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REPORT / showmore 『too close to know』 release one-man show


2人の約束の景色がここに。音楽が生み出す喜びと愛に溢れる120分。念願の地で大成功を収めたワンマン公演をレポート

2020.03.11

根津まなみ、井上惇志によるセンセーショナル・ポップ・ユニット、showmoreが昨年12月にリリースした2ndアルバム『too close to know』のリリース・ワンマン・ショーが、2月5日(水)東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。

この日のライブは単なるアルバムのリリース・ライブではなく、showmoreの2人にとって特別な意味があった。showmoreの結成時に井上が掲げた「3年でLIQUIDROOMへ連れて行く」という約束の日がこの公演となるのだ。さらに、7月末からアルバムの制作に専念するためライブ活動を休止していたshowmoreにとっては、アルバム・リリース後の初ライブでもある。メンバーだけでなく、ファンにとってもまさに待望の1日だ。本稿ではこの記念すべき公演の様子をお伝えする。

Text by Kohei Nojima
Photo by Yosuke Kamiyama

チケットはソールドアウトということでフロアはオーディエンスでぎっしりと埋め尽くされていた。君嶋麻里江によるDJプレイで会場が十分に温まった頃、ステージが暗転しジャズ・ピアニスト、Ahmad Jamalによる「I Love Music」 が流れる。まずはサポート・メンバーの登場だ。本日はドラムにタイヘイ(Shunské G & The Peas)、ベースには玉木正太郎(Lululu)とshowmoreのサポート・メンバーの中でも最もハードなリズム隊を迎えた。加えて、アルバム『too close to know』にもアレンジで参加し、大比良瑞希のプロデュースなども務めるチェロ奏者、伊藤修平とバイオリニスト・谷崎舞に、バイオリニストのめかるとヴィオラ・角谷奈緒子が加わった“しゅうまいカルテット”がストリングスとして参加。後ほど登場する山田丈造(Tr. / Shunské G & The Peas)、Ken T(Sax. / Soulflex)を合わせると最大10名にもなる大編成だ。ワンマン・ライブならではといった豪華な布陣となった。

最後に井上(Key.)と根津(Vo.)が舞台上に登場すると、ひと際大きな歓声が上がる。根津のボーカルと井上のキーボードのデュオから始まる「auror」からライブはスタート。

各パートのアグレッシブな演奏で、一気にオーディエンスが引き込まれる。この日が特別な日になることを予感させるには十分すぎるオープニングに、会場からは大きな歓声と拍手が送られた。

根津が「ありがとう! 最後まで楽しんで!」と声を上げると、ドラムはテンポを上げて「highway」へと流れ込む。ストリングス隊が加わったことで、いつも以上に激しくスリリングな表情を見せた。続く「flashback」でも壮大なストリングスによって楽曲が持つシリアスな面を増幅させる。

「こんばんは! 今日は平日の中ありがとうございます。嬉しいですね。みんなで気持ち良い空間を作っていけたらと思います」と根津が軽く挨拶。「しゃべりますか?」と井上に尋ねると、「いいです。序盤であんまり怒られたくないので(笑)」と一言。会場が大きな笑いに包まれた。このやり取りだけで2人の関係性が伺える。

『too close to know』のオープニング曲「baby」、「この曲を作った自分たちを褒めてあげたい」「色々な愛があるよね。あなたの愛を重ねて聴いて欲しい」と語った「dryice」と、アルバムの収録曲を続けてパフォーマンス。「dryice」はシングルで配信した楽曲のため、以前よりライブで披露されてきたが、ストリングスが加わったことでようやくライブでの完全再現が叶う形となった。

ストリングス隊が一度ステージから去り、シンプルな4人編成での「unitbath」から、「女子に捧げたい」と「bitter」へ。showmoreの楽曲の中でもかなり王道的とも言えるジャズ・ナンバーだ。ホーン隊と赤い照明で会場は妖艶な雰囲気に。「簡単じゃない / 私たち」とハンド・マイクで力強く歌う根津と、井上を始めとするバンド・メンバーの巧みな演奏に、オーディエンスは歓声を上げて応える。間髪を入れずに「1mm」のイントロが流れると、まるで嵐のあとの晴天のように会場の雰囲気が一転、爽やかな雰囲気に包まれた。

MCでは「1週間前までは珍しく緊張していたけど、2、3日前から急にワクワクしてきて今日を迎えられた」と語る根津。「アルバムの制作がめちゃくちゃ辛かった」という井上。大好きなライブを封印してアルバムを完成させ、遂に迎えた本日は、ファンだけでなく彼らにとってもご褒美とも言えるワンマン・ライブなのだ。続いて「アルバムのことを話し出すと終わらなくなるので、今度トーク・ライブでも」と、トーク・イベントの開催もほのめかされた。

showmoreのプロフィール文にも添えられている「「正しいことばかり言わないで。人は寂し生き物でしょ?」という一節が印象的な「27」から、Charaのカバー「恋をした」へ。「恋をした」は思わず体が揺れるダンス・ナンバーだ。この日のために大阪から駆けつけという、SoulflexのKen Tによるサックス・ソロで、会場全体が沸き上がる。

続いて「now」のイントロが流れ、根津の「きてくれたよ!」との言葉と共に、SIRUPが登場。会場の熱量は何度目かのピークを更新する。「now!!」と、ステージの上も下も関係なく、みなそれぞれが自由に踊り、声を上げ楽しそうな表情を見せていたのが印象的であった

「今日はエモエモのエモの日でしょ?」と、showmore結成時に井上が根津に3年でLIQUIDROOMに連れて行く約束をしたことをSIRUPが2人に問い、「今日がその有言実行の日なんだよね」と、短い時間の中で感動的なシーンを作り出した。なお、SIRUPが3月25日(水)にリリースする新作EPには、showmoreの2人も参加しているそうだ。

「showmoreの世界にトリップしてください」と、showmoreの楽曲の中で最もBPMが遅いであろう「I don’t love you」から最速BPMの「red」へ。showmoreの楽曲はBPMとリズムがとにかく多彩だ。リズムによって楽曲ごとに様々な表情を見せる。そのバリエーションの多さもshowmoreの魅力のひとつであると思う。

続くMCでは、LIQUIDROOMでの開催に際して不安が語られた。これまで、決して順風満帆なだけではなかったshowmoreの道のり。おそらく辛い光景も目の当たりしてきたことだろう。しかし、遂に目標に掲げたLIQUIDROOM公演をソールドアウトさせることができたことについて、井上の口からオーディエンスへの感謝が述べられた。「“ここにいたことが、後に自慢になるようなアーティストになることが僕たちの使命です”と言い続けてここまで来たのですが、ここで終わりじゃないし、まだまだ良い曲も書くし、もっと大きな景色を根津に見せてあげたいと思ってます」という井上の熱い言葉に対して、「おぉ! メガネ! カッコいいこと言うな。メガネ新しくしたんだぜ!」と根津は照れ隠しなのかイジり返す。ちなみに「後で話します」と言った井上のメガネが吹っ飛んだエピソードは結局、語られることはなかった。

「色んな出会いを経験して、いい女、いい男になっていけたらいいですね。この曲を書いたと時はとても辛かったけど、今は幸せです。ありがとう」という紹介を経て「call my name」を演奏。
井上のピアノと根津のボーカルのみというミニマルな編成から、後半はバンド編成へと流れ込む。根津のボーカリストとしての音域の広さ、歌唱力、繊細さが際立つ1曲だ。

「最後はみんなで歌いましょう!」と代表曲「circus」へ、サビでは「一晩中 / 音を止めないで」と大きな合唱が巻き起こる。今日のshowmoreのライブは誰もが自由に踊り、手を上げ、歌い、声を上げる。どこまでもピュアな音楽の魅力が感じられる、涙が出るくらいピースフルな雰囲気だ。根津は最後に「愛してます!」と伝え、ステージを去った。

アンコールに根津よりも先に登場した井上は「歌すげぇ……じゃん? こんな才能が日本で発見されないのは腹が立つ」と改めて根津への素直な気持ちを吐露。告知タイムでは東名阪でのツアーの開催が発表された。さらに、Shin Sakiuraのツアーの名古屋公演にshowmoreが出演すること、そして「now」のShin Sakiuraによるリミックスがリリースされることも明かされた。そして新曲やEPの発表もとい宣言に、ファンから嬉しい悲鳴が上がる。

サポート・メンバーを改めて紹介した後、「素敵な日々が続きますように」と告げ「have a good day」を披露。切実かつシンプルなフックと、ドラマチックなストリングスのアレンジが大きな感動を呼ぶ。

アンコールの最後には全サポート・メンバーが登場。有終の美を飾るのは人気曲「rinse in shampoo」だ。悲願のLIQUIDROOM公演を見事成功させ、素晴らしい空間を作ったメンバーに惜しみのない拍手が送られる。うっかり根津がこぼしてしまったが、サプライズとして用意していた「now」のShin Sakiuraリミックスが終演後、場内でプレイされ、大きな拍手が送られた。

showmore 『too close to know』 release one-man show恵比寿LIQUIDROOM SET LIST
1. aurora
2. highway
3. flashback
4. baby
5. dryice
6. unitbath
7. bitter
8. 1mm
9. 27
10. 恋をした
11. now
12. solitude
13. I don’t love you
14. red
15. call my name
16. circus
[Encore]
17. have a good day
18. rinse in shampoo


【イベント情報】

showmore 東名阪tour 『2020 s/s』

日時:2020年5月3日(日・祝) OPEN 17:00 / START 17:30
会場:大阪 Shangri-La
料金:¥3,500(1D代別途)

日時:2020年5月8日(金) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:愛知・伏見 JAMMIN’
料金:¥3,500(1D代別途)

日時:2020年5月15日(金)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京・代官山UNIT
料金:¥4,000(1D代別途)


【リリース情報】

showmore 『too close to know』
Release Date:2019.12.18 (Thu.)
Tracklist:
1. baby
2. red
3. now (feat.SIRUP)
4. 27
5. solitude (interlude)
6. I don’t love you
7. bitter
8. 1mm
9. dryice
10. call my name

showmore オフィシャル・サイト


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