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REPORT | sen (records) Launch Party


幾重もの「点」が結びつき、確かな「線」へ──新レーベル誕生とシーンの連帯を提示した一夜

2026.04.24

Text by Takazumi Hosaka
Photo by pei the machinegun

4月3日(金)に東京・恵比寿 KATA / Time Out Café & Dinerにて〈sen records〉のローンチパーティが開催された。

〈sen records〉は、Nulbarichやちゃんみな、Billyrromなどの楽曲にも携わるLee Sangwoo(イ・サンウ)を中心に立ち上げられたインディレーベル。設立と同時にGeloomyとニシ ナオキの所属が発表され、2組の新曲もリリース。詳しくは先日掲載したインタビュー記事からチェックしてほしいが、簡潔に言うなれば、東京を中心としたインディシーンで何かが起きそうな気配を感じさせる存在だ。

FEATURE2026.04.10INTERVIEW | Geloomy & sen records進化する「ミールミュージック」の現在地、「Artist First」な新レーベル設立背景

入場無料で開催された今回のローンチパーティ。開場まもなくして到着すると、すでにエントランスには多くのオーディエンスが列をなして並んでいる。会場から漏れ出るのは陽気で景気のいいグッドミュージック。オープンDJは「じめ先生」ことGeloomyのキーボディスト・肝臓だ。4つ打ちを基調としながらも、インディロックからヒップホップ、果てはK-POPからUKガラージまで……Geloomyともリンクするようなしないような、そのバックグラウンドの幅の広さと、しかし一貫した美学を感じさせるDJプレイでフロアを心地よく温めた。

舞台は隣接するKATAへ。肝臓のDJからバトンを渡されたのは、〈sen records〉所属アーティストのニシ ナオキ。1曲目の“プールサイド”から、80年代へとタイムスリップしたかのような、いぶし銀かつロマンチックな世界観が会場を包み込む。歌謡曲を想起させる懐かしくも親しみやすいメロディに、豊かな低音域を備えたボーカルと、それを支えるグルーヴィーなバンドアンサンブル。シティポップマナーに沿った煌びやかなギターカッティングも心地いい。最新曲“枇杷の花”は、ナビゲーションズのメンバーと構築したサウンドを基盤に制作されたというだけあって、息の合った演奏でオーディエンスを魅了した。

気づけばKATAの後方まで満員だ。曲間ではスタッフが「前へ一歩詰めてください」とアナウンスしている。そんな熱気あふれる会場でも、ニシ ナオキはどこか涼しげだ。「今日はパーリーな感じでとても楽しいです」「みなさん一緒に僕とダンスというか、揺れてみませんか」という紳士的なMCとともに、絶妙にレイドバックしたボサノヴァテイストの“ウーロン”でクールダウン。そしてイントロでたっぷりと助走をつけた、アグレッシブかつドラマチックなナンバー“都心”で、ラストスパートへ向けてギアを一段入れ直す。最後はファンキーなインストパートを挟み“魅惑夜”へ。

この日も「あの時代からタイムスリップしてきました」と自己紹介したニシ ナオキ。過去のカルチャー/音楽的遺産を鮮やかに蘇らせつつも、ただの懐古主義には終始せず、現代の感覚で軽やかに再構築してみせるその姿勢こそが彼の表現の真髄だろう。“魅惑夜”の《僕達は自由に時代を行き来してる》というリリックの通り、過去と未来を等距離で見つめる彼の音楽には、流行に左右されない強固な芯が感じられた。

続いて、Time Out Café & Dinerでは〈sen records〉のスタッフ「ますりょうた」がDJブースへ。トリップホップやヒップホップを軸とした選曲で、ライブの余韻を心地よく塗り替えていく。そうこうしているうちに、再びKATAへと人が流れていく。お次はGeloomyのライブ……かと思いきや、ここで〈sen records〉、そしてサンウ氏に縁のあるアーティストたち──aint lindy、Billyrrom、chilldspot、NulbarichのJQ──からのビデオメッセージが上映された。その豪華な顔ぶれに、会場からは驚きと感嘆の声が漏れる。

映像が終了すると、ステージに潜んでいたGeloomyのメンバーがニョキッと登場。「ニシ ナオキさんのライブがよすぎて、もうお腹いっぱいなんじゃないかなと。ただね、Geloomyは別腹でして」という軽妙なMCから、レーベル所属後初のシングル“vetsuvara(sweet)”をプレイ。下半身直撃系の妖艶なグルーヴと独特の浮遊感——まさにGeloomy印のネオディスコ全開なサウンドだ。続いて音源以上にエネルギッシュなアレンジが施された“p.h.p”を披露し、MCでは「大先生」と仰ぐニシ ナオキとの出会いを振り返った。

ボーカル・小腸の「今日はゆっくり、みんなで楽しんでいきましょう」という言葉とともに、ミドルテンポの“unknown”、そしてネオソウルライクな“Black Cinema”へ。ビートスイッチ的な展開を孕む後者は、セットリストの中で鮮やかな緩急を生み出していた。重心の低いグルーヴで会場を圧倒すると、ここから一気にラストまで駆け抜ける。

1stシングルにしてSNSでも話題を呼んだ“Vagi@”では、小腸が「Are You Ready!? 踊れますか!」とオーディエンスを煽り、ハイテンションそのまま肝臓の鍵盤へ乱入。まるで連弾のようなシーンも見られた。「変なことしてたらラスト2曲でした」と笑いを誘い、ディスコファンクな“Shock!!中毒”でアッパーに突き抜け、最後は“hey!!!!!”で閉幕。横乗りの心地よいサウンドが全員を揺らし、会場はさながらディスコのような風景へと変貌した。

自身が見たことのない華やかな時代への憧憬を原動力にスタートしたGeloomy。ニシ ナオキが過去の美学を継承し、その様式美を現代に蘇らせる存在だとするならば、Geloomyは過去の断片をサンプリングし、抜群の遊び心をもってして新しいダンスミュージックへと昇華させる存在だ。時代をリスペクトしながらも、決して型にはまらない自由な創作力こそが、多くの若者を魅了してやまない理由なのだろう。

パーティはまだまだ終わらない。Time Out Café & DinerのDJブースには、〈sen records〉のスタッフであり、Geloomyのマネージャーも務める谷が登場。近しいシーンの楽曲を織り交ぜたサービス精神溢れる選曲で、フロアを盛り上げる。

すると、会場に駆けつけていたミュージシャンたちが次々とマイクを握り、贅沢な飛び入り参加の応酬が始まった。やさしいみらいのラッパー・夢句、TiDEのボーカル・井上大悟、Doonaのボーカル・GENKI、そしてGeloomyとも縁深いaint lindyらが自身の楽曲を歌唱(井上は、やさしいみらいの“moonlight”を歌唱)。ブースにはQPLOのSomeyaの姿もあり、まさに「仲間たちの集い」といった様相を呈していく。

ラストを飾ったのは、ニシ ナオキによるヴァイナルオンリーのDJセット。山下達郎からPrince、Michael Jackson、Zapp、Boz Scaggsまで、自身を形作ってきたであろうシティポップ、ファンク、AORの名曲を連発し、会場を鮮やかに彩っていく。途中、バンドメンバーのMorrincyが加わり自然発生的にB2Bが始まるなど、堅苦しい「イベント」の枠を超えた、ラフで親密な「パーティ」の空気がそこには流れていた。最後は松田聖子から杉山清貴&オメガトライブへと繋ぐ、爽やかなフィナーレで幕を閉じた。

〈sen records〉が掲げる「音楽を通して生まれる出会いや作品を、一本の線として捉える」という哲学。この日のローンチパーティは、単なる所属アーティストのお披露目ではなく、関係者やオーディエンスなど、この場所に集った全員がシーンとして共鳴し合う、連帯の場になっていた。誰からともなくマイクを握り、自然にB2Bが始まったように、幾重もの「点」が結びつき、確かな「線」へと変わっていく。その美しい軌跡を目の当たりにしたような気がした。


【イベント情報】


『sen (records) Launch Party』
日時:2026年4月3日(金)OPEN & START 19:00
会場:東京・恵比寿 KATA / Time Out Café & Diner(LIQUIDROOM 2F)
出演:
[LIVE]
Geloomy
ニシナオキ

[DJ]
じめ先生
sen crew
ニシナオキ

sen records オフィシャルサイト


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