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Interview / WONDERVER


「ぼくの音楽が拡まることであなたの意見は誰もが認める真実だったと伝えたい」ーーWONDERVER インタビュー

2016.07.26

WONDERVERの存在を知ってから1年と少しが経った。この1年間に何度もライブを観て、何度も音源を聴いてきた。その中で気づいたことは、彼らの音楽には触れれば触れるほど輝きが増して行くという”WONDER”があるということ。
現体制になってからわずか1年半ほどしか経っていないのにも関わらず、各種大型イベントやフェスへの出演を果たし、既に熱量の高いファンや関係者が多く存在するなど、急速的にバズを拡大させてきた理由はそこにあるのだと私は思う。

そして、7/20にリリースされた1stアルバム『F L A S H』はWONDERVERにとって、そしてバンドのブレインでもありフロントマンの相澤龍伸にとって、まさに全身全霊をかけた渾身の1枚と言えるだろう。今の彼らの本質と苦悩と想いと期待、本作にはその全てが詰まっている。そんな彼の胸の内を、このインタビューで少しでも皆さまにお届けできればで幸いである。

この1年間、彼らの輝きが日に日に増していっているように感じられたのは、彼ら自身が様々な試行錯誤を繰り返しつつも切磋琢磨し続けた結果なのかもしれない。そう、まるで宝石を磨くかのように。

Interview & Text by Kohei Nojima
Photo by Takazumi Hosaka

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WONDERVER
(L→R:村上奈津子、相澤龍伸、藤本諒)


ー3人でのインタビューは初めてということなので、今回は改めて現体制となってからのWONDERVERのこれまでの活動を振り返ることができればと思います。まず、ぼくが〈THIS TIME RECORDS〉の藤澤さんにWONDERVERの存在を教えてもらって、「M E L L O W」をSpincoasterで紹介したのが去年の5月6日でした。

相澤:そうですね。2015年の3月の初ライブから今の体制での活動がスタートしたので、藤澤さんは本当に異常な耳の早さだったんですよね。まだ2、3回しかライブしてないのに嗅ぎ付けられて、(THISTIME Productions主催のマンスリー・ライブ・イベントである)”スプートニク”の出演オファーを貰って、PAELLASと一緒に出演して。そこにSpincoasterの野島さんも来てくれたんですよね。

ーそうですそうです。

相澤:それ以前からSpincoasterはずっと見てたので、「うわ、ほんとに来ちゃったよ」って(笑)。

村上:めっちゃ喜んでたよね(笑)。

相澤:本当にめっちゃ見てたんですよ。自分のPCに「MUSIC」っていうお気に入りフォルダを作ってたんですけど、そこにPitchforkとかindienaitiveとかと一緒にSpincoasterも入れていて。全部毎日巡回するようにチェックしてたんですよ。だから野島さんのアイコンもスゲー見てて、「あ、本物だ」って(笑)。

ーで、そこから現在までおよそ1年ちょっとが経ちましたが、現時点でこの1年を振り返ってみると、どうですか?

相澤:結成してすぐに”サマソニ”とか”BAYCAMP”にも出させて頂いて、思ったより調子よかったなぁって思うこともあるし、逆に「こんなはずじゃないのに」ってこともありましたね。だから、良くも悪くもこんなもんなのかな〜と。

村上:いや、でもすごいよ。たった1年だよ?

相澤:でも、正直言うとぼくはもっとイケると思ってた。

ーもっとイケるというのは、具体的にいうと動員とかですか?

相澤:そうですね。あとはもっと話題になるだろうなって思っていて。

村上:それは言ってたね、最初から。

相澤:途中で方向性をあんまり潜らせないようにしようと思ったんです。分かりやすい方向性にしようって思ったことで、少し軸がブレたのかなっていう気持ちもあったりしつつも、総じて良かったなって。もちろん悔しいことや上手くいかないこともあったけど、全体的にみれば良い調子だったなって思います。

ー分かりやすい方向性とは?

相澤:もっとクラブカルチャーに寄るというか、もっと打ち込みっぽい、バンド・サウンドじゃない方向に寄ろうかと思ったこともあったんですけど、何かそれは違うなって。でも、そっち側に最初から傾倒していれば、もっとピンポイントな界隈で話題になったり、大きなイベントに呼ばれたり、極地的な盛り上がり方ができたのかなって思うこともあるんです。でも、もっともっと広いところを見ていかなければなって思ったんですよね。

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ーなるほど。その話はアルバムの話に繋がりそうなんで、また後ほどお伺いします。ちょっと話を戻して、WONDERVERの音楽性についてお訊きしたいのですが、最初Spincoasterで紹介させてもらったときに、ぼくは「小室哲也的なサウンド」っていう言葉を使ったんです。

相:はい。でも、ぼくは全然(小室哲哉を)聴いてなかったっていう(笑)。

ーそうなんですよね(笑)。でも、小室哲哉的サウンドを構成している要素を分解していくと、ブラック・ミュージックであったりJ-POPであったり、ダンス・ミュージックが見えてきたりすると思うんですけど、それはご自身のルーツや、WONDERVERとして意識しているところと照らし合わせて何か共通する部分を感じますか?

相澤:初期は当時のPitchforkとかに載っていたような、海外のインディ系のエレポップみたいなところを目指してガンガン曲を作っていたんです。でも、去年の暮れ辺りからはよりわかりやすいモノを目指すようになって。そもそもぼく、いきものがかりとかZARDとかが大好きなので、おじいちゃんおばあちゃんが聴いても「いい曲だね」って言ってくれるような曲を書かなきゃダメだなと思って。

ーなるほど。WONDERVERのJ-POP的な部分はそういうところからきているのですね。

相澤:そうですね。

村上:それはずっと芯にありますね。昔から言っていたので。

ーでは、ブラック・ミュージックについては?

相澤:モータウンがめっちゃ好きなんですよ、Marvin Gayeとか。彼とTammi Terrellがデュエットしてるアルバムとかはすごい好きで、懐メロというか映画のサントラみたいな感じで小さい頃からずっと聴いていましたね。あと、うちの親は映画をBGMみたいな感じで流していたんですよ。観てないけどTVでは『タイタニック』が流れてる、みたいな。なので、そういう映画で使われていたようなブラック・ミュージックやR&Bっていうのは、物心ついた時から自然と耳に馴染んでいたという感じですかね。

ーあとは、いわゆる今のEDMみたいなところも意識しているのかなと。

相澤:EDMは方法論としては吸収しています。盛り上げていってドロップでドカーンって落とす、みたいな分かりやすいところは勉強していると思うんですけど、ぼく自身は一人でAviciiとかを聴いたりすることはないですね(笑)。
手法というか方向性というか、やっていることはすごく真似しているとは思うんですけどね。「盛り上げて盛り上げて、いくのかな? いかないのかな? はい、ここでいきます!」みたいな(笑)

ーなるほど。じゃあリスナーとしてEDMがルーツとかそういったことはなかったと。より広義のダンス・ミュージックという意味ではどうですか?

相澤:ぼく、2000年代の中盤くらいが一番音楽聴いていて、その当時〈Kitsuné〉とかJUSTICEとかがめっちゃ流行っていたんですよ。

ーいわゆるフレンチ・エレクトロのシーンですよね。レーベルで言うと〈Ed Banger〉とか、オーストラリアですけどフレンチ界隈と親交のあった〈Modular〉とか?

相澤:そうですそうです。〈Modular〉とユニクロがコラボしたTシャツ持ってましたもん(笑)。あとThe RaptureとかCSSとかもめっちゃ聴いていて。ダンス・ミュージック的な部分はそういうところからきていると思います。あの頃が一番楽しんで音楽聴いてたかもしれないですね。「えっ、CSSのLovefoxxってKlaxonsのギターと結婚してんの!?」みたいな感じで、ミーハーだったんですよ(笑)。

ーでは、この度7/20にリリースされた待望のファース・トアルバム『F L A S H』についてなのですが、まず簡単にこのアルバムがどういった作品になったかというのを、自身の言葉で説明するとしたら?

相澤:全て新しいモノにはしたくないね、という話をしていて。ちゃんと今までのモノも継承しつつ、でも今までにない新しい要素もある。今後より一層広いところにアプローチしていくためのアルバムでもあり、同時にこれまでの我々の活動の証も詰まっているアルバムです。

ーまさにWONDERVERの名刺代わりになるというか。

相澤:そうですね。最初はEP出そうって話だったんですよ。でも、今のタイミングでEP出しても「じゃあ、アルバム出るまで待とうかな」ってなっちゃう人もいるだろうねって話になって。「だったらもうアルバム作っちゃうか」ってなりました。

ー今回〈ULTRA-VYBE〉からのリリースが決まった経緯を教えてもらえますか?

相澤:最初に音源出来たとき、ぼくらすごく自信に満ちていたので、色々なところに送ったんですよ。そしたらありがたいことに複数の会社からお話を頂いて。それでちゃんとしたレーベルからのリリース歴とかもあるミュージシャンの先輩に相談したんですよ。そしたら「大人とやるときはお金とか条件よりも、人を見たほうがいいよ」って言われて。で、今回のリリース・レーベルである〈ULTRA-VYBE〉の担当の人と話していたら、ぼくその人のことがめちゃめちゃ好きになっちゃったんです。結構偉い人なんですけど、バイクでうちまで遊びに来てくれたり、すごいフットワーク軽いし、親身になって相談に乗ってくれたり。あと、元々ぼくヒップホップもすごい好きなんですけど、その人はTHA BLUE HERBとかも担当したことある人なんです。「BOSSさんのソロもここで録りましたよ」とか色々教えてくれたりして、ミーハー心もくすぐられちゃって(笑)。つまり……最後は人柄で決めました。

ーなるほど。ちなみに今回のアルバムは既発曲が5曲に新曲が2曲、リミックスが2曲という内訳になりますよね。

相澤:そうですね。ただ、既発曲もアレンジから全部練り直して、新録しています。エンジニアがHIRORONさんっていうぼくりり(ぼくのりりっくのぼうよみ)さんのマニュピレートとか、KEN THE 390さんのDJとかをやっている方だったんですけど、その人にぼくのミックスとはもっと違う方向性にしたいって言われて。もっとキレイに、全部の楽器を聴こえるようにするべく、すごい音を抜いたんですよ。実はぼくはもっとこうグシャっとエモっぽく、「バンドです!」みたいな感じにしたかったので、最初は不満というか迷いもあったんですけど、さっき言ったレーベルの担当さん……神保さんもHIRORONさん側の意見に賛成で、ミックス中ずっと2対1だったんですよ(笑)。

ーそのHIRORONさんにエンジニアリングをお願いすることになった経緯というのは?

相澤:神保さんが「リズムが強いほうが絶対いい」って助言してくれて、それで紹介して頂いた形ですね。HIRORONさんは元々ヒップホップの人なので、リズムに関してすごい上手な人なんです。ただ、ぼくがそこに「もっとこの音上げてほしい」とか口を挟んでしまうので、ミックス中ずっと「まぁまぁまぁ」と言われ続けてましたね。本当はもっと色々と弄りたかったくらいなんですけど、いざ完成したものを聴いてみると「確かにこれ以上やると、歌が聴こえないよな」って思うし、今は納得しています(笑)。

ー音圧は落ちてないのにそれぞれの音が潰れずにキレイに聴こえていて、リズムも立っている。結果的にすごく気持ちの良い音になったと思います。快楽的な音というか。

相澤:そうですね。ぼくは本当に好き放題自分の好みを言ってただけなんですけど、それに対してHIRORONさんは冷静に「これやっちゃうとこっちが埋もれちゃいますよ。でもやりますか?」みたいな感じで。

村上:本当に大変そうでした。メールでのやり取りとか。

相澤:ぼく、人と一緒に音楽制作するのがすごい苦手だったんですよ。できないくせに全部1人でやりたがってしまうんですよね(笑)。色々と口出ししてしまいましたが、今回の作品よりもいいものは絶対ぼく一人では作れなかったと思うし、本当にHIRORONさんにお願いしてよかったです。

ーメンバーのお2人は今作の制作においてどのような立ち位置で参加していたのでしょうか?

相澤:奈津子はモノブライトのサポートで本当に忙しくて。モノブライトは地元北海道の先輩なんですよ。ぼくがバンドを始めた頃からお世話になっている、本当に大好きなバンドなので全然良いんですけど、でももしモノブライトじゃなかったら「やめてくんない?」っていうくらいのスケジュールで(笑)。

村上:なので、私はレコーディングの最後1日だけ参加しました。コーラスで(笑)。

相澤:「思い出、残そ?」って(笑)。彼女は忙しかったっていうのがあったんですけど、諒くんに関しては元々主張がないというか、ぼくを信頼してもらっていて。

藤本:それに尽きますね。ぼくが意見するよりも、相澤さんの言う通りに従っていたほうが絶対いいものになるから(笑)。もちろんギターはぼくが弾いてますけど、レコーディングも初めてだったので逆に迷惑かけた部分もあったと思うし、色々勉強になりました。

ーそういったメンバーの役割というか、力関係は今後変化していくと思いますか?

相澤:アレンジをみんなで合わせて練っていくってことはたぶんないかなと。逆に奈津子や諒くんが曲を書いてきて、ぼくが編曲するってことはあると思います。というか今も実際に曲を書いてもらっています。ぼくひとりだとものすごくスローペースな活動になってしまうので。

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ー今作の一曲目に「H E A R T」を持ってきた理由というのは?

相澤:お、すごくいい質問です! ぼくの中ではずっと「A L O N E」だったんですよ。一番の名曲というか、言いたいことも全部言ってるし。でも、神保さんに「いや『A L O N E』じゃないっすねー」ってサラッと言われて(笑)。そういうところも彼の好きなところなんですけど。で、「1曲目は『H E A R T』がいいんじゃないですかー」って言われて「H E A R T」になりました(笑)。

ーそれだけ?(笑)

村上:いやいやいや、もっとあるでしょ!(笑) 曲順はかなり揉めたよね。

相澤:そうなんです。まずアルバムのリード曲を何にしよう? って話になった時に、「『A L O N E』でも『H E A R T』でも弱い」ってバッサリ言われたので、今回「B E A M」っていう曲を書いたんです。アルバムの1曲目については、「80’s」、「ニューロマ」、「エレポップ」、「シンセポップ」っていうキャッチコピーを見たうえで聴いて、一番「おおっ!」てなるのが「H E A R T」なのかなってことで、1曲目に決まりましたね。

ー今作にはインタールード的なナンバー「W O N D E R」が4曲目に入っていますよね。これは前3曲と後3曲の区切りになっているのでしょうか?

相澤:よくぞ気付いてくれました(笑)。「H E A R T」、「B E A M」、「A L O N E」は全部リード曲的な派手さがあるので、ここで全部出し切るつもりで戦って、その後は「ちょっと一旦落ち着こ?」っていう意味での4曲目です(笑)。疲れちゃうと思うんですよね。あのテンションでずっと来られると。

ー確かにWONDERVERの音楽って……。

相澤:クドいんですよね(笑)。

ーそう(笑)。

相:今までの曲とかを無視して、まっさらな状態から10曲くらいのアルバムを作るのであれば、全体のバランスをみながら曲を書いたと思うんですけど、今回は元々あった曲を入れたので、本当にクドいんです(笑)。カステラ、羊羹、カステラ、今川焼き! みたいな(笑)

ーお茶が何杯要るんだっていう(笑)。

相澤:でも、1stはそれくらいじゃなきゃだめだとも思っているし。

藤本:全部リードっぽいっていうか、シングル・カットしてもおかしくない曲だと思っています。

ーWONDERVERの曲って、何かひとつ突出したものがあるっていう感じではないですよね。それ故に、ファンの間でも好きな曲が分かれるというか。

相澤:そうですね。でも、それっていいことですよね。神保さんにも「曲が全部強過ぎるが故に、どれもリードに向いてない」って言われたんですよ。どれも平均点は高いと思うんですけど、ズバ抜けた曲がなくて。だから「B E A M」を書いたんです。

ーこいつらからさらに抜けるにはこれしかない、と。

相澤:そう、もう力技でやるしかないぞ、と。ぼくの思うJ-POP、J-ROCKを全て詰め込んだ曲です。そういうフォーマットみたいなものを頭に叩き込んでから、それをいつも使っている音に落とし込む形で作りました。歌詞も「夜」とか「街」とかこれまでのWONDERVERの楽曲にもよく出てきたワードを使いつつも、決定的なことは言わないようにしています。「A L O N E」とかとは違って、「前向こう!」っていうようなイメージで書きましたね。

ーちなみに、既発曲でも分かりやすくアレンジを変更したと思われる箇所もたくさん見受けられます。

相澤:ほぼ全部アレンジ変えてますね。例えば「M E L L O W」のイントロも、デモでは複雑なグルーヴを出そうと頑張っていたところをもっとシンプルな4つ打ちにしたり。あと「A L O N E」のイントロをバッサリ切ったりとか。逆に7曲目の「B L U E」はもともと去年の10月くらいからライブでちょくちょくやっていた曲で、もっとリードっぽいアレンジにしていたんですよ。そこを改めて自分が普段聴いている音楽みたいな感じにしてみようと思って、ああいう形になりました。なので、「B L U E」だけは内向的というか、逆にちょっと潜ったくらいの曲です。もう「B E A M」で派手なことはやったし、こっちは好きにやってもいいでしょ、みたいな。もちろん「B E A M」もやりたくないことはやってないし、大好きな曲なんですけど。

村上:「B L U E」は暗いけど、とてもロマンチックな曲だよね。私はアルバムの中で一番好きな曲です。

相澤:あの曲は入水自殺の歌なんですよ。海に歩いて入っていって、自殺するようなイメージで書いた曲で。

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ー7曲でもアルバムとしては成立すると思うんですが、今作にリミックスを2曲入れた理由や狙いを教えてもらえますか?

相澤:ぼくも神保さんもオワリカラの亀田さんのリミックスがすごく好きで、アルバムを作る時から「リミックスをお願いしたいね」って話をしていたんですよ。雰囲気というかカラーというか、アーバン・ポップな感じも完全にイメージに合っていて。で、そこから「もう1曲違う人にお願いしたいね」って話をしていたんですけど、そしたらMARQUEE BEACH CLUBのコイブチくんから逆に「ぼくらの曲をリミックスしてもらえませんか?」って連絡がきたので、「じゃあお互いにリミックスしようよ」ってことになりました。でも、まさか7インチ・シングルのB面に収録されるとは思っていなくて。「B面、ぼくでいいの!?」って(笑)。なので、すごい頑張りました。

ーリミックスという行為というか文化そのものに対して、WONDERVERは何か思い入れのようなものを持っている気がしますよね。

相澤:ぼくらが小さい時って、シングルとかの曲数の穴埋めみたいにリミックスが入っていたじゃないですか。「なにこれ?」みたいなリミックスが(笑)。ぼくらの音楽を聴いてくれてる人たちの中には、未だにそういうイメージを持ったままの人も多いんじゃないかと思っていて。でも、そうじゃなくて海外の〈Kitsuné〉のバンドとか、クラブ・シーンの人たちって、リミックスを自分たちのもう一個の表現として確立させているじゃないですか。だから、そこの齟齬をなくしたいというか。

ーリミックスをキッカケに認知が拡がったり、シーンが盛り上がっていくということもありますよね。

相澤:トラックリストを発表したら「なんでリミックス入ってんだよ? だったら曲入れてよー」みたいな気持ちになる人、絶対多いと思うんです。もちろん曲数を埋めるという気持ちがゼロというわけではないですけど。でも、オワリカラやマーキーの音楽もすごく好きで、自分の中にもたくさんインプットしきている。彼らが作った音楽は、ある意味ぼくがやっていてもおかしくないものだし、オリジナルの別の姿ってことで、リミックスもちゃんと聴いて欲しいですね。

ーなるほど。話は変わりますが、WONDERVERはライブで楽曲を再現するのがとても大変そうに思えますが、そういったことは楽曲制作で意識していたりするのでしょうか?

相澤:「CDで鳴っているのに、ライブではないね」っていうのはやりたくなくて。だから、ライブはめちゃめちゃ忙しいんですよ(笑)。なので、今回もアルバムのミックスの時に、ライブを想定して「音多いな」と思った部分は少し削っていった部分もあります。デモに比べるとかなり音数は減ったかと思いますね。

ードラムとベースはサポートですし、それも大変ですよね。

相澤:いや、サポートの方はとても上手な方なんで、逆にぼくらが合わせるのに時間がかかっているって感じですね。5人で音をひとつにするのが難しい。でもやっぱり、正式メンバーが欲しいですね。

ー5人組になりたいと?

相澤:そうですね。願望をいえばドラムは19歳くらいのピッチピチの女の子で(笑)。でも、今のサポートのメンバーもですが、特に最初の方でドラムを叩いてくれていたタケル(the sea falls asleepのドラマー。フレデリックのサポート・ドラムも担当)がヤバい上手くて。それでハードルがめちゃめちゃ上がってしまったので、いくら可愛い子がきても、ぼくらはもう満足できないかもしれないです(笑)。

ーライブのパフォーマンスで意識してることはありますか?

相澤:ぼく、エモいライブが好きなんですよ。前のバンドでもギター投げたりドラムに乗っかったりしていて。キレイ過ぎるライブは嫌なんです。エモーショナルな感情のこもったライブをしたくて、そのために演奏が多少乱れるのは仕方ないかなとも思っています。

ー最近のライブでは、相澤さんが曲によってはギターも弾いていますよね。

相澤:ぼくの思うボーカル・ギター像って、テクニカルじゃダメなんですよ。ソロとかは弾かない。厚みを出すためにコードを弾くくらいで、ちゃんとリード・ギタリストを惹き立てたいんですよね。でもたぶん、諒くんよりもぼくの方がギターは上手いんですけど(笑)。

村上:ほら、言われてるよ!

藤本:速弾き対決なら勝てる自信あります……(笑)。

ーアルバムのリリースを発表した時に相澤さんは自身のブログで「ぼくの音楽のことを素晴らしいって今までずっと言ってくれていたひとたちに、ぼくの音楽が拡まることであなたの意見は誰もが認める真実だったと伝えたい」とおっしゃっていましたよね。

相澤:ぼく、ファンの方々には本当に申し訳ないと思っていて。ずっと少数派でいさせてしまって、不安になったりすることもあるだろうし。「私って、間違ってるのかな?」とか「ぼくの感性は間違っているのかな」とか。そういう人たちのセンスや想いを肯定してあげるには、ぼくらの音楽がよりたくさんの人に届いて、聴いてもらえるようになるしかないというか。なので、今は自分のためと言うよりは、応援してくれている人のため、みたいな気持ちが強いかもしれません。

ーわかります。それはこのアルバムからも伝わってきます。

相澤:関係者を含め、応援してくれている人ってもう結構な数になるんですよ。それなのにこの7~8年くらいずっと「すみません」って感じなので……。やっとここまで来られたのでそういう方々に恩返しできるように今後も頑張りたいですね。

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WONDERVER 『F L A S H』
Release Date:2016.07.20(Wed)
Cat.No.:VBCD-0080
Price:¥1,890 + Tax
Tracklist:
1. H E A R T
2. B E A M
3. A L O N E
4. W O N D E R
5. M E L L O W
6. G H O S T
7. B L U E
8. A L O N E (KAMEDA TAKU from OWARIKARA Remix)
9. H E A R T (MARQUEE BEACH CLUB Remix)


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