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REPORT | 関口シンゴ『tender tour 2024』at COTTON CLUB


ソロ & バンドセット2部構成、盟友たちと作り上げた特別な一夜

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2024.04.05

Text by Takanori Kuroda
Photo by Sachiko Yamada (origami PRODUCTIONS)

昨年12月に2ndソロアルバム『tender』をリリースしたギタリストの関口シンゴ(Ovall)が、それを引っさげてのツアー『Shingo Sekiguchi “tender tour 2024”』を大阪・心斎橋CONPASSを皮切りに全国で開催。その一環として、スペシャルゲストも招いた特別な公演を3月26日(火)に東京・丸の内COTTON CLUBで行った。この日は昼夜2部制で、昼はソロセット、夜はバンドセットによるパフォーマンスが繰り広げられた。

17時からスタートした昼の部は、ひとりでふらりとステージに現れた関口がおもむろにエレキギターを爪弾き出し“Mystic”からスタート。アルペジオや低音弦を使ったベースフレーズ、ボディを叩いたリズムパターンなどを順番にループマシンに取り込み、それを抜き差ししながらリアルタイムでトラックを作っていく。その、春の木漏れ日のような優しい響きに早くも夢見心地に。

続くメドレー“Recollection〜Cherry Blossom”では、音の粒立ちを確かめるようにゆっくりと弦を弾いたかと思いきや、リズミカルなタッピングでグルーヴを生み出し、次の瞬間には荒々しいストロークで聴き手の心までざわつかせる。心象風景を映し出すそのアブストラクトな音像を、たった1本のギターだけで作り出しているとは驚きだ。

「すごい! 人がいっぱいいる。ニヤニヤが止まらないんですけど」と、会場を見渡し喜びの声を上げる関口。「なんだかしゃべるのがもったいないくらいですね。このCOTTON CLUBは本当によく来ていたんです。ジンジャーエールを飲みながら、ジャズのライブを観るのが楽しみで。そんなところで一人、ギターを弾かせてもらえるなんて……本当にありがとうございます」と改めて感謝の言葉を述べると、会場からは温かい拍手が沸き起こった。

そして再びループマシーンを駆使しながら、アルバム『tender』より“Southern Street”を披露。カラッとした南風に吹かれながら、海辺をドライブしているような開放感に身を委ねていると、「ちょっと南の島なんかを想像しながら聴いてもらえると」と、演奏しながら関口が客席に語りかけ、思わず頬が緩む。「いつも雨が似合いそうな、マイナーな曲ばかり書いているので、たまにはカラッとした曲にしたくて。僕、半ズボンは履かないんですけど、半ズボン履きながら演奏している姿を想像しながら聴いてください」とジョークを交えた曲解説をすると、フロアは笑いに包まれる。

「ファーストステージはしっとりいこうと思ったけど、せっかくだから踊っちゃいましょうか」そう言って繰り出したのは“Dance”。「僕は普段『手拍子をお願いします』と言われると逆にやりたくなくなっちゃうんですけど、でも今日はやってください」とおどけて言いながら、バウンシーな16ビートを刻むとフロアからは自然発生的にハンドクラップが鳴り響く。関口がカッティングのボリュームを上げたりさげたり、テンポを速めたり遅くしたりすると、ハンドクラップもそれに合わせて変化する。アクセントの位置を微妙にずらしたり、複雑なキメを挟んだりする関口のカッティングに、オーディエンスが拍手のタイミングに戸惑い始めると「自分を信じて!」と叫ぶ。そうしてギターとハンドクラップのセッションを最後までやり切り、「今日のお客さん、素晴らしい!」と関口が満足げに言うと、ひときわ大きな拍手が鳴り響いた。

ここで最初のゲスト、mabanuaを呼び込み“North Wing”を演奏。精緻に刻むハットと柔らかくて芯のあるキック、タイトかつデッドなスネア。その音色とグルーヴを聞いた瞬間、それとわかるmabanuaの演奏に思わずため息が漏れる。続く“Everyday I Feel Your Heart”は、関口の記念すべき1stアルバム『Brilliant』(2015年)に収録されたmabanuaボーカル参加曲。エレピを弾き、スモーキーで哀愁が漂う歌声を聞かせるmabanuaに思わず酔いしれるオーディエンス。

続いてHiro-a-keyがステージに呼び込まれ、Grover Washington, Jr. & Bill Withersの「Just the Two of Us」を2人でカバー。途中、Hiro-a-keyがアドリブの日本語詞を披露したり、ギターとスキャットでユニゾンしたり、その場で起きるハプニングを楽しみながらライブを組み立てていく。さらに、音源ではWouter Hamelをフィーチャーした“Who you gonna Hold Tight”(『Brilliant』収録)を披露。「いつも一緒にやっているメンバーなんですけど、こうやって招くと本当にすごい人たちなんだなと改めて思います。みんな、ありがとう」と感謝の言葉を述べた。

“Tender Rose”で本編を終え、アンコールではOvallの“Come Together”をmabanua、Hiro-a-keyとともにセルフカバー。会場からは割れんばかりの拍手が鳴り響いた。

20時30分からは、バンドセットでのセカンドステージがスタート。メンバーは、村岡夏彦(Key.)、中西道彦(Ba.)、今村慎太郎(Dr.)という関口にとって馴染みの面々で(名付けて「West Side Tokyo Band」)、まずは涼しげなジャズフュージョン曲“Slowboat”で軽く肩慣らしをした後、アルバム『tender』より“North Wing”を披露。mabanuaと2人で演奏したファーストステージのバージョンとはまた違う、中西のシンセベースなどをフィーチャーしたジャズファンクなアレンジが楽しい。まるで離陸した飛行機が突然乱気流に巻き込まれてしまったような、意表をついた曲展開にフロアからは大きな歓声が上がった。

メロウなソウルチューン“Pianistic”を演奏した後、今村がトライバルなリズムを叩き出すとフロアからはハンドクラップが鳴り響く。やがて関口のファンキーなギターが重なり“Claps”へ。回るミラーボールの下、歪んだオルガンやエレピを交互に繰り出す村岡とバトルを繰り広げる。そして“Everyday I Feel Your Heart”を、mabanuaに代わって今度は自らが歌いあげた。

「今日はあいにくの雨ですが、『これやるしかねえぜ』という曲をやります」と言って披露したのはもちろん“Raincoat”。抑制の効いたアンサンブルが、関口の紡ぎ出す切なくも美しいメロディを引き立てる。“ちょっとイレギュラーなことをやってもいいですか?”と関口。「ファーストステージではソロギターをたっぷり弾かせてもらったんですけど、セカンドは全くないのもなんかアレなんで。ちょっとだけソロで弾いてみてもいいですか?」とオーディエンスに問いかけると大きな拍手が。Stevie Wonderの名曲“Isn’t She Lovely”を情感たっぷりに弾き始め、やがてバンドメンバーも加わり一大セッションへと発展。全員でソロを回すと会場からは大きな歓声と拍手が沸き起こった。

さらに“Southern Street 8 Dance”“Tell Me”を続けて演奏し、ファーストステージと同様“Tender Rose”で本編を終了。アンコールでは“Origami Song”を歌い、この日のライブに幕を下ろした。

昼夜2部制でセットリストを変え、信頼するミュージシャンたちとともに多彩なステージを繰り広げた関口シンゴ。飾らないその人柄も含め、彼の魅力を存分に堪能した1日だった。

Setlist
▼1st SHOW
1. Mystic
2. Recollection〜Cherry Blossom
3. Southern Street
4. Dance -session-
5. North Wing ft. mabanua
6. Everyday I Feel Your Heart ft. mabanua
7. Just the Two of Us ft. Hiro-a-key
8. Who You Gonna Hold Tight ft. Hiro-a-key
9. message
10. Tender Rose
11 Come Together ft. mabanua, Hiro-a-key

▼2nd SHOW
1. Slowboat
2. North Wing
3. Pianistic
4. Claps
5. Everyday I Feel Your Heart
6. Raincoat
7. Isn’t She Lovely
8. Southern Street
9. Dance
10. Tell me
11. Tender Rose
12. Origami Song


【イベント情報】


『Shingo Sekiguchi “tender tour 2024”』 at COTTON CLUB
日程:2024年3月26日(火)
出演:
▼1st SHOW
関口シンゴ Solo Set

[Special Guests]
mabanua
Hiro-a-key

▼2nd SHOW
関口シンゴ Special Band Set
[MEMBER]
関口シンゴ(Gt.)
村岡夏彦(Key.)
中西道彦(Ba.)
今村慎太郎(Dr.)

ツアー/チケット詳細


【リリース情報】


関口シンゴ 『tender』
Release Date:2023.12.06 (Wed.)
Label:origami PRODUCTIONS
[通常版] OPCA-1055 ¥2,500 + Tax
[2CD限定版] OPCA-1056 ¥3,000 + Tax
Tracklist:
01. Mystic
02. Tender Rose
03. North Wing
04. Dance
05. Origami Song
06. Pianistic
07. Raincoat
08. Everyday I feel your heart
09. Southern Street
10. Recollection
11. Tell me
12. April Coffee

DISC2 『Chill Guitar Covers』
01. Close to You (Carpenters)
02. Don’t Know Why (Norah Jones)
03. Just the Two of Us (Grover Washington Jr.)
04. If I Ain’t Got You (Alicia Keys)
05. Isn’t She Lovely (Stevie Wonder)

※DISC2:CD限定版のみ付属

購入/配信リンク

関口シンゴ オフィシャルサイト


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