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SPIN.DISCOVERY Vol.12 出演アーティスト / 2. Tajyusaim Boyz


リアルな懐事情も電話番号も、明るくエンタメに昇華。注目度急上昇中のヒップホップ・ユニット=Tajyusaim Boyz!

2019.09.17

「あれもリボで買う これもリボで買う 俺がリボで買う これはいつ終わる」「リボ リボ リボ リボ リボ リボ リボ リボ」

これは、昨年リリースされたTajyusaim Boyzのデビュー・シングル「リボで買う。」のフックである。リアルな懐事情が綴られたリリックでは、朝食のコンビニ飯も、タバコも、好きな女の子にあげたGUCCIも、ラブホテルも、借金の返済も、全部リボ払い。現金は持っておらず、クレジットカードが使える店でないとお金が払えない。挙げ句の果てには「俺が返せる規模じゃねぇんだよ!」と、韻を踏みながらの痛快な逆ギレを展開している。

そんな切実な実体験を歌ったデビュー・シングルが、結果的に大きなバズを生み、しかも各所から絶賛されている彼ら。しかも、これらは全てここ1年足らずの出来事である。2018年に結成されたグループでありながら、シーンで特に大きな注目を集めるヒップホップ・グループもとい多重債務者集団となった。

今年に入ってから『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)、『シブヤノオト』(NHK)を始め、『INSIDE OUT』(block.fm)、『ACTION』(TBSラジオ)など多くのメディアに露出し、「現代ビジネス」からも取材を受けた。そして8月には、予てより「今年は必ず出る」と豪語してきたZeebraオーガナイズによるヒップホップ・フェス『SUMMER BOMB 2019』へ初出演。さらに応募総数約3900組のオーディション『出れんの!?サマソニ!? 2019』を勝ち抜き、見事『SUMMER SONIC2019』へも出演を果たすなど、まさにその注目度はうなぎのぼりだ。

Tajyusaim Boyzは、リーダーのLB-RUG、M.A.G、Young SEX、Pizza Loveの4人組。グループ名の通り、メンバー全員が多重債務を抱えたラッパーで構成されている。

借金の背景はメンバー様々。楽曲制作費やスタジオ代の工面から、生活費、交際費、酒代、女遊び、はたまたパチスロなど、日々のちょっとした背伸びが多いと語っている。そんな積み重ねを複数のルートから借りたお金で自転車操業していく様子は、さながら闇金ウシジマくんに登場する数々の債務者を思わせる。それでもメンバー全員に共通していることは、借金をオープンにしていること、それでいて暗く感じさせないことであろう。

ちなみにメンバー全員の債務総額は、高級車が購入できるほどに膨れ上がっており、なかでも最も債務を抱えているメンバーはM.A.Gであることも公言している(元金のみでロレックスのデイトナが買えるとのこと)。

このようにキャラクターの強い面々であるが、元々はそれぞれソロで活動していたラッパーであり、楽曲をリリースしたり、サイファーやライブを通じて腕を磨いていた4人である。

特に福島県出身のLB-RUGは、被災した当時に聴いていた般若「何も出来ねえけど」がきっかけでラップに開眼。まわりのヤンキーたちからヒップホップを教わり、上京後からラッパーとして活動することに。その後、借金を重ねながら音楽活動を続けるも、なかなか芽が出ない日々がおよそ4年ほど続くこととなった

その頃、Young SexとM.A.Gも20代からラップと借金を始め、同じくすでに借金に手を出していたPizzaLoveもラップを始め、YouTubeチャンネル「ピザラブ行動卍」を開設する。そんな中、現在も親交のある音楽プロデューサー・Slendermanとの出会いが、彼らの状況を一変することとなった。

当時、東京・渋谷VUENOSで開催されていたイベントにたまたま出演していた4人が繋がり、その後も仲良く会話をするなか、メンバー4人の共通点が「借金」であることが判明。Slendermanの発案のもと、ここにTajyusaim Boyzが結成したという。

お互いに意気投合したのも束の間、すぐさま楽曲制作に取りかかることに。SlendermanとK-FORCEから受け取ったトラックに4人それぞれがリリックを書き上げ、完成した楽曲が冒頭のデビュー・シングル「リボで買う。」である。各メンバー曰く、バースは速攻で書き上がったと語っている。

多くのヒップホップ・アーティストの映像を手がけるKenyaKaniがMVを撮影しYouTubeに公開。DJ YANATAKEによるフックアップを受けつつ、月日が経つにつれて次第に楽曲が広まっていくなか、気づけば渡辺直美Creepy Nutsもハマっていき、最近ではkemioが「あれもリボで買う これもリボで買う」と歌うようになった

さらに、今年4月には助手席に幽霊がいることを歌った「スリルドライブ」や、TWICEなら誰でもいいから俺の彼女になってくださいと願った「TWICE」などを収録した1stミニ・アルバム『スリルドライブ』をリリース。一方、PizzaLoveは自身の携帯番号をフックに込めた代表曲「アイマユウタ」を公開し、YouTube再生回数90万回以上を叩き出すスマッシュヒットを記録(2019年9月現在)。1日600件以上の着信に見舞われつつも多くのファンから暖かい応援メッセージを受け取るなど、常に話題に事欠かない。

現在では渋谷HARELMで主催イベントを成功させ、ヒップホップ専門ラジオ局「WREP」でもレギュラー番組がスタート。さらには借金を返済し始めていたにも関わらず、新たな借金で制作したというPizzaLove初のミックステープ『MIX PIZZA』のリリースも決定した。相変わらずお金はないものの、工夫を凝らしながら明るくオープンに、その勢いを加速し続けている。

ふと海の向こうを見渡せば、ゲットーな現実がメインを占めていたヒップホップ・シーンはとうに過ぎ、リッチで浮世離れな生活を歌うラッパーで溢れかえっている昨今。デフレ真っ只中の日本から登場する新しいラッパーからは、次から次へとハードな思いが語られている。そんなリアル・ミュージックの最前線に立っているヒップホップ・グループがTajyusaim Boyzである。

いまだ増え続ける債務総額は、裏を返せば社会からの信用の証であり、ひとつの才能と言われるかもしれない。めちゃくちゃ贅沢な暮らしをしようなんて考えていないと語っている彼らは、ただひたすら当たりまえの成功を望み続けている。まだ見ぬ完済日に向けて今日もマイクを握り続け、自身の音楽にベットし続けているのである。

Text by Takato Ishikawa


【イベント情報】

Spincoaster Presents “SPIN.DISCOVERY vol.12”
-WALL&WALL 3rd ANNIVERSARY-

日時:2019年9月21日(土) OPEN 16:30 / START 17:00
会場:東京・表参道 WALL&WALL (MAP
料金:前売 ¥2,900 / 当日 ¥3,400 (各1D代別途)
出演:
[A to Z]
Kvi Baba
LEX
釈迦坊主
Tajyusaim Boyz
vividboooy
YUNGYU

チケット:e+ | ZAIKO | Peatix

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