ミニマル・ダンス・ユニット、Cafe Lanaiの活動でも知られるMind BathとForeverの2人は、シングル「Flower Tattoo」を今年8月にリリースしていた。これを今回、プロデューサー・OURIが再構築。同じモントリオール出身ということで親交がある3人は、これまでにもさまざまなコラボレーションを実現しており、もはやセットで語られることも多い。
ちなみに、オリジナル版のパフォーマンス映像には、ベーシストとして参加するOURIの姿を確認することができる。
感謝しかない。OURIが完璧なクラブ仕様に仕上げてくれた。大胆かつ繊細、アフリカンなリズムが身体を揺さぶる。楽曲の基軸は2人のボーカルとドラム・マシンのみと、かなりシンプルな構成だが、むしろそれがいい。ダウンテンポ系R&Bのしっとりした原曲とは異なり、華奢な金属音から不吉な気配すら漂うなど、安穏という形容には縁のない――いや、オリジナルにそのけがあるからこそ、この興奮状態になりうるのだろうか。薄明薄暮のなか、感情は静かに熱を帯びている。その温度感に対して、言うなればReworkは昼と夜。そこで一気に解き放たれるわけだ。そして声色がForeverとMind Bathとを行き来する度、たちまち日月は入れ替わる。
ところでDawn / Duskと、Day / Nightとの間にある違いは何か。それは“まどろみ”ではないかと思う。後者にそれは存在せず、覚醒しているか眠り込んでいるかの状態にある。つまり、全くグラデーションなく意識の頂底をスイッチする楽曲であり、そうした異常性を秘めた音楽なのだ。それがたまらなく楽しいのだけれど。
こちらは、今年5月末に発表されたRandomerの3rd EP『Slicing』より、冒頭曲「Van Pelt」。これにはOURIが織りなすリズムやサウンドの精神性と近しいものがあるように思う。微量の毒を含みつつも一見楽しげなフィクション、つまり寓話のような存在にして機能。
最後に、Jlinの3rdアルバム『Autobiography』から「Blue i」をおすすめしたい。彼女はレフトフィールドに位置するジューク/フットワークを活動領域とし、その音楽は奇異で神秘に満ちている。ときに攻撃的にもなるリリース作品群のなかでも、この曲は異色かもしれない。鼓膜で知覚する音それ自体の鳴らされ方は違っても、そのフェードのかかったイメージにOURIの楽曲――例えば「ESCAPE」――の輪郭が浮かび上がって来ないだろうか。たおやかで優美な姿が。
Text by hikrrr
【リリース情報】
Mind Bath 『Flower Tattoo (OURI Rework)』
Release Date:2018.10.12 (Fri.)
Label:Bedroom Dubs
Tracklist:
1. Flower Tattoo ft. Forever