aespaやLE SSERAFIM、NiziUなど国内外のトップアーティストのヒット曲を手がけてきたプロデューサー・ALYSAが、2025年に設立したクリエイティブレーベル〈O21〉。その〈O21〉から生まれた7人組クリエイティブガールグループ・Ettoneが、4月22日(水)に3rdデジタルシングル“トワイライト”をリリースした。
本作は午後5時に街に流れる防災チャイムをモチーフに、子どもから大人へと移り変わる中での心境の変化を描いた楽曲だ。変わってしまった自分と、変わらずに残っている気持ちが同じ時間に存在する「境界」を、繊細な情景描写と有機的なサウンドで切り取り、Ettoneが掲げる「LOOSE POPS」の世界観をより深く体現した1曲となっている。
本稿では、楽曲制作に関わったEttoneメンバーのanriとshion、ヒューマンビートボックスの世界大会『Grand Beatbox Battle』優勝歴を持つヒューマンビートシンガーのYAMORI、そしてALYSAの4名に制作プロセスや楽曲に込めた思い、Ettoneの今後の展望について話を訊いた。
Interview & Text by Jun Fukunaga
Photo by Shimizu Elio

7人バラバラの個性が合わさることで生まれる世界観──クリエイティブガールグループ・Ettoneの魅力
――まずEttoneとはどういうグループか、自己紹介がてら教えてもらえますか?
anri:Ettoneは、ALYSAさんが立ち上げたクリエイティブレーベル〈O21〉から生まれた最初のアーティストで、「クリエイティブガールグループ」です。さまざまなクリエイティブに自分たちから参加していくのが特徴で、日本にアイデンティティを持ちつつ、音楽の構成要素にも日本の合唱曲を取り入れるなど、日本的なアトモスフィアを体現できるグループでもあるのかなと思っています。
shion:7人それぞれ個性がバラバラで、好きなものも目指しているアーティスト像も違うんですけど、その異なる個性が合わさることで生まれる世界観のハーモニーが、すごくEttoneらしい魅力が表れている部分だと思っています。
――Ettoneの生みの親であるALYSAさんは、K-POPの第一線で数々のヒット曲を手がけてきた実績を持っていますが、みなさんから見たALYSAさんはどんな存在ですか?
anri:出会いは15歳の頃なので、すでに長いお付き合いなんですけど、いつ何時もアツくて、何事にも本気なところが大好きです。努力を無駄にしたくない、負けたくないっていうパッションもある方なので、どこまでもついていきたい! って思うような、偉大な方です。
shion:Ettoneに対するこだわりが、いい意味でめちゃくちゃ強くて。それがすごく嬉しいですし、いつも「こんなに想ってくれているんだ」って感じます。それをもっと倍にして返せるように頑張りたいって思わせてくれるような存在です。
anri:そもそも私たちを見出してくれた恩もありますし、私たちの持つものを人生単位で活かそうとしてくれているのを本気で感じるんです。自分たちの人生を変えてくれた恩人であり、これからも指針となる「かっこいい大人」っていう存在ですね。
――では、今回共作されたYAMORIさんと初めて出会ったときの印象を教えてください。
anri:プロフェッショナルだなって感じました。職人っぽいというか、作っていない感じ。服装も素というか、オーガニックだなって。アーティストの方ってちょっと近寄りがたい……みたいな方が多いのかなって思ってたんです。でも、YAMORIさんはそれがないというか、最初からラフな感じでいらっしゃったのがすごく印象的でした。
shion:いい意味でオーラを感じさせないというか。でも、その場で世界一のビートボックスを披露してくれたので、「いやいやいや、本物やん!」って思いました(笑)。
――今回YAMORIさんが“トワイライト”に参加されることになった経緯を教えていただけますか?
ALYSA:YAMORIさんのビートボックスって、輪郭をものすごく硬く表現されているというよりは、自分の世界観の中に深く落とし込んで、それを咀嚼した上で鳴らされているなっていう感覚があって、そこに魅力を感じていました。それと「ヒューマンビートシンガー」という肩書きも含めて、以前からずっと気になる存在だったんです。それで今回の制作に参加していただくために、最初にInstagramでものすごく長いDMを送ったんです。
でも、DMって相互フォローしていない人には1通しか送れないんですよ。それにあまりにも長すぎると途中で内容が切れてしまうんです。だから、メンバーの情報も新曲のリンクも、一番大事なところが全部切れたまま、私のアツい思いだけが先に届いたっていう(笑)。でも一言「やります」っていう返事がきたときは嬉しかったです。……ただ「リンク切れているのでもう一度送ってください」っていうDMもあとからきましたけど(笑)。
YAMORI:(笑)。でも、本当に熱量がすごかったので、それだけでOKというか。「もうこれはやるしかないっしょ」って感じでしたね。
――YAMORIさんは最初、Ettoneに対してどのような印象を持ちましたか?
YAMORI:K-POPやアイドルが再燃している中で、独自路線を進んでいるというか。例えば、最初にデモを3曲聴かせてもらったんですけど、そのときにどこか懐かしい雰囲気を感じました。ALYSAさんのDMにも「自分たちの作りたいものを作る」って書かれていたのですが、それが曲から滲み出ていた。自分たちにしかできないことで勝負しようとしているんだなって感じが伝わってきたんです。なので、単純におもしろそうなプロジェクトだなって思いましたね。
「言葉の持つ色」にまで思考を巡らせたアドバイス
――YAMORIさんとの共作はどのように進んでいったのですか?
anri:もともと私たちが作ったメロディの原型みたいなものがあって、それをALYSAさんに送ったんです。そこからALYSAさんとYAMORIさんに作っていただいたインスト音源をもらって、テーマを考える段階からshionとふたりで作詞・作曲していきました。
shion:まずは画用紙にいろんな写真を貼り付けたり、メッセージを書いたり、クレヨンで色塗りしたりして、曲の世界観を体現するムードボードを作りました。それを元にALYSAさん、YAMORIさんを含めた4人でディスカッションして、精査していって。
――そのディスカッションはどんな風に発展していったんですか?
YAMORI:歌詞に関して言うと、最初にもらった長いメッセージに対して、まずはひたすら深堀りしていく時間を設けました。最初は「小さい頃の記憶を思い出してほしい」って書かれていたんですけど、ただ「思い出してほしい」だけだとスケールが小さくなるかもしれない。本当に届けたい気持ちがこのままだと届かないかもしれないと思ったので、「実際、どう思っているの?」って聞いたりして。
anri:そこでYAMORIさんに私たちが伝えたいことを引き出していただいた感覚がありました。たとえば「カラフルな視界を思い出そう」みたいなメッセージを書いていたんですけど、なぜそう思ったかというと、逆に今の私の視界がカラフルじゃなかったからなんですよね。
同年代の友だちが就活をしているのを見て、社会に自分を合わせていくような感覚が身近になってきた。そんなときにふと夕焼けを見て、懐かしさを覚えたというか、子どもの頃ってもっと色鮮やかでワクワクした世界を見ていたなって思ったんです。その感覚が蘇ってきたからこそ、Ettoneに入ってからも大学に入ってからも、そういう幸福な経験があったことを改めて思い出しました。それを伝えたいという気持ちが、YAMORIさんとの会話の中で浮かび上がってきたんです。
――YAMORIさんは歌詞をブラッシュアップするときに、どういう形でアイデアを出していったんですか?
YAMORI:やり方としてはLINEを使って進めました。歌詞をフルコーラス分もらって、気になるところを赤ペン先生みたいにチェックして。それを結構な長文で投げたりして。
――YAMORIさんのアドバイスの中で、特に刺さったものがあれば教えてください。
anri:歌詞に「AI」というモチーフを入れたんですけど、YAMORIさんが「これを入れる意味って何だろう?」って書いてくださって。しかもAIという言葉が持つ「色」、テクノロジーとか機械的なイメージが、果たしてこの楽曲の世界観に合うのかっていうところまで指摘してくれました。ロジカルな意味だけでなく、言葉の持つ色にまで思考を巡らせたアドバイスをいただけたことが、すごく嬉しかったです。
shion:私の提出する歌詞は抽象的になりがちだったので、その曲の人物像を具体的に決めてくれたり、ストーリーを指定してくれたのがすごくわかりやすくて、ありがたかったです。そのおかげで歌詞を書きやすくなりました。
――曲の中で「ここは絶対に聴いてほしい」という歌詞の一節があれば教えてください。
shion:やっぱりブリッジですね。《風をつらぬく笑い声が 色あせてた景色を カラフルにした》が一番気持ちが入るパートだし、メロディも歌詞も私たちで作ったのですごく思い入れがあります。壮大な感じをイメージして書いたので、めちゃくちゃメッセージ性が強い一節だと思います。
anri:私は《大したこと書けないガクチカ》っていうフレーズ。実は「ガクチカ(学生時代に力を入れたことの略。就職活動での定番質問)」というワードはYAMORIさんが出してくださったんですけど、今の若者にとっては本当に頭にこびりついているワードだと思うんです。それを私たちが歌うことにすごく意味があると思っていて。リアルに毎日ガクチカを考えなきゃいけない人たちと同年代の私たちが、今だから言える鬱憤というか。3年後に歌ったらまた違う意味になってくるかもしれないけど、この鮮度とリアルな感情が伝わればいいなと思っています。
――YAMORIさんはいかがですか? 完成した歌詞を見て、特にお気に入りの箇所はありますか?
YAMORI:2箇所あるんですけど、ひとつが《あの頃の靴はマジックテープ いまdress shoes固く結んで 絡まった未来》っていうところと、《小さくて近い幸せ 君とシールみたいに交換して》の2節ですね。僕的には、このふたつは突き詰めていくとほぼ同じことを言っていると思っていて。ふたりとの会話から見えた根底の思想を、情景だけで鮮やかに表現できたんじゃないかなと。具体的な描写なんだけど、確かに何かが伝わってくる。そのバランスがすごく気に入っています。
「感覚型とロジカル型」──shionとanriのコンビネーション
――メロディはanriさんとshionさんのおふたりで考えたということでしたが、こだわった部分はどこですか?
shion:それもブリッジですね。サウンドがめちゃくちゃエモかったので、anriとメロディをどうエモくするかめちゃくちゃ話し合いました。
anri:ブリッジは音がすごく広がる構成だったので、それならメロディもここで突き抜けたいなと思いました。《風をつらぬく笑い声が》というフレーズを入れたんですけど、実際に上手くハマった感覚があります。特に音が広がるところで《つらぬく》と歌うのが気持ちよかったです。
――メロディを作ったときのプロセスについても教えてもらえますか?
shion:anriが考えてくれるメロディに日本的なエッセンスを感じたんですよ。それが“トワイライト”にすごく合っていました。私が出したメロディに対して、「こうしてみるのはどう?」って提案もしてくれたり、共作する上ですごく助けられました。
anri:私は日本人というアイデンティティを大事にするタイプなんですけど、それだけだとやっぱり古風過ぎたり民族音楽っぽくなり過ぎるというか。あと言語優位なので、漢字の多い具体的な歌詞を作る癖があるんです。でも、そこにshionの現代的な価値観と、抽象的に物事を捉えられる感覚の広さが加わったことで、ふたりの感性をちょうどいい塩梅でミックスできたんじゃないかなと。shionの感覚から出てきたものを「それいいじゃん!」ってすくい取ってピアノで形にする。感覚型とロジカル型のコンビネーションでしたね。
――“トワイライト”では5時の防災チャイムが印象的なモチーフとして使われていますが、どなたから出てきたアイデアなんですか?
ALYSA:これは私がもともとトラックに入れていた音なんです。私がよく参加する楽曲提供のコンペでは、最初に聴いたときに耳に残るものがないとなかなか勝てないんです。なので、今回は構想の段階からYAMORIさんにビートボックスの音を加えていただくことを考えていたのですが、それ以外にもうひとつシグネチャーになる音をずっと探していたんです。
――そこでチャイムに辿り着いたと。
ALYSA:私が住んでいる地域では(童謡の)“夕焼け小焼け”が5時に流れるんです。調べたら、防災チャイムって毎日流さなきゃいけないものらしくて。ということは、その地域に住んでいたら必ずこの音を聴いて育つということなんですよね。それをベースに、YAMORIさんのビートボックスを入れる想定でトラックを作っていきました。anriとshionが持ってきたアイデアも子ども時代のキラキラしたものだったので、方向性はズレてないなと思いつつ、私は対比も出したかったんですよ。
――対比というのは?
ALYSA:子どものときに感じていた5時のチャイムの音と、今聴く5時のチャイムの音って全然違うなっていう感覚です。私がポロッとそれを口にしたら、YAMORIさんがそこを拾ってくれたというか。「なぜ今はワクワクしないのか」って深掘りしてくれました。そこで全部が上手く結びついたっていう感覚があります。

YAMORI:もともとメッセージを込める意図で入れた音ではなく、音楽的なフックとして入れた音だった。それを彼女たちに投げて、返ってきたものをまたこちらで練り直すっていうプロセスがありました。
――トラックについてもう少し詳しく聞かせてください。“トワイライト”はローファイな音像のパートがあったり、ラップや童謡的なブレイクと、さまざまな音楽的要素が織り交ぜられています。こうしたサウンドの方向性はどのように決まっていったのですか?
ALYSA:YAMORIさんのビートボックスを真ん中に置くなら、オーガニックサウンドであるべきだと思いました。Ettoneは元々ハーモニー含め全てを生歌で歌うというスタイルなので、今回もピッチがズレて私に怒られたり、メンバーには大変な思いをしながら頑張ってもらいました(笑)。
ただ、そのオーガニックさがないと、AIが普及するこの先の時代では勝てないと思うんです。だから、デモの段階で入れていたシンセサイザーも結構抜いたり、ピアノや生楽器も録り直したりしながら、特にこの曲は声とビートボックスが真ん中にくるように試行錯誤しましたね。
――YAMORIさんのビートボックスは、どの段階でどういう形で入れていったのですか?
YAMORI:最初にスタジオに一緒に入ったとき、ビートのグルーヴ感は大枠で作ってくれていたので、そこに僕のビートボックスをハメていきました。意識したのは、ビートボックスにしかない揺らぎですね。息の音だったり、人間だからこそ出る波というか。リズムの点だけじゃなくて、点と点をつなぐ波みたいなものをちゃんと入れていかないとなって、トラックを聴きながら考えました。
――ALYSAさんがオーガニックさを出すためにビートボックスを選んだということは、ご存じだったのですか?
YAMORI:実は知らなくて。今、初めて聞いてびっくりしました(笑)。でも、オーガニックさということでいうと、ビートボックスは、この曲でも使っている「シュッ」っていう音ひとつでドラムにはないものが出せるんです。だから、単純なスネアにもそういう要素を入れることを意識しました。
心に窮屈さを抱えている人に聴いてもらいたい
――“トワイライト”はどのような場面で、どんな人に聴いてほしいですか?
anri:もちろんベストは5時のチャイムが鳴る時間です(笑)。ただ、どんな人に聴いてほしいかというと、やっぱりいろんなことを頑張っている同世代の人たちですね。例えば、面接で本当の自分を抑えて話したり、学校や仕事などでどこか窮屈さを感じたときでも、ふと見上げた空がすごく綺麗な夕焼けだったりすると楽しかった子どもの頃が蘇ってくる。そういう瞬間にこそ、大きな幸せが眠っているのかもしれない。この曲にはそういうメッセージが込められています。なので、聴いた人がふとした瞬間に幸せを感じる。そんな曲になれば嬉しいですね。
shion:この曲を聴くことで、学生時代や幼少期のキラキラした思い出をノスタルジックな感覚として蘇らせてほしいです。anriが言ったように、ちょっと心に窮屈さを抱えている人に聴いてもらいたいです。
――最後に、今後の展望をそれぞれ聞かせてください。
anri:嘘をつかずにありのままでぶつかるマインドでいたいです。常にアンテナを張り続けるけど、流行に迎合し過ぎず、かといって無視もしない。学び続けてクリエーションして、そのいい循環を回し続けることが私たちにとっての幸せです。これからもそれを追求できたらなと思っています。
shion:今回YAMORIさんと一緒に曲を書かせていただいて、すごく吸収できた部分があるし、いっぱい学べました。これからもいろいろな人とコミュニケーションを取りながら、もっともっといいクリエイティブを作れるようになっていきたいです。
ALYSA:プロデューサーの立場でいうと、メンバーの想いがオーディエンスの方に届くまで、自分が最後まで手綱を離さず責任をもって楽曲が生み出す世界観の全てをプロデュースしていかなければと、強く思います。そこが今後の展望というか、ずっと大事にしていきたい部分ですね。
YAMORI:Ettoneのキャラクターや彼女たちが掲げている「LOOSE POPS」が持っている性質がどんどんわかってきたことで、それを表現する意味がすごくあるなと感じました。実直にやっていくだけで新しい波を起こせるポテンシャルを持っているチームだと思うので、めちゃくちゃ応援しています。また一緒にやりたいです。
【リリース情報】

Ettone 『トワイライト』
Release Date:2026.04.22 (Wed.)
Label:O21
Tracklist:
1. トワイライト
















