7人組クリエイティブガールグループEttoneが5thデジタルシングル“STAY”をリリースした。
現実から離れたい衝動、自分を縛る場所や役割から抜け出し、「どう生きていくのか」という問いを内包した本作は、青く滲む夜の情景と、どこにも行けないリミナルな感覚をまとったミッドチューン。ドリームコア/ウィアードコア的な超現実感と、J-POPとしてのメロディアスな聴き心地が共存する、Ettoneの新たなムードを提示する1曲となっている。
これまでSIRUP、Wez Atlas、YAMORI、Furui Rihoといった気鋭のミュージシャンを共作に迎えてきたEttone。今回コライトパートナーとして参加したのは、Ettoneメンバーと同世代であり、英語詞とJ-POPのメロディを行き来する作風で注目を集めるシンガーソングライターのRol3ert。
今回はEttoneメンバーより本作の作詞をメインで担当したchiharuとpiaに加え、Rol3ert、そしてプロデューサーのALYSAにインタビュー。コラボレーションの経緯や制作プロセスをはじめ、「青」というモチーフが生まれるまでの過程や楽曲に込めた想い、そして今年9月に予定されている韓国の音楽番組出演についても話を聞いた。
※取材は8月実施
Interview & Text by Jun Fukunaga
Photo by Shimizu Elio

「思っていたよりもずっとフレンドリー」――EttoneメンバーとRol3ertの邂逅
――まずはchiharuさんとpiaさんに自己紹介をお願いしたいです。Ettoneメンバーの中でどのようなポジション/キャラクターで、どんなことを得意としているのか、など。
chiharu:私はいつも笑っていて、自分では「日だまりスマイル」と言っているんですけど、そういう表情で、みんなを和やかに見守っているような存在です。あとは普段から詩を書いたり、言葉を書き溜めたりしていて、Ettoneの中では言葉をつかさどるようなポジションなのかなと思っています。
pia:私は生まれ育ちが海外なので、聴いてきた曲や見てきたものが他のメンバーとは違っていて。それがいい意味で、Ettoneのより幅広いアウトプットにつながっているというか。曲を書くときに少し違う視点からアイデアを持ってくることが得意なんです。
あと、個人でも曲を書いていて。忙しいときでも隙間時間さえあればトラックを作っています。いろんな国の曲やビートを聴いて、それを真似しながら、自分のフロウやスタイル、歌い方でトップラインを考える……ということをやっています。

――今作では、Rol3ertさんをコラボレーターに迎えています。このコラボはどういった経緯で実現したのでしょうか。
ALYSA:〈CDL entertainment〉のCEOである登坂広臣さんが勧めてくれたんです。「Rol3ertっていうアーティスト知っている?」「近いうちに絶対ブレイクすると思う」って。
――〈CDL entertainment〉は、Ettoneが所属するレーベル〈O21〉とクリエイティブ事業でタッグを組んでいるんですよね。
ALYSA:はい。それで(Rol3ertの)マネージャーさんに連絡してみたところ、すぐに打ち合わせをセッティングしてくれて。最初はオンラインでお話ししたんですけど、そこでEttoneの活動理念などをお伝えしたところ、Rol3ertさんがすごく共感してくださって。それで一緒にコライトしていただけることになりました。
――Rol3ertさんは、Ettoneに対して最初どのような印象を持ちましたか?
Rol3ert:コラボの話をいただいた段階では、まだ世に出ているEttoneの情報も少なくて。ただ、僕の知り合いのWez Atlasくんともコラボしていたし、近しい界隈とも接点があったので、普通のガールズグループとは何かが違うなと感じていました。
――chiharuさんとpiaさんは、Rol3ertさんと対面して、どのような印象を持ちましたか?
pia:これまでもいろんな先輩アーティストの方々とセッションをしてきましたが、Rol3ertさんと私たちはほぼ同年代なんです。今まではどこか先輩に対して、かしこまる感じだったのですが、今回は逆に年齢が近くて、最初はどう接すればいいのか迷いました。でも、実際にお会いすると思っていたよりもずっとフレンドリーな方で、すぐに打ち解けました(笑)。
chiharu:第一線で活躍されている方ということもあって、最初はドキドキしながらスタジオに行ったことを覚えています。それと一緒にいると、同年代かつお互いにアーティスト活動をしているからこその、いい意味での張りつめた空気もあって。たくさん刺激をいただきました。
――今回、chiharuさんとpiaさんをソングライターに抜擢した理由を教えてもらえますか?
ALYSA:Rol3ertさんは英語メインの曲が多いので、海外育ちのpiaは絶対に必要だと思っていました。ただ、Rol3ertさんとpiaのふたりだけで組み立ててしまうと、Ettoneが大事にしているジャパンコアというコンセプトから離れて、洋楽寄りになってしまうんじゃないかなと。そこに日本のエッセンスを入れられるのは誰かと考えたときに、パッと浮かんだのがchiharuでした。
chiharuの言語感覚で、日本語らしい奥ゆかしさや深みなど、そういったエッセンスを注入してほしいなと。なので、このふたり(piaとchiharu)の組み合わせは、割とすぐに決まりましたね。

カウンセリングのようなRol3ertとのコライトプロセス
――実際の楽曲制作はどのように進んだのですか?
ALYSA:いつものごとく、まず私がトラックを持ち込みました。それに合わせてpiaとchiharuがムードボードのようなものを作ってきてくれたのですが、そこで出てきたのが「青春」や「走馬灯」といったワード。それをRol3ertさんが深掘りしていきました。
Rol3ert:まず、ALYSAさんが作ったトラックに僕が事前にトップラインを軽く入れて、それを元に1回目のセッションを行いました。そして、2回目のセッションでふたりが出してくれたアイデアを深堀りして、歌詞を入れたり、軽くデモを録ったりしました。
――chiharuさんとpiaさんは、そこに歌詞をつけていったかたちですか?
pia:そうですね。メロディ入りの音源をいただいたあと、ふたりで夜遅くまで話し合いながら、歌詞をつけていきました。歌詞を考えるのは大好きなんですけど、私の場合、基本的には英語でおもしろい表現を考えるという感じなんです。ただ、今回は日本っぽさも大事な要素になるので、メンバーにも響くような英語の歌詞を考えていきました。
一方で、chiharuは日本語で歌詞を考えているので、「この母音の並びに合う言葉を考えてほしい」というオーダーをしてくるんです。それに対して私が「じゃあ、こんな感じかな」と案を出すと、「違う違う、もっといけるっしょ」と返されて、また別のアイデアを考える。かと思えば「ここは日本語だと難しいから、英語で考えてみて」と言われることもあって、同じ部分を英語で書いてみたりもしました。そうやって、日本語と英語、それぞれで出てきた言葉のいいところを組み合わせながら、歌詞を書き直していきました。
Rol3ert:その前の段階では、スタジオでみんなでマイクリレーのようなこともしていました。デモやトップラインを作るときに、アイデアが出た人からマイクを持って仮歌を歌ってみる、みたいな。
ALYSA:そんな感じの工程だったので、意味をなさないフレーズが大量に生まれたのですが、それを最後にキレイなひとつのトップラインへとまとめてくれたのがRol3ertさんでした。

――chiharuさん、piaさん、Rol3ertさんは同年代とのことですが、これまでの年上のコラボレーターの方々と比べて、お互いの距離が縮まるまでの時間に違いはありましたか?
ALYSA:これまでのアーティストの場合、Ettoneメンバーは年下なので、最初「この年代の子たちはどういうことを考えているんだろう?」というところから作業が始まるんです。でもRol3ertさんの場合、「僕は普段こういうことを考えているけど、グループだとどうなの?」「自分の立場だとこう思うけど、そっちはどう?」という会話から始まって、同年代ならではの同じ目線でのやり取りが印象的でした。
chiharuとpiaが自分の考えや悩みなどを打ち明けると、Rol3ertさんがそれを「わかるわかる」「そこ、悩むよね」「じゃあ次の課題にするね」と受け止めていく。ある意味、カウンセリングのような感じでしたね。
pia:同年代で同じようにアーティスト活動をしていても、私たちはグループなので、できること/できないことはやっぱり違うと思うんです。それでも、今回Rol3ertさんからいろいろなお話を聞けたことは、アーティストとして学びになりましたね。
chiharu:同感です。それとRol3ertさんは、いつもすごく自由に表現されているというか、自分の色を全面に押し出していく姿がすごくカッコよくて、刺激を受けました。
一方で、私は逆にいろいろと縛られているというか、「これをやらないといけない」「これは言っちゃいけない」と考えてしまうタイプなんです。なので、さっき話に出たマイクリレーのときも、最初はなかなか手を挙げられなかったんですけど、「次、行ってみれば?」と背中を押してくださって。それがきっかけで「もっと自由に音楽をやっていいんだ、もっと自分を表現していいんだ」と思うようになりました。
迷いや躊躇を表現、両者に共通するコンセプトが生まれた背景
――今作は「青く滲む夜の情景と、どこにも行けないリミナルな感覚をまとったミッドチューン」と紹介されています。前作“1UP↑ 1DOWN↓”の「詰み感を軽やかに肯定するポップ」から大きく方向転換した印象ですが、こういったコンセプトはどのようにして生まれたのでしょうか。
ALYSA:「STAY」というタイトルは、「この先、どこにも行けないかもしれない」という不安な気持ちから生まれています。やりたいこともたくさんあるし、一生懸命頑張っているけど、先が見えない不安もある。そういう気持ちを深堀りしていくなかで、「STAY」という単語が浮かんできて。それと、先ほども話に出た「走馬灯」というワードをどう組み合わせるかが、歌詞の大きなテーマになりました。

ALYSA:それをまず私が音に落とし込みたくなってしまい、トラックを全部書き直したんです。そこで走馬灯感というか、今いる地点から戻っていくような感覚を描きたかった。そこで、音をリバースさせようと考えつきました。そのうえでストリングスやチェンバロといった古典楽器も入れて、現代的なギターやドラムンベースのエレクトロニックな響きとの対比を作りました。
さらにドリームコアやリミナルスペース、超現実主義といった要素をMVなど視覚的に表現できたら、その対比がもっと際立つんじゃないかなと思って。
――視覚的要素でいうと、片方は革のロックなブーツ、もう片方はバレエシューズを履いたアートワークも印象的ですね。
ALYSA:chiharuがモデルを担当してくれたのですが、ここでも古典楽器をバレエシューズに、ギターを革のブーツに準える形で対比させました。そこに青いリボンを鎖のように巻きつけてもらって、止まりたくないけれど止まっている、STAYしている状態を表現しています。
――Rol3ertさんは、そのコンセプトを受けてどのように曲を作り上げていこうと思われたのですか?
Rol3ert:最初から一緒に作り上げていったので、パッと受け取った印象はあまりないんです。ただ、「箱に囚われている」という話が印象的でした。その「箱」はグループだったり事務所だったりするかもしれないし、他の何かかもしれない。誰にでも当てはまるコンセプトなんじゃないかなと。みんなと話し合いながら、そういったコンセプトが徐々に見えてきた感じです。
僕はなるべくオーセンティックでいたいので、自分でも嘘だと思うようなことはやりたくない。今回は僕自身にもEttoneにも共通する部分が見つかったので、そこを深掘っていきました。
――プレコーラスの《消えゆく青が証す》《瞬く青が急かす》など、今作では「青」という言葉が歌詞中に繰り返し出てきます。このキーワードはどういったやり取りから出てきたのでしょうか。
chiharu:最初、イントロで街の明かりの中を走っている情景を、ふたりともイメージしていたんです。ただ、最初はそれに上手くハマる言葉が全然浮かばなくて。何回も試してみてはボツにして……の繰り返しでしたね。
その過程を経て、街の明かりの中を走っている情景のなかに、信号がチカチカ点滅している映像が浮かんだんです。それで「青」にフォーカスしようとなりました。もともと頭の中にあった言葉が、一周してまた戻ってきた感じというか。「青」にはいろんな意味を持たせることができますし。
ALYSA:最初に《瞬く青が急かす》という歌詞を見たとき、「うわっ、chiharuがやってくれた」って感じました(笑)。最初はシンプルに「青春」を表現していると思ったんですけど、実はダブルミーニングで、信号にもかかっている。こういう言葉のセンスにchiharuの才能を感じます。
――歌詞のなかで、書いていて一番苦労した、あるいは一番大事にしているフレーズはどこですか? たとえば《飲み込んで消えた声が/未来を殺して進んで》というラインは、これまでのEttoneの楽曲と比べてもより踏み込んだ表現だと感じました。
Rol3ert:そこは僕が考えた部分ですね。ただ、ふたりにアイデアをもらってから、その意味をずっと話し合っていたので、一つひとつの言い方やワードを入れ替えた感じです。僕ひとりで作ったというよりは、アシストした感覚に近いですね。
歌詞って聴き流されるのが一番よくないと思っていて。フックとまではいかなくても、意味でも言い回しでも、何か引っかかる言葉があった方がいい。僕はそういうのが好きなので、すぐ入れてしまうんです。
chiharu:こだわった部分は全体的にたくさんあるんですけど、いま挙げてくださったラインは、私にとっても刺さる歌詞でした。踏み込もうかどうか、あと一歩のところで迷っていた部分が強い言葉で表現されていて。私にはまだ出てこない言葉だったので、すごくいいエッセンスをもらったと思っています。
技術と中身で勝負する、「アイドルではない」Ettoneの本質
――9月には韓国の音楽番組に出演されるそうですね。“STAY”はそういった韓国でのプロモーションも見越した上で制作された楽曲なのでしょうか?
ALYSA:元々狙っていたわけではないんです。ただ、以前からEttoneの音楽は韓国や台湾のリスナーにも届いていて、アートワークも含めて反応がよかったんです。それでこの曲を韓国のイベンターさんやディレクターさんに事前に送ってみたところ、思いのほか刺さったみたいで。その結果、今回は『Show! 音楽中心』『SHOW CHAMPION』など韓国の主要音楽番組に出演させてもらうことになりました。正直、ありえないほど貴重なプロモーションの機会だと思うので、こちらとしてもびっくりしています。
――韓国ではEttoneのどんな部分をアピールする予定ですか?
ALYSA:Ettoneはアイドルではないので、いつもの彼女たちらしく、歌や音楽が一番に届くよう、バンドを背負うスタイルでやらせていただきます。そのなかでどういった見せ方ができるのか、そこが勝負どころです。今はその準備をしているところですね。
実は昨日まで韓国にいて、実際にあちらの関係者さんとお話ししてきたのですが、Ettoneのスタイルにすごく興味を持っていただいているみたいで。あとは音楽以外にも彩度の低いアートワークなども含めて、ガールズグループやアイドルらしさが全くないところも刺さっているようです。
韓国の音楽ファンは、既存のガールグループの在り方に少し疲れている部分もあるみたいで。そういう状況もあって、Ettoneがやっていることを新しい形として受け止めてくれているのかなと。それをこのタイミングで知れたのはありがたかったですし、彼女たちのこの形がひとつの正解なんだと確認できたのもよかったです。あとは現地で彼女たちなりのベストを尽くせたらと思っています。
――実際にパフォーマンスするchiharuさんとpiaさんは、韓国のファンの方にどんなところを見ていただきたいですか?
chiharu:やっぱり韓国語で歌うところですね。“STAY”の韓国語バージョンも作ったので、この曲の雰囲気や想いをしっかり込めて、パフォーマンスを通して届けることができたら嬉しいです。
pia:“STAY”で表現した、「本当にやりたいこと」と「今やるべきこと」の間で揺れる気持ちは、きっと誰もが経験することだと思うんです。だから、言語が変わっても伝えたいメッセージは変わらない。気持ちはそのまま、ストレートに伝えられたらいいなと思っています。
――最後に今作を聴いてくれる方にメッセージをお願いします。
Rol3ert:プロデュースする側が一番考えるのは、そのアーティストの魅力をどうやったら最大限引き出せるか、だと思うんです。今回はEttoneがアイドルではなく「クリエイティブガールグループ」であることと、楽曲のコンセプトを事前に聞いていたこともあって、出てきたアイデアをそのまま使いながら、あえてJ-POPかどうかという定義は考えずに作りました。
何を考えていたかは、曲を聴けばわかると思います。ボーカルの重なり具合やメロディ、歌詞を通じて、Ettoneが技術と中身で勝負しているということが伝わってほしいですね。
chiharu:この曲を通じて、自分の等身大の姿を表現できたと思っています。そして、そういう曲を作れたことは今後の作品作りへの自信もつきましたし、この曲のアンサーになる曲も書けるんじゃないかなって思っています。次の曲の構想もあるので、このストーリーがつながっていくように、私たち自身のストーリーも進めていきたいです。
pia:“STAY”は、Ettoneのこれまでの曲と比べても全く違うサウンド感ですし、アップビートでノりやすい曲です。だから悩みがあったとしても、悩みながらノってほしい。とにかく前へ進んでもらえると嬉しいです。
ALYSA:今、Ettoneはデビューして1年が経とうとしているところですが、この間にいろんなアーティストの方からの賛同の熱量がどんどん高くなってきているなと肌で感じています。それはRol3ertさんも含め、これまで一緒にやってきてくださった方々がいてこそなんですけど。「Ettoneと一緒にやりたい」と言ってくれる人がこの後もたくさん控えている。それが本当にありがたいんです。
彼女たちがこの1年足らずで何を作ってきたか、今の段階での集大成が“STAY”なので、これを聴いてもらえばEttoneの現在地がわかると思います。歌詞にもあるんですけど、この曲は「未完成」をポジティブに捉える曲なので、同時に「まだまだ伸びしろたっぷり」と感じさせるのが彼女たちのすごいところだと思っています。なので、ここから先の成長も楽しみにしていただけたら嬉しいですね。
【リリース情報】

Ettone『STAY』
Release Date:2026.08.19 (Wed.)
Label:O21
Tracklist:
1. STAY














