.Yellow Surf
06.DeLorean
07.underwarp
08.ALOE
09.Vermelho Do Sol
10.Relive
〈Encore〉
01.Sofar
【SPECIAL OTHERS イベント情報】
『SPECIAL OTHERS 15周年記念ツアー(QUTIMA Ver.30)』
日時:2021年9月23日(木・祝) OPEN 16:00 / START 17:00
会場:大阪城音楽堂
Info.:YUMEBANCHI 06-6341-3525(平日12:00〜18:00)
日時:2021年10月3日(日) OPEN 16:00 / START 17:00
会場:日比谷野外大音楽堂
Info.:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999(平日12:00〜18:00)
*15周年記念ツアーは東阪野音2公演に加え、後半戦もございます。後半戦ツアー情報に関しては後日発表させて頂きます。
【toconoma イベント情報】
『ハイライフ八ヶ岳』
日程:2021年9月11日(土)~12日(日)
会場:山梨・サンメドウズ清里
*toconomaの出演は11日(土)になります。
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『GREENROOM BEACH』
日程:2021年9月25日(土)~26日(日)
会場:大阪・泉南りんくう公演
*toconomaの出演は26日になります。
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