INTERVIEW

SIRUP

〈Tokyo Recordings〉プロデュース曲で鮮烈なデビューを飾ったSIRUP。新たなサウンドの意匠を纏い、再出発を果たしたその真意を訊く

今年9月に、〈Tokyo Recordings〉プロデュースのデジタル・シングル『Synapse』で彗星のようにシーンに現れたSIRUP(シラップ)。

同シングルはフューチャー・ビーツ、フューチャー・ハウスなどを通過した音センス、そして先鋭的なサウンド・プロダクションで早耳リスナーを中心に一気に注目を集めることに。さらに、シングルに続いて11月にリリースされた『SIRUP EP』には、LULU Xへの楽曲提供やThe Hotpantzのリミックスでも知られるプロデューサー・Chocoholicとのコラボ曲「LMN」や、ヴィンテージなソウル〜R&B的要素とボイス・サンプルを駆使したフューチャー感溢れるトラックが印象的な「SWIM」などを収録。高いクオリティと、世界と同時進行的にリンクするセンスを強く感じさせてくれる傑作となっている。

先日12月3日(日)に開催した“SPIN.DISCOVERY Vol.05”では、トップバッターにして畑違いな現場だったにも関わらず、持ち前の歌唱力と、バックの盤石な演奏で多くのオーディエンスを魅了した。今回の“SPIN.DISCOVERY Vol.05”のラインナップの中では最もフレッシュな新人とも言える彼だが、間違いなく今後の国内シーンにおいて無視できない存在になるはずだということを改めて確信させてくれた。

そんなSIRUPことKYOtaroに、“SPIN.DISCOVERY Vol.05”の直前に実施したインタビューを今回はお届けしたい。再出発の理由と経緯、そして今後の未来について語ってもらった。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Interview Photo by Kohei Nojima


――この度、KYOtaro名義からSIRUPとして新たなスタートを切ったわけですが、まずはその経緯と理由を教えてもらえますか?

SIRUP:KYOtaroとしての活動が、クラブ・ミュージック的なものからどんどんオーガニックなサウンドというか、歌そのものにフォーカスしたようなサウンドに進んでいっていて、KYOtaro名義での最後作品『ROOM』はある意味それを突き詰めた作品だったんです。それを完成させて、じゃあ次は何をしようか? ってことを考えながら曲を作っていたら、自然とラップっぽいフロウが入ったオリジナル曲がいっぱいできてきて。「Synapse」とかもその時に原型ができていたんですけど、それこそラップとも歌ともいえないような感じだったんですね。これまでと歌い方も楽曲的にもKYOtaroの時とガラッと変わるなら、新しく名前を変えてスタートしてみようかなって思ったのが最初のキッカケですね。それで、SIRUP=Sing & Rapという活動名になりました。

――ラップのようなフロウが増えてきたのは、何が原因だったと思いますか?

SIRUP:一番わかりやすい理由としては、ヒップホップをめちゃめちゃ聴くようになったっていうことだと思います。もちろんそれ以前からも聴いていて、CommonとかMos Def、The Roots辺りはすごい好きだったんです。でも、最近ではGold LinkやSmino、Chance The Rapperとか、そういったアーティストにめちゃくちゃハマっていて。そういうところからの影響が大きいと思いますね。

――今回のEPの話に入る前に、もう少しパーソナルな部分をお聞きしたいと思います。別のインタビューにて、今の自分を形作る影響源として、Stevie Wonder、Alicia Keys、そしてDonny Hathawayを挙げていたと思います。まず、そういった音楽とはどのようにして出会ったのでしょうか?

SIRUP:高校生の時、僕は吹奏楽部だったんですけど、OBの先輩にR&Bシンガーをやられている方がいて、その方に聴かせてもらったのがStevie WonderとAlicia Keysで。そこでドハマりしてから自分でディグるようになり、Donny HathawayとかD’Angeloにも辿り着きましたね。

――そこでブラック・ミュージックの洗礼を受けてから、SSWとしてのキャリアをスタートさせるまでの経緯は?

SIRUP:元々歌うこと自体は好きで、小学生くらいから宇多田ヒカルさんとかMr.Childrenさんとかをよく歌っていました。さっき挙げたようなR&B、ブラック・ミュージックに出会ってからは、当時ラップやDJもしていた兄の勧めでクラブでR&Bシンガーをやるようになりました。最初は遊びの延長線上だったんですけど、20歳くらいから本気でやっていこうと思って。そこからスタートしていますね。

――活動されていた関西のシーンというのは、どのようなものだったのでしょうか?

SIRUP:僕が関西で活動していた時は、今よりもR&Bに特化したイベントが色々あって。DJとシンガーのライブを組合せたようなスタイルで、結構シーン全体が盛り上がっていたんです。それこそ今メジャーで活躍されているKIRAさんとかも当時は同じ現場にいたり。でも、それが風営法の関係で散り散りになってしまったんですよね。

――今回のEPにも参加していて、SIRUPさんのバック・バンドも務めているクルー、〈Soulfelx〉のメンバーとはどのようにして出会ったのでしょうか?

SIRUP:〈Soulfelx〉に関しては、Zentaro Moriっていうビートメイカーを中心に集まったメンバーなんです。僕自身も、彼と出会ってから作曲を始めたくらいなんですけど、彼がDJで色々なイベントに出演していて、その時に出会ったヒップホップ・バンドと仲良くなって、みたいな。みんなルーツが似てるんですよね。ネオ・ソウルとかオルタナティヴなヒップホップが好きで、それこそThe Soulquarians(ソウルクエリアンズ:1990年代後半頃に形成された、ネオ・ソウルおよびオルタナティヴ・ヒップホップを志向した音楽集団。中心人物はThe RootsのQuestlove)みたいなクルーを作りたくて始まったんですよね。

――向井太一さんとも共演経験があり、親交も深いようですね。それは関西時代から?

SIRUP:いや、彼とは上京してから仲良くなりましたね。4〜5年くらい前からアンビエント色の強いR&Bが流行ってきたじゃないですか。それこそ初期のThe Weekndとか、僕はそういうアンビエントのR&Bも好きなんですけど、実際にそういうのを聴いている人が僕の周りにはあまりいなくて。太一とは確か最初にBANKSの話をしてすごく盛り上がった気がします。歌をやっていて、そういう音楽を聴いている人が当時はあまり周りにいなかったのもあり、そこからすぐに仲良くなりましたね。

――少し前には、向井太一さん、Kai Takahashiさんとの3ショットもInstagramにUPされてましたよね。

あの時、Kaiくんとは初対面で、それこそ太一に紹介してもらったんですけど、すぐに音楽の話で盛り上がって。

――今作『SIRUP EP』では「Synapse」のみクレジットにKYOtaroさんの名前が入っていませんよね。でも、先程のお話しでは元々のデモはKYOtaroさんが作っていたと。

SIRUP:そうですね。具体的な制作過程を言うと、元々の僕のデモと、リファレンスになる曲を〈Tokyo Recordings〉の方にお送りして、そこから自由に作り直してもらったんです。それこそ僕のデモは全部なしでもいいです、くらいの伝え方をして。それで挙がってきたのがあの曲で、まさしくバッチリだなって。コーラスとかは僕の考えた部分もあるんですけど、この感じなら作曲から僕を外してもいいかなと思って、今回の表記の仕方になっています。

ちょうどこの「Synapse」のレコーディングを始める頃に、SIRUPという形で新しくスタートさせるっていうアイディアを思いついたんですよね。この名前はシロップ(Syrup)とも掛けているんですけど、シロップって単体では飲んだり食べたりしないじゃないですか。何か他の飲食物と混ざることで、それぞれの魅力を増幅させたりする。それと同じで、このSIRUPというプロジェクトでは、幅広いクリエイターの方々とコラボしていきたいなって思っていて。

――〈Tokyo Recordings〉に頼もうと思ったキッカケはどのようなところから?

SIRUP:僕が環ROYさんのファンで。環ROYさんとOBKRくん、Taquwamiさんがコラボした「ゆめのあと」っていう曲にやられて。OBKRくんがやられていたN.O.R.K.もめちゃめちゃ聴いていて、いつかご一緒したいなと思っていて。それで今回話をさせてもらって、一緒に制作することになりました。

SIRUP:〈Tokyo Recordings〉との作業はめちゃくちゃ楽しかったですね。彼らの音の作り方ってすごく興味深くて。「Synapse」には馬の鳴き声とかも入ってるんですけど、言われるまでは全然わからなくて(笑)。
「宇宙船みたいに」っていうところの前に、変わったシンセみたいな音色が入っているんですけど、「この音なんなんですか?」って聞いたら「馬の鳴き声をめちゃくちゃにエディットしたやつ」って(笑)。
「こういう音欲しかったけど、何て言ったらいいかわからない」みたいなところを、言わずとも掬ってくれるんですよね。あと、アコーディオンの音とかもエディットして入れていたり、本当におもしろかったですね。

あと、この曲は日本語と英語を混ぜた歌詞になっているんですけど、語感や韻を絶対に損なうことなく、それでいてストーリーも作るっていうことを念頭に、言葉を当て込んでいく作業も大変だったけど達成感がありました。

SIRUP:この「Synapse」は、何かひとつのことを他人と共有、思考することをテーマにしているんです。例えば恋愛とかもそうだし、今回の作曲・アレンジ作業とかもそこに繋がるなと。僕と〈Tokyo Recordings〉のふたりの間で同じものを共有しながら作業を進めていく。それが一番おもしろいポイントなんだってことがわかって。そういう歌詞にしようと思った時に、僕はマンガも好きだったので、『攻殻機動隊』の電脳の感じをイメージして書くことにしたんです。

――なるほど。「君にPlug In」、「泳ぐシナプスのPool」とかはまさしくといった感じですね。

SIRUP:そうですね(笑)。

――では、Chocoholicさんとのコラボ曲「LMN」はどのような形で制作されたのでしょうか? そもそも彼女にオファーした経緯は?

SIRUP:Chocoholicはマネージャーから推薦してもらったんですけど、曲を聴いてみたらすごくカッコよくて、ぜひお願いしたいなと。「LMN」はChance The Rapperっぽいというか、最近のシカゴとかLAみたいな、開放感に溢れたイメージで作った曲です。最初に打ち合わせをして、Chocoholicが作ってくれたトラックに合わせて歌メロを作り上げて、ふたりでブラッシュアップしていきました。

――一方、KYOtaro時代から親交のあったShingo.Sさんとの楽曲「Last Lover」は、まるでフューチャー・ベースのような一曲になっていますよね。

SIRUP:あの曲は僕がピアノでまるごと完成させた状態のデモを、Shingo.Sさんと一緒に作り上げていきました。Shingo.Sさんと作る時は大体毎回セッションでその日のうちに固めていくんですけど、この曲もそうやってできた曲ですね。フューチャー感もあるし、若干トロピカル感もありますよね。

――先程もお話に出ていた〈Soulflex〉のZentaro Moriさんとは、「バンドエイド」、「SWIM」という2曲を作っています。

SIRUP:Zentaro Moriとはもう昔からの古い付き合いなので、いつも音楽の話とかをしてるんです。ちょうど「バンドエイド」を作った時はちょっと遅めのトラップみたいなサウンドが流行っていて、そういうイメージで作った曲ですね。

「SWIM」に関してはこんな感じにしたいっていうアイディアが先に浮かんでいたので、それを彼に伝えて。ふたりでその日のうちにデモを作りましたね。ドラムとベースは〈Soulflex〉のメンバーに参加してもらって。この曲だけはレコーディングも全部大阪でやっています。

――KYOtaro時代に『ROOM』でタッグを組んでいたKent.Aroさんとの「一瞬」は、今っぽいビートを感じさせながらも、KYOtaro時代の面影も残した一曲だと言えると思います。

SIRUP:この曲はメロディ先行でスタートして、何ていうかロングトーン系のものをやりたっかたんですよね。これもセッションで1日で大体作りあげましたね。EPとしてのバランスを考えたとかではなくて、今回は本当に幅広いことがやってみたかったんです。純粋に今やりたいことのうちのひとつとして選択したっていう感じですね。音数を極力少なくして、歌との距離感を作るというか。ちょうど作り出した時がエモい時期だったということもあって、歌詞もちょっとそういう感じになっているんです。

――KYOtaroさんが1stミニ・アルバムを出したのが2012年。そこからこの5年ほどで、世界的にR&Bもヒップホップもトレンドが大きく変わりました。長年R&Bやブラック・ミュージックのシーンに身を置く立場として、そういった変化に対して何か思うことはありますか?

SIRUP:2000代くらいのいわゆるメインストリームなR&Bやヒップホップと比べると、よりリアルになってきているような気がします。R&Bでは音数がどんどん減っていって、リリックも恋愛のこととかよりも、もっと生々しい内容になってきたというか。

トラップとかもそうなんですけど、僕はそういうものを取り入れる時に、「新しい音だから取り入れよう」っていう感じではなくて、「トラップが生まれた環境、時代背景」みたいなものが必ずあるはずで、そういう音に合わせるならこういう歌詞かなとか、そういうことを考えながら自分の中に混ぜていくんです。もちろんこれは僕の空想なので、実際のイメージとはかけ離れているのかもしれないんですけど。例えば今回のEPでトラップ的なビートを取り入れた「バンドエイド」では、ちょっと破壊/破滅的なイメージの歌詞にしてみたり。

――90年代のR&Bやネオ・ソウル再評価の流れも起こりましたし、結果としてSIRUPのやっていること、ルーツは時代に適したものになったんじゃないかなという気もします。

SIRUP:そうですね。大阪でやっている時は、僕はよく「ソウル・シンガー」と呼ばれることが多くて。サウンド的にはそんなにヴィンテージなものではなかったはずなんですけど、そうやって呼ばれるってことは、昔からそういう僕のルーツ的な部分が出ていたのかなって。逆に今はこういう音楽性で注目してもらえるようになって、本当にいい時代になったなと思いますね。

――SIRUPとして、今後やってみたいこと、目指すべき方向性などはみえてきていますか?

SIRUP:SIRUPというプロジェクトはまだまだスタートしたばかりなので、このプロジェクトのコンセプトである「Sing&Rap」というフロウを今後さらに追求していけたらなと思います。それと、もっともっと色んなクリエーターさんとコラボして、おもしろい音楽が作れたらなと。あとは海外でもライブとかをやってみたいですね。向こうのサウンドを直に感じてみたいですし。

――音楽性の面以外の部分ではいかがでしょう?

SIRUP:活動面で言うと、今こういうサウンドでソロ・シンガーとして活動している人って、それこそ僕と向井太一くらいしか周りにはいないような気がしていて。なので、そういったシーンみたいなものをもっと盛り上げられたらいいですよね。R&Bではあるんですけど、もっと色々なサウンドをミックスしたシーンができあがればなって思います。

昨日のレアメンバー🙌🏻 . #真空ホロウ #luckytapes #yonyon #SIRUP

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【リリース情報】

SIRUP 『SIRUP EP』
Release Date:2017.11.01 (Wed.)
Cat.No.:SUPG-001
Price:¥1,620 (Tax In)
Tracklist:
01. Synapse (Music: OBKR / Yaffle)
02. LMN (Music: KYOtaro / Chocoholic)
03. Last Lover (Music: KYOtaro / Shingo.S)
04. 一瞬 (Music: KYOtaro / Kent.Aro)
05. バンドエイド (Music: KYOtaro / Zentaro Mori〔Soulflex〕)
06. SWIM (Music: KYOtaro / Zentaro Mori〔Soulflex〕)
07. Synapse (Chocoholic Remix) ※デジタル限定トラック

■SIRUP オフィシャル・サイト:http://www.sirup.online/

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