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Best Tracks of 2014 / Kohei Ueno


爆音再生推奨! グランジ〜オルタナ熱を再燃させた血湧き肉躍る5曲

2014.12.25

〈コーチェラ〉に行っても、〈フジロック〉に行っても、〈サマーソニック〉に行っても、「ロックは死んだ!」と叫びたくなるぐらいEDMイヤーな2014年ではありましたが、UKサイケを筆頭に国内外のギター・バンドも気を吐いた1年だったと思います。

年始早々のクラウド・ナッシングス、NBA、アフガン・ウィッグスあたりの新作をきっかけにグランジ〜オルタナ熱が再燃したのも良い思い出ですが、各音楽メディアを席巻しているセイント・ヴィンセントとスワンズ(と、クラナシやエンジェル・オルセンなど)を手がけた辣腕ジョン・コングルトンが今年のMVPかしらん。そんな気分も反映した5曲をご紹介します。

【No.5】Nine Black Alps / Supermarket Clothes

今年リリースされた5thアルバム『キャンディー・フォー・ザ・クラウンズ』からのリード・トラック。サム・フォレスト本人もインタビューで認めてくれたように、まんまダイナソーJr.の「Feel The Pain」なギター・リフが吹っ切れてて最高です。ファッション業界でグランジがトレンドになったことに対してのアンチ・ソングだそうで、「Cosmopolitan」「Buy Nothing」に続く“不買アンセム”と位置付けたいところ。それにしても、彼らは過小評価され過ぎだと思う。


 【No.4】Swans / Oxygen

年々再評価が高まるスワンズですが、この曲を初めて聴いたのは2013年に代官山UNITで行われた一夜限りのライヴ。鼓膜を焼きつくすような爆音ノイズは悶絶ものでしたが、音源では管楽器もキチ●イみたいに暴れまくって、よりカオティックな音像になっています。年明けの再来日公演も楽しみすぐる。


【No.3】The Afghan Whigs / Matamoros

〈コーチェラ〉でのライヴは悲しいぐらいガラガラでしたが、16年ぶりのニュー・アルバム『Do To The Beast』(アイス・バケツ・チャレンジっぽいジャケも最高!)で本格復帰を遂げた彼らの激ソウルフルなキラー・チューン。黒人シンガー・ソングライターのヴァン・ハントが参加したことで、マグマのように煮えたぎるファンクネスが生まれているのもポイントで、NYのサブウェイを舞台にダンサーが踊りまくるMVがまた素晴らしいっすね。


【No.2】Shellac / Dude Incredible

アルビニ先生率いる不動のトリオによる、7年ぶりの新作『Dude Incredible』のオープニングにしてタイトル・トラック。アルバムは『CROSSBEAT YEARBOOK 2014』の個人リストでも1位に選出させていただきましたが、2:22からの不穏なコード・チェンジ、そして2:51からのギター、ベース、ドラムスが三位一体となって急加速するアンサンブルは何度聴いてもシビれ倒します。この御時世に一切のプロモーション活動(無論、MV制作も)を行わないマイペース&ブレないスタンスは断固支持。僕はシェラックのライヴを4回ほど見たことがあるのですが、ハードで無骨な音像からは想像できないぐらい笑えるパフォーマンスをやってくれるので、ぜひ海外まで見に行ってみてください。


【No.1】Courtney Barnett / History Eraser

1位だけ今年の曲じゃなくて恐縮です…。でもハッキリ断言させてもらいますが、彼女は紛れもなくグランジ〜オルタナの遺伝子を受け継いだ10年に1人の逸材です。カート・コバーンと同じ左利き、しかも名前が「コートニー」っていうのは偶然にしては出来過ぎですが、コナー・オバーストを想起させるアンニュイな表情で、ギターをかき鳴らしながら歌い叫ぶ姿は他のどんなロック・バンドのフロントマンよりもクール。今年の〈コーチェラ〉では最終日の昼間に出演していたので危うく見逃すところでしたが、音源の何倍もエモーショナルでノイジーになるライヴも素晴らしいんですわー。

ラッパーのように情報量の多い歌詞のみならず、自ら〈Milk! Records〉というレーベルを運営して地元=オーストラリアのミュージシャン達をフックアップするその姿勢は、ヒップホップと通じる心意気を感じさせますね。2015年にはいよいよ1stアルバムもリリースするでしょうから、ますますの飛躍に期待を込めての選出。来日公演の実現もお願いしたい!


せっかくSpincoasterに参加させてもらったのに、本業もライター業も多忙すぎてあんまり記事をUPできなかったのが反省点……。2015年はもっとハイペースで(美女系アーティストばかりじゃなく)、グッときた音楽を紹介していけたらと思っておりますです。

(Text by Kohei Ueno)


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