Text by Takanori Kuroda
Photo by Sachiko Yamada (origami PRODUCTIONS)
今年2月にアルバム『tender(Deluxe Edition)』をリリースしたギタリストの関口シンゴが、愛知県・千種文化小劇場を皮切りにスタートした全国ツアー『tender tour 2025 Deluxe Edition』のファイナル公演を、6月12日(木)に東京・渋谷WWWにて行った。
同ツアー名古屋公演の様子
『tender(Deluxe Edition)』は、2023年12月にリリースされた彼の2ndソロアルバム『tender』の続編にあたるデラックス版。DISC 1には『tender』に収録された12曲が、DISC 2には昨年12月に配信限定でリリースされた、Max Jenmanaとのコラボ曲“Good Day feat. Max Jenmana”や、前回のツアーからの流れで生まれた“Mint”、ライブからインスパイアされた“Elevator Lover”などが収録されている。関口いわく、「『tenderのスピンオフ的な作品』というイメージ」の本作を携え、この日はゲストメンバーを交えながらの賑やかで親密なステージを展開した。
通称・West Side Tokyo Bandとして知られるバンドメンバーは村岡夏彦(Key.)、中西道彦(Ba.)、今村慎太郎(Dr.)という、関口にとって馴染みの面々。まずは“Mint”から幕開け。タイトかつグルーヴィーなドラムにファットなシンセベースが絡み、その上でシンプルなコードが繰り返される。軽くワウを踏んだクランチなギターで涼しげなメロディーを関口が奏でると、すでに初夏といってもいいような気温が一瞬下がったような錯覚を覚えた。

「やってきましたよ、ツアーファイナル。楽しんでいきましょう!」そう挨拶し、続いて披露したのは“Slowboat”。レイドバックしたリズム隊と転がるようなエレピ、歌心たっぷりのギターが抑揚を抑えつつも徐々にアンサンブルの温度を上げていく。時おり壮大なキメを挟みながら、カオティックなクライマックスを迎えるとフロアからは大きな歓声が上がった。エコーをたっぷりとかけた、メロウでノスタルジックなギターから始まる“North Wing”は、気づけば中西によるトリッキーなシンセベースソロへとなだれ込む。負けじと村岡がオルガンソロで応戦し、阿鼻叫喚のサウンドスケープへと発展していくクライマックスに、オーディエンスの熱量も上がる一方だ。


「いやもう、楽しすぎて喋りたくないわ」とフロアを見渡しながら関口が言い、会場は温かな笑いと拍手に包まれる。「どんどんいっちゃう?」とメンバーに声をかけ、畳み掛けるように“Claps”へ。今村がトライバルなビートを叩き出し、自然発生的にハンドクラップが広がっていく。オーディエンスとプレイヤーによるセッションでひとしきり盛り上がったあと、満を持して関口が宙を切り裂くようにギターをかき鳴らすと、再び大きな歓声が上がった。まるで音そのものが得体の知れない生き物のように、うごめきのたうちまわる様子にこちらの体も勝手に動き出す。

一転して“Everyday I feel your heart”では、狂おしいほど切なくメロウな旋律を関口が歌う。さらに“Elevator Lover”、“Raincoat”と披露した後、ゲストミュージシャンとのセッションコーナーへ。最初に登場したのはソエジマトシキ。つい先日、Eric Claptonが「いま注目している日本人ギタリスト」として名前を挙げ大きなニュースになったばかりだ。関口とソエジマはYouTubeチャンネルで共演するなど、かねてより親交を深めていたが、こうしてステージに立つのは初めてである。「今日はマジ、なんも決めてないんだけど……」と言い、Stevie Wonderの“Isn’t she lovely”を2人だけでカバー。お互いの間合いを確かめ合いながら、まるで会話をするように音を混ぜ合わせていく様子に、フロアからはため息が漏れた。

続いてのゲストは朋友・Kan Sano。「Kanちゃんとやるなら、やっぱり歌を聴きたい」と関口が言い、Kan SanoとShin Sakiuraによるコラボ曲“ほんとは”を披露。《聞こえるの?/聞こえるよ》と掛け合いで歌うサビをKan Sanoがオーディエンスに促すと、それに応えてシンガロングが会場いっぱいに響きわたる。なんて親密な空気なのだろう。
再びWest Side Tokyo Bandをステージに呼び込み、ここからはバンドセットでラストスパート。関口のウィスパーボイスが胸を締めつける“Good Day”、2015年にリリースされたアルバムのタイトル曲“Brilliant”、力強い4つ打ちのリズムと軽やかなギターカッティングがダンサブルな、その名も“Dance”と続け、ノスタルジックなミドルチューン“Tender Rose”で本編を終了した。
アンコールでは、関口がSNSで募集していた「Guitar Solo Challenge」の音源を披露。これは、“Elevator Lover”のトラック音源に合わせて自由にギターソロを弾き、動画でアップした人の中から8名を選び、各公演で流して関ロがそれに合わせて「バーチャルセッション」するというもの。この日は9歳のギタリスト・Akarinさんによるソロが選ばれ、ソエジマも見守るなか熱いセッションが繰り広げられた。さらに、West Side Tokyo Bandとソエジマ、そして途中からKan Sanoも飛び入りで参加し“Origami Song”を演奏。この日のライブを締めくくった。
アルバムタイトル『tender』が象徴するように、関口シンゴの音楽にはステージとフロアの境界線を越え、心をつなぐ「やさしい力」がある。そんなことを、あらためて胸に刻む夜となった。
2. Slowboat
3. North Wing
4. Claps
5. Everyday I feel your heart
6. Elevator Lover
7. Raincoat
8. Isn’t she lovely w/ Toshiki Soejima
9. ほんとは w/ Kan Sano
10. Good Day
11. Brilliant
12. Dance
13. Tender Rose
En1. message
En2. Elevator Lover Guitar Solo(ギターソロ選手権ver.)
En3. Origami Song
【リリース情報】
関口シンゴ 『Raincoat (Paul Grant Remix)』
Release Date:2025.06.25 (Wed.)
Label:origami PRODUCTIONS
Tracklist:
1. Raincoat (Paul Grant Remix)
【イベント情報】
▼関口シンゴ
『Nuts Party 2025』
日程:2025年9月28日(日)
会場:千葉ポートパーク円形芝生広場
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▼Ovall
『Ovall “Silent Storm” Billboard Live Tour』
日程:2025年9月2日(火)
会場:Billboard Live TOKYO
日程:2025年9月4日(水)
会場:Billboard Live OSAKA
『FUJI ROCK FESTIVAL’25』
日程:2025年7月27日(日)
会場:新潟県湯沢町・苗場スキー場
『JOIN ALIVE 2025』
日程:2025年7月19日(土)
会場:北海道 いわみざわ公園
『TACHI FES 2025~音楽を好きになる街へ~』
日程:2025年8月10日(日)
会場:東京 TACHIKAWA STAGE GARDEN
『Que Sera Sera Wine & Music Festival’25』
日程:2025年10月19日(日)
会場:広島 せら夢公園
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