FEATURE

Rootscoaster Vol.138 / 夏bot (For Tracy Hyde)


傑作2ndアルバムをリリースしたばかりのFTHから、バンドの中心人物・夏botがRootscoasterに登場! 彼のルーツとなった3曲とは

2017.11.10

東京を拠点に活動する5人組バンド、For Tracy Hydeが待望の2ndアルバム『he(r)art』をリリースした。

まるで映画のポスターを模したかのようなアートワークからもわかる通り、本作はイントロやテーマ曲を含んだコンセプチュアルな作品となっている。前作から顕著だったネオアコやシューゲイザー、シンセ・ファンクからチルウェイヴまで、様々な過去の音楽的遺産を消化吸収しながらも、それを日本語詩のキャッチーな歌モノへと昇華させることに成功している。
バンドの紅一点・eurekaのボーカルとしての成長ぶりや、声の加工/処理の技術も格段に向上した結果、よりポップスとしての強度が増した、会心の出来となった。

今回はそんなFor Tracy Hydeの創設者にして中心人物、夏bot(Gt.)がRootscoasterに登場。確かな知識を感じさせる彼の音楽的センスを形作った楽曲、アーティストをチェックしてほしい。

(Text By Takazumi Hosaka)

https://www.youtube.com/watch?v=WKo0M8lh7Xo


1. The Beach Boys / Let’s Go Away for a While

自分にとって60年代中後期のThe Beach Boysは「影響」という言葉で片づけるのもためらわれるくらい大きな存在です。試行錯誤をしながら頭のなかでイメージしている音像に楽曲を寄せていくという制作過程といい、コーラス・ワークやコード感へのこだわりといい、過ぎゆく青春への執着といい、Brian Wilson(ブライアン・ウィルソン)から受け継いだものは多くあります。
とりわけやはり『Pet Sounds』には並々ならぬ思い入れがあり、このアルバムに凝縮された情感にはいつも圧倒されます。このアルバム及びその解説書が少年時代の僕のいちばんの教科書でした。2016年の再現ツアーも2日通しで通って終始号泣……。


2. Galileo Galilei / 青い栞

Galileo Galileiとの出会いは文字通り人生を一変させるものでした。この曲が収録されたアルバム『PORTAL』に出会ったことで、それまで音楽といえば60年代か90年代だった僕は現行のインディ・ロック・シーンのおもしろさを知り、For Tracy Hydeというバンドを立ち上げることになりました。シンセサイザーへの関心が芽生えたのは彼らのおかげです。
古今東西の音楽を自在に取り込み、そこに日本のバンドならではの叙情的な歌詞とメロディを載せる、という点で彼らの右に出るバンドは同世代にはいないように思います。たくさん学ばせていただいております。


3. The 1975 / Me

Galileo Galileiがもたらしてくれたもののひとつに、The 1975との出会いがあります。彼らによる「Chocolate」の日本語カバーを聴いて興味を持ち、原曲を聴くも、容姿とサウンドのちゃらさや癖の強すぎる歌声にギヴ・アップ……。でもなぜか忘れられずにアルバムを購入、歌詞を読みながら聴き進めるうちにすべてが腑に落ちました。
80sシンセ・ポップをベースにしつつアンビエントやドリーム・ポップなどの要素を取り入れた先鋭的なサウンド、そして愛や苦悩、社会的不安などについて実直に綴る内省的な歌詞……。彼らがちゃらいのは上辺だけの話なのです。最近の自分の作品に与えた影響は絶大です。


Message

他にもRideやスーパーカー、フリッパーズ・ギター、Base Ball Bear、Washed Outなど、自分に影響を与えたという観点で見ると語らなければならないアーティストは多数いるのですが、ひとまずいまの気分で3組挙げてみました。
宣伝になってしまい恐縮ではございますが、先日リリースしたFor Tracy Hydeの2ndアルバム『he(r)art』はこの3組の影響をありありと感じられる作品になっているかと存じます。とてもいい作品になったと自負しておりますので、ご一聴いただけましたら幸いです。よろしくお願い申し上げます。


Profile

For Tracy Hyde

eureka(Vo.)、夏bot(Gt.)、U-1(Gt.)、Mav.(Ba.)、まーしーさん(Dr.)による5ピース・バンド。2012年秋、夏botの宅録プロジェクトとしてU-1と共に活動開始。ツイッターでメンバーを集めMavとまーしーさんが揃う。2014年、ラブリーサマーちゃん(Vo.)が加入し、女性ボーカルの5ピース・バンドとして原形が出来る。同年5月に初の自主制作CDとなる1st EP『In Fear Of Love』を全国各地のレコード店にて無料配布。配信も含めて3000部近く配布し話題となる。同年8月には2nd EP『Born to be Breathtaken』をライブ会場限定にてステッカー、バッジ形態で販売。同時にiTunesで配信しオルタナティブ・チャートで最高4位を記録。2015年5月、ラブリーサマーちゃん脱退に伴い、新ボーカリストにeurekaが加入。シューゲイザーや渋谷系、60年代から現在までの様々な音楽を自由な発想で取り込み、中高生から〈Creation Records〉にリアルタイムで触れた40~50代まで、幅広いリスナーの日常に彩りを添える「21世紀のTeenage Symphony for God」を作り出す。

■For Tracy Hyde オフィシャル・サイト:http://fortracyhyde.com

■For Tracy Hyde オフィシャルTwitter:https://twitter.com/ForTracyHyde

■夏bot Twitter:https://twitter.com/chelseaguitar


【リリース情報】

For Tracy Hyde 『he(r)art』
Release Date:2017.11.02 (Thu)
Price:¥2,300 + Tax
Label:P-Vine
Cat.No.:PCD-83004
Tracklist
1. Opening Logo (FTH Entertainment)
2. Theme for “he(r)art”
3. Floor
4. Echo Park
5. アフターダーク
6. Dedication
7. Leica Daydream
8. 指先記憶装置
9. Underwater Girl
10. Ghost Town Polaroids
11. Frozen Beach
12. A Day in November
13. 放物線
14. Just for a Night
15. Teen Flick
16. TOKYO WILL FIND YOU
17. Halation


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