独仏国境の街、ザールブリュッケン。かの地の〈Humpty Records〉のスタッフとして、Cinthieはダンス・ミュージックの世界に足を踏み入れた。界隈では有名なヴァイナル・レコード・ショップで彼女が働いていたのは高校生の頃だ。シカゴ・ハウスやニューディスコ、UKガレージにアシッド・ハウス、レイヴ・ミュージックを聴いて育ったという。
現在はベルリンを拠点にDJ/プロデューサーとして世界中を飛び回る活躍をしているが、このたび彼女の原点回帰かつ集大成的なデビュー・アルバム『Skylines – City Lights』がリリースされた。先に示した彼女のルーツが文字通りすべて詰まった、万華鏡のような1枚である。
全12曲のうち、シングルカットされたのが「Concentrate」、「Bassline」、「Calling」の3曲。いずれもフロア・ライクなハウス・チューンだが、アルバムはさらにバラエティに富んだ内容だ。
〈We_R House〉や〈Beste Modus〉、〈803 Crystal Grooves〉など、彼女は自身でもいくつかレーベルを所有(あるいは共有)しているが、これまでの重要な局面にはDJ Kicksシリーズのキュレーター・Will Saulが主宰する〈Aus Music〉がある。本作『Skylines – City Lights』も、同レーベルからリリースされた。音楽的な多様性と、作品としてのクオリティの両立は、Ausの功績でもありそうだ。
テクノ界隈ではルーツに立ち返るムーブメントが起こっているが、ハウスでもその萌芽が見られる。特にウェアハウス・カルチャーの文脈で顕著だ。この流れをのちに振り返った時、本作はそのメルクマールのひとつとして語られる気がする。……もう1回頭から聴こう。
【リリース情報】
Cinthie 『Skylines – City Lights』
Release Date:2020.07.17 (Fri.)
Label:AUS MUSIC
Tracklist:
1. Skylines
2. Houze Muzik
3. Concentrate
4. 2k Garage
5. Horizon
6. No One Can Take You from Me
7. Bassline
8. Flashback
9. Calling
10. Morning in Melbourne
11. 803 the Meme Queen
■Cinthie:Instagram / SoundCloud