4月9日(木)、10日(金)の2日間にわたり、東京・渋谷発の国際音楽ショーケース & カンファレンス『CUEW Showcase & Conference』(以下、CUEW)の第2弾が、都市型音楽フェス『SYNCHRONICITY’26』(以下、SYNCHRONICITY)との連携のもと開催された。
今年の大きなトピックとなったのが、この両者の連動だ。前夜祭の共同開催に加え、SYNCHRONICITY本編にもCUEWのショーケースが組み込まれ、世界各国から11組のアーティストが出演。デリゲートパスを下げた世界中の音楽関係者が渋谷のライブハウスを回遊する様は、ここから何かが起こる予感を十分に感じさせるものだった。

独立行政法人国際交流基金(JF)との共催で運営されるCUEWは、「日本と世界の間に新しいきっかけを生み出す」ことを掲げ、2025年に始動。国内のショーケース文化の未発達や、海外とを繋ぐ仲介者の不足といった課題解決を背景に立ち上がった。
昨年8月の第1弾を経て、藤原さくらの『She Arts Festival』(エジプト)出演やsorayaの台湾・香港単独公演、今年6月のNIKO NIKO TAN TANとHUGENによる『RISING』(オーストラリア)招聘など、本イベントを起点とした海外展開がすでに継続的に生まれている。
Spincoasterでは両者の取り組みを紐解くべく、実際に参加・出演した4組へショートインタビューを実施。カンファレンスや1on1ミーティングに参加したHUGEN、soraya、新東京の3組と、SYNCHRONICITYの常連にして初期からグローバルに活動を展開してきたLITE。それぞれの視点から見えたリアルな声をお届けする。
Text by Jun Fukunaga
Interview by Takazumi Hosaka
「アーティストにとっては大きなチャンスを掴める場」(HUGEN)

――今年のCUEWに参加してみて、いかがでしたか?
HUGEN:今回、意識的に取り組んだのは韓国へのアプローチです。トークセッションでは、知人を介して『Asian Pop Festival』の方と接点ができて、「来年会えたらいいですね」という話まで進みました。また、『The Great Escape』(英・ブライトンで毎年開催の大型フェス)の方にも気に入っていただいて、連絡先を交換できたのは大きかったですね。
1on1ミーティングの準備で効果的だったのは、紙の資料ではなく、自分の活動とMVを盛り込んだスライドショーを用意したことです。そういう場は、結構ガヤガヤしているので、紙だとあまり見てもらえません。それと僕のように英語が話せない場合は、音源と映像で見てもらった方が伝わりやすいと思います。
――オーストラリアのフェス『RISING』への出演が決まりましたが、これはどのようにして決まったのでしょうか。
HUGEN:去年のCUEWに参加して、いろんな方とお話したり、ライブを観てもらったことがきっかけです。実はショーケースの前日に行われたレセプションパーティにも参加していて、その際に国際交流基金の方々に通訳をサポートしていただきながら、いろんな海外の音楽関係者としっかりコミュニケーションが取れました。それからしばらく経って、国際交流基金の方を通して『RISING』へのオファーのご連絡をいただきました。
あと、今年は日本とオーストラリアの友好協力条約が50周年を迎える年みたいで。そういった記念の動きもあって『RISING』が決まってから、それに合わせてJFシドニー事務所の方が交渉してくれて、同じくオーストラリアで行われる『Vivid Sydney』への出演も決まりました。
CUEW Reception Party(August 17th 2025)の様子
――今年のSYNCHRONICITYでのライブはいかがでしたか?
HUGEN:個人的に憧れのフェスのひとつだったので、今回初めて出演できて純粋に嬉しかったです。それに自分たちの曲を知って来てくれているお客さんが多くて、すごくホーム感がありました。最近HUGENのチーム内で「もっと音楽に向き合うようなライブをしよう」と話してから、ライブのクオリティが一段と上がった気がするし、今回初めてライブに来てくれた人にも楽しんでもらえたんじゃないかなと思います。
――今後のCUEW / SYNCHRONICITYに望むことは?
HUGEN:CUEWに関しては、2回目で本当に規模が大きくなっていますし、自分も実際に海外の参加者と繋がれたのが大きかったです。今後はここでの繋がりからアーティストの海外実績がこれからもっと増えていくと思います。ただ、漠然と参加するのではなく、明確な目的意識を持って参加した方が、せっかくの機会を活かせると思います。
SYNCHRONICITYに関しては、今後はアジアのアーティストが日本に来て、向こうのフェスにSYNCHRONICITYがアーティストを送り出すような相互の関係性が、もっと強くなっていくんじゃないかなと個人的に予想しています。今年はそこにCUEWも加わったし、これだけ海外のデリゲーツが来ること自体そもそもすごいことだと思います。アーティストにとっては大きなチャンスを掴める場だと思いますね。
「日本で普通に活動していたら絶対にない機会」(soraya)

――今年のCUEWに参加してみて、いかがでしたか?
soraya:今回はインドネシアやヨーロッパのフェス関係者の方を紹介していただき、世界中に新しい音楽を求めているフェスやショーケースの仕組みがあるということを知るきっかけになりました。それぞれのフェスが独自のコンセプトや心情を持って音楽を探していて、そういう方々と直接話したり意見を伺える機会は、日本で普通に活動していたら絶対にないと思います。
また、1on1ミーティングは、こちらが資料を出して説明すると「これはどういう編成なの?」と聞かれたり、思っていたよりもシンプルなプロセスで驚きました。フェス主催者やプロモーターがどういう情報を求めているのか、参加してみないとわからないことだったので、すごくいい機会になりました。
――sorayaは今年2月に台湾と香港にて初の海外公演を行いましたが、どのように実現したのでしょうか。
soraya:昨年のCUEWで出会った、中国・上海を拠点とするコンサートプロモーター「Memos To The Future」との繋がりから、海外単独公演に直接結びつきました。
台湾と香港で開催しましたが、日本語で歌っているのに、現地のお客さんとあれだけ通じ合えたのは、自分たちでも驚きでしたし、そういったことが起こせるんだという実感を得られたのは、すごく大きな収穫でした。ただ、現地に行くまでのプロセスが一番大変な印象があります。
――今年のSYNCHRONICITYでのライブはいかがでしたか?
soraya:スタンディングのライブに加えて、ロックフェスというものにもあまり自分たちが通ってこなかったこともあって、最初はどんな感じなんだろうという気持ちもありました。でも1曲目からすごくちゃんと聴いてくださっているのを感じて、集中して演奏できました。
――今後の展望は?
soraya:台湾と香港でライブをやってみて本当によかったので、今後もこういう機会は積極的に続けていきたいです。それとお互いソロでも活動していて、そこでやってきたものが、sorayaとしても交差して広げられたら、すごくいいなと思っています。また、今年は壷阪(Pf.)が新しいアルバムをリリースしますし、石川(Vo., Ba.)もちょうどレコーディングを終えた作品があって、ソロの動きが多くなりそうです。それぞれで活動を進めることが、お互いの刺激になるし、ヘルシーな形でもあると思っています。
直接話して「実際にライブを観てもらえる」貴重な経験(新東京)

――CUEWに参加してみて、いかがでしたか?
新東京:僕らの音楽は海外の方にもたくさん聴いていただいているので、こうやって直接海外フェスのオーガナイザーとお話しする機会をもらえたのは、すごく貴重な経験になりました。特に「明日のSYNCHRONICITYで、この会場でやります」と伝えて、実際にライブを観てもらえるというのは、アーティスト側からしてもすごくいい仕組みだなと思いました。言語の壁はありましたけど、拙い英語でなんとか乗り切りました。
1on1ミーティングで用意してよかったのは、左手の甲にNFCタグを付けてプロフィールをすぐに見せられるようにしたこと。あとはアナログですけど、紙のタイムテーブルを印刷して、自分たちが出演する部分を指差しでお伝えしたこと。みなさんライブも観に来てくれて、今後どういう形かはわかりませんが、一緒に仕事で関わる可能性が出てきたことをありがたく思います。
――これまでの海外公演はどうやって実現したのですか?
新東京:『FUJI ROCK FESTIVAL』の新人発掘ステージ『ROOKIE A GO-GO』でグランプリをいただいたことで、台湾の『ROCK IN TAICHUNG』への出場権を獲得できたんです。あとは台北の『Neon Oasis』というフェスと、韓国・釜山のフェス『US EARTH FESTIVAL ESG BUSAN』にも出演させてもらいましたが、その2つは直接オファーの連絡をいただきました。
インディペンデントで活動していると、海外公演の実現を目指すにしても何から始めればいいかわからないんですよね。でも、今回はCUEWに参加してこちらからアプローチをかけることができた。これはすごく新鮮な経験でしたね。
――SYNCHRONICITYでのライブはいかがでしたか?
新東京:SYNCHRONICITYは毎年日本各地からいいアーティストが集まっていて、すごく盛り上がっている印象があります。今回は新体制での初出演ということもあっていつも以上に気合を入れて臨みました。それと昨日もいろんなアーティストさんのライブを観て、どこか他のフェスとは違う熱量を感じました。みんな本当に音楽が好きなんだなというのが、歌っていても伝わってくるし、こちらも歌いたくなる、演奏したくなる。そんな特別な場所だなと思います。
――今後のCUEW / SYNCHRONICITYに望むことは?
新東京:日本と海外の音楽シーンの交流を、より活性化してくれたら嬉しいですね。僕らが海外に行くにしても、海外のバンドが日本に来るにしても、意外とライブをすること自体が知られていないということも結構あって。そういった部分も含めて、業界の中だけじゃなく多くの人に情報が届けられるようになったらいいですよね。
それと、今後は海外アーティストとコラボもしてみたいです。一緒にツアーをやれたら、どちらにとってもメリットが生まれると思いますし、いろんな繋がりができるんじゃないかなと。今回、SYNCHRONICITYでもいいアーティストをたくさん観たので、「カッコいい」と思った人たちにコンタクトを取ってみたいなと思っています。
「遠回りではあったけど、繋がるべき人たちと繋がれた」(LITE)

――SYNCHRONICITYには毎年のように出演されていますが、このフェスの特別な点はどこにあると思いますか?
LITE:もう7年ほど出演させてもらっていますが、いい意味ですごい偏ってると思います。日本独特のインディ、オルタナなアーティストが集結しているなと。
それにここ最近は海外のお客さんが増えてきているし、SYNCHRONICITYと台湾の『Vagabond Festival(浪人祭)』の協業も、すごくユニークな取り組みだなと思っています。他のフェスにはない可能性を感じますし、改めて個性的なフェスだなと思いますね。
――LITEは初期から海外公演を行ってきましたが、最初はどのようにしてきっかけを掴んだのでしょうか。
LITE:僕らもコネクションは何もないところからスタートしたんです。最初のきっかけは日本に来たアイルランド人がライブを観て気に入ってくれて、彼がDIYで「CDを作って(海外で)リリースしよう」と言ってくれたことでした。その彼がアイルランドでツアーを組んでくれて、知り合いも全くいない状態で行ったのですが、そこで共演したアーティストが「また一緒にやろう」って声かけてくれて、2回目、3回目と繋がっていきました。
直近で言うと、『The Great Escape』に出演した際に現地のイベンターと繋がって、その方が呼んでくれたケースもあります。
――これから海外進出に挑戦するアーティストへアドバイスを送るとしたら、どのような言葉を投げかけますか?
LITE:CUEWのような場で世界各国の音楽関係者と直接繋がることができれば、僕らが苦労してきたゼロからイチの繋がりを作る工程がとてもスムーズになりますよね。ただ、僕らは確かに遠回りではあったけど、繋がるべき人たちと繋がれたので、結果としてよかったとも思っているんです。
なので、本気で海外進出を目指すのであれば、少しずつでもいいので実際に海外に行って、自分の音楽を本当に好きでいてくれる人たちと繋がることが大事だと思います。最初は「失敗して当然」というところからやっていくしかない。とはいえ、いきなり海外に行くのは怖いと思うので、こういうイベントで繋がった人脈を使うのが、一番いい方法だと思います。あとは信頼できる相手かを見極めることも大切ですね。
――今後のCUEW / SYNCHRONICITYに望むことは?
LITE:CUEWに関しては、全世界の関係者たちが来ているのが素晴らしいと思います。アジアに偏らず、ワールドワイドに繋がれることには大きなメリットがあります。今後は、それが数百人規模にまで拡大してほしいですね。また、業界の人がたくさん参加しているという意味でも、CUEWと連動しているSYNCHRONICITYに出演する価値は大きくなりますよね。そういった点でも、他にはないフェスだなと思います。
SYNCHRONICITYとの連携で生まれた新たな価値
カンファレンスDAYでは、今年も世界各国の音楽業界人による国際的な動向や実践的な知見を共有するセッションなどが展開された。海外の著名ショーケースフェス当事者によるトークや、アジア・欧州・USの音楽ネットワークに関する議論、データからJ-POPのグローバルバイラルを読み解くものなど、海外進出の論点をめぐるプログラムが並んだ。そこで印象的だったのは、対面で顔を合わせる場の価値の大きさだ。オンラインの施策が重要なのは大前提のうえで、国内外を問わず複数の参加者が「地道なオフラインの交流が大事だ」と口にしていた。

また、今回最大の成果は、SYNCHRONICITYとの連携による構造的な利点だ。業界関係者のみのショーケースとは異なり、フェスのオーディエンスを前にした熱気あるパフォーマンスを海外デリゲーツに直接アピールできた意義は大きい。また、CUEW招聘アーティストを各ステージに分散させたことでデリゲーツの回遊を自然に促し、彼らの拠点となったNexTone提供のビジネスラウンジも国内外の交流の場として見事に機能していた。
始動から1年足らずで、業界・アーティスト・オーディエンスの三層が繋がる構図を確立したCUEW。今年渋谷で生まれた「新しいきっかけ」が、今後どのような成果として結実するのか、次なる展開への期待が高まる。

なお、CUEWは早くも初の海外ショーケースツアー『CUEW SHOWCASE SERIES』を、5月にイギリスにて開催した。ニューカッスル、ロンドンでの公演に加え、欧州最大級のショーケースフェス『The Great Escape』の公式プログラム枠『CUEW Asia Focus』『CUEW Japan Focus』を展開。日本からはshowmore、岩崎桃子、板歯目、luvis、ネクライトーキー、TAMIWの6組が出演している。

【イベント情報】

『CUEW Showcase & Conference』
日時:2026年4月9日(木)、10日(金)11:00〜21:00
会場:東京 DragonGate(渋谷パルコDGビル 18F カンファレンスホール)
主催:独立行政法人国際交流基金(JF)/ CUEW実行委員会
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『SYNCHRONICITY’26』
日程:2026年4月11日(土)、12日(日)
会場:Spotify O-EAST / Spotify O-WEST / Spotify O-nest / duo MUSIC EXCHANGE / clubasia / LOFT9 Shibuya / SHIBUYA CLUB QUATTRO / Veats Shibuya / WWW / WWW X / TOKIO TOKYO 他
主催:SYNCHRONICITY’26実行委員会











