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INTERVIEW / Furui Riho


Furui Rihoの最新シングルは、答えのでない自分探しに希望とよろこびの道筋を照らす1曲

2023.05.10

Text by Masahiro Tanioka
Photo by Saekashimada (Luuna Management)

3年間の歩みと、新たな一歩を踏み出す決意

Furui Rihoが昨年3月にリリースした1stアルバム『Green Light』は、私の心に深く残る作品となった。とりわけ、彼女の言語感覚とそれを武器にどこまでも自己の内面を掘り進んで行く表現者としての性(さが)に突き動かされた表現欲が、楽曲を特別なものにしている。それは、彼女自身の手によって形にされなければならなかったし、世に放たれなければならなかった産声のような切実さを伴って我々の前に現れる。

小学生の頃にゴスペルに出会い、そこからブラック・ミュージックの世界にどっぷりと漬かり、大学の頃よりソロで活動を開始するなど早くからその才能を発揮していた。しかし、なかなか思うような結果が得られないなか、転機となったのが2019年に初めて配信でリリースしたシングル「Rebirth」だった。この曲はアルバムの最後にも収録されており、1年前に行ったインタビューの時に、彼女はこう言っていた。「今までは聴いている人によく思われようとか、自分の気持ちをキレイな言葉に落とし込もうとしていたんですけど、そうじゃなくていいって思ったんです。もっと汚くて弱くてリアルなものを書いていこうってなったのは『Rebirth』からですね」。

「Rebirth」からの3年間の歩みをまとめたのがアルバム『Green Light』であり、そこには明確に“次に進む”という決意が込められている。改めてアルバムに込めた自身の想いについて訊いてみると、こんな言葉が返ってきた。「過去の自分にさよならっていうのが裏テーマとしてあって、それまでガムシャラに走ってきた自分、何かに囚われていた自分、そういうものにさよならをして、嫌なものは全部そこに置いて生まれ変わった私で新しく踏み出そうという想いはあったと思います」。

2022年8月にリリースした「We are」では、自身のルーツであるゴスペルをベースにそれだけでは収まらない新しいグルーヴに挑戦し、10月には初のドラマ・タイアップ楽曲となった「ウソモホント」で、J-POPとしての大衆性とビート・ミュージックとしての作品性が見事に融合したものを作り上げた。さらに今年に入ってリリースした「ピンクの髪」では、アルバム収録楽曲「Candle Light」で共作したビートメーカー/プロデューサーのA.G.Oと再びタッグを組み、インディ・ポップのドリーミー感にほんの一滴分の狂気や歪みを混ぜたポップスを完成させた。


自身を肯定し、さらなる先を見据える「Super Star」

そして、今回リリースされるのが「Super Star」だ。前置きがずいぶん長くなったが、このニュー・ソングに至るまでのFurui Rihoのたどった試行錯誤の歩みを抜きには語れない楽曲なのだ。つまり、アルバムまでにとことん掘り下げた自分自身から出発し、これまでやって来なかったタイプの曲へのチャレンジを通じて、今の自分自身を表現したのが、この「Super Star」なのだということが言える。

「『ピンクの髪』ができた時に、あ、これって自分らしいなって思ったんです。結果、予想以上に多くの人に聴いていただけたというのもあって、これが今の私が進むべき方向なのかもしれないと思いました。そこに今回は、アメリカやイギリスのポップス――Meghan TrainorやAnne-Marieなどのポップ感を私がやったらどうなるんだろう? っていう興味がありました」

イントロのエフェクティブなギターのカッティングの音色にまずは驚かされ、すぐにこれまた特徴的なAメロになだれ込む。メロとラップの中間、まるで話すように歌う、彼女の得意とするヴァースだ。心の中であれこれと考えている声がそのままメロディになったかのように、微妙にレイドバックしながら歌われるその感じは、アルバム収録曲でも随所に見られた、まさにFurui節とでも呼ぶべきものだ。とにかく言葉の歯切れが良く、音符と言葉の形が一体となって聴こえてくる。この、音楽に対する言語感覚とそれを歌唱する技術の高さがそのまま彼女の才能と言ってもいい。

さらに、曲全体の構成にも非凡なものを感じる。展開の出し入れよりも歌詞におけるストーリー・テリングや心情の変化を巧みにメロディや音に盛り込む。「Super Star」で言えば、サビ前のブリッジの音色にヴァイナル風のアクセントが加えられている。そこは、歌詞の流れで言えば、過去の自分と今の自分をつなぐ部分に当たる。まさに、彼女がたどってきたここまでの道のりを表しているとも言え、曲と現実が見事にクロスオーバーしている。

「歌詞の冒頭の《あの日描いた メモ用紙の裏》っていうのは、実際に目標をメモに書いたんですよ。『Rebirth』を出したくらいの頃だったんですけど。ずっと見ないままそこに書いた目標に向かってやってきて、久しぶりにメモを見つけたんです。そこからお話が始まっていきます」。

彼女がこの曲の中で歌いたかったのは、“よろこび”だと言う。「今まで自分のことがすごく嫌いだったんです。いろんなことに手を出しては失敗ばかりして芯がないというか、グラグラしているというか……。そんな自分がすごく嫌いだったんですけど、数年間の活動を経て今は自分のことをすごく好きになれているんです。だから、自問自答しながらゴールに向かって突き進んで行ったら、自分のことを好きになれるかもしれないっていう希望を歌いたかったんです」。

彼女のメモに何が書いてあったのかは、あえて聞かなかった。きっとその目標はもう過去のものになってしまったから。そして、「Super Star」の中で描かれているように、今は新たな目標を見つけ、そこに向かっているに違いない。「そう、新たな目標をまたメモに書いたんですよ。それが書けたということで、新しいステージに来ているんだなっていう実感がすごくあります。ここからまた進んでいける準備が整ったんだなって」。

アルバム『Green Light』がそうであったように、「Super Star」もまた、彼女にとっては“さよならするもの”として、すでに過去のものになっているのだろう。それが前に進むということであり、そしてその先にあるのは“Super Star”としてのFurui Rihoの姿だ。


【リリース情報】


Furui Riho 『Super Star』
Release Date:2023.05.10 (Wed.)
Label:LOA MUSIC
Tracklist:
1. Super Star

配信リンク


【イベント情報】

『SUMMER SONIC 2023』
日程:2023年8月20日(日)
会場:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ

※TOKYO / BEACH STAGE Opning Act

『SUMMER SONIC』 オフィシャル・サイト

Furui Riho オフィシャル・サイト


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