がむしゃらに歌い、ギターをかき鳴らし、踊る彼女たちの姿はまさに新世代のロックンロール・ヒロインだった……!
デビュー・アルバム『Leave Me Alone』を引っさげて、スペインからやってきた4人組、HiNDS(ハインズ)。
NMEを始めとした各メディアが絶賛する彼女たちの待望の来日公演は、そのどれもがソールドアウトするなど、ここ日本における洋楽不況な風もなんのそのな勢いを感じさせる。
そして、少女から大人の女性への階段を登る、まさに過渡期に差し掛かっている彼女たちの何とも言葉にできない感情を吐き出すような熱いパフォーマンスを体感した人々は、きっとそれぞれの青春を回顧したことだろう。
今回、東京での初ライブとなった渋谷タワーレコードでのインストアライブを終えたばかりで興奮冷めやらぬ彼女たちへ取材を行った。くるくる表情が変わりながらファッションや映画の話をしてくれた彼女たち。イマドキのリアルな女の子達の女子会をどうぞ!
Interview by Aoi Kurihara
Photo by Takazumi Hosaka
—こんにちは!実は私はDeers(HiNDSの前身バンドで、当時はCarlottaとAnaの二人編成だった)時代からあなたちのことを知っていて、2年ほど前にすでにSpincoasterで取り上げていたんです(記事を見せる)。
Carlotta:ワォ! そんな前から!? すごい! アリガト!
Ana:この写真はCarlottaとふたりで初めて旅行へ行ったときの写真なのよね。
—今日のライブも最高でした! 最初、機材トラブルがあって大変そうでしたが……。
Ana:そうね、ちょっと開始が遅れちゃって、最初はストレスだったんだけど、演奏をしていくうちにリラックスできたわ。
—東京での初めてのライブだったかと思いますが、日本のオーディエンスの印象を教えてください。
Ana:日本人は、すごくシャイね。みんな静かに写真撮ってる(笑)。
Carlotta:でもすごく楽しんでいるというか、演奏に集中しているって感じ!
Anna:私たちが演奏中に何か言うと、彼らが必ず答えてくれて面白かったわ。
—昨日東京に着いたばかりみたいですけど、どうですか? すでにショッピングとかはしました?
Carlotta:原宿や渋谷を歩いたりしたわ! 洋服とかは買っていないんだけど、スーパーマーケットとかに入ったわよ。
Ana:あとMappyって知ってる? 日本の14歳のファッションアイコンなんだけど、雑誌の企画で彼女と一緒に裏原を歩いて、ウィンドウショッピングしたわ。彼女はクールね。
Ade:あとは……カラオケ行ったわ!
—なんでも、昨日はラーメンも食べたようですね。
Carlotta:そうそう、ラーメン、スシ、ナルト!
Ana:それから、サケ、ミソスープ!
—スペインの日本料理と比べるとどうですか?
Carlotta:もちろんここが日本料理の本場なわけだから、伝統的な感じがして美味しいわ!
Ana:それとスペインで日本料理屋さんへ行くととても高いのよね〜。
—話は戻りますが、先ほどお話のあったMappyちゃんのような東京の女の子たちのファッションは、ヨーロッパやアメリカとはちょっと違うと思いますが、実際に見てみた印象はどうですか。
Carlotta:東京はもっとカラフルね。あと様々な要素をミックスさせてファッションを作っている感じ。例えばスポーツの要素を取り込んだりとか。
Ade:ヨーロッパよりはアメリカよりなのかしら。アメリカもホッケーとかNYヤンキーズだったりのスポーツチームのキャップとかをファッションとして取り入れているコもいるもんね。
Carlotta:服装で自分を主張しているって感じ。そういう意味ではロンドンのコ達のファッションもちょっと似ているんだけど。
—私自身はスペインへ行ったことはないんですけど、イタリアへ行ったときは、シンプルで自然体なファッションのコたちが多いな、と。
Carlotta:スペインとイタリアは似たようなカルチャーを持っているからね! そうね、私たちは強いこだわりがあるというわけではなくて……。
Ana:いや、違うわよ、そうじゃなくてスパニッシュガールはもっとなんて言うか……。
Carlotta:こだわりがないとかじゃないんだけど、自分自身であろうとしているというか。自分らしい着たい服を好きに着ているってカンジ!
Ana:ZARAとかH&Mとかで買った服を着るんだけど、そこに1点だけ高いブランドものを混ぜてみたりするの。
Abe:そうそう、それがスペイン流かも!
Ana:スペインでファッションにこだわりがあるコ達は、みんなロンドンとかNYへ行っちゃうのよね。
—さて、バンドの話を聞きたいのですが、DeersからHiNDSにバンド名を変えた経緯が『ハリー・ポッター』の主人公が呪文を唱える時に鹿が出てくるから、らしいですね。『ハリー・ポッター』はあなたちの世代だとみんな小さい頃に読んでいると思いますが、その世界観などから影響を受けてますか。
Carlotta:エクスペクトパトローナム!(笑)
Ana:私たちよりもちょっと年上の友達はスターウォーズのクレイジーなファンが多いんだけど、私たちの世代にとってのスターウォーズが、『ハリー・ポッター』よね。
Carlotta:HiNDSという名前は、Deersで活動していたときに同じ名前のバンドがいることがわかって。「OMG、バンド名変えなきゃ!」ってなったの。でも、Deersという名前も気に入っていたから、同じ「鹿」という意味を持つ言葉のHiNDSに改名しようと思ったの。このロジック、わかる?
Ana:HiNDSは雌鹿っていう意味もあるし、同じ1ワードだから気に入ったの。
—なるほど。私はそのDeersとして活動したときにリリースした「Bamboo」という曲であなたたちの存在を知りました。なぜそこから4人編成のバンド形態をとろうとしたのでしょうか。
Carlotta:それは論理的な理由からね。
Ana:2人でバンドをやろうとすると、ドラムとベースがどうしても必要だし、2人でロックのライブをやるのは限界だったのよ。観客をガッカリさせたくなかった。
Carlotta:最初は2人だけだったから、ギターを弾きながら「シャンシャン」ってリズム隊としてタンバリンを叩いてたの。で、オーディエンスが手拍子してくれて一緒にリズムとってくれたわ。
Ana:でも、やぱりギター、ベース、ドラムはライブに絶対必要だと思って4人体制にしたの。
—その「Bamboo」はネットにアップした翌日には一気に火がついていたそうですね。そして2015年7月には〈Burger Records〉からカセットテープをリリースしています。
一般的にもデジタルで音楽を聴く人が増えている反面、ヴァイナルを買う人も増えてたりと、今はデジタルとアナログが混在していると思いますが、そういった現代のリス二ング環境についてはどう思いますか。
Ana:デジタルで音楽を聴くことも素晴らしいと思うんだけれど、音楽を聴くキッカケになるのはそのアートワークだったりもするし、自分の記憶に強く残したいものはフィジカルで買ってコレクションしているわ。
Carlotta:ネットのストリーミングで音楽を聴くこともあるけど、私たちはやっぱりレコードの方が好きね。
Abe:とある友人はレコードストアへ行ってシングル・コーナーでパラパラめくりながら探すのが好きらしいんだけど、アートワークが素敵な作品は知らなくても思わず「ワオ!」って手に取っちゃったりしちゃうんだって。インターネットじゃそういうことはできないから、アナログの醍醐味はそこだよね。クールだと思う。
Carlotta:今はやっぱりデジタルで音楽を聴く人やCDを買う人が多いけど、私はレコードとかカセットテープとかアナログ的なモノが好きなの。アートとして成り立っていると思うのよね。CDだったら、例えば7曲目だけ聴きたかったらボタンをポチポチすればすぐに7曲目になるけど、レコードだと針を動かして……っていう風に作業が発生するのよね。それに私はレコード聴くときはレコードとして聴くからそういう風に飛ばして聴いたりはしないし。別にSpotifyで音楽を聴くことに罪悪感はないけれど、アナログの方が私は好きね。
—じゃあ、1番最近ジャケ買いしたレコードは?
Carlotta:ベルリンの小さな奇妙なヴァイナル・ストアで買ったMando Diaoのレコードね。透けた黄色いジャケのシングルで、すごく素敵で買っちゃったの!
—Mando Diaoは日本でかなり人気があるんですよ。
Carlotta:あら、本当に? 彼らってまだ活動してたっけ?
マネージャー:活動しているけど、だいぶテイストが変わっちゃっているよ。
Carlotta:そうなんだ。何があったのかしら?(笑)
ヨーロッパではそこまででもないんだけど、スペインでも人気あるのよね。
—影響を受けていた音楽として、Bob DylanやThe StrokesからMac DeMarco、Black Lipsなどを挙げている一方、The xxのカバーもしてたとお聞きして、意外に感じました。そういったエレクトロニック寄りのサウンドからも影響を受けたのでしょうか?
Carlotta:オーマイガー! なんでそのこと知っているの!?(笑)
私たちはその時、若かったの。色々な曲をカバーして、それらをミックスしたテープを作ってたわ。Bob Dylanとかはまさにそうね。
Ana:Ray Charlesとかもね!
Amber:なにそれ、ヤバいね(笑)。
Carlotta:あとなんだっけな。「Better when we’re together〜♬」(歌いだす)
Ana:Jack Johnson(の「Better Together」)!!(笑)
今は音楽のテイストが固まってきて、ガレージっぽいサウンドをやるようになってきたけど、その頃はまだ自分たちの音楽を探しているところだったから、色々試してたのよ。
—あなたたちのインタビューを複数読んだのですが、映画が好きと話していたので、映画の話を少しお訊きします。タランティーノの作品では何が好きですか。
Carlotta:私は『キル・ビル(Kill Bill)』ね!
Amber:あ、私も!
Carlotta:それから『パルプ・フィクション(Pulp Fiction)』でしょ。
Ana:『イングロリアスバスターズ(Inglourious Basterds)』!
Carlotta:『キル・ビル』のアクションがとても好きね。
—『キル・ビル』で描かれる日本の世界と実際の日本は違うと思いますが、実際来てみてどう思いました?
Carlotta:まだよくわからないわ(笑)。でも、私は刀とかが出てくるような伝統的な世界観が好きね!
—他にも好きな監督として挙げていたWesley Anderson(ウェス・アンダーソン)のレトロな世界観は、どこかHiNDSと通じる点もあるかなと思ったのですが、実際影響は受けていますか?
Carlotta:そう、似ているかしら?
Ana:確かに、「奇妙でカワイイ」っていうコンセプトは似ているね。
Carlotta:レトロな世界観は確かに似ているかも。彼の作る作品は子供のキャラクターがたくさん出てきて、子供のときの感性を失っていないと思うんだけれど、そういった部分もHiNDSに似ているかな。
—映画といえば、昨年公開されたThe ParottsとのダブルMVは、まるで青春映画のワンシーンのようでしたね。どういった経緯で彼らと一緒にビデオを作ることになったのでしょうか?
Ana:The Parottsは私たちと同じ音楽シーンにいて、近い存在なの。初めて会ったときに「Mac DeMarcoをどう思う?」って聞いたら、彼ら「友達だよ」って言うから、「すごい!」ってなって。私たちMac DeMarcoだったり、Julian Casablancasだったり好みも似ていて、作る音楽も似ているから、The ParottsのファンはHiNDSのファンだし、HiNDSのファンはThe Parottsのファンでもあるの。
—「Garden」のMVもレトロな雰囲気ですよね。円の中に映像があって、望遠鏡でのぞいているような気分になります。どのような意図があってこのような映像にしたのでしょうか?
Carlotta:最初のアイディアとしては、1つのシーンがあったら次のシーンへいきなりスキップするような、そんなイメージで作りたかったの。そしたら監督をしたPedro Martin-Caleroが、円の形で映像を作ろうって言いだして。でも特にメタフォー的な意味はないのよね。審美的にしたかったの。
—では、自由にMVが作れるとしたら、誰でもキャスティングして良いと言われたら誰に出てもらいたいですか? 俳優でもミュージシャンでも誰でもいいので。
Carlotta:役者じゃないけど、Pedro Almodóvar(ペドロ・アルモドバル)(『オール・アバウト・マイ・マザー』や『ボルベール<帰還>』等を監督したスペインを代表する映画監督)に監督してもらいたい!
Amber:Leonardo DiCaprio(レオナルド・デカプリオ)!
Ana:Madonna! 彼女の出ている野球の映画、『プリティ・リーグ(原題: A League of Their Own)』とか良くなかった?
Abe:あとLindsay Lohan(リンジー・ローハン)!
Amber:(笑) 今、彼女何やっているんだろうね!?
Carlotta:Penélope Cruz(ペネロペ・クルス)!
—盛り上がっているところすいません、そろそろ最後の質問になります……。明日から本格的に日本でのツアーが始まりますが、どういったショーにしたいでしょうか。他の国ではオーディエンスがステージに上がって踊るのを観ましたが。
Carlotta:ステージに上がるとオーディエンスも自分も一切コントロールできなくなるの!(笑)。
中には盛り上がり過ぎちゃって腕を折っちゃったファンもいたわ。それはとても可哀想だったけど……。
Ana:そこまでにはなってもらいたくないけど、みんな私たちの音楽でハッピーになって、エキサイティングしてくれれば良いな。それでいてクレイジーにね! 明日もみんながハッピーになると良いな!(笑)
※近日中に4人の音楽的ルーツとして4曲を挙げてもらったRootscoasterをUP予定です! こちらもお楽しみに!
【リリース情報】
HiNDS Debut album『Leave Me Alone』
Release Date:2016.03.02
Label:RED Project / Sony Music Entertainment
Cat.No.:XSCP-5
Price:¥2,376(tax in)
Tracklist:
1. Garden
2. Fat Calmed Kiddos
3. Warts
4. Easy
5. Castigadas En El Granero
6. Solar Gap
7. Chili Town
8. Bamboo
9. San Diego
10. And I Will Send Your Flowers Back -03:34-
11. I’ll Be Your Man
12. Walking Home
Bonus track for Japan
13.Trippy Gum
14. When It Comes To You (dead ghosts cover)
・初回デジパック仕様 ・日本盤のみのボーナス・トラック2曲収録
・初回生産分にメンバー(カルロッタ)によるイラスト・ステッカー2種封入