ブルックリンを拠点に活動するデュオ、Surf Rock is Deadとの出会いは、2017年夏の終わりに私がNYを旅行で訪れた時だった。せっかく訪れたので、何かおもしろいインディのギグはないか探していた時に目に入ったユニークなバンド名と、数曲聴いただけだったがDIIVやBeach Fossilsを彷彿させる、名前に反するドリーミーなサウンドが気に入り、「Music Hall of Williamsburg」での彼らのライブに出向いた。
軽い気持ちで行ったライブは期待以上。リバーブのかかった叙情的なサウンドと歌声、彼らの疾走感ある演奏にノスタルジーな記憶が思い起こされ、高揚せざる得なかった。興奮冷めやらぬ終演後に物販でその前年にリリースしたEP『Born Losers Records』のカセットテープを買おうとしたところ、「せっかく遠くから来てくれたから、良いシリアル番号のを渡そう」とあれでもないこれでもないとようやく手渡されたのが21番と採番されたもので(なぜ21番だったかは聞けなかった)、フレンドリーな兄ちゃんたちだった。
それから約2年半が経った今年5月1日(金)にようやく彼らの1stアルバム『Extential Playboy』がリリースされた。赤いガウンを着た骸骨とバスケットボールというチグハグな組み合わせは彼らの印象と少し違うように感じたが、10曲とコンパクトに収めた本作はキラキラしていてノスタルジア満載、夏の思い出を色鮮やかに蘇らせてくれる。眩しい太陽が恋しくなってしまった。
今回は待望の1stアルバムをリリースしたばかりのSurf Rock is DeadのJoelとKevinにメールでインタビューを行った。
Interview 6 Text by Aoi Kurihara
Photo by Official
――こんにちは! 新型コロナウイルスの影響で外出自粛を余儀なくされていると思いますが、あなたたちは今どのように家で過ごしていますか?
Joel:新しい曲を書くこと以外には、キーボードのタイプをタッチすることを学んでいたね。1日何時間も古いキーをただただ押す練習をしてたよ……ここで僕が言いたいのは、QWERTY配列(キーボードの配列パターン)を発明した人が誰であれ報いが来るっていうこと。
――あなたちの拠点、NYのブルックリンには素晴らしい音楽シーンがありますが、ミュージシャンや音楽シーンにとって今はどのぐらい悪い状況でしょう?
Kevin:僕たちは地元の会場の今の状態とそれらが今後再開できるかどうかを心配しているね。今、多くの人々が苦労していて、どこが再開できて、どこが永久に閉鎖されるかは時間が経てばわかると思う。そん中においても希望の光となっているのは、僕らはまだインターネットを介して人と接続することができるということ。そしてその繋がる方法が今後はまた変化していくんだろうね。
――さて、基本的な質問になりますが、Surf Rock is Deadというバンド名の由来を教えてください。あなたたちの音楽性を考慮すると、非常にアイロニックなイメージを感じます。
Joel:実は手当たり次第でなんとなく決まったものなんだ。僕たちはある日ジャムをしていて、僕らの音楽ジャンルとバンド名について話し始めたんだ。誰かが音楽のジャンルについて「Surf rock is dead」(サーフ・ロックは死んでいる)と言って、それになったんだ。
――Joelはオーストラリアのメルボルン出身で、Kevinはシカゴですよね。どのように出会って、一緒に音楽をやろうと決意したのでしょうか。
Kevin:僕たちはブルックリンのGreenpointにある汚いバンド練習場のホールですれ違って、知り合ったんだ。お互いのヘアスタイルとスニーカーが気に入って、一緒にタピオカ・ティーを飲みに出かけたのが始まり。
――実は、2017年にNYであなたたちのライブを観ました! 2017年というと、あなたちが前作の『We Have No Friends?』をリリースした頃ですよね。本作、『Existential Playboy』をリリースするまでに時間が経ちましたが、この2年半はどのように過ごしていたのでしょうか?
Joel:僕たちは、素晴らしいツアーを行って、僕らのこのドープなデビューアルバムを書いてレコーディングに費やした。あと、僕(Joel)が手術から回復するまでの約6か月間にを要してしまったんだ。
――それにしても『We Have No Friends?』(僕たち友達いない?)のタイトルってとてもネガティブですよね。ジョークだとは思いますが、友達がいなかったんですか……?
Kevin:僕たち、それぞれ友達0人だったから。Wikiで友達の作り方まで検索しちゃった。
――あなたちのアルバムについてお聞きします。『Existential Playboy』(実存のプレイボーイ)というタイトルはどこから来たアイディアなのでしょうか?
Kevin:“実存のプレイボーイ”は、快楽主義なプレイボーイのキャラクターの真逆なんだ。他の誰もが楽しんでいる間、実在のプレイボーイは飲み物を傍に隅っこに座り、愛と死、そして人生をについて語るのさ。
――このアートワークは、No VacationのSabrina Maiが手がけたそうですが、頼んだ経緯を教えてください。
Kevin:Sabは素晴らしいアートワークを作成していて、親しい友人なんだ。僕たちが思い描いていたイメージが、Sabの芸術的なスタイルと調和していた。
――アルバムには「Watching the Dead」という曲も収録されています。この曲はアートワークの骸骨のイメージと関連しているのでしょうか?
Joel:これは実体験に基づいているんだ。けれども、それは死についてではなくて……死は空虚の比喩として考えて欲しい。
――収録曲「Diabolik」は、美しいギター・リフとコーラスが素敵です。NYで生活している時に経験したルームメイトとのネガティブな経験が基になっているそうですが、この単語“Diabolik”をネットで検索してもヒットしませんでした。あなたたちの造語なのでしょうか。
Joel:“Diabolik”は、“Diabolical”(極悪非道の、不快な)よりクールに見えたから! 美的感覚だね!
――「Away Message」はラブ・ロマンスについての歌に思いますが、歌詞のイメージはどこからきたのでしょうか?
Kevin:この曲は新しい愛と新しいテクノロジーが交錯すること、そしてそれが生み出す奇妙な感覚について、時間の経過とともに退屈になり、両方に飽きてしまう、ということを歌っているんだ。
――あなたたちは自分たちのサウンドを“Surfgaze”と称していますが、実際どのような音楽から影響を受けてきたでしょう?
Joel:実際にはとても多くのもの――ジャズからデスコア、交響曲まで――から影響を受けていると思うよ。
――最後に、このコロナ禍が落ち着いたら何がしたいですか?
Kevin & Joel:外に出てみんなのためにギグをやりたいよ!
【リリース情報】
Surf Rock is Dead 『Existential Playboy』
Release Date:2020.05.01 (Fri.)
Label:Surf Rock Is Dead
Tracklist:
1. Our Time
2. Away Message
3. Diabolik
4. Immaculate
5. Solid Ties
6. Typical Cliché
7. Miss You
8. Another World
9. Watching the Dead
10. always learning what not to do
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