黒田隆憲
FEATURE

Rootscoaster Vol.69 / 黒田隆憲


『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』をはじめとした著書を多数持つ音楽ライターでありながら、時にはカメラマンやDJとしても活躍する黒田隆憲氏のルーツに迫る……!...

2015.09.15

ここ最近夏フェス出演アーティストが連続していたRootscoasterですが、今回はマイ・ブラッディ・ヴァレンタインについて語らせたら国内、いや、世界でも右に出るモノはいないといっても決して過言ではないであろう音楽ライターであり、時にはカメラマン、DJなどとしても幅広く活躍する黒田隆憲氏に登場して頂きました!
マイブラをはじめとしたシューゲイザー関連はもちろん、最近では元ミュージシャンという出自を活かし、作曲術や機材関連に言及した著書や企画(CINRA.NETさんの「あの人の音楽が生まれる部屋」など)でも大活躍中の黒田氏の人生に多大なる影響を与えた楽曲とは……!

(Text:Takazumi Hosaka)


Kevin Shiels (My Bloosy Valentine) / 2

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのことは、液体にして体内に注入したいくらい大好きなのですが、中でも最も好きな曲は、バンドの司令塔ケヴィン・シールズがカナダのコンテンポラリー・ダンス・カンパニー「La La La Human Steps」のために書いた、このインスト曲だったりします。得意のトレモロアーム奏法を駆使しながら、18小節のコード展開をただひたすら繰り返すだけなのですが、もう永遠に聴いていたくなるくらい、中毒性の高いミニマル・ミュージックです。未発表音源ながら、ケヴィンの音楽性の魅力すべてが注ぎ込まれていると個人的には思っていて、自分の葬式では是非この曲を流したいです。


Carleen Anderson / Let It Last

元ヤング・ディサイプルズの歌姫が、ファースト・ソロに残した珠玉の名曲。今から20年以上前、フリーダム・スウィートの山下洋くんの家で初めて聴いた時の衝撃は忘れられません。プロデューサーはポール・ウェラーやプライマル・スクリームなどを手がける鬼才ブレンダン・リンチで、ベースはマルコ・ネルソン(ヤング・ディサイブルズ)、ドラムはクリスピン・テイラー(ガリアーノ)、鍵盤はミック・タルボット(スタイル・カウンシル)という最強の布陣がバックアップ。残念ながらYouTubeにはライヴ動画しかなかったのですが、「ビートルズmeetsゴスペル」なサウンド・プロダクションの音源を、是非お聴きいただきたいです!

Let It Last
カテゴリ: ロック


Rayons feat. Predawn / It Was You

Rayonsこと中井雅子のファースト・アルバム『The World Left Behind』には、朋友Predawnこと清水美和子をフィーチャーした曲が4曲収録されていて、どれも素晴らしいのですがこの曲は格別。現代音楽やジャズ、ソウル、ポップスをも内包した美しい旋律と、天使のような歌声が混じり合い、聴き手の心に染み渡ります。この2人のアーティストに共通しているのは、“癒し”という言葉では括り切れないヒリヒリとした“孤独の痛み”が、どの曲にも宿っていること。だから、幸せな気分のときに聴くと胸をギュッと締めつけられ、悲しい気分のときに聴くと優しく包み込まれるのだと思います。


Message

今回選んだ3曲は、どれも自分自身の人生観や音楽観に多大なる影響を与えたものばかりです。共通しているのは、「嬉しい」とか「悲しい」とかいった単純な一方向の感情ではなく、言葉にできない気持ちをかき立てながら、有無を言わさずどこか別世界へと連れ去ってくれるような、そんな力を持っているということかな…と。そして、そんな曲たちの魅力をなんとか言葉にして、より多くの人に届けたくて今の仕事をしています。
私事で恐縮ですが、9月18日に拙著『メロディがひらめくとき』を上梓します。メロディはどのようにして生まれるのか、そのプロセスに迫ったインタビュー本です。Predawnも登場してくれてますのでぜひ!


Profile

1969年生まれ。90年代後半にロックバンド「COKEBERRY」のリーダー兼ソングライターとしてメジャー・デビュー。山下達郎『サンデー・ソングブック』で紹介されるなど、音楽好きの間で話題に。音楽ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。また2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として、世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』など。

Blog:http://d.hatena.ne.jp/oto-an/
Twitter:https://twitter.com/otoan69

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