REPORT & INTERVIEW

KOBE MELLOW CRUISE PRE "XR" LIVE

FNCY、LEXがバーチャル神戸で白熱のパフォーマンス。惜しくも開催断念となった『KOBE MELLOW CRUISE』プレXRライブをレポート

野外フェス『KOBE MELLOW CRUISE』のプレイベントとなるXRライブが5月7日(金)に開催された。

『KOBE MELLOW CRUISE』は神戸メリケンパークを舞台に、“音楽・アート・ファッション・フードなど様々なカルチャーをクルージングするように贅沢に楽しむ”をコンセプトとした新たな音楽フェス。先日、惜しくも開催を断念することがアナウンスされたが、AwichやPUNPEE、tofubeats、Nulbarich、SIRUP、Original Love、5lackなど、ヒップホップを中心にイベント名通り、メロウなサウンドに定評のあるアーティストが多数出演を予定していた。

プレイベントとなるXRライブはコロナ禍においてもDJ配信企画『MOMENT RAVE ROOM』やオンライン・フェス『331 VILLAGE』など、刺激的な試みを行ってきたMoment TokyoとVJ REZが監修。ゆるふわギャングのXRライブでも話題を呼んだMoment Tokyo × VJ REZだが、今回はフェス会場である神戸メリケンパークをバーチャルで表現した「VIRTUAL KOBE HARBOR AREA」から、アーティストがライブを行う様子を生配信。実際に会場に行っているかのようなリアルとXR技術のアンリアルが融合した独自の世界観を展開した。

今回はそんなXRライブのレポートと、当日XRライブの現場で行ったFNCYのショート・インタビューをお届けする。なお、『KOBE MELLOW CRUISE』は早くも来年5月への開催を発表。逆風に立たされながらも決して諦めない、新たなフェスの開催が実現することを願う。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Maho Korogi


REPORT:KOBE MELLOW CRUISE PRE “XR” LIVE

オープニングDJとして“バーチャル神戸”に登場したのは、事前に行われたDJ一般公募企画にて見事出演権を獲得したDJ くぬぎ。神戸出身のtofubeats「RUN」を皮切りに、RyohuやSIRUP、Rin音など、フェス出演アーティストの楽曲を中心に、クイックに繋いでいく。神戸港をゆったりと運行する豪華客船を舞台に、30分間という短い時間ながら起承転結を感じさせるパフォーマンスで配信を盛り上げた。なお、この日のセットとは別に、くぬぎによる出演アーティスト関連楽曲縛りの『KOBE MELLOW CRUISE』オフィシャル・ミックスも公開されているので、ぜひMoment Tokyo YouTubeチャンネルよりチェックを。

Mr.麿(スタジオ石/stillichimiya)の前口上を受けて表れたのは、ZEN-LA-ROCK、G.RINA、鎮座DOPENESSによるユニット・FNCY。昨年リリースの『TOKYO LUV EP』より「New Days」で幕を開け、「AOI夜」、「Train」、「REP ME」と人気曲を立て続けに披露。リラックスした雰囲気ながら、息の合った掛け合いや即興的なアレンジで観る者をグイグイと引き込んでいく様は、まさにライブ巧者。現場で積み重ねてきた経験値を感じさせる。

また同時に、奥行きを感じさせるカメラ・アングルやバーチャル上の照明や逆光になった際の影などもリアルに表現された配信の世界観にも圧倒される。「AOI夜」に合わせて青くライトアップされるのもニクい演出だ。

提供:Moment Tokyo

MCではリアル・タイムでコメントを読み上げ、視聴者とのコミュニケーションを取る一幕も。ライブの感想から全く関係のない雑談コメントまで、いくつかピックアップしつつ笑いを誘う。ここでZEN-LA-ROCKが「今(視聴者が)1875人なので、1900人になったら俺たちからプレゼントを出しましょうか」と提案すると、あっという間に視聴者を突破。「まだ練習中なので、リハーサルを観てってください」「僕たち、ヒップホップ大好きです」との鎮座DOPENESSのMCから、新曲「あなたになりたい」へ。自身の過去を振り返りつつ、ヒップホップへのピュアな想いを綴ったリリックと、エモーショナルなトラックに乗せたキャッチーなフックが印象的な1曲だ。

コロナ禍で感じたことを歌う「CONTACT」から後半戦へ。「我ながら感動しちゃった」(鎮座DOPENESS)という「TOKYO LUV」に続いて、「FNCY CLOTHES」でこの日のピークを更新しつつ、LEXへとバトンを繋いだ。

短い展開を経て、次に登場したのはSpotify『RADAR:Early Noise 2021』にも選出された2002年生まれのヒップホップ・アーティスト、LEX。現状ではSoundCloudのみでの発表となっている「I GOT U」で出だしはメロウに。続く「4 AM」では盟友・Saru jr. Foolも登場し、コメント欄を沸かす。その後もスキルフルなラップを披露する「F*CK (feat. C.O.S.A. & ACE COOL)」、フリーキーなフロウで魅了する「ALIEN」、重心の低いバンガー・チューン「Welcome 2 The Party (feat. Shark kid)」と怒涛の展開で畳み掛ける。変幻自在のフロウやフックでの歌唱力、そしていくつもの声色を使い分けるスキルを存分にみせつけてくれた。

「TEAM」では共に横浜を拠点に活動するOnly U、Yung sticky womが登場し、3人の新世代ラッパーによる豪華なコラボレーションを披露。そしてメロディックなポップ・チューン「Romeo & Juliet」、ポジティブなヴァイブス溢れる「HAPPY (feat. Young Dalu)」で多幸感溢れるクライマックスを演出した後、異色のロック・ナンバー「あなたの幸せが1番」で終幕。RamonesのTシャツを着て、独特のフロウでじっくりと歌い上げるその姿から、ロック・スター的なカリスマ性を感じた人も少なくないだろう。MCも少なげに、潔い幕引きもクールだ。

リアル・フェスへの期待感を煽る、プレイベントの理想的な姿を提示してくれた今回のXRライブ。昨年から急速的に浸透した配信ライブの需要は、コロナ禍以降も間違いなく続くはずだ。こういった刺激的な事例がスタンダードとなる日もそう遠くないのかも知れない。


INTERVIEW : FNCY

――本日のXRライブはいかがでしたか?

ZEN-LA-ROCK:楽しかったですね。何より配信の画がすごくて。

鎮座DOPENESS:実際のスペース的には決して広くないのに、配信上の画はこれまでで一番と言っていいくらい作り込まれていて。

ZEN-LA-ROCK:普段と違って、DJをスタッフさんにお任せしてのパフォーマンスも新鮮でした。

――FNCYは昨年からのコロナ禍においても、YouTubeでのトーク・プログラムやリモートでのMV制作を行ったり、配信ライブも積極的に出演/実施していた印象です。

鎮座DOPENESS:何本くらい出たっけ?

ZEN-LA-ROCK:有観客と同時に行ったものも合わせると4本くらい? あとは年末に(SOUND OF MUSEUM)VISIONのイベントにも出させてもらいました。

――これまでにない状況下での活動に際して、色々とお考えになることも多かったのではないでしょうか。

鎮座DOPENESS:コロナに対する考えや意見がそれぞれ違うので、有観客ライブ、配信ライブ問わず常に緊張感はありました。誰にも答えが出せないなかで生きてるし、仕事だし、僕らも(ライブを)やりたい。そんな状況下でも、配信という選択肢が増えて、一般的になってきたことは良かったことなんじゃないかなと。

――ライブへ向けて、FNCY内で話し合いなどは行われましたか?

ZEN-LA-ROCK:「どうしようか」って詳しく話し合ってはいないけど、やれそうなライブはやろうっていうスタンスでした。積極的ではないにしろ、お誘い頂いたものは慎重にやっていこうと。

G.RINA:それこそ去年は今以上に情報も少なかったので、どこまでがOKなのか本当に判断が難しかったですね。

――無観客配信ライブと有観客の違いについては、どのように感じていますか?

ZEN-LA-ROCK:もはや全然別物って考えた方がいいと思っています。僕の場合、『AbemaMix』を週イチで担当させてもらっているので、そこで培ったオンライン上の視聴者を盛り上げるスキルはかなり役立っているなと思っていて。MCも多めにして、タイムラインを常に観ながらパフォーマンスしたり。正直、そういうオンライン上でのパフォーマンスって、最初はあまり乗り気はしなかったんです。それこそ辛辣な言葉が飛んでくることも珍しくないし。ただ、そういう人も自分のパフォーマンスを観てくれてるんだよなってことに気づいてからは、ポジティブに捉えるようになりました。ディスって自分のことを理解してくれるからこそできることだと思うので。

――配信ライブだと、「自分のテンションの上げ方がわからない」と言った話もよく聞きます。その点はいかがでしょうか?

鎮座DOPENESS:視点が定まらないというかね。でも、リハーサルと似たような感覚もあって。撮影や配信、PAのスタッフさんがいるので、そことのコミュニケーションだったりでテンションを上げていったり。

ZEN-LA-ROCK:我々の場合、グループっていうのは強いかもしれないですね。確かにひとりきりで配信ライブをするんだったら、「ちょっと辛いな」って思うかもしれない。

G.RINA:お客さんがいないっていう寂しさはもちろんあるんだけど、私は結構配信ライブも好きで。会場やオーディエンスの雰囲気に影響されずに、より集中できるというか。自分が伝えたいことにしっかりとフォーカスできていれば、オンライン上でもちゃんと届くんじゃないかなって思います。

――配信ライブならではの見せ方や演出などは考えていますか?

ZEN-LA-ROCK:ワンマン(7月に開催された『槍ヶ崎 ONLINE LIVE supported by COCALERO』)はめちゃくちゃ練って考えましたけど、それ以外は臨機応変にというか。

G.RINA:用意された中で、できることをやろうって感じですね。

鎮座DOPENESS:ワンマンのときに感じたんだけど、ステージ上だけにこだわらなくていいし、リアル・ライブとは違った空間の使い方ができるのがおもしろいなって思いますね。

G.RINA:自分たちで演出や見せ方をじっくり考えていいのであれば、まだまだおもしろいことができそうだなって思います。

――では、コロナ禍以降の制作に関してはいかがでしょうか。昨年は『TOKYO LUV EP』、2曲入りシングル『みんなの夏』をリリースしています。

G.RINA:コロナ禍になって、決まっていたライブが全部飛んでしまって、その分の時間を制作に割くのはとても自然な流れでしたね。私たちの場合、元からバラバラに制作して、たまにそれを持ち寄るというプロセスなので、それほど影響や変化もなかったですね。

鎮座DOPENESS:その制作プロセスがより確立した感覚はあるよね。1stアルバム(『FNCY』)のときはリナさん(G.RINA)家に集まって一気に作り上げていくっていう感じだったけど。

――制作面でのインプットは変化しましたか? 外出の機会が減り、創作に対する刺激が減ったという声もよく聞きます。

鎮座DOPENESS:我々の場合、最近あった出来事、感じたことをぼんやりと話しているうちに、リナさんが「それ、いいかも!」って目を付けたところから曲の種が生まれることが多くて。

G.RINA:何気ない会話が一番大事というか。

ZEN-LA-ROCK:言ってしまえば外に出ないのもトピックだしね。

G.RINA:みんな生きて、生活している以上、何かしら話の種は尽きないよね。

――本日のライブでも新曲「あなたになりたい」を披露していましたね。

G.RINA:今アルバムを制作中で、そのアルバムに収録予定の新曲です。

鎮座DOPENESS:まだデモ段階なんですけど、DJ KEN-BOさんからスクラッチ音源が届いたから1回披露してみたくて。

――アルバムはどのような作品になるか、今の段階で見えてきていますか?

鎮座DOPENESS:夏リリースに向けて作っているので、どちらかといえば夏っぽい作品になりそうです。

ZEN-LA-ROCK:『TOKYO LUV EP』の楽曲もいくつか収録する予定なので、1stアルバム『FNCY』以降の我々のベスト盤的な作品になるのかなと。

G.RINA:今の自分たちを取り巻く状況というのも自然に反映された作品になっていると思います。制作し始めた当初は、またパーティ・ミュージックを作れるようになるのかなって思ってたんですけど、生憎そんな状況でもなく。

鎮座DOPENESS:FNCYの曲はあまり狙ってないというか、事柄や事象に対して自然な反応を切り取ったものが多いんです。

ZEN-LA-ROCK:勝手に出ちゃうというかね。

G.RINA:そうそう。この時代の空気感を、自分たちなりに色々な方法で表現した作品になるんじゃないかなって思います。

――サウンド的にはいかがでしょうか?

G.RINA:これまでのダンサブルな感じは引き継ぎつつ、さらにアップデートした内容になるんじゃないかなと。

ZEN-LA-ROCK:乞うご期待……! ということで。とはいえ、僕らもまだどんな作品になるのかわからないですけど(笑)。

――『KOBE MELLOW CRUISE』は開催されれば久しぶりの野外フェス出演になるかと思います。率直に、野外フェスはお好きですか?(※取材日は2021年5月7日)

G.RINA:もちろん。本当はもっともっとたくさんのフェスに出たいと思っています。なんだったらフェスやライブができることを楽しみに制作を頑張っているっていう部分もあるので。本当に、早く以前の状態が戻ってきてくれるといいなって。

――ちなみに、神戸という街での思い出や、何か印象に残っている出来事などはありますか?

ZEN-LA-ROCK:これは身内ネタなんで書かなくていいんですけど、神戸のヒューマンビートボクサー・SharLeeくんの実家のお寿司屋さんはヤバい(笑)。

鎮座DOPENESS:いや、書いてもらおうよ(笑)。俺も行ったことあるんだけど、閉まってて入れなかったんだよね。

ZEN-LA-ROCK:FNCYとしては結成初期の頃に神戸に行ってるよね。

G.RINA:Otohatoba(神戸の音楽交流バー)のアニバーサリー・イベントに出させてもらいました。

鎮座DOPENESS:あのときも楽しかったよね。同じイベントに出ていたやけさん(やけのはら)とボーリングやったりプリクラ撮ったり(笑)。

ZEN-LA-ROCK:帰ればいいのに、楽し過ぎてライブ後も遊びまくって(笑)。また神戸に行けたらプリクラ撮って、SharLeeのお寿司屋に行きたいですね。

G.RINA:本当に、『KOBE MELLOW CRUISE』が開催されることを願っています。フェスやイベントを企画してくれる方々やヴェニューを運営している方たちにとっては本当に苦しい状況だと思うので、自分たちも少しでもそのお役に立てればなって思います。


【イベント情報】

『KOBE MELLOW CRUISE 2021』
日時:2021年5月29日(土)〜30日(日) OPEN 11:00 / START 12:00
会場:兵庫 KOBE MELLOW CRUISE 特設会場(神戸メリケンパーク)
出演:
●5月29日(土)
AKLO
Awich
FNCY
KEIJU
Kvi Baba
LEX
NORIKIYO
Nulbarich
STUTS
tofubeats
WILYWNKA
ゆるふわギャング

●5月30日(日)
PUNPEE
BASI
BIM(BAND SET)
Daichi Yamamoto
kojikoji
ORIGINAL LOVE
Ovall
Rin音
Ryohu
5lack
SIRUP
VIGORMAN

※開催中止

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