Interview

Addison Groove

「俺ほど楽しんでDJをしている人って他にあまりいないと思うから、俺は凄いラッキーだと思うんだ。」 —Addison Groove インタヴュー

シカゴで産声を上げた音楽であるジューク/フットワークは、UKのクラブシーンから注目を浴び、2010年頃からは、〈Planet Mu〉や〈Honest Jon’s〉や〈Hyperdub〉といったロンドンに所在するレーベルから次々とコンピやシーンの重要人物の作品がリリースされた。所謂インターネットでの口コミもあったり、「あのレーベルがピックアップしているならヤバいのかも」というリスナーたちのレーベルへの信頼もあって、その高速でエネルギッシュな音楽の実態は瞬く間に世界中へと広がった。一旦ここ数年のジューク/フットワークの動向はさておいて、ブームの発端がどうしてUKだったのか、ということは、Addison Groove(アジソン・グルーヴ)の『Presents James Grieve』を聴けばわかる。併せて、彼がBoiler Roomで行ったライヴ音源ミックスを聴けばもっとわかる。

2010年にUKでのジューク/フットワーク・ブームを作った「Footcrab」でデビューして以来、Addison Grooveとして知名度を上げているAntony Williamsは、実は先にHeadhunterというダブステップ・アーティストとしてデビューしている。さらに遡ると、彼は若い頃からジャングルとドラムンベースに親しんできており、まさにUKベース・ミュージックの発展と共に成長してきた世代なのだ。彼が初めてジューク/フットワークに出会った時の衝撃には、どこかジャングルの懐かしさが伴っていたのかもしれない。いや懐かしさはなかったとしても、当時の彼がジューク/フットワークをダブステップに取り入れてみた結果、「Footcrab」を作り上げたというのはかなり勘が良かった。UKの人々にはベース・ミュージックの素養がちゃんとあるのだ。トラックの姿はもうダブステップではなくジューク/フットワークだったが、若干ダブステップが先祖返りしたような音楽でもあったことが、当時からすでにジャングルやドラムンベースとの接続を明確にしていた。それから4年後に彼が辿り着いたのがジューク/フットワーク〜ジャングル〜ドラムンベースをアルバムとしてひと繋ぎにした『Presents James Grieve』なわけだが、この作品はUKベース・ミュージックを体感的にも知っていて、またジャンルの話を振るとまずBPMから話し始めるベース・ミュージック・フリークな彼だからこそ成せる、実にストレートに表現された集大成だ。2012年のTraxmanと、2013年のRP BooとDJ Rashadのソロ・アルバムが世の脚光を浴びた後の余韻的なタイミングにリリースされたという部分も、『Presents James Grieve』が最近5年間の集大成であるという意味合いを強めているといえる。
ちなみにAddison Grooveとして2012年にリリースした1stアルバム『Transistor Rhythm』(パッケージには彼の愛機TR-808をモチーフにしたデザインが施されている)をいま聴いてみると、ジューク/フットワークのアプローチを手にしたまま、アフリカンにも、USのベース・ミュージックにも、テクノにも挑戦していて、どうも内容的には『Presents James Grieve』の先を走っているように思える。Addison Grooveはおそらくこれから再び『Transistor Rhythm』のような音楽へと移っていき、さらにベース・ミュージックを更新させていくだろう。しかし引き続きシカゴからも、日本のジューク/フットワーク・シーンからも更新は続いていく。

それにしてもAntony Williamsは愛すべき男だ。会った時にはすでにほろ酔い状態のエンジン全開という感じで、非常にノリがよく、終始笑顔を絶やさず、たまにぶっちゃけを挟みながら質問にひとつひとつ丁寧に答えてくれた。インタヴュー直後のDJでは一変して鋭い表情をしていたが、こちらもフルスロットルで、終始BPM160前後に設定された“あの人もこの人も”的なジューク/フットワーク・オールスター・ミックスでフロアを震動させていた。この日のライヴレコーディングは『Presents James Grieve』と同じぐらい必聴だ。

Addison Groove Interview

(Interviewer & Header Photo:Hiromi Matsubara, Interpreter:Yuriko Banno)

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©Yasuharu Sasaki / Red Bull Content Pool

—このあいだロンドンで「Addison Groove vs Headhunter」というあなたの2つの名義を混合させたセットでライヴをされていましたが、どういうプレイをしたんですか?

3ヶ月間アメリカに滞在していた時に、Headhunter名義で2回ぐらいライヴをやったんだけど、それをどこかで聞いたのか、YouTubeで見たのか、イギリスに帰った時に「クールだからロンドンでもやってくれ」って言われてやったんだ。でも、HeadhunterでのDJとAddison GrooveでのDJにはそこまで大きな差はなくてね。Addison GrooveとしてDJする時は、120BPMで始めて、160BPMで閉めるんだけど、その間にUKベース、ダブステップ、ゲットー・テック、ジューク、ジャングルって色々なスタイルの音楽を織り交ぜながらやるんだ。まぁ、いずれにせよAddison Grooveの時はダブステップをかけるね。
「Addison Groove vs Headhunter」の時は、最初の45分は古いダブステップに少し新しいダブステップを混ぜながらプレイして、そこからいま自分がやってるスタイルの音楽にどんどん変えていったんだ。でも、ダブステップのパートでも、ジュークのパートでも、オーディエンスは盛り上がってたよ。俺が思うに、セットの中にダブステップを1、2曲入れるだけでも、俺がダブステップのトラックを作っていたことを知っている知らないに関わらず、結構盛り上がるんだ。良いことだと思うよ。

—2006年に先にHeadhunterとしてデビューしていますが、あなたの中でAddison Grooveというキャラクターが生まれたのはいつ頃だったのですか?

Addison Grooveとしてデビューしたのは2010年だね。2009年に「Footcrab」を作った時に、リリースするのに相応しい名義がなかったから名義を作る必要があった。だから、名前より先に音楽スタイルができていたんだ。Addison Grooveという名前は2つのことからきていて、“Addison”っていうのは男性にも女性にも使う名前だから、男女別がないということを示している。“Groove”は、1992年にデビューしたDJ Easygrooveっていう俺の大好きなDJの名前からきている。意味の異なる2つの単語を合わせて名前をつけたんだ。確か「Footcrab」は、友達が「この曲いいよ」って言ってくれるまで自分でもあまり良さがわからなかったから、2009年にできてからリリースするまでの1年ぐらいは、ずっとHDDで温めてたんだ(笑)。

—Addison Grooveの音楽スタイルはどうやってできあがったのですか?

前から常に新しい音楽を探すようにしていて、今も続けてるんだけど、2008年か2009年ぐらいにYouTubeでフットワークを発見した時は、「ワオ! これは狂ってるな(insane)」と思ったんだよね。最初は、ダブステップのトラックを作る際のアイディアとしてフットワークのサウンドを取り入れたんだ。「Footcrab」を作った時は、まだダブステップのトラックを作っていた時期だったから、フットワークはひとつの方法だったんだ。

—もともと音楽を作り始めたきっかけは何だったんですか?

最初は10歳ぐらいの時にDJになりたいと思って、14歳ぐらいの時に初めてターンテーブルを買ったんだけど、DJになるにはどっちみちプロデューサーにならなきゃいけないということがわかって、それから独学で音楽の作り方を覚え始めたんだ。19歳ぐらいの時に音楽を作り始めたんだけど、そのころはまだ遊び程度で本格的にはやってなかった。でも、2004年か2005年ぐらいに初めてダブステップに出会った時から真剣に作り始めたんだ。当時はドラムンベースが好きで聴いてたんだけど、ドラムンベースってプロダクションの形が決まっているから、当時はもうすでに大体のことがやり尽くされていて新しいことを見出せなくなっていて、ドラムンベースのプロデューサーになるのは難しかったんだ。だけど、ダブステップに出会った時は新鮮で、まだまだ色々なことができる可能性を感じたから、ダブステップのプロデューサーにはなれるんじゃないかなと思ったんだ。たぶん自分と同じようなことを思った人はたくさんいただろうね。

—これは以前Kode9にも聞いた質問なんですけど、ジャングルとジューク/フットワークはそれぞれ生まれた地が異なる音楽ですが、MachinedrumなどのDJミックスを聴いているとこの2つはかなり親和性が高いように感じられます。あなたはジャングルとジューク/フットワークの親和性についてどう思いますか?

ここ3、4年の俺のDJセットを聴いてくれればわかると思うけど、長時間ずっとジャングルとジュークを中心にしながら時々他のものを混ぜて作ってるんだ。だから、俺も2つはかなり似ていると思うよ。俺ほど楽しんでDJをしている人って他にあまりいないと思うから、俺は凄いラッキーだと思うんだ。1993年とか1994年ぐらいのオールドスクール・ジャングルって160BPMぐらいで作られているから、時々少し速いなと感じるんだけど、ジュークと一緒にプレイしても全然共存できるし、自分が一番最初に好きになった音楽のジャングルを、いまこうしてクラブでプレイできるのは楽しくてたまらないよ。

—今年リリースされた『Presents James Grieve』もジューク/フットワークとジャングルが混ざった作品になっていましたよね。“James Grieve”を検索したら、リンゴの話や画像がたくさん出てきたのですが、あのアルバムは何を“Presents”しているのですか?

……リンゴだよ(笑)。っていうのは冗談なんだけど(笑)、あのアルバムが何を“Presents”しているかはさておき、なぜこのタイトルにしたかというと、自宅の庭にリンゴの木があるからなんだ。去年あのアルバムを作り始める時に木を植えて育て始めて、アルバムを作り終えた時にふと外を見たらリンゴが1つなっていて、そのリンゴの種類がJames Grieveっていう品種だったんだよね。スタジオは自宅の最上階にあって、窓からそのリンゴの木を見下ろすことができるんだ。それで、アルバムを作るプロセスと、木が生長していく姿が繋がるなと思ったんだよ。
あと、Modeselektorも関係しているね。彼らが俺の家に来た時に、そのリンゴの木を見て、写真を撮って、「これをタイトルにしたら良いんじゃない?」って言ったんだ。

—あのアートワークの写真はModeselektorが撮ったものですか?

いや、あれは俺が撮った写真だよ。でも、彼らが携帯で撮った写真を見せてくれた時に「いいな」って思って、改めて自分のカメラで彼らのより良い写真を撮ったんだ(笑)。
(カバンからカメラを取り出して)これを使ったんだ(笑)。パナソニックのカメラだよ、はははは(爆笑)。

—では、音楽の面では何を“Presents”したのですか?

うーん、わからないな(笑)。良い質問だね。俺は、アルバムを作るというよりも、音楽を作っているつもりでいるんだよね。でも、5、6曲できた段階でEPとしてリリースするよりも、もう少しコンセプチュアルな作品にする方が良いと思ったんだ。それで、今回はヴォーカリストを取り入れたんだよ。ヴォーカリストを入れるのは始めてだったんだけど、俺はアルバムをリリースする時はいつもギャンブルをしよう、今までやったことのないことをしよう、と思うんだ。何か新しいこと、何か変なことをしてみて、うまくったりいかなかったりするんだけど、結果的なことよりもまずアーティストとしての自分を追い込んで、挑戦をしてみるのが大事なことだと思ってる。

—では少し話題を変えます。コラボレーターの中でも、あなたにとって特に刺激的な存在だったのはDJ Rashadだと思います。コラボレーションした際の彼とのエピソードがあったら聞かせてください。

2年前にRashadが俺の家に泊まって、それからはUKツアーをする時は俺の家に泊まるようになったんだ。1週間ぐらい泊まっている間は、一緒に音楽を作ったり、映画を観たりしたよ。それで、彼と2つトラックを作って、1つはHyperdubからリリースされた彼のアルバム(『Double Cup』)に収録されて、もう1つは未完成だったんだけど良いトラックだったから温めてたんだ。EPをリリースする話になった時にキュレーターのModeselektorが、DJ Rashadが亡くなってしまってすぐのタイミングだから追悼の意を込めてEPに入れたら良いんじゃないかって言ってくれたんだ。「いいね」と返事はしたんだけど、やっぱり迷いがあったから、彼の友人のDJ SpinnやDJ Earlに「DJ Rashadと作った曲をEPに入れても良いかな?」って聞いてみたら、「もちろん、何も問題ないよ」って言ってくれたから、トラックを何もすることが無い状態に完成させて、最新のEPに入れたんだ。

—そのEP『Turn Up The Silence』のアートワークに使われている、スニーカーの写真を見た時はかなり込み上げてくるものがありました。というのは、ジューク/フットワークはスニーカーが磨り減るような激しいダンスと非常に関係が深い音楽で、特にコラボレーションをしたDJ Rashadはそのジューク/フットワークのパイオニアだからです。

ははは、確かにそうだね(笑)。

—あのアートワークも彼に関係したものなんですか?

いや、あれもModeselektorのアイディアだね。これは彼らと仕事がしやすい理由の1つでもあるんだけど、彼らは俺の音楽も、俺自身も理解してくれて、それでもってアイディアを出してくれるんだ。彼らがあの写真を見せてくれた時は素直にアートワークに使いたいと思ったし、何も言うことが無くてパーフェクトだったんだ。彼らの提案するアイディアが素晴らしいからからこそ、俺だけじゃなく、色んな人が彼らと仕事をできるんだと思うよ。彼らは自分たちで作ってない音楽に関しては凄い良いことを言うと思うんだよね(笑)。レーベルには俺以外フットワークを作ってる人がいないし、彼らも「おおすっげぇクレイジーでカッコイイな! こんな音楽作ったこと無いよ!」って俺のフットワーク・トラックからアイディアを得ているかもしれないね。今まで〈Tempa〉とか〈Swamp 81〉とか色んなレーベルと仕事をしたけど、〈50 weapons〉は最高のレーベルだと思うよ。

—では最後にTR-808の魅力についてぜひ語ってください。TR-808を作っているRolandは日本の会社です。

初期の頃のAddison GrooveのトラックにはTR-808そのものは使ってなくて、サンプリングしたものを使ってたんだ。それで、何人かからAddison Grooveのライヴセットを披露してほしいと言われるようになってから、ライヴセットではちゃんと実物のTR-808を使おうと思って入手したんだ。周りに同じようなことをしている人がいなくて新しかったしね。
やっぱり実際に使ってみると、サンプリングで使っていたものよりも信じられないぐらい音が遥かに良くて、クラブでサウンドチェックをした時はTR-808の音がいかに素晴らしいかを痛感したね。ドラムマシーンの方がマスタリングされたアナログレコードよりも全然良い音が鳴ってたんだ。なぜかっていうと、本当に純粋にアナログの音だから。今まで自分が使ってきたどの機材よりも優れた音だと思うね。実際、クラブでドラムマシーン単体を10分間鳴らしているだけでもオーディエンスを踊らせることは十分できると思うし、他にボタンなんて特に押す必要がなくて、ヴォリュームフェードをいじるだけで十分だよ。
あと、TR-808っていうマシン自体が独特のリズムを持っていると思うんだよね。以前、DJセットをした時にターンテーブルでレコードをかけて、それをドラムマシーンでミックスしようと思ったら、全然上手くいかなかくて。ループをさせた時に、完璧にループするんじゃなくて、マシン自体の独特の回転リズムでループするんだ。そんなマシンは見たことがなかったし、独特のスウィングをサウンドに加わえられるから、魅力的だよ。


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Addison Groove ライヴレコーディング@EMAF DAY1


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