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REPORT | Michael Kaneko Daydreams One Night Only Live


「今が一番楽しい」── 最新作を携えた一夜限りの特別公演にみた、マイキーの現在地

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2024.11.21

Text by Yuka Ishizumi
Photo by ADAM WALKER

Micheal Kanekoが3rdアルバム『Daydreams』を携え、一夜限りのスペシャルなライブを開催した。

同作はキャリアを重ねてきた彼がトレンドやコマーシャルベースのセオリーから解放され心から作りたい音楽に向き合いひとりで作り上げたアルバムで、パーソナルなベッドルームR&B、80’sテイスト、AORやオルタナティブポップまで幅広いニュアンスの楽曲で楽しませてくれた。この自信作を携えた今回のライブはMicheal Kanekoの新たな一歩であり、新しいバンドでいかにライブアレンジしてみせるのか? も大いに注目されるところ。ざわめくフロアが期待値の高さを窺わせる。

暗転したステージにマイキーひとりが登場し、エレピの弾き語りで“The End”を演奏するという、前回はアコギの弾き語りだったアルバムリリース前の『JAPAN & ASIA TOUR 2023』渋谷WWW X公演を想起させるオープニング。ひとりで作った楽曲に仲間の解釈が加わっていくという演出とみたのだがどうだろうか。

1番の終わりに今回のメンバーであるKeity(brkfstblend / Ba., Cho.)、松浦大樹(She Her Her Hers /Dr., Cho.)、石田玄紀(Key., Sax, Cho.)、斉藤雄哉(yonawo / TRIPPYHOUSING / Key., Gt., Cho.)が演奏に合流、さっそく石田のサックスが映え、The E Street Bandにも似た都会のロックンロールが走り出す。エンディングで開口一番「Are You Ready?」とフロアに声をかけるも、控えめな「Yeah」に「全然聴こえない!」と珍しく喝(?)を入れる。そう。洒脱な“Atmosphere”もライブになると俄然熱を帯びてくるのだ。今回、初めてサポートに加わった斉藤とのツボを抑えたユニゾンのリフなど、ツインギターの旨みに耳目を奪われる。

さらに音源では密室的でまさに白日夢の質感を持っていた“Daydreams”も、グッと生の低音が体に響くKeityのベースラインが加わりオーディエンスを揺らし始める。また、この曲でもマイキーと斉藤のギターの抜き差しと絡みがライブの醍醐味を増幅させていた。スピーチのSEでパッと情景が変わった“goodlife”はマイナーチューンならではの哀切な響きの上で、マイキーの話すようなボーカルは切実さを表し、横溢するエモーションを短いギターソロに託していく。言葉以上に雄弁なギターの音色がMicheal Kanekoのフィロソフィであることは間違いなく、プレイに集中しているオーディエンスも聴き逃すまいと注目する。

一気に4曲披露したあと、MCでライブをやり始めて約10年になるけれど、今が一番楽しいと言い切った彼。それはバンドの演奏を見ても明らかだ。ここまでアルバム新曲を披露してきたが、趣きを変え、どこのレーベルからも声がかからなかった23歳の頃、YouTubeにアップした1本の弾き語り動画を現在の所属レーベル〈origami PRODUCTIONS〉のボスが目に留め、声をかけてくれたという。その楽曲“Separate Seasons”を、Aメロは当時の動画と同じくアコギの弾き語りで聴かせ、静かにバンドイン。ウォームでリラックスした曲調だが、同じぐらい切ない感覚もあって、それは彼のシンガーソングライターとしての変わらない持ち味なのだと改めて理解した。

再びアルバムからの選曲に戻り、夜の親密なムードを醸す“rebel”、光の粒のようなシンセリフやコーラスが美しい“Heartache”では終盤に放たれた石田のサックスのロングトーンを盛り上げるように、メンバーは端正かつ熱のこもったプレイを聴かせ、マイキーは膝をついてギターをかき鳴らしていた。切ない心情が徐々に晴れていくようなセットリストに感じられるが、メンバーの演奏が楽しくて仕方ない表情を見ていると、アンサンブルや音色の旨みに自ずとこちらも笑顔になってしまう。

中盤には彼のライブで定番になりつつある、1本のコンデンサーマイクを囲む「one mic corner」が展開。5人がギュッと集まって、アコギやサックスの生音をマイクからの距離でコントロールする。最初はアルバム『THE NEIGHBORHOOD』から、さらさとのコラボ曲“SHIGURE”を披露する。日本語詞なだけにシンガロングも起きるのだが、マイクに集まる5人の様子がユーモラスで、ちょっと曲の意味合いを超えていくのもライブならではだ。

2曲目は「カバーなんですが、敢えて曲紹介はせずにやります」と、鍵盤ハーモニカの響きが印象的なライブアレンジでBillie Eilishの“BIRDS OF A FEATHER”を届けてくれた。エンディングがセカンドライン調だったりして、原曲を大幅に再構築できるのもこのメンバーならではだろう。再びバンドセットに戻った“Lovers”では、サックスの輝度やビビッドなベースラインが際立った。

メンバー紹介では、brkfstblendに続いてKeityがマイキー・ソロにも参加したいと切望したエピソードが、Keityとしてはバラしたくなかったようだが、勢いマイキーの口から語られる。いかにミュージシャン、人間としてウマが合っているかがわかるエピソードだった(詳細はKeityの意思を尊重して割愛しておく)。

また、今回から参加しているyonawoの斉藤は彼のTRIPPYHOUSINGとbrkfstblendが共に出演していたイベントが出会いのきっかけだったそう。20代の感性が加わった意味はかなり大きいと感じた。アカデミックな背景はないが、ヴァイブスは最高だと強調するマイキーにメンバーも笑いながら同調していた。

メンバー紹介でさらにバンドへの親しみが増したところでライブは終盤へと加速。陽のムードの“long island iced tea”では先ほどのMCの印象もあり、Keityのグルーヴィなベースラインがオーディエンスにアンサンブルの楽しさを伝達し、それはセッション的なイントロから始まった“These Nights”へと繋がっていく。各々の見せ場やマイキーと斉藤のツインギターの旨み、そして渾身のギターソロでこの日最高のピークを迎えた。

続いて小気味いいカッティングでシームレスに“Best Part Of Us”に突入。AmPmとのコラボナンバーだが、シンセポップなイメージのオリジナルをアレンジし、ワカチコカッティングやサックスが有機的に絡み合うフレッシュな演奏にアップデートされていた。

大きな拍手と笑顔が溢れる中、本編ラスト前に感謝の言葉と来年もまたアルバムを作ることを告げて、『Daydreams』の一側面である80’s感を代表する“Strangers In The Night”でフロアにチアフルなムードが溢れてゆく。各々スマッシュヒットになった楽曲でもあり、アルバムリリースから夏を経てすっかりリスナーの日常に溶け込んだ楽曲たちだけに、この日のライブが待望されていたことが明快になったあっという間の90分だった。

全然聴き足りない様子のオーディエンスに応えて、アンコールではまずマイキーひとりが登場し、SGの豊かな音色の弾き語りで“maybe”を聴かせる。オールディーズ並みの普遍性と包容力、ギターと歌だけの胆力を見せつけたかと思うと、愛嬌たっぷりにフロアからモノを借りてのグッズ紹介も。

「楽しかった。またどこかで会いましょう!」――アルバム同様“Field of Heaven”を最後にセット。光を感じる曲調が始まりを感じさせ、曲の途中でSGからアコギに持ち替え、弾むようなグルーヴを作り出していく。困難があっても乗り越えていくよと誓うラブソングだけれど、そのメッセージはシンガーソングライター・Michael Kanekoの意思と受け止めた。

Setlist
1. The End
2. Atmosphere
3. Daydreams
4. goodlife
5. Separate Seasons
6. rebel
7. Heartache
8. SHIGURE [one mic corner]
9. BIRDS OF A FEATHER(Billie Eilish Cover)[one mic corner]
10. Lovers
11. long island iced tea
12. These Nights
13. Best Part of Us(AmPm)
14. Strangers In The Night
[ENCORE]
15. maybe
16. Field of Heaven


【イベント情報】


『Daydreams One Night Only Live at Daikanyama Unit』
日程:2024年11月6日(水)
会場:東京・代官山UNIT
出演:
Michael Kaneko

Michael Kaneko オフィシャルサイト


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